米国議会図書館蔵『源氏物語』 末摘花 ---------------------------------------------------------------------------------- 記号の説明 1.くの字点は/\で表す。 2.和歌は「」で括る。 3.散らし書き和歌の末尾に#を付ける。 4.判読できない文字は■で表す。 本文の修正 1.翻字本文を修正した場合には、修正履歴を末尾に示す。 ---------------------------------------------------------------------------------- すゑつむ花 (1オ) おもへともなをあかさりし夕かほの露にをくれし程のこゝちとし 月ふれとおほしわすれすこゝもかしこも打とけぬかきりのけしきはみ 心ふかきかたの御いとましさともに気ちかく打とけたりしあはれに にる物なう恋しくおもほえ給ふいかてこと/\しきおほえはなくいとらう たけならん人のつゝましき事なからん見つけてしかなとこりすまに おほしわたれはすこしゆへつきて聞ゆるわたりは御みとゝめたまはぬ くまなきにさてもやとおほしよるはかりのけはひあるわたりにこそは ひとくたりをもほのめかし給ふめるになひききこえすもてはなれたるやつ れなう心つよきはたとしへなうなさけをくるゝまめやかさなとのあまりに (1ウ) 物の程しらぬやうにさてしもすくしはてすなこりなくくつをれてなを/\しき かたにさたまりなとするもあれはのたまひましつるもおほかりけりかのうつせみを 物のおり/\にはねたうおほしいつ荻の葉もさりぬへき風のたよりある時は おとろかし給ふおりもあるへしほかけのみたれたりしさまは又さやうにても見ま ほしくおほす大かたなこりなき物わすれをそえしたまはさりけるさゑもんの めのととて大弐のあま君のさしつきにおほいたるかむすめたゆふの命婦とて うちにさふらふはわかむとほりの兵部の大輔なるかむすめなりけりいといたう色 このめるわか人にてそありけるを君もめしつかひなとし給ふはゝはちくせんのかみ のめにてくたりにけれはちゝ君のもとを里にて行かよふこひたちのみこの (2オ) すゑにまうけていみしうかしつき給し御むすめ心ほそくてのこりゐたるを物 のついてにかたり出たりけれはあはれのことやとて御心とゝめてとひ聞給ふ心はへ かたちなとふかきかたはえしり侍らすかいひそめ人うとうもてなし給へはさへき よゐ/\なと物こしにてそかたらひ侍きむをそなつかしきかたらひ人とおもへると 聞ゆれはみつのともにていと一くさやうたてあらんとて我にそのきんのかたきか せよちゝみこのさやうのかたにいとよしつきて物し給ふけれはをしなへてのてつかひ にはあらしとなん思ふとかたらひ給ふさやうにきこしめすはかりは侍らすやあらんと いへはいたうけしきはましや此ころのおほろ月夜にしのひて物せんまかてよ とのたまへはなまわつらはしとおもへとうちわたりものとやかなる春のつれ/\にまかてぬ (2ウ) 此ちゝのたゆふの君はほかにてすみけるこゝにはとき/\そかよひける命婦はまゝはゝの あたりはすみもつかすひめ君の御あたりをむつひてこゝにはくるなりけりとのたまひしも しるくいさよひの月のおかしき程におはしたりいとかたはらいたきわさかな物のね すへき夜のさまにも侍らさめるにと聞ゆれはなをあなたにわたりてたゝ一こゑ もよほしきこえよむなしくてかへらんかいとねたかるへきをとのたまへは打とけたる すみかにすへたてまつりてうしろめたうかたしけなしとおもへとしんてんに まいりたれはまたかうしもさなからむめのかおしきを見いたして物し給ふ よきおりかなと思て御ことのねいかにまさりて侍らんと思給へらるゝ夜の 気はひにさそはれ侍りてなん心あはたゝしき出入にえうけたまはらぬ (3オ) こそくちおしけれといへは物のあはれはしる人にこそあなれもゝしきに ゆきかう人のきくはかりやはとてめしよするもあひなういかゝ聞たまはんと むねつふるほのかにかきならし給ふおかしう聞ゆるになにはかりのふかき手なら ねと物のねからのすちことなる物なれは聞にくゝもおほされすいといたうあ れわたりて物さひしきところにさはかりの人のふるめかしうところせく かしつきすへたりけんなこりなくいかにおもほしのこす事なかるらんかう やうのところにこそはむかし物かたりにもあはれなる事ともありけれなと 思つゝけて物やいひよらましとおほせと打つけにやおほさんと心はつかしくて やすらひ給ふ命婦かとある物にていたうみゝならさせたてまつらしと思けれは (3ウ) くもりかちに侍めりまらうとのこんと侍つるいとひかほにもこそいま心 のとかにみかうしまいりなんとていたうもそゝのかさてかへりたれは中々なる程 にてもやみぬるかな物きゝわく程にもあらてねたうとのたまふ気しき おかしとおほしたりおなしくは気ちかき程のたちきゝせさせよとのたまへと 心にくゝてとおもへはいてやいとかすかなるありさまに思きこえて心くるしけ に物し給ふめるをうしろめたきさまにやといへはけにさもある事にはかに 我も人も打とけてかたらふへき人のきははきはとこそあれなとあ はれにおほさるゝ人の御程なれはなをさやうの気しきをほのめかせと かたらひ給ふ又契り給へるかたやあらんいとしのひてかへり給ふうへのみめに (4オ) おはしますともてなやみきこえさせ給ふおり/\こそおかしう思ふ給へらるゝ おり/\侍れはかやうの御やつれすかたをいかてかは御らんしつけんと聞ゆれ は立かへり打わらひてこと人のいはんやうにとかなあらはされそこれを さへあた/\しきふるまひといはゝ女のありさまくるしからんとのたまへはあま り色めひたりとおほしており/\かふのたまふをはつかしと思て物も いはすなりぬ君はしんてんのかたに人の気はひきくやうもやとおほして やをら立出給ふすいかひのたゝすこしおりのこりたるかくれのかたにたち より給ふにもとよりたてるおとこありけり誰ならんとおほしてかけにつきて 立かくれ給へは頭中将なりけり此夕つかたうちよりもろともにまかて給ける (4ウ) やかて大殿にもよらす二条院にもあらてひきわかれ給けるをいつちならんと たゝならて我も行かたあれとあとにつきてうかゝひけりあやしきむまに かりきぬすかたのなひかしらにてきけれは見しりたまはぬにさすかに かうことかたにいり給ぬれは心もえす思ける程物のねにきゝ ついてたてるにかへりや出給ふとしたまつなりけり君は誰とも見 わきたまはて我としられしとぬきあしにあゆみのき給ふにふと よりてふりすてさせ給へるつらさに御をくりつかうまつりつるは     「もろともに大うち山は出つれといるかた見せぬ いさよひの月」とうらむるもねたけれと此君と見給ふにすこし (5オ) おかしうなりぬ人の思よらぬことよとにくむ/\     「里わかぬかけをは見れとゆく月のいるさの山を たれかたつぬる」かふしたひありかはいかにせさせたまはんときこえ給ふ まことにはかやうの御ありきにはすひしんからこそはか/\しき事もあるへ けれをくらさせたまはてこそあらめやつれたる御ありきはかる/\しき事も 出きなんとをしかへしていさめたてまつるかうのみ見つけらるゝをねたしと おほせとかのなてし子はえたつねしらぬををもきこうにも御心のうちに おほしいつをの/\ちきれるかたにもあまへてえゆきわかれたまはすひとつ御 くるまにのりて月のおかしき程に雲かくれたるみちの程ふえふきあはせて (5ウ) 大殿におはしましぬさきなともをはせたまはすしのひいり給て人見ぬらうに 御なをしともめしてきかへ給ふつれなういまくるやうにて御ふえともふきすさひて おはすれはおとゝれいのえきゝすくしたまはてこまふえとり出給へりいと上手に おはすれはいとおもしろうふき給ふ御ことめして内にもこのかたに心えたる人々に ひかせ給ふ中つかさの君わさとひははひけと頭の君心かけたるをもてはなれてたゝ 此玉さかなる御気しきのなつかしきをはえそむききこえぬにをのつからかくれなく て大宮なともよろしからすおほしなりにたれは物おもはしくはつかしくはした なきこゝ地してすさましけにてよりふしたりたえて見たてまつらぬ世にかけはなれ なんもさすかに心ほそく思みたれたり君たちはありつることのねをおほし出て (6オ) あはれけなりつるすまゐのさまもやうかへておかしう思つゝけあらまし ことにいとおかしうらうたき人のさてとし月をかさねゐたらんを見そ めていみしう心くるしくは人にもてさはかるはかりやと我心もさまあしからんなと まて中将は思けり此君のかうけしきはみありき給ふをまさにさては すくし給てんやとなまねたうあやしかりけりその後こなたかなたより 文なとやり給ふへしいつれも/\返事みえすおほつかなく心やましきにあまり うたてもあるかなさやうなるすまゐする人は物思しりたる気しきはかな き木草空のけしきにつけてもとりなしなとして心はせをしはからるゝお り/\あらんこそあはれなるへけれおかしとてもいとかうあまりむもれたらんは (6ウ) 心つきなくわろひたり中将はまひて心いられしけりれいのへたてきこえ たまはぬ心にてしか/\の返ことをは見給ふやこゝろ見にかすめたりし こそはしたなくてやみにしかとうれふれはされはよいひよりにけるをや とほゝゑまれていさ見んとしもおもはねはにや見るよしもなしといらへ給ふを 人わきしけるとねたう思ふ君はふかうしもおもはぬ事のかうなさけなきを すさましくおもひなり給にしかとかう此中将のいひありきけるをことおほく いひなれたらんかたにそなひかんかししたりかほにてもとの事を思はなち たらんけしきこそうれはしかるへけれとおほして命婦をまめやかにかたら ひ給ふおほつかなうもてはなれたる御気しきになんいと心うくすき/\ (7オ) しきかたにうたかひよせ給ふにこそあらめさりともみしかき心はえつかはぬ 物を人の心ののとかなる事なくていとおもはすにのみあるになんをのつから わかあやまちにもなりぬへき心のとかにておやはらからのもてあつかひうらむるも なう心やすからん人は中々なんらうたかるへきとのたまへはいてやさやうに おかしきかたの御かさやとりにはえしもやとつきなけにこそ見え侍れひとへに 物つゝみしひきいりたるかたはしもありかたう物し給ふ人になんと見るありさま かたり聞ゆらう/\しうかとめきたる心はなきなめりいとこめかしうおほとかならむ こそらうたくはあるへけれとおほしわすれすのたまふわらはやみにわつらい 給ふ人しれぬ物おもひのまきれも御心のいとまなきやうにて春夏すきぬ (7ウ) 秋のころをひしつかにおほしつゝけてかのきぬたのをともみゝにつきて きゝにくかりしさへ恋しうおほえ出らるゝまゝにひたちの宮にはしは/\きこえ 給へとなをおほつかなうのみあれはよつかす心やましうまけてはやましの御心さへ その命婦をせめ給ふいかなるやうそいとかゝる事こそまたしらねといと物しと 思てのたまへはいとおしと思てもてはなれてにけなき御事ともおもひやり侍らす たゝ大かたの御物つゝみのわりなきにてをえさし出たまはぬとなん見給ふると聞 ゆれはそれこそはよつかぬ事なれ物おもひしるましき程のひとり身をえ心にま かせぬ程こそさやうにかゝやかしきもことはりなれ何事も思しつまり給へらんと思ふ にこそそこはかとなくつれ/\に物心ほそうのみおほゆるをおなし心にいらへたまはんは (8オ) ねかひかなふこゝちなんすへきなにやかやとよつけるすちならてそのあれ たるすのこにたゝすままほしき也いとおほつかなう心えぬこゝちする をかの御ゆるしならすともたはかれかし心いられしうまてあるもてなしには よもあらしなとかたらひ給ふなを世にある人のありさまを大かたなるやうに てきゝあつめみゝとゝめ給ふくせのつき給へるをさう/\しきよゐなとにはか なきついてにさる人こそとはかりきこえ出たりしかくわさとかましうのた まひわたれはなまわつらはしくひめ宮の御ありさまもよつかはしくよしめき なともあらぬを中々なるみちひきにいとおしき事や見えむなと思けれと君のかふ まめやかにのたまふにきゝいれさらんもひか/\しかるへしちゝみこおはしけるおりに (8ウ) たにふりにたるあたりとてをとなひ聞ゆる人もなかりけるをましていま はあさちわくる人も跡たえたるにかく世にめつらしき御気はひのもりにほひ くるをはなま女房なともめてたき事にえみまけてなをきこえさせ給へと そゝのかしたてまつれとあさましう物つゝみし給ふ御心にてひたふるに 見もいれたまはぬなりけり命婦はさふらはさりぬへからんおりに物こしはかり にもきこえたまはん程御心につかすはさてもやみねかし又さるへきにて かりにもおはしかよはんをたれかとかめ給ふへき人なしなとあためきたる はやり心はうち思てちゝ君にもかゝる事なともまねはさりけり八月廿 余日よゐすくるまてまたるゝ月の心もとなきにほしのひかりはかり (9オ) さやけく松のこすゑふく風のをと心ほそくていにしへの事かたり出て 打なきなとし給ふをいとよきおりかなと思て御せうそこやきこえ つらんれいのいとしのひておはしたり月やう/\出てあれたるまかきの 程うとましく打なかめ給ふにきんそゝのかされてほのかにかきならし 給ふ程けしうはあらすすこし気ちかくいまめきたるけをつけはやと そみたれたるこゝちには心もとなく思たる人めもなきところなれ は心やすくいり給て命婦をよはせ給ふいとしもおとろきかほに いとかたはらいたきわさかなしか/\こそおはしましたなれつねにかう うらみきこえ給ふを心にかなはぬよしをのみきこえすさひ侍れは (9ウ) 身つからことはりもきこえしらせんとのたまひわたる也いかゝきこえかへ さんなみ/\のたはやき御ふるまひならねは心くるしきを物こしにてきこ えたまはん事はかりをきこしめせといへはいとはつかしと思て人に物きこ えんやうもしらぬをとておくさまへいさり入給ふさまいとうゐ/\けなり 打わらひていとわか/\しうおはしますこそ心くるしけれかきりなき人も おやのあつかひうしろ見きこえ給ふ程こそわかひ給ふもことはりなれかは かり心ほそき御ありさまにてなを世をつきせすおほしはゝかるはつきなう こそとをしへ聞ゆさすかに人のいふ事はつよふもいなひぬ御心にていらへきこ えてたゝきけとあらはかうしなとはさらてはありなんとのたまふすのこなとは (10オ) ひんなう侍なんをしたちてあは/\しき御ふるまひなとはよもなといと よくいひなしてふたまのきはなるかうしてつからひきつくろふいと つゝましけにおほしたれとかうやうの人に物いふらん心はへなとも夢にも しりたまはさりけれは命婦のかういふをあるやうこそはと思て物し給ふ めのとたつおひ人なとはさうしにゆきわかれゆふまとひしたる程也わかき人 二三人あるはたゝ世にめてられ給ふさまそゆかしき物に思きこえ心つけ申 あへりよろしき御そたてまつりかへつくろひ聞ゆれはさうしみはなにの心けさう もなくておはすおとこはいつゝきせぬ御さまを打しのひようゐし給へる気はひ いみしうなまめきて見しらん人にこそ見せめなにのはへあるましきわたりを (10ウ) あないとおしと命婦はおもへとたゝおほとかに物し給ふをそうしろやすう さしすきたる事は見えたてまつりたまはしと思けるわかつねにせめられたてま つるつみさりことに心くるしき人の御ものおもひや出こんなとやすからす 思ゐたり君は人の御程をおほせはされくつかへるいまやうのよしはみよりは こよなうおくゆかしとおほしわたるにとかうそゝのかされていさりより給へる 気はひしのひやかにゑひの香いとなつかしくかたり出ておほとかなるをされは よとおほす年ころ思わたるさまなといとよくのたまひつゝくれとましてちか き御いらへはたえてなしわりなのわさやと打なけきたまふ     「いくそたひ君かしゝまにまけぬらんものないひそと (11オ) いはぬたのみに」とのたまひもすてゝよかし玉たすきはくるしとのたまふを 女君の御めのとこししうとていとはやりかなるわかうといと心もとなうかたはら いたしとおもひてさしよりてきこゆ     「かねつきてとちめむことはさすかにてこたへまうきそ かつはあやなき」いとわかひたる御こゑのことにをもりかならぬを人つ てにはあらぬやうにきこえなせは程よりはあまへてと聞給へはいとめつらしき に中々くちふたかるわさかな     「いはぬをもいふにまさるとしりなからをしこめたるは くるしかりけり」なにやかやとはかなき事なれとおかしきさまにもまめやかにも (11ウ) のたまへとなにのかひもなしいとかゝるもさまかへて思ふかたことに物し給ふ 人にやとねたくてやをらをしあけていり給にけり命婦あなうたてたゆめ 給へなといとおしけれはしらすかほにて我かたへいにけり此わか人ともは世に たくひなき御ありさまのをときゝにつみゆるしきこえておとろ/\しうなけ かれすたゝ思もよらすにはかにてさる御心もなきをそ思けるさうしみは たゝ我にもあらすはつかしくつゝましきよりほかの事またなけれはいまはかゝる そあはれなるそかしまたよなれぬ人の打かしつかれたると見ゆるし給ふ 物から心えすなまいとおしとおほゆるひとの御さま也何事につけてかは御心のとま 覧打うめかれて夜ふかう出たまひぬ命婦はいかならんと目さめてきゝふせり (12オ) けれとしりかほならしとて御をくりにともこはつくらす君もやをら しのひて出給ふにけり二条院におはして打ふし給てもなを思にかなひ かたき世にこそとおほしつゝけてかるらかならぬ人の御程を心くるしとそ おほしける思みたれておはするに頭中将きてこよなき御あさいかなゆへ あらんかしとこそ思給へらるれといへはおきあかり給て心やすきひとりねの とこにてゆるひすきにけりや内よりかとのたまへはしかまかて侍まゝ也 朱雀院の行幸けふなんかく人まひ人えらふへきよしうけたまはり しをおとゝにもつたへ申さんとてなんまかて侍るやかてかへりまいりぬ へう侍るといそかしけなれはさらはもろともにとてまらうとにも (12ウ) まいり給てひきつゝけたれとひとつにたてまつりてなをいとねふたけ也とか めいてつゝかくひ給ふ事おほかりとそうらみきこえ給ふ事ともおほくさためら るゝ日にて内にさふらひくらしたまひつかしこには文みをたにといとおしくお ほし出て夕つかたそありける雨ふり出てところせくもあるにかさやとりせんと はたおほされすやありけんかしこにはまつ程すきて命婦もいと/\おしき御さま かなと心うく思けりさうしみは御心のうちにはつかしう思つゝけ給てけさの 御文のくれぬるもとかとしも中々思わきたまはさりけり     「夕きりのはるゝ気しきもまた見ぬにいふせさそふる よゐの雨かな」雲ままちえん程と心もとなうとありおはしますましきを (13オ) 人々むねつふれておもへとなをきこえさせ給へとそゝのかしあへれと いとゝ思みたれ給へる程にてゑかたのやうにもつゝけたまはねは夜ふ けぬとてしゝうそれいのをしへきこゆる     「はれぬ夜の月まつ里をおもひやれおなしこゝろに なかめせすとも」くち/\にせめられてむらさきのかみの年へに けれははひをくれふるめひたるにてはさすかにもしつよふなかさた のすちにてかみしもひとしくかひ給へり見るかひなう打をき給ふ いかに思ふらんとおもひやるもやすからすかゝる事をくやしなとは いふにやあらむさりとていかゝはせんわれさりとも心なかう見えてんと (13ウ) おほしなす御心をしらねはかしこにはいみしうそなそひ給ふけるお とゝ夜にいりてまかて給ふにひかれたてまつりて大殿におはしましぬ 行幸の事をけふありとおほして君たちあつまりてのたまふをの/\ まひともならひ給ふをそのころのことにすきゆく物のねとも つねよりもみゝかしましくてかた/\いとみつゝれいの御あそひならす大 ひちりきさくはちのふえなとやうのおほこゑをふきあけつゝたいこを さへかうらむのもとにまろはしよせてみつからうちならしあそひをはさう す御いとまなきやうにてせちにおほすところはかりにこそぬすまはれ 給へかのわたりにはいとおほつかなくて秋も暮はてぬなをたのみこし (14オ) かひなくてすきゆく行幸ちかくなりてしかくなとのゝしる ころそ命婦はまいれるいかにそなととひ給ていとおしとはおほし たりありさまきこえていとかうもてはなれたる御心はへは見給ふる 人さへ心くるしくなとなきぬはかりおもへり心にくゝもてなしてやみなんと おもへりし事をくたひてけるいと心もなく此人の思ふらんをさへおほすさう しみの物はいはておほしうつもれ給ふらんさまおもひやり給ふもいと/\おしけれは いとまなき程そやわりなしと打なけい給て物思しらぬやうなる心さまを こらさんと思ふそかしとほゝゑみ給へるかいとわかううつくしけなれは我も 打ゑまるゝこゝちしてわりなの人にうら見られ給ふ御ようゐおもひやり (14ウ) すくなう御心のまゝならんもことはりと思ふ此御いそきの程すくしてそ うき/\おはしけるかのむらさきのゆかりたつねとり給てはその うつくしみに心いり給て六条わたりにたにかれまさり給るれはまして あれたる宿はあはれにおほしをこたらすなからあやしく物うきそ わりなかりけるところせき御物はちを見あらはさんの御心もことになう てすきゆくを又打かへし見まさりするやうもありかしなを手さくり のたと/\しきにあやしう心えぬ事もあるにやみてしかなとおほせと ひなとをけさやかにとりなさんもまはゆし打とけたるよゐの程 やをら入給てかうしのはさまより見給けりされとみつからは見え (15オ) 給ふへうもあらすきちやうなといといたくそこなはれたる物から 年へにけるたちとかはらすをしやりなとみたれねは心もとなくてこたち 四五人はかりゐたり御たひひろくなとやうの物こしの物なれと人わろきに なにのくさはひもなくあはれけなるをまかてゝ人々くふすみのまいり こそいとさむけなるをんなはうしろきゝぬいひしらすすゝけたるにきた なけなるしひらひきゆひつけたるこしつきかたくなしけ也さすか にくしをしたれてさしたるひたひつき内教坊内侍所の程に かゝる物とものあるにやと見えておかしかけても人のあたりにちかう かやうにてふるまう物ともしりたまはさりけりあはれさもさむき (15ウ) としかないのちなりけれはかゝる世にもあふ物也けりとて打なくもあり又 こ宮のおはしましゝ世をなとてからしと思けんかくたのみなくても すくる物なりけりとてとひたちぬへくふるうもありさま/\に人わろき 事ともうれへあへるをきゝ給ふもかたはらいたけれは立のきてたゝいまおは するやうにて打たゝき給ふそゝやなといひて火とりなをしかきはらひて かうしはなちていれたてまつるしゝうはさひゐんにまいりかよふわか人にて此 ころはなかりけりいよ/\あやしくひなひたるかきりにて見ならひたまはぬ こゝちそするいとゝうれうなりつるに雪かきたれていみしうふりけり空の 気しきはけしう風ふきあれておほとなふらもきえにけるを (16オ) ともしつくる人もなしかの物におそはれしおりおほしいてられて あれたるさまはおとらさめるをほとのせはう人けのすこしあるなとに なくさめたれとすこううたていさときこゝ地する夜のさま也おかしう もあはれにもやうかへて心とまりぬへきありさまをいとむもれすくよか にてなにのはへなきをそくちおしうおほすからうして明ぬるけはひなれ はかうしみつからあけ給てまへのせんさいの雪を見いたし給ふふみわけ たる跡もなくはる/\あれわたりていみしうさひしけなるにふり出て ゆかん事もあはれにておかしき程の空も見え給へつきせぬ御心のへたて こそわりなけれとうらみきこえ給ふまたほのくらけれと雪のひかりに (16ウ) いときよらにわかう見え給ふをおひ人ともゑみたかへて見たてまつる はや出させ給へあちきなし心うつくしきこそなとをしへ聞ゆれはさすかに れいの人の聞ゆる事をえいなひたまはぬ御心にてとかうひきつくろひ ていさり出給へり見ぬやうにてとのかたをなかめ給へれとしりめたゝならす いかに打とけまさりのいさゝかもあらはうれしからんとおほすもあなかちなる 御心なりやまつゐたけのいとたかうをせなかに見え給ふにされはよとむね つふれぬ打つきてあなかたはと見ゆる物は御はななりけりとふと目そとまる 普賢菩薩ののり物とおほゆあさましうたかうのひらかにさきのかたす こしたりて色つきたるもことのほかにうたてあり色はゆきはつかしくさをき (17オ) しろくまをにひたひつきこよなうはれたるになをしもかちなるおもやうは 大かたおとろ/\しうなかきなるへしやせ給へる事いと/\おしけにさらほひて かたの程いとゐたけなるまてきぬのうへまてたに見ゆなにゝかくのこりなう 見あらはしつらんと思ふ物からめつらしきさまのしたれはさすかに打見やられ 給ふかしらつきかみのかゝりはしもうつくしけにめてたしと思聞ゆる人々にもをさ/\ をとるましううちきのすそにたまりてひかれたる程一しやくはかり あまりたらんと見ゆき給へる物ともをさへいひたつるはいと物いひさかなき やうなれとむかし物かたりにも人のさうそくをこそはまついひためれゆる し色のわりなううはしらみたる一かさねになこりなうくろき (17ウ) うちきかさねてうはきにはふるきのかはきぬいときよらにかうはしき をき給へりこたひのゆへつきたる御さうそくなれとなをわかやかな る女の御よそひにはにけなうおとろ/\しき事いとももてはやされたり されとけに此かはきぬなうてははたさむからましと見ゆる御かほさま なるをいと心くるしと見給ふ何事もいはれたまはす我さへくちとちた るこゝちし給へとれいのしゝまもこゝろ見むととかうきこえ給ふにい たうはちらひてくちおほひし給へるさへひなひふるめかしうこと/\しく きしき官人のねり出たるひちもちおほえてさすかに打ゑみ給へるけ しきいとはしたなうすゝろひたりまことにいとおしくあはれにていとゝ (18オ) いそき出給ふたのもしき人なき御ありさまを見そめたる人には うとからす思むつひたまはんこそほいあるこゝ地すへけれとゆるしなき 御気しきなれはつらうなとことつけて     「あさ日さす軒のたるひはとけなからなとかつらゝの むすほゝるらん」とのたまへはたゝむゝと打わらひていとくちをもけ なるもいとおしけれは出たまひぬ御くるまよせたる中門のいといたうゆ かみよろほひてよめにこそしるきなからよろつかくろへたる事おほかり けれいとあはれさひしくあれまとへるに松の雪のみあたゝかけにふり つめる山里のこゝ地して物あはれなるをかの人々のいひしむくらの門はかうやう (18ウ) なるところなりけんかしけに心くるしくらうたけならん人をこゝにすへて うしろめたう恋しとおもはゝやあるましき物思はそれにまきれなんかしと おもふやうなるすみかにあらぬ御ありさまはとるへきかたなしと思なから我ならぬ 人はまして見しのひてんやわかかう見なれけるはちゝみこ此うしろめたし とたくはへをき給けんたましゐのしるへなめりとそおほさるゝたち花の木 のうつもれたるをみすひしんめしてはらはせ給ふうらやみかほに松の木のをのれ おきかへりてさとこほるゝ雪も波こすすゑのと見ゆるなとをいとふかからす ともなたらかなる程にあひしらはん人もかなと見給ふ御くるま出へき門は またあけさりけれはかきのあつかりたつね出たれはおきなのいといみしきそ (19オ) いてきたるむすめにやむまこにやはしたなるおほきさの女のきぬは雪 にあひていとすゝけまとひてさむしとおもへるけしきふかうてあやしき物に 火をたゝほのかにいれて袖くゝみにもたりおきなか門をえあけやらねは よりてひきたすくるいとかたくななり御ともの人よりてそあくる     「ふりにけるかしらの雪を見る人もをとらすぬらす あさの袖かな」わかき物はかたちかくれすと打すし給てもはなの色に 出ていとさむしと見えつる御おもかけふと思ひ出られてほゝゑまれ給ふ頭中将に 是を見せたらん時いかなる事をよそへいはんつねにうかゝひくれはいま見つけら れなんとわりなうおほすなのめによのつねなる程のことなる事なさなとは思 (19ウ) すてゝもやみぬへきをさたかに見給て後は中々あはれにいみしうて まめやかなるさまにつねにをとつれ給ふふるきのかはならぬきぬあやわたなと 老人とものきるへき物のたくひかのおきなのためまてかみしもおほしやり ておほくたてまつり給ふかやうのまめやかなる事もはつかしけならぬを心やすく さるかたのうしろ見にてはくゝまんとおほしとりてさまことにさならぬ打とけわさ もしたまひけり此うつせみの打とけたりしよるのそはめにはいとわろかりしかたち さまなれともてなしにかくされてくちおしうあらさりきかしをとるへき程の 人なりやはけにしなにもよらぬわさなりけり心はせのなたらかにねたけ なりしをまけてやみにしかなと物のおりにはおほしいつ年も暮ぬ内 (20オ) の御とのゐところにおはしますにたゆふの命婦まいれり御けつりくしなとには けさうたつすちなう心やすき物のさすかにのたまふれなとしてつかひならし 給へれはめしなき時も聞ゆへき事あるおりはまうのほりけりあやしき事の侍を きこえさせ侍らさらんもひか/\しう思給へわつらひてとほゝゑみてきこえも やらぬをなにさまのことそ我にはつゝむ事あらしとなん思ふとのたまへはいかゝはみつ からのうれへはかしこくともまつこそは是はいときこえさせにくゝなといといたう ことこめたれはれいのえんなる事をにくみ給ふかの宮より侍る御文とてとり出 たりまして是はとりかくすへき事かはとてとり給ふもむねつふるみちのくに かみのあつこえたるににほひはかりはふかうしめ給へりいとようかきおほせ (20ウ) たりうたも     「からころも君かこゝろのつらけれはたもとはかくそ そほちつゝのみ」心えす打かたふき給へるにつゝみにころもはこのをもりかに いとこたひたる打をきてをし出たり是をいかてかかたはらいたく思たまはさらん されとついたちの御よそひとてわさと侍めるをはしたなうはえきこえかへし 侍らすひとりひきこめ侍らんも人の御心にたかひ侍へけれは御らんせさせて こそはと聞ゆれはひきこめられなんはかうかりなまし袖まきほさん人もなき 身にいとうれしきこゝろさしにこそはとのたまひてことに物いはれたまはす さてもあさましのくちつきや是こそは手つからの御事のかきりなめれしゝうこそ (21オ) とりなをすへめれ又筆のしりとるはかせそなかるへきといふかひなくおほす心を つくしてよみ出給へらん程をおほすにいともかしこきとは是をもいふへかり けりとほゝゑみて見給ふを命婦おもてあかみて見たてまつるいまやう色の 見ゆるすましうつやなうふるめきたるなをしのこらへひとしうこまやか なるいとなを/\しうつま/\そ見えたるあさましとおほすに此文をひろけなから はしにてならひすさひ給ふをそはめにみれは     「なつかしき色ともなしになにゝこのすゑつむはなを 袖にふれけん」色こきはなと見しかともなとかきけかし給ふはなのとかめを なをあるやうあらんと思あはするおり/\の月かけなとをいとおしき物から (21ウ) おしうおもひなりぬ     「くれなゐの一はなころもうすくともひたすらくたす 名をしたてすは」心くるしの世やといといたうなれてひとりこつをよき にはあらねとかうやうのかひなてにたにあらましかはと返々くちおしき人の 程の心くるしきに名のくちなんはさすか也人々まいれはとりかくさんやかゝる わさは人のする物にやあらんと打うめき給ふなにゝ御覧せさせつらん我さへ 心なきやうにといとはつかしくてやをらおりぬ又の日うへにさふらへはたいはんとこ ろにさしのそき給てくはやきのふの返事あやしく心はみすくさるゝとて なけ給へり女房たちなに事ならんとゆかしかるたゝ梅の花の色のこと (22オ) みかさの山のをとめをはすてゝとうたかひすさひて出たまひぬなを 命婦はいとおかしとおもふ心しらぬ人々はなそ御ひとりゑみはととかめあへり あかすやさむきしもあさにかいねりこのめるはなの色あひや見えつらん 御つゝしりうたのいとからきといへはあなかちなる御事かな此なかにはにほ へる花もなかめりさこんの命婦ひこのうねへやましらひつらんなと 心もえすいひしろう御返たてまつりたれは宮には女房つとひて見めてけり     「あはぬ夜とへたつる中のころも手にかさねていとゝ 見もしみよとや」しろきかみにすてかい給へるしもそいと中々おかしけなる つこもりの日の夕つかたの御ころもはこに御れうとて人のたてまつれる (22ウ) 御そひとつえひそめのをり物の御そ又山ふきかなにそ色々見えて命 婦そたてまつりたるありし色あひともをわろしとや見給けんとけふそ思 しらるれとこれはたくれなゐのいとをも/\しかりしをやとさりともきえし とそねひ人ともはさたむる御うたも是よりのはことはりきこえてしたゝかに こそなとくち/\にいふひめ君もおほろけならてし出給へるわさなれは物に かきつけてをき給へりけりついたちの程すきてことしをとこたうかある へけれはれいのところ/\あそひのゝしり給ふに物さはかしけれとさひしきと ころのあはれをおほしやらるれはなぬかの日のせちえはてゝ夜に入て 御まへよりまかて給けるを御とのゐところにやかてとまり給ぬる (23オ) やうにて夜ふかしておはしたりれいのありさまよりは人のけはひ打そよめ きてよつひたり君もすこしたをやき給へる気しきもてつけ給へりいか にそあらためてひきかへたらん時とそおほしつゝけらるゝ日さし出る程に やすらひなして出給ふひんかしのつま戸をしあけたれはむかひたるらう のうへもなくあはれたれは日のあし程なくさしいりて雪すこしふり たるひかりにうちはいとけさやかに見いれらる御なをしなとたてまつるを 見いたしてすこしさし出てかたはらにふし給へるかしらつきかみのこほれ出 たる程いとめてたしをひなをりを見いてたらん時とおほされてかうしあけ 給へりいとおかしかりし物こりに明もはてたまはてけうそくををしよせて (23ウ) 打かけて御ひくきのしとけなきをつくろひ給ふわりなうふるめひたる きやうたひのからくしけかゝけのはこなととり出たりさすかにおとこの御 くさえほの/\あるをされておかしと見給ふ女の御さうそくけふはよつきたり とみゆるはありしはこの心はせをさなからなりけりさもおほしよらすけふ あるもんつきてしるきうはきはかりそあやしとはおほしけることしたに こゑすこしきかせ給へかしまたるゝ物はさしをかれて御気しきのあら たまらんなんゆかしきとのたまへはさえつる春そとからうしてわなゝかしいて たりさりや年へぬるしるしにと打わらひ給て夢かとそみるとうち すして出給ふを見をくりてそひふし給へりくちおほひのそはめよりなを (24オ) かのすゑつむはないとにほひやかにさしいてたり見くるしのわさや とおほさる二条院におはしたれはむらさきのひめ君いとも うつくしきかたおひまてくれなゐはかうなつかしきもありけりとみゆる にむもんのさくらのほそなかなとなよらかにきなしてなにこゝろもな くて物のたまふさまいみしうらうたしこたひのをは君の御なこり にてはくろめもまたしかりけるをひきつくろはせたまひつれは まゆのけさやかになりたるもうつくしうきよらなりこゝろからなと かかううき世を見あつかふらむかくこゝろくるしき物をも見いたして とおほしつゝれいのもろともにひいなあそひしたまうゑなとかきて (24ウ) いろとりたまふよろつにおかしうすさひちらしたまひけり我 もかきそへたまふかみいとなかきをんなをかきたまひてはなに へにをつけて見たまうにかたにかきても見まうきさましたりわか 御かけのきやうたひにうつれるかいときよらなるを見たまひて手つ からこのあかはなをかきつけにほはして見たまふにかくよきかほたに さてましれらんは見くるしかるへかりけりひめきみ見ていみしくわら いたまふまろかかくかたはになりなん時いかならんとのたまへはうたてこそあら めとてさもやしみつかむとあやうくおもひたまへりそらの恋をして さらにこそしろまねよふなきすさひわさなりやうちにいかにのた (25オ) まはんとすらんといとまめやかにのたまうをいと/\おしとおほえてよりての こい給へはへいちうかやうにいろとりそへ給ふなあかゝらむはあへなと たはふれたまふさまいとおかしきいもせと見えたまへり日のいと うらゝかなるにいつしかとかすみわたれる木すゑとものこゝろもと なき中にも梅は気しきはみほゝゑみわたれるをとりわきて見ゆ はしかくしのもとのこうはいはいととくさく花にて色つきにけり     「くれなゐのはなそあやなくうとまるゝむめのにほひは なつかしけれと」いてやとあひなく打うめかれけれとかゝる人々のす ゑ/\いかなりけむ ---------------------------------------------------------------------------------- 底本:Japanese Rare Book Collection (Library of Congress) LC Control No.2008427768 翻字担当者:淺川槙子、豊島秀範、畠山大二郎、銭谷真人、大石裕子 更新履歴: 2011年3月24日公開 2014年7月23日更新 2014年7月30日更新 ---------------------------------------------------------------------------------- 修正箇所(2014年7月23日修正) 丁・行 誤 → 正 (1オ)1 心ちをとし → こゝちとし (1オ)2 気しきはみ → けしきはみ (1オ)3 けちかく → 気ちかく (1オ)6 とゝとめたまはぬ → とゝめたまはぬ (1オ)7 気はひ → けはひ (1オ)8 はなれたるは → はなれたる (1オ)9 まめやかさなと → まめやかさなとの (2オ)8 きしきはましや → けしきはましや (2ウ)3 物はね → 物のね (2ウ)4 はつき → すへき (2ウ)9 けはひ → 気はひ (3オ)1 あはれは → 物のあはれは (3オ)1 もけしきに → もゝしきに (3オ)3 ふかきて → ふかき手 (3ウ)3 きしき → 気しき (3ウ)4 けちかき → 気ちかき (3ウ)8 きしき → 気しき (4オ)6 けはひ → 気はひ (5オ)3 尋ぬる → たつぬる (5オ)7 おもき → をもき (5ウ)1 ははしましぬ → おはしましぬ (5ウ)1 おはせたまはす → をはせたまはす (5ウ)3 きゝすくし → えきゝすくし (5ウ)6 御けしき → 御気しき (6オ)7 けしき → 気しき (6ウ)4 ほゝえまれて → ほゝゑまれて (6ウ)9 御けしき → 御気しき (7オ)2 はとおもはすに → いとおもはすに (7オ)4 中/\ → 中々 (7オ)4 らうたかるへきを → らうたかるへき (7ウ)7 心に → え心に (8オ)3 心いられしうたて → 心いられしうまて (8オ)4 おほかた → 大かた (8オ)6 かたわさと → かくわさと (8ウ)1 なかりけりを → なかりけるを (8ウ)2 御けはひ → 御気はひ (8ウ)4 心にて → 御心にて (9オ)5 けちかく → 気ちかく (9オ)9 うら見 → うらみ (9ウ)3 事いかにを → 事はかりを (9ウ)7 つきのう → つきなう (10オ)3 ゆ夢にも → 夢にも (10オ)8 御けはひ → 気はひ (10ウ)6 けはひ → 気はひ (11オ)1 いはぬたのみに」 → いはぬたのみに」と (11オ)5 おもりか → をもりか (11オ)7 中/\ → 中々 (11ウ)4 おとろ/\しうも → おとろ/\しう (11ウ)8 御さまなり也 → 御さま也 (12オ)1 しりかほならしと → しりかほならしとて (12オ)4 御あさいかにゆへ → 御あさいかなゆへ (12ウ)2 給事 → 給ふ事 (12ウ)7 中/\ → 中々 (12ウ)8 けしき → 気しき (13オ)9 見はてんと → 見えてんと (13ウ)9 おほつかなくて → いとおほつかなくて (14オ)5 心もてなく → 心もなく (14オ)6 し見の → しみの (14オ)8 給へる → 給へるか (14オ)9 御ようゐや → 御ようゐ (14ウ)3 心いり給ひて → 心いり給て (15オ)1 いたく → いといたく (15オ)9 ふるまふ → ふるまう (15ウ)4 事ともを → 事とも (15ウ)8 うれえ → うれう (15ウ)9 けしき → 気しき (18オ)3 御けしき → 御気しき (18ウ)7 ふかゝらす → ふかからす (18ウ)8 出つへき → 出へき (19オ)3 袖くゝ見 → 袖くゝみ (19オ)7 思出られて → 思ひ出られて (19ウ)1 中/\ → 中々 (19ウ)1 い見しうて → いみしうて (20ウ)4 こたいたる → こたひたる (21オ)2 よ見出 → よみ出 (21オ)8 色こき花と → 色こきはなと (21ウ)3 心くるしのよやといたう → 心くるしの世やといといたう (22オ)9 夕つかたかの → 夕つかたの (23オ)2 けしき → 気しき (23ウ)3 くさへ → くさえ (23ウ)4 心はへ → 心はせ (23ウ)6 御けしき → 御気しき (24ウ)3 きさましたる → きさましたり (24ウ)5 見給ふに → 見たまふに (25オ)1 おほして → おほえて (25オ)5 けしきはみ → 気しきはみ ---------------------------------------------------------------------------------- 修正箇所(2014年7月30日修正) 丁・行 誤 → 正 (3ウ)2 中/\ → 中々 (8オ)8 中/\ → 中々