＜出典＞２４１　　　国定読本　２期４－１
＜Ｐ－０００＞
もくろく　　＃
第一　　楠［クス］木［ノキ］正［マサ］行［ツラ］…（一）………一　　第十四　　西洋紙ト日本紙………四十六　＃
第二　　楠木正行…（二）………五　　第十五　　郵便の話………五十　＃
第三　　ゐなかの四季………九　　第十六　　東京見物…（一）………五十四　＃
第四　　商業問答………十二　　第十七　　東京見物…（二）………五十七　＃
第五　　問合の手紙………十五　　第十八　　犬………五十九　＃
第六　　豆の一族………十九　　第十九　　水とからだ………六十三　＃
第七　　塙［ハナハ］保［ホ］己［キ］一［イチ］………二十二　　第二十　　桃をおくる手紙………六十六　＃
第八　　手ノハタラキ………二十五　　第二十一　　海ノ生物…（一）………六十九　＃
第九　　蠶………二十八　　第二十二　　海ノ生物…（二）………七十四　＃
第十　　やき物とぬり物………三十四　　第二十三　　何事も精神………七十八　＃
第十一　　勸工場………三十六　　第二十四　　航海の話…（一）………八十　＃
第十二　　山内一［かず］豐［とよ］の妻………三十九　　第二十五　　航海の話…（二）………八十四　＃
第十三　　家の紋………四十四　　第二十六　　廣瀬中佐………八十九　＃
＜Ｐ－００１＞
第一　　楠［クス］木［ノキ］正［マサ］行［ツラ］　（一）　　＃
楠木正行ハ正［マサ］成［シゲ］ノ子ニシテ、父ニオトラヌ忠＃
義ノ士ナリ。正成ノ戰死セシハ正行ガ十一歳＃
ノ時ニシテ、ソノ折父トトモニ戰場ニ出デン＃
トセシガ、正成ハ道ニテサトスヤウ、＃
「我聞ク、シヽハ子ヲ生メバ、三日ニシテコレ＃
ヲ谷ソコヘオトシテ、ソノ力ヲタメストイ＃
フ。ナンヂハ年スデニ十歳ヲコエタリ。ヨク＃
父ノ言フコトヲ聞分ケヨ。コノ度ノ戰、敵ハ＃
＜Ｐ－００２＞
大ゼイニシテ、＃
味方ハ小ゼイ＃
ナリ。我ガ生キ＃
テフタヽビ汝＃
ヲ見ンコトハ＃
カタカルベシ。我ガ死ニタル後モ、一門ノ者＃
一人ニテモ生キ殘リテアル間ハ、忠義ノ兵＃
ヲ起シテ、天皇ノ御タメニツクスベシ。汝ノ＃
孝行コレニスギタルコトナシ。」＃
＜Ｐ－００３＞
ト、ネンゴロニ言ヒフクメテ、國ヘカヘシタリ。＃
正成ハタシテ戰死シテ、ソノクビハ家ニ送ラ＃
レタリ。正行ハコレヲ見テ、カナシサノアマリ、＃
ツト立チテ別室ニ行キタリ。母アヤシミテ、ソ＃
ノ室ヲウカヾフニ、正行ハ父ノカタミノ刀ヲ＃
拔キテ、今ニモハラヲ切ラントス。母ハ走リヨ＃
リテ、正行ノウデヲオサヘ、＃
「汝ヲサナクトモ、父ノ子ナレバ、コレホドノ＃
ワケノ分ラヌコトハアルマジ。ヨク〳〵考＃
＜Ｐ－００４＞
ヘ見ヨ。父ノ汝ヲカヘシタマヒシハ、汝ノヲ＃
サナクシテ死ヌルヲカナシミタマヒテニ＃
アラズ。大人トナリテ、君ノ御タメニ忠義ノ＃
兵ヲ起シテ、賊ヲ平ゲシメントナリ。ミヅカ＃
ラ御コトバヲウケタマハリ來リテ我ニツ＃
ゲタルヲ、汝ハ早クモワスレタルカ。カクテ＃
ハ君ノ御用ニ立ツベシトモオボエズ。」＃
トテ、泣ク〳〵イマシメタリ。正行大イニカン＃
ジテ、コレヨリ後ハ父ト母トノ教ヲ守リテ、一＃
＜Ｐ－００５＞
日モワスルヽコトナカリキ。　　＃
第二　　楠木正行　（二）　　＃
正成戰死シテ後ハ、敵ノイキホヒマス〳〵強＃
ク、天皇ハ吉野山ノカリノ皇居ニウツリタマ＃
ヘリ。楠木氏ハソノ後ツネニ皇居ヲ守リテ、敵＃
ト戰ヒシガ、アル年敵ノ大將高［カウノ］師［モロ］直［ナホ］六万人ノ＃
大兵ヲヒキヰテ來リ攻ム。正行コノ度ハサイ＃
ゴノ合戰セントテ、皇居ニマヰリテ申シ上グ＃
ルヤウ、＃
＜Ｐ－００６＞
「父正成ノ戰死＃
セシ時、臣ハワ＃
ヅカニ十一歳、＃
父ハ臣ヲ合戰＃
ノ場ニモトモ＃
ナハズ、『殘リタ＃
ル一門ノモノドモヲ集メテ、朝敵ヲホロボ＃
セ。』ト申シ殘シタリ。シカルニ正行スデニ男＃
盛リニ及ベリ。モシ病ニカヽリテ早ク死ナ＃
＜Ｐ－００７＞
バ、君ノ御タメニハ不忠ノ臣トナリ、父ノタ＃
メニハ不孝ノ子トナルベシ。コノ度ノ合戰＃
ニハ、師直ラノクビヲ正行ガ取ルカ、正行ラ＃
ガクビヲカレラニ取ラスルカ、二ツノ中ノ＃
一ツト思ヘバ、今一度天顔ヲヲガミテマヰ＃
リタシ。」＃
ト、涙ナガラニ申シ上ゲタリ。天皇ハコレヲ聞＃
キ、ミスヲ高クマキ上ゲサセ、正行ヲ近ク召シ＃
タマヒテ、＃
＜Ｐ－００８＞
「親子二代相ツヾイテノ忠義カンズルニア＃
マリアリ。コノ度ノ合戰サダメテナンギナ＃
ルベケレド、進ムモ退クモ時ヲ見テスベシ。＃
フカク汝ヲタノミニ思フゾ。」＃
トオホセ出サレタリ。正行ハソレヨリ戰場ニ＃
向ヒ、花々シク戰ヒテ、一族ノ人々トトモニ戰＃
死ヲトゲタリ。コレ正成戰死ノ後十三年目ニ＃
シテ、正行ガ二十三歳ノ時ナリキ。正行ノ如キ＃
ハマコトニ忠孝二ツノ道ヲ全ウシタル武士＃
＜Ｐ－００９＞
ニシテ、國民ノ手本トイフベシ。　　＃
第三　　ゐなかの四季　　＃
（一）　　＃
道をはさんで畠一面に、　　＃
麥はほが出る、菜は花盛り。　　＃
眠る蝶々、とび立つひばり、　　＃
吹くや春風たもとも輕く、　　＃
あちらこちらに桑つむをとめ、　　＃
日まし〳〵にはるごも太る。　　＃
＜Ｐ－０１０＞
（二）　　＃
ならぶすげがさ凉しいこゑで、　　＃
歌ひながらにうゑ行くさなへ。　　＃
ながい夏の日いつしか暮れて、　　＃
うゑる手先に月かげ動く。　　＃
かへる道々あと見かへれば、　　＃
葉末々々に夜つゆが光る。　　＃
（三）　　＃
二百十日も事なくすんで、　　＃
＜Ｐ－０１１＞
村の祭のたいこがひゞく。　　＃
稻は實がいる、日よりはつゞく、　　＃
刈つて、ひろげて、日にかわかして、　　＃
米にこなして、俵につめて、　　＃
家内そろつて、ゑ顔にゑ顔。　　＃
（四）　　＃
松を火にたくゐろりのそばで、　　＃
夜はよもやま話がはずむ。　　＃
母がてぎはの大こんなます、　　＃
＜Ｐ－０１２＞
これがゐなかの年こしざかな。　　＃
たなのもちひくねずみの音も、　　＃
ふけてのきばに雪降積る。　　＃
第四　　商業問答　　＃
商賣上でげんきんといひ、かけといふのは何＃
の事ですか。＃
品物と引きかへに代金を受取るのが現金＃
で、品物を渡しておいて、後になつて代金を＃
受取るのがかけです。＃
＜Ｐ－０１３＞
かけとかけねとは同じですか。＃
それは全くちがひます。ねぎられたら引く＃
積りで、高くいふ直段がかけねです。たとへ＃
ば十五錢で賣つてよいものを二十錢とい＃
ふやうなものです。正直な商人はかけねな＃
どはいひません。＃
小賣と卸賣とはどうちがひますか。＃
小賣といふのは商人から品物を使ふ人に＃
すぐに賣渡すことです。小賣をする商人を＃
＜Ｐ－０１４＞
小賣商人といひます。卸賣といふのは品物＃
をたくさん持つてゐて、小賣店へ大口に賣＃
渡すことで、卸賣をするものを卸賣商人と＃
いひます。＃
問屋といふのは何の事ですか。＃
問屋といふのは他人からたのまれて、品物＃
を賣つたり買つたりして、口錢を取る店の＃
ことです。たとへばごふく問屋といふのは、＃
織物を賣りたいといふ人にたのまれて、そ＃
＜Ｐ－０１５＞
れをほかへ賣渡してやり、又織物を買ひた＃
いといふ人にたのまれて、それをほかから＃
買取つてやる店のことです。しかし卸賣商＃
人で、問屋をしてゐる場合がたくさんあり＃
ます。　　＃
第五　　問合の手紙　　＃
急に商用が出來て、明朝六時の＃
汽車で東京へ立ちます。用事は＃
四五日ですむはずですが、十日＃
＜Ｐ－０１６＞
ばかりはあちらに居ます。急ぎ＃
ますのでうかゞひませんが、何＃
かあちらでとゝのへて來る物＃
がございますなら、御ゑんりよ＃
なくおつしやつて下さい。宿は＃
いつもの所です。＃
五月一日　　高橋忠一　　＃
鈴木愛吉樣　　＃
同じくへんじ　　＃
＜Ｐ－０１７＞
ぶじお着のことと存じます。こ＃
のよい時節に東京へお上りは＃
おうらやましい事でございま＃
す。おほせにあまえて申し上げ＃
ますが、種物屋から西洋西瓜の＃
種を三色ばかり買つて來てい＃
たゞきたうございます。西洋西＃
瓜には色々あるさうでござい＃
ますが、なるべく大きくてうま＃
＜Ｐ－０１８＞
い實のなるやうなのをお願ひ＃
申します。又母がかね〴〵めづ＃
らしい草花をほしい〳〵と申＃
して居りますから、おてかずで＃
も、これも二三種買つて來てい＃
たゞきたうございます。花の種＃
類は何でもよろしうございま＃
す。＃
五月四日　　鈴木愛吉　　＃
＜Ｐ－０１９＞
高橋忠一樣　　＃
第六　　豆の一族　　＃
にはの藤の花が咲いて、風が吹く度にむらさ＃
きのふさが動いてゐる。畠のゑんどうがかき＃
の外からこゑをかけて、＃
「とくに申し上げようと思つてゐました。あ＃
なたと私は親類ださうでございますから、＃
どうかこれからお心安く願ひます。」＃
といふ。藤は＃
＜Ｐ－０２０＞
「私はちつとも存じ＃
ませんでした。どう＃
いふわけで、おたが＃
ひに親類の間がら＃
でございますか。」＃
と問へば、ゑんどうのいふに、＃
「あなたと私は大そう似てゐ＃
るではありませんか。第一あなたにも私に＃
も豆がなります。葉は羽形で、二枚づつ向ひ＃
＜Ｐ－０２１＞
合つてゐますし、花は同じく蝶の形をして＃
ゐます。大豆・小豆・さゝげ・そら豆・なた豆など＃
はすべて私どもの親類です。豆類にはつる＃
になるのとならぬのがあります。」＃
藤「さうでございますか、はじめて承りました。＃
私はこんな大きななりをしてゐますが、畠＃
の藤豆さんとはちがつて、私の豆はたべら＃
れません。まことにおはづかしい次第です。」＃
ゑんどう「あなたはそのお美しい花だけでたくさ＃
＜Ｐ－０２２＞
んでございます。あなたほどのおおきな花ぶ＃
さは見たことがございません。私どもの親＃
類で、小さくてかはいらしいのは、あの春の＃
野に咲くれんげ草でございませう。」　　＃
第七　　塙［ハナハ］保［ホ］己［キ］一［イチ］　　＃
目ハ見ユレドモ、字ノ讀メザル人ヲアキメク＃
ラトイフ。シカルニ目ハ見エズシテ、大學者ト＃
ナリシ人アリ、塙保己一コレナリ。＃
保己一ハ五歳ノ時メクラトナリシガ、人ニ書＃
＜Ｐ－０２３＞
物ヲ讀マセ、コレヲ聞キテ、一心ニ勉強セシカ＃
バ、後ニハ名高キ學者トナリ、多クノ書物ヲア＃
ラハセリ。保己一ノ家ハ今＃
ノ東京、ソノコロノ江戸ノ＃
番町ニアリ、多クノデシ保＃
己一ニツキテ學ビシカバ、＃
時ノ人　　＃
番町デ目アキ目クラニ　　＃
物ヲキヽ。　　＃
＜Ｐ－０２４＞
トイヒタリトイフ。＃
アル夜弟子ヲ集メテ、書物ノ講義ヲセシ時、風＃
ニハカニ吹キテ、トモシビキエタリ。保己一ハ＃
ソレトモ知ラズ、講義ヲツヾケタレバ、弟子ド＃
モハ、＃
「先生、少シオ待チ下サイマセ。今風デアカリ＃
ガ消エマシタ。」＃
トイフ。保己一ハ笑ヒテ、＃
「サテ〳〵、目アキトイフモノハ不自由ナモ＃
＜Ｐ－０２５＞
ノダ。」＃
トイヒタリトゾ。　　＃
第八　　手ノハタラキ　　＃
取ル・拾フ・握ル・持ツ・投ゲルナドハ皆手ノハタ＃
ラキデス。モシ手ガナカツタラ、ドノクラヰ不＃
自由デセウ。ハシヲ持ツコトモ出來マセン。オ＃
ビヲムスブコトモ出來マセン。カユイ所ヲカ＃
クコトモ、イタイトコロヲサスルコトモ出來＃
マセン。大工ガ家ヲタテルノモ、左官ガカベヲ＃
＜Ｐ－０２６＞
ヌルノモ、センドウガ船ヲコグノモ、農夫ガ田＃
ヲタガヤシ、畠ヲツクルノモ、皆手デスルノデ＃
ス。色々ナキカイガアツテモ、ソレヲハタラカ＃
セルノハヤハリ手デス。＃
手ハスベテノ仕事ノモトデス。イソガシイ時＃
ニ手ノ足リナイトイフノハ、ハタラク人ノ少＃
イトイフコトデス。＃
家デモ國デモ手ヲヨクハタラカセル人ガ多＃
ケレバ多イ程盛ニナリマス。フトコロ手バカ＃
＜Ｐ－０２７＞
リシテヰル人ガ多ケレバ多イ程オトロヘマ＃
ス。＃
筆一本デ美シイヱヲカイタリ、ノミ一ツデ見＃
事ナホリ物ヲコシラヘタリシテ、人ヲ感心サ＃
セルノモ、手ノハタラキデセウ。ドンナガクキ＃
ガアツテモ、手ガナカツタラ、オモシロイ音ヲ＃
出スコトハ出來マスマイ。何事ニヨラズ手ノ＃
ハタラキノヨイノヲ上手トイヒ、手ノハタラ＃
キノワルイノヲ下手トイヒマス。＃
＜Ｐ－０２８＞
サルニハ手ノハタラキヲスルモノガ四本ア＃
リマス。シカシ人ノヤウニ色々ナ物ヲコシラ＃
ヘルコトハ出來マセン。コレハチヱガ少イカ＃
ラデス。手バカリ動カシテモ、チヱガナケレバ＃
何ノ役ニモ立チマセン。　　＃
第九　　蠶　　＃
一匹の蠶の口から出る絲をのばして見ると、＃
五六町もあるといふことである。この長い絲＃
を出す蟲が百匹もなければ、木綿はゞ一尺の＃
＜Ｐ－０２９＞
絹織物を織る絹絲は出來ない。蠶をかつて絹＃
絲を取り、絹絲を織つて絹織物にするまでに＃
は、大そうな手間がかゝる。それを考へると、絹＃
織物のあたひの高いのも、けつしてむりでは＃
ない。＃
卵からかへつたばかりの蠶はあり程の大き＃
さで、長さは一分ばかりしかない。けれども一＃
月ばかりの内には、皆さんの小指程の大きさ＃
になり、色もはじめは黒いが、だん〳〵かはつ＃
＜Ｐ－０３０＞
て青白くなる。＃
かへりたてから、しきりに食物＃
をさがしてゐて、桑の葉をやる＃
と、すぐ食ひはじめる。小さい時＃
分はやはらかな葉をこ＃
まかく切つてやるが、大＃
きくなると、枝のまゝや＃
る。食つてしまふと、頭を＃
うごかして、しきりに桑＃
＜Ｐ－０３１＞
の葉をたづねる。大きな蠶がたくさんで桑の＃
葉を食ふ時には、木の葉に雨が降りかゝるや＃
うな音がする。そのころになると、二万匹の蠶＃
をかふのに、人一人附きゝりで、眠るひまもな＃
い程いそがしい。＃
蠶が桑の葉を食ふのは、およそ二十五日から＃
四十日の間で、その間に一日か二日づつ眠る＃
ことが四度ある。眠る度に皮をぬぎかへて、し＃
まひにはからだがすきとほつて見える。＃
＜Ｐ－０３２＞
この時木の枝やわらなどで作つたまぶしへ＃
うつしてやると、口から美しい絲を出して、か＃
らだを包む。それが二三日の内に出來上つて＃
繭［まゆ］になる。蠶の口の中には小さいくだが一つ＃
ある。そのくだから出すねばつたしるが外へ＃
出ると、すぐにかわいて絲になるのである。＃
繭の中の蠶はさなぎとなる。蠶が繭を作つて＃
から二十日あまりたつと、さなぎが蝶のやう＃
な形になつて、繭を破つて出て來る。これを蠶＃
＜Ｐ－０３３＞
の蛾［が］といふ。＃
蛾が出ると、絲が取れないから、まだ出ない内＃
にむして、さなぎをころしておいて、それから＃
繭をにて、絲を取るのである。蛾は繭から出る＃
と、やがて卵を産んで、間もなく死んでしまふ＃
から、出て來ると、すぐに紙の上において卵を＃
産みつけさせる。その卵を産みつけさせた紙＃
を蠶卵紙といふ。一匹でおよそ四五百程の卵＃
を産む。＃
＜Ｐ－０３４＞
蠶をかふのは春と夏と秋の三度で、春ご・夏ご・＃
秋ごといふ名がある。わが國は昔から養蠶の＃
盛な國で、生絲は外國へ賣出す品物の第一で＃
ある。　　＃
第十　　やき物とぬり物　　＃
茶わん・土びん・皿・はちなどはやき物にして、ぜ＃
ん・わん・ぼん・重箱などはぬり物なり。＃
やき物をつくるには、土又は石のこをねりか＃
ためてかわかし、かまどに入れて燒く。かくし＃
＜Ｐ－０３５＞
て出來たるものをすやきといふ。我らのつね＃
に用ふる茶わん・皿・はちの類は、このすやきに＃
うはぐすりをかけて、ふたゝび燒きたるもの＃
なり。花鳥・山水・人物などのもやうは、うはぐす＃
りをかくる前にゑがく。＃
塗物はくりたる木又は組合せたる木・竹又紙＃
などにうるしを塗りてつくる。塗物に黄・赤・黒・＃
青などさま〴〵の色あるは、皆うるしに色を＃
着けたるなり。うるしの上に金又は銀にてゑ＃
＜Ｐ－０３６＞
がきたるものをまきゑといふ。　　＃
第十一　　勸工場　　＃
町ノニギヤカナ所ニ新シイ勸工場ガ出來タ。＃
マヅ入口ヲハイルト、右ノ方ニハ皿・ハチ・茶ワ＃
ンナドノ燒物ヲ賣ル店ガアリ、左ノ方ニハゼ＃
ン・ワン・ハシナドノ塗物ヲ賣ル店ガアル。筆・墨・＃
紙ナドノ店、クシ・カンザシナドノ店ヲ見テ、右＃
ヘ折レルト、ソコニ繪草紙屋・ゲタ屋・オモチヤ＃
屋ナドガナランデヰル。ドノ店ニモ品物ガキ＃
＜Ｐ－０３７＞
レイニナラベテアル。＃
店ハ兩ガハニアツテ、マン中＃
ノ道ハセマイガ、人ハ皆前ヘ＃
前ヘト進ンデ行ツテ、後ヘハ＃
引キカヘサナイカラ、通リ道＃
ノセマイ割合ニハコンザツ＃
シナイ。＃
色々ナ店ノ前ヲ通ツテ、左ヘ＃
折レタリ、右ヘ折レタリスル＃
＜Ｐ－０３８＞
ト、知ラズ〳〵ニ出口ヘ出テ來ル。出口ニ近イ＃
所ニハ、着物・羽織ナドヲ賣ツテヰル店ガアリ、＃
出口ニハ鍋・釜・鐵ビン・火バシナドヲ賣ル金物＃
屋ト、ヲケ・タラヒ・ザルナドヲ賣ル荒物屋ガア＃
ル。日用品ナラバ、マヅ何デモアルトイツテヨ＃
ロシイ。品物ハ皆正札附デ、カケ直ガナイ。店ニ＃
ハ番人ガ居テ、買ハウト思フ物ハスグニ買ヘ＃
ル。何モ買フモノガナケレバ、ソノマヽカヘツ＃
テモヨイ。又一ドニ色々ナ物ヲ買集メタイ時＃
＜Ｐ－０３９＞
ニハ、一トコロデスムカラ便利デアル。　　＃
第十二　　山内一［かず］豐［とよ］の妻　　＃
山内一豐が織［お］田［だ］信［のぶ］長［なが］のけらいになつたばか＃
りのころ、大そうよい馬を賣りに來た者があ＃
りました。これを見た人は皆ほしいとは思ひ＃
ましたが、何分にも直が高いので、誰一人買は＃
うといふ者がありません。馬の主は馬を引い＃
てかへらうとしました。＃
一豐もほしくて〳〵〳〵たまらないから、家へ＃
＜Ｐ－０４０＞
かへつて、＃
「あゝ、金がない程殘念なことはない。武士と＃
してはあのくらゐな馬をもつて見たい。」＃
と、思はずひとり言をいひました。妻はこれを＃
聞いて、夫に向つて、＃
「その馬の直はいか程でございます。」＃
「金十兩。」＃
妻は立つて、鏡箱の中から十兩の金を出して、＃
「どうぞこれでその馬をおもとめあそばし＃
＜Ｐ－０４１＞
ませ。」＃
一豐はおどろいて、＃
「これは又どうした金か。こ＃
れまで貧しい暮しをして＃
ゐるのに、こんな大金を持＃
つてゐるなら、なぜあると＃
一言いはなかつた。」＃
「さやうでございます。このお金は私がこち＃
らへまゐる時、『夫の一大事の折に使へ。』と申＃
＜Ｐ－０４２＞
して、父の渡してくれた金でございます。人＃
の話によりますと、御主人織田樣には、近い＃
うちに京都で馬ぞろへをなさいますとの＃
こと。さだめて皆樣は御じまんの馬に乘つ＃
てお集りのことでございませう。あなた樣＃
にも、その折にはよい馬にめして、主人のお＃
目にとまるやうになされるのが大事と考＃
へまして、今日このお金を出しましたので＃
ございます。」＃
＜Ｐ－０４３＞
一豐は妻に禮をのべて、その馬をもとめまし＃
た。やがて馬ぞろへの日となつて、一豐の馬は＃
はたして信長の目にとまつて、＃
「あゝ、よい馬、名馬々々。誰の馬か。」＃
とたづねました。けらいのものが、＃
「これは、一豐の馬でございます。」＃
といひますと、＃
「日ごろ貧しい暮しをしてゐる一豐が、よく＃
もかういふよい馬を買ひもとめた。見上げ＃
＜Ｐ－０４４＞
た志のもの、りつぱな武士。」＃
と、信長は大そう感心して、これが一豐の出世＃
のもとになつたといふことであります。　　＃
第十三　　家の紋　　＃
おほよそ家の紋どころ、　　＃
いふもかしこし、菊と桐。　　＃
楠［くす］木［のき］父子の菊水は、　　＃
忠義のかをりなほ高し。　　＃
いほりもかうは孝行の　　＃
＜Ｐ－０４５＞
曾［そ］我［が］兄弟に知られたり。　　＃
二つどもゑに三つどもゑ、　　＃
三つ星・四つ目・九曜星、　　＃
梅ばち・櫻・たちばなや、　　＃
三がい松にさゝの雪、　　＃
上［あが］り下［さが］りの藤の紋、　　＃
さてはたかの羽・つるの丸、　　＃
家の氏の名多ければ、　　＃
紋の數々かぎりなし。　　＃
＜Ｐ－０４６＞
第十四　　西洋紙ト日本紙　　＃
西洋紙ガ日本紙ニ向ツテ、＃
「世ノ中ガヒラケテカラ、ドウモ君タチノ仲＃
間ヨリモ、僕ラノ仲間ノ方ガヨケイニ用ヒ＃
ラレルヤウニナツタカト思フ。マヅ毎日ノ＃
新聞ハ西洋紙デアルシ、書物モ近ゴロハ大＃
テイ西洋紙デコシラヘルヤウニナツタ。」＃
トイフト、日本紙ハ＃
「マヅコノザシキヲ見渡シテモ、コノタクサ＃
＜Ｐ－０４７＞
ンノ障子ハ皆僕ラノ仲間デハツテアルデ＃
ハナイカ。コヽニアル扇モウチハモヤハリ＃
サウダ。」＃
トイヒマス。西洋紙ハ＃
「君ラハ表ダケシカ役ニ立タナイガ、僕ラハ＃
裏表トモニ使ハレル。便利ニオイテハトテ＃
モカナフマイ。」＃
トイヒマス。日本紙ハ＃
「イヤ〳〵、君ラハ破レ易クテ、少シモ強ミト＃
＜Ｐ－０４８＞
イフモノガナイ。日本紙ハコヨリニシテ物＃
ヲシバルコトガ出來ル。モトユヒヤ水引ノ＃
ヤウナ、アンナ丈夫ナ物ハ日本紙デナケレ＃
バ出來ナイ。」＃
トジマンシマス。西洋紙ハナホマケズニ、＃
「君等ハ水ニヌレルト、スグニベタ〳〵ニナ＃
ルガ、僕等ハ少シグラヰ水ニヌレテモ、裏ヘ＃
ハ通ラナイ。」＃
日本紙ハ笑ツテ、＃
＜Ｐ－０４９＞
「僕等ノ仲間ニハカラカサニナツタリ、合羽＃
ニナツタリスルモノガアル。水ニヌレルグ＃
ラヰハ何デモナイコトダ。」＃
西洋紙ハ又＃
「葉書ヤ切手ヤ印紙ナドハ皆僕等ノ仲間ダ＃
ゾ。」＃
トイヒマスト、日本紙ハ神ダナヲ指サシテ、＃
「ソンナニイバツテモ、アノ神ダナノ御札ヤ＃
ゴヘイニハナレマイ。」＃
＜Ｐ－０５０＞
トイヒマシタ。　　＃
第十五　　郵便の話　　＃
「松村さん、郵便。」＃
とよびて、配達夫は入口に立ちたり。お花は＃
「はい。」＃
と答へて受取らんとせしが、配達夫は＃
「おかあさんをよんで下さい。」＃
といふ。母は出で來りて、やがて六錢をはらひ＃
て、一通の手紙を受取りたり。＃
＜Ｐ－０５１＞
お花はあやしみて、＃
「これにはちやんと三錢の切手がはつてあ＃
るのに、なぜまたおあしを拂ふのですか。」＃
と問へり。母は＃
「手紙は四匁までは三錢ですが、四匁より少＃
しでも重いと、その倍の六錢だけ切手をは＃
らなければなりません。この手紙は四匁よ＃
り重いのに、差出人が三錢しかはつておき＃
ません。つまり三錢だけが不足です。不足の＃
＜Ｐ－０５２＞
時には、その不足の倍だけを受取人の方で＃
拂はなければならないのです。」＃
と教へたり。お花は＃
「小包郵便でもやはり四匁までが三錢です＃
か。」＃
と問ふに、母はなほ＃
「小包郵便は二百匁まではどんなに遠い所＃
でも、八錢でよいのです。近い所ならもつと＃
目方がふえても、四錢で送れます。又新聞は＃
＜Ｐ－０５３＞
二十匁までが五厘、書物や寫眞の類は三十＃
匁まで二錢で、これもたゞの手紙などより＃
はよほど安いのです。昔はひきやくといふ＃
ものがあつて、手紙や品物を配達しました＃
が、これは今日のやうに早くは配達が出來＃
ず、賃錢も高かつたのです。今では切手をは＃
つて出しさへすれば、どんな遠い所へもと＃
どきますから、大そう便利です。」＃
といひきかせたり。　　＃
＜Ｐ－０５４＞
第十六　　東京見物　（一）　　＃
新橋停車場ヲ出デテ、上野行ノ電車ニ乘ル。銀［ギン］＃
座［ザ］通ノニギハシサマヅ目ヲオドロカス。十五＃
分ホドニテ日本橋ニイタル。右ノ方ハ魚市場＃
ニテ、賣買ノコヱカマビスシ。ソレヨリ二十分＃
アマリニテ上野公園ニ着ク。上野公園ニハ廣＃
キ動物園アリテ、種々ノメヅラシキ動物ヲ集＃
メタリ。ソノ他博物館・パノラマナドアリ。コヽ＃
ニハ櫻ノ木多シ。春ノ花盛リイカニ美シカラ＃
＜Ｐ－０５５＞
ン。＃
櫻ガ岡ヨリ見下セバ、見ユ＃
ルカギリハ皆人家ナリ。サ＃
レドモコヽニテ見ユルハ＃
東京ノ三分ノ一ニモ足ラ＃
ズトイフ。淺［アサ］草ノ觀音堂モ＃
東ノ方ニ見ユ。上野ノ山ヲ＃
下リテ、淺草行ノ電車ニ乘＃
ル。＃
＜Ｐ－０５６＞
雷門ニテ電車ヲ下リテ、觀＃
音堂ニ向ツテ行ケバ、兩ガ＃
ハニアマタノ店アリ。勸工＃
場ニ入リタルコヽチス。仁［ニ］＃
王［オウ］門ヲ入リテ、觀音堂ヲ拜＃
シ、ソレヨリ水族館ヲ見ル。＃
淺草公園ニハ種々ノ見セ＃
物アリ。＃
コヽヲ一メグリシテ隅［スミ］田［ダ］＃
＜Ｐ－０５７＞
川ノホトリニ出ヅ。川ノ向フガハハ向島ニテ、＃
櫻ノ名所ナリ。＃
廣キ東京ノ見物ハ一日ニテハツクシガタシ。　　＃
第十七　　東京見物　（二）　　＃
今日ハマヅ丸ノ内ニ行キテ宮城ヲ拜シ奉ル。＃
宮城ノ御堀ニハ、カネテ寫眞ニテ見知リタル＃
二重橋カヽレリ。宮城ノ前ノ廣場ニハ楠［クス］木［ノキ］正［マサ］＃
成［シゲ］ノ銅像アリ。＃
櫻田門ヲ出ヅレバ、日［ヒ］比［ビ］谷［ヤ］公園アリ。コノ公園＃
＜Ｐ－０５８＞
ハ新シクシテ、古木多カ＃
ラザレド、種々ノ草花ウ＃
ルハシク咲キミダレタ＃
リ。コヽニハ美シキ池ア＃
リ。廣キ運動場モアリ。＃
公園ヲ出ヅレバ、海軍省ヲハジメ多クノ官省＃
アリ。イヅレモ洋風ノレングワヅクリニテリ＃
ツパナリ。＃
電車ニテ九段坂ノ上ニイタリ、靖［ヤス］國［クニ］神社ニサ＃
＜Ｐ－０５９＞
ンケイス。社ノカタハラニ遊［イウ］就［シウ］館アリ。カヘリ＃
道ニ坂ノ上ヨリ見下セバ、コヽモマタ見渡ス＃
カギリ、人家ナラザルハナシ。＃
明日ハ芝［シバ］公園ヲ見テ、ソレヨリ四十七士ノ墓＃
ニマウデントス。　　＃
第十八　　犬　　＃
犬の種類はすこぶる多し。大なるは小馬の如＃
く、小なるは猫よりも小さし。あばら骨の數へ＃
らるゝ程やせ細りたるものあり。あるく時肉＃
＜Ｐ－０６０＞
のゆれ動く程こえ太りたるも＃
のあり。毛のいたつて短きもの＃
は指さきにてもつまめぬ程な＃
れど、長きものは羊の如く、立ち＃
てもその毛はなほ地面に達す。」＃
あるものは頭大きくまるくし＃
て、しゝの如く、あるものは顔長＃
くとがりて、狐の如し。耳のたれ＃
たるもの、立ちたるもの、尾のの＃
＜Ｐ－０６１＞
びたるもの、たれたるもの、まき＃
たるもの、足の短きもの、長きも＃
のなど、一々數へがたし。＃
すべて犬は人になれ易く、かし＃
こくして、よく主人の命を守る。＃
昔より「犬は三日かへば、三年そ＃
の恩をわすれず。」といへり。＃
犬は耳ざとき動物にして、眠れ＃
る時も人の足音を聞けば、たゞ＃
＜Ｐ－０６２＞
ちに目をさます。されば夜を守らしむるによ＃
ろし。又その鼻はよく物のにほひをかぎ分く＃
るをもつて、かりに用ひて、えものをさがさし＃
むるに適す。＃
外國にては、犬をして牛かひ・羊かひの手つだ＃
ひをなさしむ。二三匹の犬、よく二三百頭の牛、＃
二三千頭の羊を追ひまはして、主人の行く方＃
へ行かしむといふ。又寒き國にては、犬をして＃
そりを引かしむ。八九頭の犬いきほひよく數＃
＜Ｐ－０６３＞
人を乘せたるそりを引きて、雪の道を走り行＃
くさま、まことにいさまし。＃
ある山國にては、犬のくびに藥品・食物などを＃
入れたるかごをかけおきて、つかれたる旅人＃
をすくはしむることあり。又近ごろは戰場に＃
も犬を用ひて、たふれたる兵士をさがさしむ＃
といふ。　　＃
第十九　　水とからだ　　＃
われ〳〵は一日も水を飲まないことはない。＃
＜Ｐ－０６４＞
水を飲まないことはあつても、水のまじつた＃
物や、水をまぜてこしらへた物を口に入れな＃
いことはない。＃
ゆ・茶・汁・すひ物はいふまでもない。酒やすや醤＃
油も、めしやもちやくわしも、水がなければ出＃
來ない。くだ物も水をふくんで居り、やさいに＃
も水けがある。＃
われ〳〵は毎朝顔を洗ひ、口をすゝぐ。又時々＃
湯にはいる。時々湯にはいらないと、からだが＃
＜Ｐ－０６５＞
きたなくなる。きたなくなると、病氣にかゝり＃
易い。又冷水浴や海水浴はひふを強くし、した＃
がつてからだを強くし、心をさわやかにする。」＃
このやうに水はわれ〳〵の生活にもつとも＃
大切なもので、水がなければ、生きてゐること＃
は出來ない。けれども水をたくさん飲みすぎ＃
たり、冷い水の中に長くはいつてゐたりする＃
のはどくである。又きたない水やくさつた水＃
を飲むと、おそろしい病氣にかゝることがあ＃
＜Ｐ－０６６＞
る。よく氣を附けなければならない。　　＃
第二十　　桃をおくる手紙　　＃
桃がじゆくしましたから、少し＃
ばかりですが、差上げます。一昨＃
年つぎ木をしたわか木に、もう＃
こんなに大きなのがなつたの＃
でございます。いつしよについ＃
だ梨の木の方は、今年はまだ實＃
がなりません。もとからある分＃
＜Ｐ－０６７＞
にくらべると、實も大きく、味も＃
よほどよろしうございます。父＃
はこんなにちがふものなら、や＃
しき中の桃の木に皆つぎ木を＃
すると申してゐます。一そう手＃
入をして、來年はたくさんなら＃
せて、たくさん差上げたいと思＃
つて居ります。＃
九月一日　　佐藤眞一　　＃
＜Ｐ－０６８＞
村田新太郎樣　　＃
同じくへんじ　　＃
見事な桃をたくさんおおくり＃
下さいまして、有りがたう存じ＃
ます。さつそくいたゞきました＃
が、味は又かくべつでございま＃
す。母はこんな美しい大きな桃＃
は、はじめて見たと申して、おと＃
なりへもおすそ分けをいたし＃
＜Ｐ－０６９＞
ました。いづれも大よろこびで、＃
こんな見事な桃がなるのなら、＃
植ゑて見たいと申して居りま＃
す。その内參上してお禮を申し＃
上げます。＃
九月二日　　村田新太郎　　＃
佐藤眞一樣　　＃
第二十一　　海ノ生物　（一）　　＃
海ノ中ニハ魚ヤ貝ヤソノ外色々ノ動物ガ居＃
＜Ｐ－０７０＞
リ、サマ〴〵ノ植物モアル。」＃
魚類ニハイワシ・アヂ・サバ・＃
マグロ・カツヲナドノヤウ＃
ニ、水ノ表面ニ近イ所ヲオ＃
ヨグモノガアリ、タヒ・ボラ・＃
ハモ・コチ・キスナドノヤウ＃
ニ、岩ノカゲヤ海草ノ間ヲ＃
オヨグモノガアリ、エヒ・カ＃
レヒ・ヒラメナドノヤウニ、＃
＜Ｐ－０７１＞
ソコノ砂地ニ沈ンデヰルモノモアル。＃
魚類ノ外ニ、エビ・カニ・タコ・イカナドガスンデ＃
ヰル。エビノピン〳〵ハネタリ、カニノ横ニハ＃
ツテアルク樣子ハ、池ヤ川ニスムモノトチガ＃
ハナイガ、タコヤイカノアシヲソロヘテオヨ＃
グ樣ハマコトニ面白イ。＃
アサリ・ハマグリナドハ砂ヤ泥ノ上ニ居リ、サ＃
ザエ・カキナドハ岩ニツイテヰル。カキハスグ＃
ニフエルモノデ、物ニツケバ、中々ハナレナイ。＃
＜Ｐ－０７２＞
軍カンヤ汽船ハ時々カキヲカ＃
キオトサナケレバナラナイ程＃
デアル。又眞珠貝トイフモノガ＃
アル。指ワヤエリドメナドニハ＃
メル美シイ眞珠ハ、コノ貝ノカ＃
ラノ中ニアルノデアル。＃
蟲類モタクサン居ル。中デオモ＃
シロイノハサンゴデ、タクサン集ツテ、木ノ枝＃
ノ樣ナ形ヲシテヰル。カンザシノ玉ヤヲジメ＃
＜Ｐ－０７３＞
ニスルサンゴハコノ蟲ノ骨デ＃
アル。又物ヲ洗ツタリフイタリ＃
スル時ニ使フ海綿モ、ヤハリ海＃
ノソコノ岩ナドニ取リツイテ＃
ヰル蟲ノ骨デアル。＃
海ニハ又ケモノガスンデヰル。＃
陸ノケモノニニタモノニハ、ラ＃
ツコ・ヲツトセイナドガアリ、魚＃
ニ似タモノニハ、鯨ガアル。鯨ハ＃
＜Ｐ－０７４＞
カラダガハナハダ大キイ。陸ニスムモノデハ、＃
象ガマヅ一番大キイガ、鯨ニクラベルト、大人＃
ト赤子ヨリモ、モツトチガフ。　　＃
第二十二　　海ノ生物　（二）　　＃
海ノ深イ所ハ何千ヒロモアル。コンナ所ニハ＃
動物モゴクマレデ、植物ハマツタクナイガ、岸＃
ニ近イ淺イ所カラ五十ヒログラヰノ所マデ＃
ニハ、海草ガハエテヰル。＃
海草ニモ色々アル。マヅタベラレルモノニハ、＃
＜Ｐ－０７５＞
コンブ・ワカメ・アラメ・ヒジキ・ノリ・モヅクナド＃
ガアリ、ノリニスルモノニハ、フノリ・ツノマタ、＃
トコロテンニスルモノニハ、テングサガアル。＃
コノ他マダタクサンアルガ、＃
イヅレモヨイ肥料ニナル。＃
海草ノ形ハ樣々デアル。オビ＃
ノ樣ニ廣クテ長イノモアレ＃
バ、ゼンタイガ細カニ分レテ、＃
枝ノ樣ニナツテヰルノモア＃
＜Ｐ－０７６＞
ル。又ニハトリノ尾ニ似タノモアルシ、ウチハ＃
ナリノモアル。＃
色モ一樣デハナイ。ミルヤモヅクノ樣ニ緑色＃
ノモノモアレバ、コンブヤアラメノヤウニ茶＃
色ノモノモアリ、テングサノヤウニ紅色ノモ＃
ノモアル。一ガイニイフコトハ出來ナイガ、マ＃
ヅ緑色ノモノハ淺イ所ニ、紅色ノモノハ深イ＃
所ニ、茶色ノモノハソノ中間ニハエテヰルノ＃
デアル。＃
＜Ｐ－０７７＞
海草ハ大テイ花ガ咲カナイ。根モ陸上ノ植物＃
ノヤウニ養分ヲスヒ取ルタメノモノデハナ＃
ク、タヾハナレナイヤウニ、岩ナリ石ナリヘク＃
ツツクダケノ用ヲナスモノデアル。海草ハス＃
ベテ養分ヲ葉ヤ莖デスヒ取ル。＃
廣イ海ニハ、コノ通リニ多クノ動物ヤ植物ガ＃
アル。波ニユラレテ、色ノ美シイ海草ガヒラヒ＃
ラト動ク間ヲ、樣々ノ魚ヤケモノガ浮イタリ＃
沈ンダリオヨイダリシテヰルノハ、陸上デハ＃
＜Ｐ－０７８＞
見ルコトノ出來ナイ美シイ景色デアラウ。　　＃
第二十三　　何事も精神　　＃
のきよりおつる雨だれの　　＃
たえず休まず打つ時は、　　＃
石にも穴をうがつなり。　　＃
我等は人と生れきて、　　＃
一たん心定めては、　　＃
事に動かず、さそはれず、　　＃
はげみ進むに何事の　　＃
＜Ｐ－０７９＞
など成らざらん、鐵石の　　＃
かたきもつひにとほすべし。」　　＃
小さきありもいそしめば、　　＃
搭をもきづき、つばめさへ　　＃
千里の波を渡るなり。　　＃
ましてや人と生れ來て、　　＃
一たんめあて、定めては、　　＃
わき目もふらず、怠らず、　　＃
ふるひ進むに何事か　　＃
＜Ｐ－０８０＞
など成らざらん、ばんじやくの　　＃
重きもつひにうつすべし。」　　＃
第二十四　　航海の話　（一）　　＃
長き航海を終へて歸り來れる明治丸の船長＃
は、一日その町の學校へまねかれて、航海の話＃
をなしたり。＃
「私も子供の時には毎日この學校へ通つて、＃
皆さんと同じ樣に、あの運動場で體操をし＃
たり、この講堂でお話を聞いたりしてゐた＃
＜Ｐ－０８１＞
のです。今日このなつかしい學校へ來て、皆＃
さんにお話をするのは、何よりもうれしう＃
ございます。私は年中航海をしてゐるもの＃
ですから、少しそのお話をいたしませう。＃
皆さんは海を御存じでせう。汽船も軍艦も＃
御存じでせう。私の乘つてゐる明治丸とい＃
ふのは、長さが六十間程もある大きな汽船＃
で、乘組の人員は二百人もあります。＃
まづいかりをぬいて港を出て行くと、立ち＃
＜Ｐ－０８２＞
ならんでゐる人家も、段々に小さく見える＃
樣になります。海岸の松原も次第に遠くな＃
つて、しまひにはもう何も見えなくなりま＃
す。どちらを向いても青い水ばかりです。日＃
の出や日の入には日光が波にうつつて、水＃
の色が金色になります。月夜には波が銀の＃
樣に光つて、その美しさは何とも言ひ樣が＃
ありません。ある時には鯨が頭から高く水＃
けを吹いてゐることがあります。何萬とも＃
＜Ｐ－０８３＞
知れないいるかがおよい＃
でゐるのを見ることもあ＃
ります。又ある時にはとび＃
魚が甲板の上へとび上る＃
こともあります。＃
外國の港に着くと、見なれな＃
い形の家がならんで立つて＃
ゐます。そこに居る人は私た＃
ちとはまるでちがつた風を＃
＜Ｐ－０８４＞
して、かはつたことばで話してゐます。見る＃
もの聞くもの總べてめづらしいものばか＃
りです。」　　＃
第二十五　　航海の話　（二）　　＃
船長はこつぷの水を一口飲みて、又その話を＃
つゞけたり。＃
「航海といふものはかういふ面白いもので＃
すが、又時にはおそろしい目にあふことも＃
あります。急に暴風雨が來ると、山の樣な波＃
＜Ｐ－０８５＞
が立つて、船は今にも沈むかと思ふ樣にな＃
ります。しかし船はなか〳〵沈むものでは＃
ありません。又きりがかゝつたり、大雪が降＃
つたりして、一寸先も見えなくなる事もあ＃
ります。きりや雪で、方角の分らなくなつた＃
時には、惡くすると、淺瀬へ乘上げたり、外の＃
船につきあたつたりする樣なまちがひが＃
出來ます。そんな時には海の深さをはかつ＃
たり、きてきやかねを鳴らしたりします。船＃
＜Ｐ－０８６＞
にはらしんぎといふものが＃
あつて、それで方角をとつて＃
進んで行くのです。又夜は＃
いくら暗くても、星が出て＃
ゐれば、それに便つて、居る＃
場所や方角がちやんと分＃
ります。海岸には燈臺があ＃
りますから、それを見ると、あ＃
れはどこだといふことが分＃
＜Ｐ－０８７＞
ります。この星を見分けることや、燈臺のあ＃
かりを知ることは、船に乘る者には大切な＃
事です。」＃
船長はかくいひ終へて、一段と聲をはり上げ＃
て、＃
「さておしまひに一ついつておきたい事が＃
あります。日本は海國でありながら、海を恐＃
れる人の多いのは殘念な事です。ちよつと＃
渡船に乘つてさへ、こはがる者があるでは＃
＜Ｐ－０８８＞
ありませんか。海の波を見たばかりで、恐ろ＃
しがる人があるではありませんか。たとへ＃
ば自分のうちを恐ろしがる樣なもので、こ＃
んなことではどうして海國の國民といは＃
れませう。皆さんの中にも、大きくなつてか＃
ら外國へ商賣その他の用事で出かける人＃
もありませう。又漁業その他海の仕事に出＃
かける人もありませう。それですから小さ＃
い時から海になれておくやうにしたいも＃
＜Ｐ－０８９＞
のです。」　　＃
第二十六　　廣瀬中佐　　＃
大砲ノヒヾキハ、天モオチ、海モサクルカト思＃
フバカリナリ。＃
廣瀬中佐ノ乘レル福井丸ハ、今旅［リヨ］順［ジユン］ノ港口ニ＃
進ミタリ。爆發ノ聲タチマチ船ゾコニヒヾク。＃
中佐ハシヅカニ、＃
「杉野ハ今點火ヲ終ヘタルゾ。總員ボートヘ。」＃
ボートハヤガテ福井丸ノカタハラニ卸サレ＃
＜Ｐ－０９０＞
テ、一同乘リウツレリ。見渡セバ杉野ナシ。中佐＃
ハ心配ゲニ、＃
「ヨシ、タヅネ來ン。」＃
ト、タヾ一人クマナク船内ヲタヅネタレドモ、＃
杉野ノスガタナシ。＃
「殘念ナリ、今一度。」＃
ト、中佐ハマタモ船内ヲカケメグレリ。＃
「杉野々々。」＃
中佐ノスルドキ聲ハ敵ノウチ出ス砲聲ノ中＃
＜Ｐ－０９１＞
ニ聞ユ。サレド杉野ハ見アタラズ。＃
「今一度。」ト、中佐ハ三タビタヅネマハレリ。＃
「杉野々々。」＃
船ハ次第ニ沈ミ行キテ、水ハスデニ甲板ヲヒ＃
タセリ。＃
「今ハゼヒナシ。」＃
ト、中佐ハボートニ乘リウツレリ。＃
四隻ノ船ハ皆爆沈シテ、乘員ハ思ヒ〳〵ニコ＃
ギサラントシ、敵ノ砲臺ヨリハ砲丸ヲアビセ＃
＜Ｐ－０９２＞
カクルコトイヨ〳〵盛ナリ。中ニモ福井丸ノ＃
ボートニハ敵ノ砲丸雨ノ如クニ降リソヽゲ＃
リ。ボートハ水ニオツル砲丸ノシブキニ包マ＃
レタリ。中佐ハボートニ坐シテ、ナホモ杉野ヲ＃
ウシナヒタルヲナゲキヰタリ。一發ノ砲丸ハ＃
タチマチ中佐ノ身ヲ拂ヘリ。中佐ハ一片ノ肉＃
ヲボートニ殘シテ、海ノ中ニハウムラレタリ。　　＃
終　　＃
