＜出典＞３２１　　　国定読本　３期２－１
＜Ｐ－０００＞
モクロク　＃
一　イマ　ハ………一　　十四　うらしま太郎………三十九　＃
二　ハヤオキ………二　　十五　四方………四十六　＃
三　ヒヨコ………五　　十六　私　ノ　村………四十八　＃
四　うち　の　子ねこ………十　　十七　一口ばなし………五十一　＃
五　お花………十二　　十八　をの　の　たうふう………五十四　＃
六　ゆび　の　な………十四　　十九　セミ………五十七　＃
七　かんがへもの………十七　　二十　ささ舟………六十　＃
八　わらびとり………二十　　二十一　水デツパウ………六十五　＃
九　竹の子………二十五　　二十二　虫ぼし………七十　＃
十　きやうだい………二十八　　二十三　カウモリ………七十三　＃
十一　五一ぢいさん………三十一　　二十四　十五や………七十七　＃
十二　右　ト　左………三十五　　二十五　ふじの山………八十　＃
十三　まはりつこ………三十七　　二十六　はごろも………八十二　＃
＜Ｐ－００１＞
一　イマ　ハ　＃
イマ　ハ　サクラ　ヤ　ナ＃
タネ　ノ　花ザカリ　デス。＃
テフテフ　ハ　花　カラ　花　＃
ヘ　ヒラヒラト　マヒ、ハチ　＃
ハ　セツセト　ミツ　ヲ　ア＃
ツメテ　ヰマス。＃
ミチバタ　ニハ　スミレ　ヤ　＃
＜Ｐ－００２＞
タンポポ　ガ　サイテ　ヰル　シ、ムギ畠　ノ　＃
上　ニハ　アサ　ハヤク　カラ　ヒバリ　ガ　サ＃
ヘヅツテ　ヰマス。＃
カゼ　モ　アタタカ　デ、オモテ　デ　アソブ　＃
ニハ　一バン　ヨイ　トキ　デス。＃
二　ハヤオキ　＃
コウバ　ノ　キテキ　ガ　ナツテ　ヰマス。マ＃
ダ　ウスグラウ　ゴザイマス　ガ、ケサ　コソ　＃
＜Ｐ－００３＞
ニイサン　ヨリ　サキ　ニ　オキテ　ミヨウ　ト　＃
オモツテ、ソツト　ネドコ　ヲ　出マシタ。＃
ト　ヲ　アケル　ト、ムカフ　ノ　ソラ　ガ　ウ＃
スアカク　ナツテ　ヰマス。カラス　ガ　二三＃
バ　ナキ　ナガラ　トンデ　イキマス。＃
「ア、日　ガ　出ハジメタ。キレイ　ダ。ニイ＃
サン、ニイサン。」＃
「オウイ」ト　ヰドバタ　デ、ニイサン　ノ　コヱ　＃
＜Ｐ－００４＞
ガ　シマス。＃
又　一シキリ　キテキ　ガ　ナツ＃
テ、エントツ　カラ　ムクムクト　＃
マツクロナ　ケムリ　ガ　出マス。＃
コウバ　デハ　モウ　シゴト　ガ　＃
ハジマツテ　ヰル　ラシイ。＃
ハヤク　カホ　ヲ　アラツテ、ニ＃
イサン　ト　一シヨニ　オサラヒ　＃
＜Ｐ－００５＞
ヲ　シマセウ。＃
三　ヒヨコ　＃
二三日　マヘ　カラ　メンドリ　ガ　ス　ニ　ツ＃
キマシタ。ケサ　オカアサン　ガ　タマゴ　ヲ　＃
入レテ　オヤリ　ニ　ナリマシタ。メンドリ　ハ　＃
ヘンナ　コヱ　ヲ　タテテ　ヰマシタ　ガ、見＃
テ　ヰル　ウチ　ニ、タマゴ　ヲ　ハラ　ノ　下　＃
ニ　ダイテ　シマヒマシタ。＃
＜Ｐ－００６＞
ヱ　ヤ　水　ヲ　ヤツテ　モ、見ムキ　モ　シ＃
ナイデ、タマゴ　ヲ　アタタメテ　ヰマス。＃
オカアサン　ニ、＃
「イツ　ヒヨコ　ガ　出マス　カ。」＃
ト　キキマス　ト、＃
「二十日　バカリ　タツ　ト　出マス。」＃
ト　オツシヤイマシタ。＃
アル　アサ、オカアサン　ガ　＃
＜Ｐ－００７＞
「ヒヨコ　ガ　カヘツタ。」＃
ト　オツシヤツタ　ノデ、見　＃
ニ　イキマス　ト、オヤドリ　＃
ノ　ムネ　ノ　トコロ　カラ、＃
ヒヨコ　ガ　小サナ　アタマ　＃
ヲ　出シテ、ピヨピヨ　ト　ナ＃
イテ　ヰマシタ。ハネ　ノ　下　＃
ニモ　二三バ　ヰル　ヤウ　デシタ。＃
＜Ｐ－００８＞
ヒヨコ　ガ　ナク　ト、オヤドリ　ハ　オハナ＃
シ　デモ　スル　ヤウ　ニ、ココココ　ト　イ＃
ツテ　ヰマシタ。＃
二三日　タツ　ト、オヤドリ　ハ　ヒヨコ　ヲ　＃
ニハ　ヘ　ツレ出シマシタ。ヒヨコ　ハ　ミン＃
ナ　デ　十パ　デス。＃
ヒヨコ　ハ　ホソイ　アシ　デ、チヨコチヨコ　＃
アルキマス。タベモノ　デモ　サガス　ノ　デ＃
＜Ｐ－００９＞
セウ、キイロイ　クチバシ　デ、トキドキ　ヂ＃
メン　ヲ　ツツキマス。＃
ナノハ　ヤ　コ米　ヲ　ヤル　ト、ヒヨコ　＃
ハ　ミンナ　ヨツテ　キテ　タベマス。オヤド＃
リ　ハ　ナンニ　モ　タベナイデ、コ　コ　コ　＃
ト　イヒ　ナガラ、ソノ　ヘン　ヲ　見マハリ＃
マス。＃
ネコ　デモ　ソバ　ヘ　クル　ト、オヤドリ　ハ　＃
＜Ｐ－０１０＞
オコツテ　ケ　ヲ　サカダテマス。＃
私　ハ　ガクカウ　カラ　カヘツテ、ヒヨコ　ヲ　＃
見ル　ノ　ガ　タノシミ　デス。＃
四　うち　の　子ねこ　＃
うち　の　子ねこ　は　＃
かはいい　子ねこ、＃
くび　の　こすず　を　＃
ちりちり　ならし、＃
＜Ｐ－０１１＞
すそ　に　からまり、＃
たもと　に　すがる。＃
うち　の　子ねこ　は　＃
かはいい　子ねこ、＃
くび　の　こすず　を　＃
ちりちり　ならし、＃
まり　と　ざれて　は　＃
えん　から　おちる。＃
＜Ｐ－０１２＞
五　お花　＃
お花　は　がくかう　から　かへる　と、おつ＃
かひ　に　いつたり、には　を　はいたり　し＃
て、おかあさん　の　おてつだひ　を　します。＃
あかちやん　が　なき出す　と、すぐ　そば　へ　＃
よつて、＃
「ねんねん　ころりよ、＃
おころりよ。＃
＜Ｐ－０１３＞
ばうや　は　よい　子　だ、＃
ねんねしな。」＃
と　かはいらしい　こゑ　で、子もりうた　を　＃
うたひます。それ　でも　まだ　あかちやん　が　＃
なく　とき　には、＃
「おかあさん、あかちやん　＃
に　おちち　を　のま＃
せて　ちやうだい。」＃
＜Ｐ－０１４＞
かう　いつて、だつこ　を　して　おかあさん　＃
の　ところ　へ　つれて　いきます。＃
お花　は　ことし　九つ　です。＃
六　ゆび　の　な　＃
ゆふはん　が　すんだ　あと　で、おぢいさん　＃
が　二郎　に　たづねました。＃
「おまへ　は　て　の　ゆび　の　な　を　し＃
つて　ゐます　か。」＃
＜Ｐ－０１５＞
「しつて　ゐます。一ばん　ふとい　の　が　お＃
やゆび　で、一ばん　ほそい　の　が　こゆ＃
び　です。」＃
「それ　から。」＃
「それ　から、一ばん　ながい　の　が　中ゆ＃
び　で、中ゆび　と　おやゆび　の　あひだ　＃
に　ある　の　が　人さしゆび、中ゆび　と　＃
こゆび　の　あひだ　に　ある　の　が　く＃
＜Ｐ－０１６＞
すりゆび　です。」＃
「さう　です。それ　では　あし　の　ゆび　の　＃
な　を　しつて　ゐます　か。」＃
「おなじ　こと　でせう。」＃
「まあ、いつて　ごらん。」＃
「おやゆび、人さしゆび。」＃
おぢいさん　は　わらひ　ながら、＃
「二郎、おまへ　は　その　ゆび　で　人　を　＃
＜Ｐ－０１７＞
さします　か。あし　の　ゆび　は、おやゆ＃
び　と　こゆび　の　ほか　には　な　が　な＃
い　の　です。」＃
と　をしへて　やりました。＃
七　かんがへもの　＃
「この　はこ　の　中　に、おもしろい　人　が　＃
ゐます。あてて　ごらん　なさい。」＃
「その　はこ　を　かして　ください。」＃
＜Ｐ－０１８＞
「はい。」＃
「ふつて　も　よう　ございます　か。」＃
「はい。」＃
「たいそう　かるう　ございます　ね。この　人　は　＃
どんな　いろ　の　きもの　を　きて　ゐます　か。」＃
「あかい　きもの　を　きて　ゐます。」＃
「それ　では　をんな　でせう。」＃
「いいえ。」＃
＜Ｐ－０１９＞
「それ　では　をとこの子　です　か。」＃
「いいえ。としより　です。」＃
「どうも　こまりました。どんな　かほ　を　し＃
て　ゐます　か。」＃
「かほぢゆう　ひげだらけ　です。」＃
「それ　では　て　も　あし　も　ない　でせう。」＃
「はい。」＃
「わかりました。だるま　さん　です。」＃
＜Ｐ－０２０＞
八　わらびとり　＃
小二郎　は　正一　と　うら　の　山　へ　わ＃
らび　を　とり　に　いきました。よけいに　＃
とつた　はう　が　かち　だ　と　いつて、二＃
人　は　まつ　や　つつじ　の　あひだ　を　あ＃
ちら　こちら　へ　くぐつて　とりました。太＃
くて　やはらかな　わらび　が　たくさん　は＃
えて　ゐました。＃
＜Ｐ－０２１＞
二人　が　むちゆうに　なつ＃
て　とつて　ゐます　と、下　＃
の　はう　から　かさかさ　い＃
はせて　かけ上つて　くる　も＃
の　が　あります。＃
二人　が　びつくりして　見＃
て　ゐます　と、それ　＃
は　小二郎　の　うち　＃
＜Ｐ－０２２＞
の　いぬ　でした。犬　は　はな　を　くんくん　＃
いはせ、を　を　やたらに　ふつて、小二郎　＃
の　そば　へ　よつて　きました。それ　から　＃
その　へん　を　むやみに　かけまはりまし＃
た。＃
又　とりはじめて、二人　は　たくさん　とつ＃
て　から　くらべて　みました。どちら　も　た＃
いてい　おなじ　くらゐ　で、かちまけ　は　あ＃
＜Ｐ－０２３＞
りません　でした。＃
その　とき　正一　の　おぢいさん　が、たき＃
ぎ　を　うま　に　つけて　そこ　へ　きまし＃
た。二人　は　よろこんで、おぢいさん　に　つ＃
いて　かへりました。＃
小二郎　が　うち　へ　かへつて　みます　と、＃
犬　は　もう　とつくに　かへつて　ゐて、か＃
けて　きて　とびつきました。＃
＜Ｐ－０２５＞
九　竹の子　＃
この　二三日　の　雨　で、竹の子　が　こん＃
なに　出ました。むぐらもち　でも　とほつた　＃
やう　に、土　が　ところどころ　もち上つて　＃
ゐます。そこ　から　竹の子　が　出る　の　＃
＜Ｐ－０２６＞
です。＃
この　あひだ　かきね　の　そば　へ　出た　の　＃
は、もう　私　の　せい　より　高く　なりま＃
した。かう　のびて　は　とても　たべられま＃
せん。＃
石がき　の　下　へ　出た　の　は、かは　が　＃
おちはじめて、竹　に　なりかかつて　ゐます。＃
あれ　は　いまに　さを竹　に　でも　なる　の　＃
＜Ｐ－０２７＞
でせう。＃
又　あそこ　ここ　に　わら　を　むすびつけ＃
て　ある　の　は、ほり＃
とらない　しるし　で、の＃
ばして　おや竹　に　す＃
る　の　だ　さう　＃
です。むかふ　の　＃
方　に、二本　な＃
＜Ｐ－０２８＞
らんで　ゐる　ほそい　竹の子　は、いまに　竹　＃
に　なつたら、おぢいさん　に、あれ　で　竹＃
うま　を　こしらへて　いただく　つもり　＃
です。＃
十　きやうだい　＃
ゆふべ　の　雨　で　くさ　や　木　の　＃
みどり　いろ　ます　なつ　の　あさ、＃
つつみ　かかへて　がくかう　へ　＃
＜Ｐ－０２９＞
つれだち　いそぐ　あね　おとと。＃
足　すべらせて　こけかかる　＃
おとと　を　かばふ　あね　の　うで。＃
かばふ　はずみ　に　あね　は　また　＃
足だ　の　はなを　ふつつりと。＃
「ねえさん　これ　を　あげます。」と、＃
＜Ｐ－０３０＞
こし　に　はさんだ　手ぬぐひ　の　＃
はし　ひきさいて　さし出せば、＃
「正さん　これ　は　ありがたう。」＃
あね　は　手ばやく　を　を　たてて、＃
小川　の　水　で　手　を　あらひ、＃
「さ、いきませう。」と　きやうだい　は　＃
がくかう　さして　いそぎゆく。＃
＜Ｐ－０３１＞
十一　五一ぢいさん　＃
村はづれ　に　水車や　が　あります。村　の　＃
人　は　五一車　と　よんで　ゐます。五一ぢ＃
いさん　が　その　水車や　の　ばん　を　して　＃
ゐる　から　です。＃
五一ぢいさん　は　おもしろい　ぢいさん　で＃
す。「からす　の　なかない　日　は　あつて　＃
も、五一ぢいさん　が　うたはない　日　は　な＃
＜Ｐ－０３２＞
い。」と　村　の　人　から　いはれる　ほど、い＃
つも　きげん　よく　うた　を　うたふ　ぢい＃
さん　です。＃
長い　はんてん　を　きて、みじかい　ももひ＃
き　を　はいて、こぬかだらけ　に　なつて　は＃
たらく　ぢいさん　です。＃
ざぶざぶ　おちる　水　の　おと、とんとん　＃
ひびく　きね　の　おと、その　にぎやかな　＃
＜Ｐ－０３３＞
中　から、＃
「しごと　なされ　よ、＃
きりきりしやんと、＃
かけた　たすき　の　＃
きれる　ほど。」＃
五一ぢいさ＃
ん　の　う＃
たふ　こゑ　＃
＜Ｐ－０３４＞
が　きこえます。＃
いつか　うち　の　おとうさん　が　道　で、＃
「いつも　おたつしやな　こと　で。」＃
と　おつしやつたら、五一ぢいさん　は　＃
「もう　すつかり　よわりまして。」＃
と　いつて、大きな　手　で　あたま　を　な＃
でました。＃
五一ぢいさん　は　ことし　六十九　だ　さう　＃
＜Ｐ－０３５＞
です。＃
十二　右　ト　左　＃
ゴハン　ヲ　タベル　トキ　ニ、ハシ　ヲ　モ＃
ツ　方　ノ　手　ハ　右　デ、チヤワン　ヲ　モ＃
ツ　方　ノ　手　ハ　左　デス。＃
足　ニモ　右左　ガ　アリ、目　ニモ　耳　ニ＃
モ　右左　ガ　アリマス。キモノ　ノ　ソデ　ニ＃
モ、タビ　ニモ、手ブクロ　ニモ、クツ　ニモ　＃
＜Ｐ－０３６＞
右左　ガ　アリマス。＃
タイサウ　ノ　トキ　アルキ出ス　ノ　ハ　左　＃
ノ　足　デ、オケイコ　＃
ノ　トキ　アゲル　ノ　＃
ハ　右　ノ　手　デス。＃
又　オモイ　モノ　ヲ　＃
右　ノ　手　ニ　持ツ　トキ　ニハ、カラダ　ヲ　＃
左　ノ　方　ヘ　マゲ、左　ノ　手　ニ　オモ＃
＜Ｐ－０３７＞
イ　モノ　ヲ　持ツ　トキ　ニハ、カラダ　ヲ　＃
右　ノ　方　ヘ　マゲマス。＃
ソレ　カラ、道　ヲ　アルク　トキ　ニハ、左＃
ガハ　ヲ　通ル　ノ　ガ　ヨイ　コト　ニ　ナツテ　＃
ヰマス。＃
十三　まはりつこ　＃
小二郎「又　わかれ道　の　ところ　へ　きました。＃
まはりつこ　を　して　みませう　か。」＃
＜Ｐ－０３８＞
正一「して　みませう。ぼ＃
く　は　右　の　ちか道　＃
の　方　を　いつて　み＃
ます。」＃
小二郎「それ　では　ぼく　は　＃
左　の　本道　を　通り　＃
ます。」＃
二人　は　かけ足　で　ま＃
＜Ｐ－０３９＞
はりつこ　を　しました。ちか道　の　方　は、＃
道　が　こはれて　ゐたり、石　が　出て　ゐ＃
たり　しました。それで　とほい　本道　を　ま＃
はつた　小二郎　の　方　が、正一　より　も　か＃
へつて　さき　に　つきました。＃
十四　うらしま太郎　＃
むかし　うらしま太郎　と　いふ　人　が　あ＃
りました。＃
＜Ｐ－０４０＞
ある　日　はま　を　通る　＃
と、子ども　が　大ぜい　で　＃
かめ　を　つかまへて、お＃
もちや　に　して　ゐます。＃
うらしま　は　かはい　さう　＃
に　おもつて、子ども　か＃
ら　その　かめ　を　かつて、＃
海　へ　はなして　やりま＃
＜Ｐ－０４１＞
した。＃
それ　から　二三日　たつて、うらしま　が　舟　＃
に　のつて　つり　を　して　ゐます　と、大＃
きな　かめ　が　出て　きて、＃
「うらしま　さん、この　あひだ　は　ありが＃
たう　ございました。その　おれい　に　り＃
ゆうぐう　へ　つれて　いつて　上げませう。＃
私　の　せ中　へ　おのり　なさい。」＃
＜Ｐ－０４２＞
と　いひました。うらしま　が　よ＃
ろこんで　かめ　に　のる　と、か＃
め　は　だんだん　海　の　中　へ　＃
はいつて　いつて、まもなく　りゆ＃
うぐう　へ　つきました。＃
りゆうぐう　の　おとひめ　は　う＃
らしま　の　きた　の　を　よろ＃
こんで、毎日　いろいろな　ごち＃
＜Ｐ－０４３＞
そう　を　したり、さまざま＃
な　あそび　を　して　見せ＃
たり　しました。＃
うらしま　は　おも＃
しろがつて、うち　＃
へ　かへる　の　も　＃
わすれて　ゐまし＃
た　が、その　う＃
＜Ｐ－０４４＞
ち　に　かへりたく　なつて、おとひめ　に　＃
「いろいろ　おせわ　に　なりました。あまり　＃
長く　なります　から、もう　おいとま　に　＃
いたしませう。」＃
と　いひました。おとひめ　は　＃
「それ　は　まことに　おなごりをしい　こと　＃
で　ございます。それ　では　この　玉手箱　＃
を　上げます。どんな　こと　が　あつて　も、＃
＜Ｐ－０４５＞
ふた　を　おあけ　なさいます　な。」＃
と　いつて、きれいな　箱　を　わたしました。＃
うらしま　は　玉手箱　を　もらつて、又　か＃
め　の　せ中　に　のつて、海　の　上　へ　出＃
て　きました。＃
うち　へ　かへつて　みる　と、おどろきました、＃
父　も　母　も　しんで　しまつて、うち　も　な＃
くなつて　ゐて、村　の　やうす　も　すつかり　＃
＜Ｐ－０４６＞
かはつて　ゐます。しつて　ゐる　もの　は　一＃
人　も　ありません。かなしくて　かなしくて　た＃
まりません　から、おとひめ　の　いつた　こと　＃
も　わすれて、玉手箱　を　あけました。あける　＃
と、箱　の　中　から　白い　けむり　が　ぱつと　＃
出て、うらしま　は　たちまち　白が　の　お＃
ぢいさん　に　なつて　しまひました。＃
十五　四方　＃
＜Ｐ－０４７＞
日　ノ　出ル　方　ガ　東　デ、日　ノ　ハイル　＃
方　ガ　西　デス。＃
東　ヘ　ムイテ　リヤウ手　＃
ヲ　ヒロゲル　ト、右　ノ　＃
手　ノ　方　ガ　南　デ、左　＃
ノ　手　ノ　方　ガ　北　デス。＃
東　西　南　北　ヲ　四方　＃
ト　イヒマス。＃
＜Ｐ－０４８＞
十六　私　ノ　村　＃
學校　ノ　北　ニ　小高イ　ヲカ　ガ　アリマ＃
ス。ヲカ　ノ　上　ニ　天ジン　サマ　ノ　オ＃
ミヤ　ガ　アリマス。ソコ　ヘ　上ル　ト、私　＃
ノ　村　ハ　一目ニ　見エマス。＃
村　ノ　中　デ、一バン　目ダツ　ノ　ハ　私　＃
ドモ　ノ　學校　デス。大キナ　家　ガ　三ム＃
ネ、「コ」ノ字ナリ　ニ　タツテ　ヰマス。學校　＃
＜Ｐ－０４９＞
ノ　東ドナリ　ニ　二カイヅクリ　ノ　ヤクバ　＃
ガ　アリマス。＃
ヤクバ　ノ　ヨコ　デ、川　ガ　二ツ　オチア＃
ツテ、マガリ　クネツテ、南　ノ　方　ヘ　ナ＃
ガレテ　イキマス。＃
キヨネン　デキ上ツタ　新道　ハ、村　ヲ　東　＃
カラ　西　ヘ、マツスグニ　ツキヌイテ　ヰマ＃
ス。新道　ノ　リヤウガハ　ニハ、新シイ　家　＃
＜Ｐ－０５０＞
ガ　七八ケン　デキマシタ。＃
ソノ　中　ニハ、ニウリヤ　＃
モ　アリマス。今　ソノ　＃
ミセ　ノ　マヘ　ニ　ニ車　＃
ガ　トマリマシタ。車　ヲ　＃
ヒイテ　キタ　人　ガ　ベ＃
ンタウ　デモ　タベル　ノ　＃
デセウ。＃
＜Ｐ－０５１＞
ツイ　コノ　アヒダ　ウヱタ　田　ガ、モウ　ア＃
ンナニ　青ク　ナリマシタ。＃
ドコ　カ　ヲカ　ノ　下　デ、ニハトリ　ガ　ナ＃
キマス。モウ　オヒル　ニ　ナツタ　ノ　デセ＃
ウ。オ寺　ノ　カネ　モ　ナリ出シマシタ。＃
十七　一口ばなし　＃
一　雨　の　あな　＃
子ども　が　そら一めん　の　星　を　見て、＃
＜Ｐ－０５２＞
「ああ　わかつた。あの　光る　ところ　が　雨　＃
の　ふる　あな　だ。」＃
二　星とり　＃
「おい、長い　さを　を　ふりまはして、何　を　＃
して　ゐる　の　だ。」＃
「星　を　二つ　三＃
つ　はたきおとさ＃
う　と　して　ゐ＃
＜Ｐ－０５３＞
る　の　だ。」＃
「ばかな　こと　を　いふ。そんな　ところ　で　＃
とどく　もの　か。やね　へ　上つて　はたけ。」＃
三　星　の　かず　＃
ある　ばん、弟　が　には　へ　出て、「一つ　＃
二つ」と　かぞへて　ゐました。兄　が　＃
「おまへ、何　を　かぞへて　ゐる　の　だ。」＃
と　たづねます　と、＃
＜Ｐ－０５４＞
弟「星　を　かぞへて　ゐます。」＃
兄「こんな　くらい　ばん　に　かぞへない＃
で、ひる　かぞへる　が　よい。」＃
十八　をの　の　たうふう　＃
むかし　をの　の　たうふう　と　いふ　人　が　＃
ありました。わかい　とき　字　を　ならひま＃
した　が、うまく　書けません　ので、こまつ＃
て　ゐました。＃
＜Ｐ－０５５＞
ある　とき、雨　の　ふる　日　に、たうふう　＃
が　には　へ　出て、池　の　はた　を　通り＃
ます　と、しだれやなぎ　の　えだ　へ、かへる　＃
が　とびつかう　と　して　ゐます。＃
かへる　は　やなぎ　の　つゆ　を　虫　と　で＃
も　おもつた　の　でせう、とんで　は　おち、＃
とんで　は　おち、何べん　も　何べん　も　と＃
びつかう　と　します。だんだん　高く　とべ＃
＜Ｐ－０５６＞
る　やう　に　なつて、とうとう　やなぎ　に　＃
とびつきまし＃
た。たうふう　＃
は　これ　を　＃
見て、この　＃
かへる　の　や＃
う　に、こんき　が　よければ、何ごと　も　で＃
きない　こと　は　ない　と　さとりました。＃
＜Ｐ－０５７＞
それ　から　は　一しやうけんめいに　なつて、＃
毎日　字　を　ならひました。ずんずん　手　が　＃
上つて、のち　には　名高い　書手　と　なり＃
ました。＃
十九　セミ　＃
ニハ　ノ　モモ　ノ　木　ノ　ネモト　カラ、カ＃
ラ　ヲ　キタ　セミ　ガ　ハヒ上ツテ　キマス。＃
チヤウド　私　ノ　目　ノ　前　デ　トマツテ、＃
＜Ｐ－０５８＞
カラ　ヲ　ヌギハジメマシタ。＃
マモナク　ヌイデ　シマヒマシタ。アブラゼミ　＃
デス。色　ガ　ウスクテ、ヌレテ　ヰル　ヤウ　＃
ニ　見エマス。見テ　ヰル　ウチ　ニ、チヂン＃
デ　ヰタ　ハネ　モ　ダンダン　ノビテ、色　モ　＃
シダイニ　コク　ナツテ　キマシタ。＃
スコシ　タツテ　カラ　又　來テ　見マス　ト、＃
モウ　リツパニ　セミ　ニ　ナツテ　ヰマス。＃
＜Ｐ－０５９＞
コノ　大キナ　モノ　ガ、ヨク　アノ　カラ　ノ　＃
中　ニ　ハイツテ　ヰタ　モノ　ダ　ト　オモ＃
ヒマシタ。＃
ツカマヘヨウ　ト　シテ　手　ヲ　出シマス　ト、＃
「ジイツ」ト　ナイテ、トンデ　行キマシタ。＃
今　ニハ　ノ　＃
木　ニ　セミ　＃
ガ　ウルサイ　＃
＜Ｐ－０６０＞
ホド　ナイテ　ヰマス。アノ　セミ　モ　コノ　＃
中　ニ　ヰル　ノ　デセウ。＃
二十　ささ舟　＃
日　の　光　が　やはらかに　さして、小川　の　＃
水　は　きれいに　すきとほつて　ゐます。風　＃
が　しづかに　ふいて　來て、きし　の　ささ　＃
が　さらさらと　おと　を　たてて　ゐます。＃
二郎「三郎　さん、又　今日　も　舟　を　なが＃
＜Ｐ－０６１＞
して　あそびませう。」＃
三郎「又　はしりくら　を　させませう。五郎　＃
さん　も　なかま　に　おはいり　なさい。」＃
みよ子「私　は　かちまけ　を　見る　人　に　な＃
りませう。」＃
男の子　三人　は　ささ　の　は　を　とつて、＃
舟　を　こしらへました。＃
みよ子　は　ささ　の　小えだ　を　手　に　も＃
＜Ｐ－０６２＞
つて、土ばし　の　上　に　た＃
ちました。＃
みよ子「さあ、私　が　こゑ　を　＃
かけましたら、みなさん　一＃
しよに　舟　を　出す　の　＃
です　よ。一、二、三。」＃
三人　は　一しよに　舟　を　＃
出しました。舟　は　風　に　＃
＜Ｐ－０６３＞
ゆられ　ながら、土ばし　の　＃
方　へ　ながれて　行きます。＃
三人　は　舟　と　ならんで、＃
川　の　ふち　を　かけて　行＃
きます。草　の　は　に　と＃
まつて　ゐた　てふてふ　が　＃
おどろいて　とびたちまし＃
た。＃
＜Ｐ－０６４＞
みよ子「あら、てふてふ　が　五郎　さん　の　舟　＃
に　とまりました。」＃
舟　は　だんだん　土ばし　へ　近く　なりま＃
す。＃
五郎「ほうら、もう　ぢき　しようぶ　だ。」＃
みよ子　は　さつと　ささ　の　小えだ　を　上＃
げて、＃
「一ばんがち、五郎　さん　の　舟。」＃
＜Ｐ－０６５＞
二郎「五郎　さん　ばんざい。」＃
三郎「五郎　さん　ばんざい。」＃
みよ子「五郎　さん　の　舟　には、てふてふ　の　＃
せんどう　さん　が　のつた　から、かつた　＃
の　でせう。もう　一ど　やつて　ごらん　＃
なさい。」＃
二十一　水デツパウ　＃
私　ノ　ウチ　ヘ　キノフ　ヲケヤ　ガ　來テ、＃
＜Ｐ－０６６＞
手ヲケ　ヤ　タラヒ　ノ　タガ　ヲ　カケカヘ＃
マシタ。アト　ヘ　竹　ノ　キレ　ヲ　ノコシ＃
テ　行キマシタ　ガ、ソノ　中　ニ　フシ　ガ　＃
一ツ　アツテ、水デツパウ　ニ　ナリ　サウ　ナ　＃
ノ　ガ　アリマシタ。＃
私　ハ　ソレ　ヲ　ヒロツテ、フシ　ノ　マン＃
中　ニ、キリ　デ　小サナ　アナ　ヲ　アケマ＃
シタ。ソレ　カラ　ホソイ　竹　ヲ　エ　ニ　シ＃
＜Ｐ－０６７＞
テ、ソノ　サキ　ニ　キレ　ヲ　マキツケテ、＃
セン　ヲ　コシラヘマシタ。＃
池　ノ　水　デ　タメシテ　ミル　ト、ウマク　＃
出來テ　ヰテ、高ク　上ゲル　ト、ヤネ　ノ　＃
上　マデ　トドキマス。＃
ウレシクテ　タマリマセン　ノデ、ニハ　ニ　水　＃
ヲ　ウツタリ、ウヱ木　ニ　水　ヲ　カケタリ　＃
シマシタ。＃
＜Ｐ－０６８＞
ソノ　ウチ　＃
ニ　水　ガ　＃
出ナク　ナ＃
ツタ　ノデ、＃
セン　ヲ　ヌイテ　見ル　ト、キレ　ガ　トレ＃
テ　ヰマシタ。又　マキナホシテ、コンド　ハ　＃
水デツパウ　ヲ　ジヨウロ　ノ　カハリ　ニ　シ＃
ヨウ　ト　オモツテ、フシ　ニ　小サナ　アナ　＃
＜Ｐ－０６９＞
ヲ　タクサン　アケマシタ。サウシテ　セン　ヲ　＃
ヒキマシタ　ガ、水　ガ　ウマク　ハイリマセ＃
ン。コマツテ　ニイサン　ニ　見テ　モラヒマ＃
シタラ、＃
「コンナニ　アナ　ヲ　タクサン　アケテ　ハ　＃
ダメ　ダ。ソノ　ウチ　ニ、ニイサン　ガ　コ＃
シラヘテ　ヤラウ。」＃
ト　イフ　コト　デシタ。＃
＜Ｐ－０７０＞
二十二　虫ぼし　＃
今日　は　うち　の　虫ぼし　です。たんす　や　＃
つづら　から　着物　を　出して、風通し　の　＃
よい　ところ　に　かけて　あります。＃
この　黒い　もめん　の　もんつき　は　私　の　＃
です。その　となり　の　三つもん　の　はお＃
り　と　しま　の　はかま　は　おとうさん　の　＃
です。＃
＜Ｐ－０７１＞
そちら　の　はば　の　廣い　光る　おび　は　＃
ねえさん　の　で、はば　の　せまい　黒い　の　＃
は　おばあさん　の　です。おばあさん　は　＃
あれ　を　しめて、よく　お寺まゐり　に　い＃
らつしやいます。＃
それ　から、あの　赤い　じゆばん　は　ねえ＃
さん　の　で、ねずみ色　の　もんつき　は　お＃
かあさん　の　です。＃
＜Ｐ－０７２＞
こちら　の　かすり　の　＃
つつそで　は　太郎　の　＃
あはせ　で、その　とな＃
り　の　めりんす　の　あ＃
はせ　は　私　の　です。＃
私　ども　は　あれ　を　＃
着て、をばさん　の　村　＃
の　お祭　に　よばれて　＃
＜Ｐ－０７３＞
行く　の　です。＃
二十三　カウモリ　＃
ムカシ　鳥　ト　ケダモノ　ガ　ケンクワ　ヲ　＃
シタ　コト　ガ　アリマス。ソノ　トキ　カウ＃
モリ　ハ　＃
「私　ハ　鳥　デモ　ケダモノ　デモ　ナイ　＃
カラ。」＃
ト　イツテ、ドチラ　ヘ　モ　ツキマセン　デ＃
＜Ｐ－０７４＞
シタ。＃
ソノ　中　ニ　ケダモノ　ガ　カチ　サウ　ニ　＃
ナツタ　ノデ、＃
「私　ハ　カラダ　ガ　ネズミ　ニ　ニテ　ヰ＃
ル　カラ、ケダモノ　ダ。」＃
ト　イツテ、ケダモノ　ノ　ミカタ　ニ　ナリ＃
マシタ。＃
スコシ　タツテ、コンド　ハ　鳥　ガ　カチ　サ＃
＜Ｐ－０７５＞
ウ　ニ　ナリマシタ。スルト　カウモリ　ハ　＃
「私　ハ　羽　ガ　アル　カラ、鳥　ダ。」＃
ト　イツテ、鳥　ノ　方　ニ　ツキマシタ。＃
イツ　マデ　タツテ　モ　シヨウブ　＃
ガ　ツカナイ　ノデ、中ナホリ　＃
ヲ　シマシタ。ソノ　時　カウモリ　＃
ガ　ケダモノ　ノ　方　ヘ　行キ＃
マス　ト、＃
＜Ｐ－０７６＞
「オ前　ハ　鳥　デハ　ナイ　カ。」＃
ト　イツテ、ナカマ　ヘ　入レテ　クレマセン。＃
又　鳥　ノ　方　ヘ　行キマス　ト、＃
「オ前　ハ　ケダモノ　ダラウ。」＃
ト　イツテ、アヒテ　ニ　シマセン。＃
ソコデ　カウモリ　ハ　シカタ　ナシ　ニ、ヒ＃
ル　ハ　木　ノ　ウロ　ヤ　アナ　ノ　中　ニ　＃
カクレテ　ヰテ、クラク　ナツテ　カラ　空　＃
＜Ｐ－０７７＞
ヲ　トビマハル　ヤウ　ニ　ナツタ　ト　イヒ＃
マス。＃
二十四　十五や　＃
十五や　の　月　が　ざしき　の　まん中　ま＃
で　さして　ゐます。＃
夕はん　が　すむ　と、うち　の　もの　は　み＃
んな　えんがは　へ　出ました。えんがは　に＃
は、夕方　から　いも　や　だんご　を　つく＃
＜Ｐ－０７８＞
ゑ　に　のせて、お月さま　に　そなへて　あ＃
ります。今日　私　が　川　の　土手　から　と＃
つて　來た　すすき　も、花いけ　に　さして　＃
そなへて　あります。＃
空　は　水　の　やう　に　すみきつて、雲　一＃
つ　ありません。＃
だれ　か　川上　の　方　で、さきほど　から　＃
ふえ　を　吹いて　ゐます。＃
＜Ｐ－０７９＞
時時　すずしい　風　が　吹＃
いて　來る　と、おもひ出し＃
た　やう　に　くつわ虫　が　＃
なきます。おばあさん　が　＃
「ふみ子　も　こんや　は　き＃
つと　あちら　で　この　月　＃
を　見て　ゐませう。」＃
と、ひとりごと　の　やう　に　＃
＜Ｐ－０８０＞
おつしやいました。ねえさん　は　遠い　とこ＃
ろ　へ　およめ　に　行つて　いらつしやる　の　＃
です。＃
二十五　ふじ　の　山　＃
あたま　を　雲　の　上　に　出し、＃
四方　の　山　を　見おろして、＃
かみなり　さま　を　下　に　きく、＃
ふじ　は　日本一　の　山。＃
＜Ｐ－０８１＞
青空　高く　そびえたち、＃
からだ　に　ゆき　の　着物　着て、＃
＜Ｐ－０８２＞
かすみ　の　すそ　を　遠く　ひく、＃
ふじ　は　日本一　の　山。＃
二十六　はごろも　＃
むかし　一人　の　れふし　が　＃
「今日　は　まあ、何　と　いふ　よい　お天＃
き　だらう。」＃
と　いひ　ながら、みほ　の　松原　を　通り＃
ました。＃
＜Ｐ－０８３＞
日　は　よく　てつて　ゐて、ふじ　の　山　は　＃
いつも　より　なほ　きれいに　見えました。＃
風　は　しづか　で、なみ　も　おと　を　た＃
てません。おき　の　方　は　かすんで、空　と　＃
水　が　一つ　に　なつて　見えます。＃
あまり　けしき　が　よい　ので、れふし　が　＃
ぼんやりと　海　を　ながめて　ゐました。ど＃
こ　から　か　よい　にほひ　が　して　來ま＃
＜Ｐ－０８４＞
す　ので、見上げます　と、松　の　木　に　美＃
しい　物　が　かかつて　ゐました。そば　へ　＃
よつて　見ます　と、見た　こと　も　ない　き＃
れいな　着物　でした。＃
「これ　は　よい　物　が　ある。ひろつて　家　＃
の　たから　に　しよう。」＃
と　いつて、持つて　かへらう　と　します　と、＃
見た　こと　も　ない　美しい　女　が　來まし＃
＜Ｐ－０８５＞
た。＃
「それ　は　私　の　着物　で　ございます。」＃
「いや、これ　は　私　が　今　ここ　で　ひ＃
ろつた　の　です。持つて　かへつて　家　＃
の　たから　に　します。」＃
「いや、それ　は　天人　の　はごろも　と　い＃
ふ　物　で、人げん　には　よう　の　ない　＃
もの　です。」＃
＜Ｐ－０８６＞
「天人　の　はごろも　なら、なほさら　かへ＃
す　こと　は　出來ません。國　の　たから　＃
に　いたします。」＃
「それ　が　なくて　は、天　へ　かへる　こと　＃
が　出來ません。どうぞ　おかへし　下さい＃
ませ。」＃
れふし　は　かへしません　でした。天人　は　し＃
をしをと　して、なみだ　に　うるむ　目　で　＃
＜Ｐ－０８７＞
空　を　見上げました。＃
れふし　は　きのどくに　なりまして、＃
「あまり　おかはい　さう　です　から、おかへ＃
し申します。その　かはり　に　天人　の　＃
まひ　と　いふ　もの　を　お見せ　下さい＃
ませ。」＃
「おかげ　で　天　へ　かへる　こと　が　出來＃
ます。おれい　に　まひ　を　まひませう。＃
＜Ｐ－０８８＞
その　はごろも　を　＃
おかへし　下さいま＃
せ。」＃
「いやいや、おかへし申＃
したら、まはず　に　空　＃
へ　お上り　に　なりま＃
せう。」＃
「いいや、天人　は　うそ　＃
＜Ｐ－０８９＞
を　いひません。」＃
「ああ、はづかしい　こと　を　＃
申しました。」＃
れふし　が　はごろも　を　か＃
へします　と、天人　は　そ＃
れ　を　着て、まひはじめま＃
した。はごろも　の　袖　は　＃
かるく　風　に　まひ、はご＃
＜Ｐ－０９０＞
ろも　の　色　は　日　の　光　に　かがやき＃
ました。れふし　が　見とれて　ゐます　と、＃
天人　は　まひ　ながら　松原　の　上　を　だ＃
んだん　高く　上つて、ふじ　の　山　より　も　＃
高い　大空　の　かすみ　の　中　へ　はいつて　＃
行きました。＃
をはり＃
