＜出典＞３２２　　　国定読本　３期２－２
＜Ｐ－０００＞
もくろく　＃
一　お祭………一　　十三　ゑはがき………五十二　＃
二　柿………四　　十四　お話　二つ………五十三　＃
三　十月三十一日………八　　十五　しひ　の　木　と　かし　の　み………五十五　＃
四　麥まき………九　　十六　大工小屋………五十七　＃
五　白ウサギ………十二　　十七　扇　の　まと………六十一　＃
六　をぢさん　の　うち………二十一　　十八　山がら………六十七　＃
七　私　ども　の　町………二十六　　十九　ナゾ………七十　＃
八　山びこ………三十　　二十　一本杉………七十一　＃
九　フクロフ………三十四　　二十一　汽車　の　たび………八十　＃
十　日　と　風………三十八　　二十二　ヒナマツリ………八十四　＃
十一　すすはき………四十　　二十三　春　が　來た………八十八　＃
十二　かるた取………四十六　　二十四　曽我兄弟………八十九　＃
＜Ｐ－００１＞
一　お祭　＃
うぢがみ　さま　の　森　で、あさ　から　た＃
いこ　の　おと　が　します。今日　は　お祭　＃
です。大きな　字　を　書いた　のぼり　が　＃
すみきつた　空　に　立つて　ゐます。＃
おひるすぎ　に、をばさん　の　うち　から　＃
おとよ　さん　と　太郎　さん　が　來ました　＃
ので、三人　で　お宮　へ　まゐりました。＃
＜Ｐ－００２＞
鳥ゐ　の　あたり　は、道　の　りやうがは　に、＃
いろいろな　店　が　ならんで　ゐます。おも＃
ちやや　には　らつぱ　や　かたな　や　ひか＃
うき　など　が　ならべて　あります。ほほづ＃
き　や　ふうせん玉　を　賣る　店　も　出て　＃
ゐます。又　あめや　や　くわしや　では、は＃
やし立てて　おきやく　を　よんで　ゐます。＃
ちやうど　人　の　出さかり　で、お宮　の　す＃
＜Ｐ－００３＞
ず　が　ひつきりなしに　＃
なつて　ゐます。私　ども　＃
も　すず　を　なら＃
して　をがみました。＃
お宮　の　うら　では　す＃
まふ　が　はじまつて　ゐ＃
て、「わあ　わあ」と　はや＃
す　こゑ　が　きこえます。＃
＜Ｐ－００４＞
あちら　こちら　に　子ども　の　ならす　ら＃
つぱ　や　ふえ　の　音　も　して、たいそう　＃
にぎやか　です。＃
今年　は　田　が　よく　出來　た　ので、ば＃
ん　には　その　おいはひ　の　花火　が　上＃
る　さう　です。＃
二　柿　＃
私　の　うち　には　柿　の　木　が　五本　あ＃
＜Ｐ－００５＞
ります。しぶ柿　が　三本、あま柿　が　二本　＃
で、その　中　に　私　の　木　が　一本　あ＃
ります。あま柿　です。これ　は　私　が　生＃
れた　年、おぢいさん　が　私　の　ぶん　に　＃
つぎ木　を　して　下さつた　の　だ　さう　＃
です。＃
おぢいさん　が　この　柿　の　木　を　つい＃
で　いらつしやる　時、下男　の　太七　が　わ＃
＜Ｐ－００６＞
らひ　ながら、＃
「ごいんきよ　さま、その　お年　で　つぎ木　＃
を　なさる　の　です　か。」＃
と　いつた　さう　です。その　時　おぢいさ＃
ん　は　＃
「孫　へ　のこして　やる　の　さ。」＃
と　おつしやつた　と　いふ　こと　です。＃
今年　は　柿　の　あたり年　で、どの　木　＃
＜Ｐ－００７＞
にも　よく　み　が　＃
なりました。私　の　＃
木　も　枝　が　を＃
れる　ほど　なつて　＃
ゐます。きのふ　一＃
つ　取つて　みましたら、もう　黒く　ごま　を　＃
ふいて　ゐました。＃
この　二十五日　は　おぢいさん　の　めい日　＃
＜Ｐ－００８＞
です　から、たくさん　取つて　そなへる　つ＃
もり　です。＃
三　十月三十一日　＃
キノフ　ハ　十月三十一日　デ、天長節　ノ　＃
オイハヒ日　デシタ。學校　ノ　式　ガ　スン＃
デ　カラ、トモダチ　ト　ムカフ　ノ　山　ヘ　＃
上リマシタ。＃
村　ノ　方　ヲ　見ル　ト、ドノ　家　ニモ　＃
＜Ｐ－００９＞
コクキ　ガ　出シテ　アリマシタ。谷ソコ　ノ　＃
一ケンヤ　ニモ、川　ヲ　下ツテ　行ク　小サ＃
ナ　舟　ニモ、コクキ　ガ　出シテ　アリマシ＃
タ。＃
キノフ　ハ　日本國中　ノ　人　ガ　ミンナ　＃
天皇　ヘイカ　ノ　バンザイ　ヲ　イハツタ　ノ　＃
デス。＃
四　麥まき　＃
＜Ｐ－０１０＞
なら　や　くぬぎ　の　＃
は　は　黄　に　そまり、＃
廣い　たんぼ　に　＃
北風　あれる。＃
風　に　吹かれて、＃
なま土　ふんで、＃
今日　も　朝　から　＃
せい　出す　おや子。＃
＜Ｐ－０１１＞
おや　は　かへして、＃
子　は　くれ　うつて、＃
廣い　たんぼ　の　＃
麥まき　すます。＃
「やつと　すんだ。」と　＃
見上げる　空　に、＃
あす　も　天氣　か、＃
夕日　が　赤い。＃
＜Ｐ－０１２＞
五　白ウサギ　＃
島　ニ　ヰタ　白ウサギ　ガ、ムカフ　ノ　大＃
キナ　ヲカ　ヘ　行ツテ　見タイ　ト　オモツ＃
テ、海　ヲ　ワタル　クフウ　ヲ　シテ　ヰマ＃
シタ。アル　日　ハマベ　ヘ　出テ　見ル　ト、＃
ワニザメ　ガ　居マシタ　カラ、＃
「オマヘ　ノ　ナカマ　ト　ワタシ　ノ　ナカ＃
マ　ト、ドツチ　ガ　多イ　カ、クラベテ　ミ＃
＜Ｐ－０１３＞
ヨウ。」＃
ト　イヒマシタ。ワニザメ　ハ　＃
「ソレ　ハ　オモ白カラウ。」＃
ト　イツテ、スグニ　ナカマ　ヲ　大ゼイ　ツ＃
レテ　來マシタ。白ウサギ　ハ　コレ　ヲ　見＃
テ、＃
「ナルホド、オマヘ　ノ　ナカマ　ハ　ズヰブ＃
ン　多イ。ワタシ　タチ　ノ　方　ガ　少イ　＃
＜Ｐ－０１４＞
カ　モ　シレナイ。オマヘ　＃
タチ　ノ　セ中　ノ　上　ヲ　＃
アルイテ、カゾヘテ　ミル　＃
カラ、ムカフ　ノ　ヲカ　マ＃
デ　ナランデ　ミ　ヨ。」＃
ト　イヒマシタ。＃
ワニザメ　ハ　白ウサギ　ノ　＃
イフ　通リ　ニ　ナラビマシ＃
＜Ｐ－０１５＞
タ。白ウサギ　ハ　一ツ　二＃
ツ　ト　カゾヘテ、ワタツテ　＃
行キマシタ　ガ、イマ　一足　＃
デ　ヲカ　ヘ　上ラウ　ト　イ＃
フ　トコロ　デ、＃
「オマヘ　タチ　ハ　ウマク　＃
ワタシ　ニ　ダマサレタ　ナ。ワタシ　ハ　コ＃
ノ　ヲカ　ヘ　來タカツタ　ノ　ダ。」＃
＜Ｐ－０１６＞
ト　イツテ　ワラヒマシタ。ワニザメ　ハ　ソ＃
レ　ヲ　キク　ト、タイソウ　オコツテ、一バン　＃
シマヒ　ニ　居タ　ノ　ガ、白ウサギ　ノ　毛　＃
ヲ　ミンナ　ムシリ取ツテ　シマヒマシタ。＃
白ウサギ　ハ　イタクテ　タマリマセン　カラ、＃
ハマベ　ニ　立ツテ、ナイテ　居マシタ。ソコ　＃
ヘ　神樣　ガタ　ガ　オ通リガカリ　ニ　ナツテ、＃
「ナゼ　ナク　ノ　カ。」＃
＜Ｐ－０１７＞
ト　オタヅネ　ニ　ナリマシタ。ワケ　ヲ　申＃
シ上ゲマス　ト、＃
「ソレ　ナラ　海　ノ　水　ヲ　アビテ、ネテ　＃
居ル　ガ　ヨイ。」＃
ト　オヲシヘ　ニ　ナリマシタ。＃
白ウサギ　ハ　スグ　海　ノ　水　ヲ　アビマ＃
シタ　ガ、前　ヨリ　モ　カヘツテ　イタク　ナ＃
ツテ、クルシガツテ　居マシタ。＃
＜Ｐ－０１８＞
ソコ　ヘ　大國主ノ神　ガ　オ出デ　ニ　ナリ＃
マシタ。コノ　神樣　ハ　サキホド　オ通リ　＃
ニ　ナツタ　神樣　ガタ　ノ　弟　ノ　方　デ＃
ス。兄樣　ガタ　ノ　オトモ　ヲ　シテ、フク＃
ロ　ヲ　カツイデ　イラツシヤツタ　ノデ、オ＃
オクレ　ニ　ナツタ　ノ　デス。＃
コノ　神樣　モ、＃
「ナゼ　ナク　ノ　カ。」＃
＜Ｐ－０１９＞
ト　オタヅネ　ニ　ナリマシタ。白ウサギ　ハ　＃
目　ヲ　コスツテ、又　ソノ　ワケ　ヲ　申シ＃
上ゲマシタ。スルト　神樣　ハ　＃
「ソレ　ハ　カハイ　サ＃
ウ　ダ。早ク　川　ヘ　＃
行ツテ、シホケ　ノ　ナ＃
イ　水　デ　カラダ　ヲ　＃
アラツテ、ガマ　ノ　ホ　＃
＜Ｐ－０２０＞
ヲ　シイテ、ソノ　上　ニ　コロガレ。」＃
ト　ヲシヘテ　下サイマシタ。＃
白ウサギ　ガ　ソノ　通リ　ニ　シマス　ト、カ＃
ラダ　ハ　スツカリ　モト　ノ　ヤウ　ニ　ナ＃
ホリマシタ。ヨロコンデ　大國主ノ神　ノ　ト＃
コロ　ヘ　オレイ　ニ　行ツテ、＃
「オカゲサマ　デ、カラダ　ハ　コノ　通リ　ニ　＃
ナホリマシタ。アナタ　ハ　オナサケブカイ　＃
＜Ｐ－０２１＞
オ方　デス　カラ、後　ニハ　キツト　オシ＃
アハセ　ノ　ヨイ　コト　ガ　ゴザイマス。」＃
ト　申シ上ゲマシタ。＃
ソノ　後　大國主ノ神　ハ、白ウサギ　ノ　イ＃
ツタ　通リ、エライ　オ方　ニ　オナリ　ニ　ナ＃
リマシタ。＃
六　をぢさん　の　うち　＃
山　一つ　むかふ　の　村　に　をぢさん　の　＃
＜Ｐ－０２２＞
うち　が　あります。私　は　きのふ　ふろし＃
きづつみ　を　持つて、おつかひ　に　行きま＃
した。＃
をぢさん　の　うち　では、には　一ぱい　も＃
み　が　ほして　あつて、足　の　ふみば　も　＃
ない　くらゐ　でした。うち　の　人　は　み＃
んな　たんぼ　へ　出て、おばあさん　が　日＃
あたり　の　よい　えんがは　で　つぎ物　を　＃
＜Ｐ－０２３＞
して　いらつしやいました。＃
おばあさん　は　もう　耳　が　遠い　ので、大＃
きな　こゑ　で、＃
「おばあさん、今日　は。」＃
と　いふ　と、ふりかへつて、＃
「おう、三ちやん　か。よく　來た　ね。」＃
と　いつて、ふろしきづつみ　を　うけ取つて、＃
とだな　から　うでた　くり　を　おぼん　に　＃
＜Ｐ－０２４＞
一ぱい　持つて　來て　下さいました。＃
前　の　畠　の　柿　の　木　は、は　が　ま＃
つかに　なつて　ゐて、二つ　三つ　とりのこ＃
して　ある　柿　が、赤い　玉　の　やう　に　＃
光つて　ゐます。＃
えんさき　の　さざんくわ　に、目白　が　二＃
は　來て　ゐて、枝　から　枝　へ　とんで　＃
ゐます。にはとり　が　時時　もみ　を　かき＃
＜Ｐ－０２５＞
出します。おばあさん　が　「ほう　ほう」と　い＃
つて　おおひ　に　なります　と、にはとり　＃
より　さき　に、すずめ　が　くら　の　やね　＃
へ　にげて　行きます。＃
おばあさん　が　＃
「今日　は　こんなに　もみ　が　ほして　あ＃
る　から、をぢさん　も　をばさん　も　早＃
く　かへります。もつと　あそんで　お出で。」＃
＜Ｐ－０２６＞
と　いつて　おとめ　に　なりました　が、お＃
そく　なる　と　おもつて、いただいた　くり　＃
を　持つて　かへりました。＃
七　私　ども　の　町　＃
私　ども　の　町　でも、この　あひだ　から　＃
電とう　が　つく　やう　に　なりました。町＃
やくば　も、けいさつしよ　も、いうびんきよ＃
く　も、みんな　のきらんぷ　が　電とう　に　＃
＜Ｐ－０２７＞
かはりました。＃
米屋　ごふく屋　小ま物屋　あ＃
ら物屋　くすり屋　さか屋　さ＃
かな屋、その　ほか　大きな　＃
店　は　いくつ　も　電とう　を　＃
つけました。本町通　は　夜　も　＃
ひる　の　やう　で、りはつ店　＃
など　は　まぶしい　ほど　です。＃
＜Ｐ－０２８＞
私　の　うち　でも　二つ　つけました。電と＃
う　は　らんぷ　と　ちがつて、へや　の　すみ＃
ずみ　まで　あかるく、その　上　火　の　よ＃
うじん　も　ようございます。＃
よこ町　に　電氣　の　力　で、米　を　つく　＃
家　も　出來ました。電話　も　近い　中　に　＃
私　ども　の　町　へ　かかる　さう　です。＃
又　町はづれ　に　大きな　工場　の　ふしん　＃
＜Ｐ－０２９＞
が　はじまつて　居ます。もう　高い　えんと＃
つ　は　大方　出來上りました。これ　は　大＃
じかけ　で　れんぐわ　を　やく　工場　です。＃
これ　が　出來上る　ころ　には、てつだう　が　＃
私　ども　の　町　を　通つて、工場　の　近＃
く　に　ていしや場　が　出來る　さう　です。＃
さう　なつたら　町　は　どんなに　べんり　に　＃
なる　でせう。＃
＜Ｐ－０３０＞
八　山びこ　＃
正太郎　が　犬　を　つれて、山道　を　通り＃
ました。犬　の　すがた　が　見えなく　な＃
つた　ので、「ぽち　ぽち」と　よびます　と、向＃
ふ　の　方　で、「ぽち　ぽち」と　口まね　を　＃
する　もの　が　あります。＃
友だち　でも　居る　の　か　と　おもつて、＃
「おうい」と　よぶ　と、「おうい」と　いひ、「だ＃
＜Ｐ－０３１＞
れ　だ」と　いふ　と、「だれ　だ」と　答へます。＃
正太郎　が　おこつて、「ばか」と　いひます　と、＃
又　向ふ　で、「ばか」と　口まね　を　します。＃
そこ　へ　ぽち　が　來ました　ので、一しよに　＃
向ふ　の　方　へ　行つて　みました　が、だ＃
れ　も　居ません　でした。＃
うち　へ　かへつて、父　に　この　こと　を　＃
話します　と、父　は　＃
＜Ｐ－０３２＞
「それ　は　山びこ　です。だれ　も　居る　の　＃
では　ありません。」＃
と　をしへました。＃
正「山びこ　とは　何　の　こと　で　ございま＃
す　か。」＃
父「ごむまり　を　かべ　に　なげつける　と、は＃
ねかへる　でせう。」＃
正「はい。」＃
＜Ｐ－０３３＞
父「人　の　こゑ　も　山　の　中　では、かべ　に　＃
あたつた　ごむまり　の　やう　に、かへつて　＃
來る　こと　が　あります。それ　が　山びこ　＃
です。＃
こちら　で　やさしく　いへば、向ふ　でも　＃
やさしく　答へ、おこつて　いへば、おこつて　＃
答へる　の　です。向ふ　で「ばか」と　い＃
つた　の　も、お前　が　先　に「ばか」と　＃
＜Ｐ－０３４＞
いつた　から　です。」＃
九　フクロフ　＃
フクロフ　ハ　オモ白イ　カツカウ　ノ　鳥　デ＃
ス。フクレタ　カラダ、マンマルナ　目。カホ　＃
ハ　ネコ　ノ　ヤウ　デ、其ノ　上　ネズミ　ヲ　＃
トツテ　クフ　ノデ、ネコ鳥　ト　イフ　トコ＃
ロ　モ　アリマス。＃
夜　ニ　ナル　ト、ホカ　ノ　鳥　ハ　大ガイ　＃
＜Ｐ－０３５＞
目　ガ　見エナク　ナル　＃
ノ　ニ、此ノ　鳥　ハ　見＃
エル　ノデ、ホカ　ノ　鳥　＃
ヲ　イヂメタリ、ツカミ＃
コロシテ　ヱ　ニ　シタリ　シテ　アバレマハ＃
リマス。其ノ　中　ニ　夜　ガ　明ケル　ト、目　＃
ガ　見エナク　ナル　ノデ、森　ヤ　林　ノ　ヒ＃
クイ　木　ノ　枝　ニ　トマツテ、ボンヤリト　＃
＜Ｐ－０３６＞
シテ　居ル　コト　ガ　アリマス。＃
スルト　ホカ　ノ　鳥　ガ　見ツケテ、「ア、ニ＃
クイ　ヤツ　ガ　居ル。」ト　イハナイ　バカリ　＃
ニ、ヨツテ　タカツテ　イヂメカヘシマス。＃
烏　ハ　大キナ　コヱ　デ　ワル口　ヲ　イヒ、＃
太イ　クチバシ　デ　ツツキマス。モズ　ハ　小サイ　＃
ガ、マケヌ氣　ノ　鳥　デス　カラ、高イ　所　＃
カラ　トンデ來ガケ　ニ、フクロフ　ノ　カホ　＃
＜Ｐ－０３７＞
ヲ　ケツテ、「キイ　キイ」ト　カチドキ　ヲ　ア＃
ゲマス。スズメ　ハ　ヨワイ　鳥　デス　ガ、ソバ　＃
ヘ　ヨツテ、ヲドツタリ　サヘヅツタリ　シテ　バ＃
カ　ニ　シマス。ソレ　デモ　フクロフ　ハ　シ＃
方　ガ　ナイ　ノデ、大キナ　目　ヲ　見ハツテ　＃
キヨトキヨトシテ　居ル　バカリ　デス。＃
フクロフ　ノ　鳴キゴヱ　ハ　所　ニ　ヨツテ　＃
イロイロ　ニ　イヒマス。フクロフ　ガ　鳴ク　ト、＃
＜Ｐ－０３８＞
其ノ　明クル　日　ハ　天氣　ガ　ヨイ　カラ、＃
「ノリツケ　ホウセ」ト　鳴ク　ノ　ダ　ト　イフ　＃
所　モ　アリマス。＃
十　日　と　風　＃
ある　時、日　と　風　が　力くらべ　を　し＃
ました。たび人　の　ぐわいたう　を　ぬがせ＃
た　方　が　勝　と　いふ　こと　に　きめて、＃
先づ　風　から　はじめました。＃
＜Ｐ－０３９＞
風　は　「何、一まくり　に　して　見せよう。」＃
と　はげしく　吹立てました。すると　たび人　＃
は、風　が　吹けば　吹く　ほど、ぐわいたう　＃
を　しつかりと　からだ　に　くつつけました。＃
こんど　は　日　の　番　に　なりました。日　＃
は　雲　の　あひだ　から　やさしい　かほ　を　＃
出して、あたたかな　光　を　おくりました。た＃
び人　は　だんだん　よい　心持　に　なつて、＃
＜Ｐ－０４０＞
しまひ　には　ぐわいたう　を　ぬぎました。そ＃
こで、風　の　負　に　なりました。＃
十一　すすはき　＃
昨日　は　うち　の　すすはき　でした。おか＃
あさん　が　あたま　に　手ぬぐひ　を　かぶり、＃
着物　の　上　に　ちりよけ　を　着て、下女　＃
や　手つだひ　の　もの　に、おさしづ　を　し＃
て　おはたらき　に　なりました。＃
＜Ｐ－０４１＞
一番　先　に　しやうじ　や　からかみ　が　外　＃
へ　出されました。かけ物　や　がく　も　＃
はづされました。には　へ　いた　や　むしろ　＃
を　しいて、そこ　へ　火ばち　や　机　や　本箱＃
や　いろいろな　物　が　はこび出されました。＃
たんす　を　うごかす　と、其の　うしろ　か＃
ら　物さし　と　花子　の　お手玉　が　出ま＃
した。つづら　や　長持　も　出されました。＃
＜Ｐ－０４２＞
戸だな　や　戸だな　の　中　の　物　も　み＃
んな　外　へ　出されました。＃
だい所　で　いろいろな　物　を　のける　と、＃
子ねずみ　が　一ぴき　とび出しました。下女　＃
が　びつくりして、「きやつ」と　いつた　ので、＃
後　で　みんな　に　わらはれました。＃
ぱたぱた、ぱたぱた、いよいよ　さうぢ　が　は＃
じまりました。僕　も　はたき　を　持つて　＃
＜Ｐ－０４３＞
手つだひました。天じやう　を　はらふ、たた＃
み　を　たたく、ひさしうら　の　くも　の　す　＃
を　取る、勝手　の　すす　を　はらふ、まる＃
で　いくさ　の　やう　でした。＃
手つだひ　の　今吉　が　おどけて、はうき　を　＃
大なぎなた　の　やう　に　持つて、べんけい　＃
の　まね　を　しました。僕　は　牛わかまる　＃
に　なつて、はねまはつて　たたかひましたら、＃
＜Ｐ－０４４＞
おかあさん　に　しかられ＃
ました。花子　は　ねこ　を　＃
だいて　うろうろして　居＃
ました　ので、＃
「花子　も　自分　の　お＃
もちや　だけ、ちやんと　＃
おかたづけ　なさい。」＃
と　いはれました。＃
＜Ｐ－０４５＞
「此のごろ　は　大さうぢ　＃
が　やかましく　なつた　＃
から、すすはき　は　大＃
きに　らく　に　なりま＃
した。」＃
と　今吉　が　いひました　＃
が、それ　でも　ふきさう＃
ぢ　が　すんで、すつかり　＃
＜Ｐ－０４６＞
いろいろな　物　を　もと　の　所　へ　なほ＃
したら、夕方近く　なりました。＃
おとうさん　が　おかへり　に　なつた　時　には、＃
家　の　内　も　外　も　きれいに　なつて　居＃
ました　ので、みんな　が　ほめられました。＃
十二　かるた取　＃
友一　の　うち　で　かるた取　が　はじまつて　＃
居ます。よみ手　は　おぢいさん　で、取手　は　＃
＜Ｐ－０４７＞
みよ子　ちよ子　國太郎　音二郎　の　四人　と、＃
友一　と　友一　の　あね　の　道子　です。＃
今　ちらし　で　取つて　居ます。＃
「花　より　だんご。」＃
みよ子「はい、ありました。」＃
「ちり　つもつて　山　と　なる。」＃
國太郎「はい。」＃
「ねん　には　ねん　を　入れ。」＃
＜Ｐ－０４８＞
ちよ子「はい。」＃
「おに　に　かなぼう。」＃
音二郎「はい、とりました。」＃
「ゆだん　大てき。」＃
友一　道子「はい。」＃
道子「私　が　取つた　の　です。」＃
友一「いいえ。僕　が　取つた　＃
の　です。」＃
＜Ｐ－０４９＞
「さう　ひつぱりあつて　＃
は　いけません。まん＃
中　へ　ふせて　おき＃
なさい。こんど　取つた　＃
人　が　それ　も　取る　こと　に　します。＃
さあ、つぎ　の　を　よみます。」＃
「負ける　は　勝。」＃
道子「はい、取りました。せん　の　も　私　が　＃
＜Ｐ－０５０＞
取ります　よ。」＃
「なきつら　に　はち。」＃
道子「はい。」＃
これ　から　友一　は　だんだん　あせり出し＃
ました。みんな　も　しまひ　には　むちゆう＃
に　なつて　取りました。＃
一ど　すみました。道子　が　十二まい、みよ＃
子　が　十まい、國太郎　が　九まい、ちよ子　＃
＜Ｐ－０５１＞
が　八まい、音二郎　が　六まい、友一　は　た＃
つた　二まい　でした。＃
それ　から　又　二くみ　に　分れて、何べん　＃
も　取つて　あそびました。＃
＜Ｐ－０５２＞
十三　ゑはがき　＃
「勝太郎、東京　の　をぢ＃
さん　から　お前　の　所　＃
へ　ゑはがき　が　來ま＃
した。よんで　ごらん。」＃
「はい。」＃
新年　おめでたう。此＃
の　あひだ　ひかうせん　＃
＜Ｐ－０５３＞
が　東京　の　空　を　とびました。これ　は　＃
其の　ゑはがき　です。＃
十四　お話　二つ　＃
東京　の　宿屋　で、山國　の　もの　と、島＃
國　の　もの　が　おちあひました。山國　の　＃
もの　が　＃
「日　は　山　から　出て、山　へ　はいる。」＃
と　いへば、島國　の　もの　が　＃
＜Ｐ－０５４＞
「いや、海　から　出て、海　へ　はいる。」＃
と　いつて　あらそひます。そこ　へ　宿屋　の　＃
ていしゆ　が　來て、＃
「へええ、日　は　屋根　から　出て、屋根　へ　＃
はいる　もの　では　ございません　か。」＃
「お前　は　たいそう　とんち　が　ある　と　＃
聞いた。此の　からかみ　に　かいて　ある　＃
＜Ｐ－０５５＞
とら　を　しばつて　見＃
せ　よ。」＃
「しばつて　お目　に　か＃
けます。どうぞ　ここ　＃
へ　追出して　下さいま＃
せ。」＃
十五　しひ　の　木　と　かし　の　み　＃
思ふ　ぞんぶん　はびこつた　＃
＜Ｐ－０５６＞
山　の　ふもと　の　しひ　の　木　は、＃
根もと　へ　草　も　よせつけぬ。＃
山　の　中　から　ころげ出て、＃
人　に　ふまれた　かし　の　み　が、＃
しひ　を　見上げて　かう　いつた。＃
「今　に　見て　ゐ　ろ、僕　だつて、＃
＜Ｐ－０５７＞
見上げる　ほど　の　大木　に　＃
なつて　見せず　に　おく　もの　か。」＃
何百年　か　たつた　後、＃
山　の　ふもと　の　大木　は　＃
あの　しひ　の　木　か、かし　の　木　か。＃
十六　大工小屋　＃
私　ノ　ウチ　デハ　此ノゴロ　土ザウ　ノ　＃
＜Ｐ－０５８＞
フシン　ガ　ハジマツテ　居マス。ニハ　ニ　大＃
工小屋　ヲ　タテテ、大ゼイ　ノ　大工　サン　＃
ガ　毎日　其ノ　中　デ　仕事　ヲ　シテ　居マ＃
ス。＃
ドンナ　サムイ　日　デモ、大工　サン　ハ　ミ＃
ンナ　シルシバンテン　ヲ　ヌイデ、ヰセイ　＃
ヨク　ハタライテ　居マス。＃
ノコギリ　デ　木　ヲ　キル　モノ　モ　アリ、＃
＜Ｐ－０５９＞
ノミ　デ　アナ　ヲ　ホ＃
ル　モノ　モ　アリ、＃
カンナ　デ　板　ヲ　ケ＃
ヅル　モノ　モ　アリ＃
マス。＃
私　ハ　カンナ　ヲ　カ＃
ケテ　居ル　ノ　ヲ　見＃
ル　コト　ガ　スキ　デ＃
＜Ｐ－０６０＞
ス。ヨク　キレル　カンナ　ガ　スウツト　板　＃
ノ　上　ヲ　通ル　ト、カンナクヅ　ガ　ヒト＃
リデニ　クルリト　マハツテ　スベリオチマス。＃
風　ガ　吹ク　ト、カンナクヅ　ガ　小屋中　＃
マツテ　アルキマス。＃
私　ハ　昨日　大工　サン　カラ　木　ノ　キ＃
レ　ヲ　タクサン　モラツテ、友ダチ　ト　ツ＃
ミ木　ヲ　シテ　アソビマシタ。＃
＜Ｐ－０６１＞
十七　扇　の　まと　＃
屋島　の　たたかひ　に、げんじ　は　をか、＃
へいけ　は　海　で、向ひあつて　居ました　＃
時、へいけ方　から　舟　を　一そう　こぎ＃
出して　來ました。見れば　へさき　に　長い　＃
さを　を　立てて、其の　さを　の　先　には、＃
ひらいた　赤い　扇　が　つけて　あります。＃
一人　の　くわんぢよ　が　其の　下　に　立＃
＜Ｐ－０６２＞
つて、まねいて　居ます。さを　の　先　の　扇　＃
を　い　よ　と　いふ　の　でせう。＃
舟　は　なみ　に　ゆられて、上つたり　下つ＃
たり　します。扇　は　風　に　吹かれて、く＃
るくる　まはつて　居ます。いくら　弓　の　名人　＃
でも、これ　を　一矢　で　いおとす　こと　は、＃
なかなか　むづかし　さう　です。＃
げんじ　の　大しやう　よしつね　は　家來　＃
＜Ｐ－０６３＞
に　向つて、＃
「だれ　か　あの　扇　を　いおとす　もの　は　＃
ない　か。」＃
と　たづねました。其の　時　一人　の　家來　＃
が　すすみ出て、＃
「なす　の　よ一　と　申す　もの　が　ござ＃
います。空　を　とんで　居る　鳥　でも、三＃
羽　ねらへば、　二羽　だけ　は　きつと　い＃
＜Ｐ－０６４＞
おとす　ほど　＃
の　上手　で　＃
ございます。」＃
と　いひました。よし＃
つね　は＃
「それ　を　よべ。」＃
と、すぐに　よ一　を　よび出しました。＃
よ一　は　じたいしました　が、よしつね　が　＃
＜Ｐ－０６５＞
ゆるしません。よ一　は　心　の　中　＃
で、もし　これ　を　いそこなつた＃
ら、生きて　は　居まい　と　かくご　＃
を　きめて、馬　に　またがつて、＃
海　の　中　へ　のり入れました。＃
弓　を　とりなほして、向ふ　を　見＃
わたす　と、舟　が　ゆれて、まと　＃
が　さだまりません。しばらく　目　＃
＜Ｐ－０６６＞
を　つぶつて、神樣　に　いのつて　から　目　＃
を　ひらいて　見る　と、今度　は　扇　が　少＃
し　おちついて　見えます。よ一　は　弓　に　＃
矢　を　つがへ、よく　ねらひ　を　さだめて、＃
ひようと　いはなしました。＃
赤い　扇　は　かなめ　の　きは　を　いきら＃
れて、空　に　高く　まひ上つて、ひらひらと　＃
二つ　三つ　まはつて、なみ　の　上　に　お＃
＜Ｐ－０６７＞
ちました。＃
をか　の　方　では　大しやう　よしつね　を　＃
はじめ、みんな　が　馬　の　くら　を　たた＃
いて　よろこびました。海　の　方　でも　へ＃
いけ方　が　ふなばた　を　たたいて、一度に　＃
どつと　ほめました。＃
十八　山がら　＃
私　の　うち　に　山がら　が　一羽　かつて　あ＃
＜Ｐ－０６８＞
りました。たいそう　よく　なれて、私　の　手　＃
から　ゑ　を　たべる　ほど　に　なつて　居＃
ました。＃
それ　が　かはい　さう　に、ある　ばん　ねず＃
み　に　足　の　ゆび　を　くひきられました。＃
どんなに　か　鳴いた　の　でせう　が、うち　＃
の　もの　は　朝　まで　しらず　に　居ました。＃
きず　を　見て　やらう　と　思つて、私　が　＃
＜Ｐ－０６９＞
かご　の　戸　を　明けます　と、山がら　は　＃
とび出して、竹がき　の　上　に　とまつて、＃
それ　から　うら　の　山　へ　とんで　行つて　＃
しまひました。＃
これ　は　私　が　七つ　の　年　の　こと　で＃
した　が、今　でも　山がら　の　こゑ　を　き＃
く　と、まだ　あれ　が　生きて　居る　だら＃
う　か、足　の　きず　は　どう　したらう　＃
＜Ｐ－０７０＞
か　と　思はない　こと　は　ありません。＃
十九　ナゾ　＃
私　ドモ　二人　ハ　色　モ　ナリ　モ　ヨク　＃
ニテ　居マス。雪　ノ　ヤウ　ニ　白ウ　ゴザ＃
イマス　ガ、雪　ノ　ヤウ　ニ　ツメタク　ハ　＃
ナク、又　日　ニ　テラサレテ　モ　トケマセン。＃
シカシ　ユ　ヤ　水　ニハ　スグ　トケテ　シ＃
マヒマス。＃
＜Ｐ－０７１＞
一人　ハ　タイソウ　皆サン　ニ　スカレマス　＃
ガ、一人　ハ　アマリ　スカレマセン。シカシ　＃
二人　トモ　大セツナ　モノ　デ、ドナタ　ノ　＃
ウチ　ニモ、ナカマ　ノ　モノ　ガ　大テイ　行＃
ツテ　居マス。＃
私　ドモ　ハ　何　ト　何　デセウ。＃
二十　一本杉　＃
私　は　道ばた　の　一本杉　です。もう二＃
＜Ｐ－０７２＞
百年　あまり　も　ここ　に　立つて　居ます。＃
東　の　村　では「それ、もう　日　が　くれる　＃
ぞ。一本杉　の　うしろ　へ　お日樣　が　お＃
はいり　に　なつた。」と　いひ、西　の　村　＃
では「ああ、よい　ばん　だ。一本杉　の　ふ＃
ところ　から　お月樣　が　お上り　に　なつ＃
た。」など　と　申します。＃
私　は　長生　を　して　居ます　ので、東　の　＃
＜Ｐ－０７３＞
村　や　西　の　村　に、人　が　生＃
れたり、死んだり、家　が　たつ＃
たり、こはれたり、火事　が　＃
あつたり、水　が　出たり　した　＃
＜Ｐ－０７４＞
こと　を　みんな　見て　知つて　居ます。＃
私　は　東　の　村　の　今　の　村長　さん　＃
の　おぢいさん　や　おばあさん　を　其の　＃
わかい　時　から　知つて　居ました。まこと＃
に　よく　はたらく　人　たち　でした。せい　＃
の　高い　私　の　目　にも、まだ　お日樣　＃
が　見えない　中　から、くは　や　かま　を　＃
持つて　たんぼ　へ　行きました。又　私　の　＃
＜Ｐ－０７５＞
かた　の　上　で、お星樣　が　光りはじめる　＃
ころ　に　なつて、小さな　わらぶき　の　うち　＃
へ　かへつて　行きました。此の　人　たち　の　＃
田　や　畠　の　作り方　は　ていねい　でした　＃
から、稻　も　麥　も　よそ　の　より　は　＃
よく　出來ました。それで　だんだん　うち　＃
が　よく　なりました。＃
今　の　村長　さん　の　おとうさん　も　お＃
＜Ｐ－０７６＞
となしい　人　で、小さい　時　から　よく　は＃
たらきました。西　の　村　一番　の　金持　＃
の　むすめ　さん　が、此の　人　の　所　へ　＃
およめ　に　來ました　が、其の　時　は　な＃
かなか　にぎやかな　こと　でした。＃
今　の　村長　さん　も　子ども　の　時　から　＃
すなほ　で、なさけぶかい　人　でした。あの　＃
うち　は　此の　上　よく　なる　ばかり　でせう。＃
＜Ｐ－０７７＞
此の　間　さびしい　おさう式　が　私　の　＃
前　を　通りました。それ　は　西　の　村　で、＃
二番目　の　金持　だ　と　いはれた　うち　に　＃
生れた　人　の　でした。此の　人　は　小さ＃
い　時　から　いたづらもの　で、大きく　な＃
つて　も、うち　の　仕事　も　せず、ゐばつて　＃
ばかり　居ました。それで　とうとう　家　も　＃
土ざう　も　田　も　畠　も　人　の　物　に　＃
＜Ｐ－０７８＞
なつて　しまひました。それ　から　どこ　へ　＃
行つて　居た　か、村　にも　ひさしく　居ま＃
せん　でした。＃
かへつて　來た　時　には、ひどい　みなり　を　＃
して　居ました。私　の　下　で、長い　間　＃
しよんぼりと　して　居まして、日　が　くれ＃
て　から　村　へ　はいりました。其の　後　＃
間　も　なく　死んだ　の　です。さむい　日　＃
＜Ｐ－０７９＞
の　こと　で、あまり　氣のどく　でした　か＃
ら、私　が　風　の　音　を　ごうつと　させ＃
て　やりましたら、送つて　行く　人　が　「此の　＃
人　も　一本杉　の　外　に　ないて　くれる　も＃
の　が　なく　なつた。」と　いひました。＃
私　は　長い　間　に　子ども　を　たくさん　＃
見ました　ので、どう　いふ　子　は　どう　＃
いふ　人　に　なる　と　いふ　こと　を　見＃
＜Ｐ－０８０＞
ぬきます。學校　の　行きかへり　に　道草　＃
を　くつたり、石　を　なげたり、生物　を　こ＃
ろしたり　する　やう　な　子ども　は、大てい　＃
ろくな　もの　に　なりません。＃
二十一　汽車　の　たび　＃
昨日　おとうさん　と　朝　九時　の　汽車　で、＃
軍たい　に　居る　にいさん　の　所　へ　出＃
かけました。＃
＜Ｐ－０８１＞
てつけう　へ　かかつた　時、河　を　見た＃
ら、たいそう　水　が　出て　居ました。＃
「此の　よい　お天氣　に、どう　した　の　で＃
せう。」＃
と　たづねましたら、＃
「河上　の　方　で　雪　が　とけはじめた　の　＃
だらう。」＃
と　いふ　こと　でした。＃
＜Ｐ－０８２＞
トンネル　を　出＃
て、海　を　見下＃
した　時　には、＃
いつ　見て　も　＃
よい　けしき　だ　＃
と　思ひました。ちやうど　大きな　船　が　お＃
き　を　通つて　居ました。ほばしら　が　二＃
本、えんとつ　が　四本　の　船　です。そば　＃
＜Ｐ－０８３＞
に　乗つて　居た　人　の　話　では、軍かん　＃
だ　と　いふ　こと　でした。＃
むかふ　の　てい車場　へ　着いたら、にいさん　＃
が　むかへ　に　來て　居ました。＃
三人　で　町　を　見物しました。ひる　の　ご＃
はん　を　たべて　から、へいえい　を　見せ＃
て　もらひ、弟　へ　へいたいばう　を　おみ＃
やげ　に　買つて、夕方　の　汽車　で　かへ＃
＜Ｐ－０８４＞
りました。＃
二十二　ヒナマツリ　＃
オ花　ハ　オカアサン　ニ　オヒナ樣　ヲ　カ＃
ザツテ　イタダキマシタ。モモ　ノ　花　ガ　花＃
イケ　ニ　サシテ　アリ、ヒシモチ　モ　モウ　＃
ソナヘテ　アリマス。今　オキク　ト　オヒナ＃
樣　ノ　前　ニ　スワツテ　ナガメテ　居マ＃
ス。＃
＜Ｐ－０８５＞
オキク「マア、キレイ　デス　コト。ダイリ樣　＃
ノ　下　ノ　ダン　ニ、弓　ヤ　矢　ヲ　持＃
ツテ　居＃
ル　人　ハ　＃
何　デセ＃
ウ。」＃
オ花「クワ＃
ンヂヨ　ノ　＃
＜Ｐ－０８６＞
リヤウワキ　ニ　カザツテ　アル　ノ　デセウ。＃
ズヰジン　デス。ダイリ樣　ノ　ゴ家來　＃
ダ　サウ　デス。」＃
オキク「五人バヤシ　ノ　一番　右　ニ　居ル　＃
人　ハ　何　ヲ　スル　ノ　デセウ。」＃
オ花「扇　ヲ　持ツテ　居ル　人　デス　カ。ア＃
レ　ハ　ウタ　ヲ　ウタフ　人　ダ　サウ　デ＃
ス。」＃
＜Ｐ－０８７＞
二人　ガ　オ話　ヲ　シテ　居ル　所　ヘ、オ花　＃
ノ　オカアサン　ガ　來マシタ。＃
「ヲバサン、今日　ハ。」＃
「オキク　サン　デス　カ。明日　ハ　オセツク　＃
デス　カラ、學校　ガ　ヒケタラ、スグ　ア＃
ソビ　ニ　オ出デ　ナサイ。オチヨ　サン　モ　＃
オ松　サン　モ　來マス。」＃
「アリガタウ　ゴザイマス。」＃
＜Ｐ－０８８＞
二十三　春　が　來た　＃
春　が　來た、春　が　來た、＃
どこ　に　來た。＃
山　に　來た、里　に　來た、＃
野　にも　來た。＃
花　が　さく、花　が　さく、＃
どこ　に　さく。＃
山　に　さく、里　に　さく、＃
＜Ｐ－０８９＞
野　にも　さく。＃
鳥　が　鳴く、鳥　が　鳴く、＃
どこ　で　鳴く。＃
山　で　鳴く、里　で　鳴く、＃
野　でも　鳴く。＃
二十四　曽我兄弟　＃
曽［そ］我［が］兄弟　は　兄　を　十郎、弟　を　五郎　と　＃
いひました。十郎　が　五つ、五郎　が　三つ　＃
＜Ｐ－０９０＞
の　年　に、父　は　くどう　すけつね　に　こ＃
ろされました。＃
母　は　泣き　ながら　二人　の　子ども　に、＃
「何　と　いふ　くやしい　事　だらう。お前　＃
たち　が　大きく　なつたら、此の　かたき　＃
を　取つて　おくれ。」＃
と　いひました。五郎　は　まだ　小さくて、何　＃
も　分りません　でした　が、十郎　は　なみ＃
＜Ｐ－０９１＞
だ　を　おさへて、＃
「きつと　此の　かたき　を　取つて　見せま＃
す。」＃
と　答へました。＃
九つ　と　なり、七つ　と　なつた　ころ　から　＃
は、遊事　にも、兄　が　弓　を　ひけば、弟　＃
は　たち　を　ふりまはし、早く　強く　なつて、＃
かたき　を　取らう　と　心がけました。けれ＃
＜Ｐ－０９２＞
ども　かたき　の　くどう　は、みなもと　の　＃
よりとも　と　いふ　大將　の　お氣に入り　で、＃
いつも　大ぜい　の　家來　を　つれて　居ます。＃
二人　の　もの　は　なかなか　そば　へ　よる　＃
こと　も　出來ません。くどう　が　東　へ　行＃
けば、兄弟　も　東　へ　行き、西　へ　行け＃
ば、西　へ　行き、長い　間　つけねらひまし＃
た　が、手　を　出す　すき　は　ありません　＃
＜Ｐ－０９３＞
でした。＃
ある　年、よりとも　は　日本中　の　さむらひ　＃
を　引きつれて、ふじ　の　まきがり　を　い＃
たしました。かたき　の　くどう　も　よりとも　＃
の　おとも　を　して　行つて　居ます。兄弟　＃
は　今度　こそ　は　と、母　に　いとまごひ　＃
を　して、ふじ　の　すそ野　へ　急ぎまし＃
た。＃
＜Ｐ－０９４＞
五月二十八日、雨　の　ふる　ばん　の　事　です、＃
二人　は　たいまつ　で　道　を　てらして　＃
くどう　の　やかた　へ　向ひました。＃
今夜　かぎり　の　いのち　と　思つて、＃
十郎「五郎、かほ　を　見せ　よ。」＃
五郎「兄上。」＃
二人　は　たいまつ　を　上げて、つくづくと　＃
かほ　を　見合ひました。＃
＜Ｐ－０９５＞
兄弟　は　くどう　の　やか＃
た　へ　ふみこみました。＃
ふみこんで　見る　と、くどう　＃
は　よく　ね入つて　居ます。＃
ね入つて　居る　もの　を　＃
きる　は　ひけふ　と、＃
「おき　よ、すけつね。曽我＃
兄弟　が　まゐつた。」＃
＜Ｐ－０９６＞
と　名のりました。すけつね　も　人　に　知＃
られた　さむらひ、＃
「心えた。」＃
と、まくらもと　の　刀　を　取つて　おき上＃
らう　と　しました。二人　は　すかさず　う＃
ち取つて、十郎　は　二十二、五郎　は　二十、＃
父　が　うたれて　から　十八年目　に　めで＃
たく　のぞみ　を　とげました。＃
をはり＃
