＜出典＞４２２　　　国定読本　４期２－２
＜Ｐ－０００＞
もくろく　＃
一　　富士　の　山………一　　十二　　鬼ごっこ………七十二　＃
二　　早鳥………四　　十三　　いうびん………七十五　＃
三　　海軍　の　にいさん………十二　　十四　　ニイサン　ノ　入營………八十四　＃
四　　カケッコ………二十一　　十五　　すゞめ………九十　＃
五　　かぐやひめ………二十六　　十六　　白兎………九十二　＃
六　　たぬき　の　腹つゞみ………三十八　　十七　　豆まき………百一　＃
七　　月　と　雲………四十　　十八　　百合若………百七　＃
八　　ヲヂサン　ノ　ウチ………四十七　　十九　　ひなまつり………百二十二　＃
九　　山がら………五十二　　二十　　北風　ト　南風………百二十四　＃
十　　山がら　の　思出………五十四　　二十一　　羽衣………百三十　＃
十一　　大江山………五十六　＃
＜Ｐ－００１＞
　一　　富［ふ］士［じ］　の　山　　＃
あたま　を　　＃
雲　の　上　に　出し、　　＃
四方　の　山　を　　＃
見おろして、　　＃
かみなりさま　を　　＃
下　に　聞く、　　＃
＜Ｐ－００２＞
富士　は　　＃
日本一　の　山。　　＃
青空　高く　　＃
そびえ立ち、　　＃
からだ　に　　＃
雪　の　　＃
＜Ｐ－００３＞
着物　　＃
着て、　　＃
かすみ　の　　＃
すそ　を　　＃
遠く　ひく、　　＃
富士　は　　＃
日本一　の　山。　　＃
＜Ｐ－００４＞
　二　　早鳥　　＃
昔、ある所　に　一本　の　くす　の　木　が　＃
ありました。どんな　力　が、この　木　に　＃
あった　の　でせう、ひる　も　夜　も、ぐんぐ＃
ん　と　のびて　行きました。＃
いつ　の　間　にか、くす　の　木　は、その　＃
高い　こずゑ　に、時々　雲　が　かゝる　ほ＃
＜Ｐ－００５＞
ど　に　なりました。大きな　しげった　枝　は、＃
四方　に　ひろがって、どこ　まで　つゞいて　＃
ゐる　の　か、見きはめ　も　つかない　やう　＃
に　なりました。＃
＜Ｐ－００６＞
毎朝、日　が　出て　も、くす　の　木　の　＃
西がは　に　ある　たくさん　の　村々　は、＃
みんな　日かげ　に　なります。また　夕方　＃
近く　なる　と、東　の　方　の　村々　も、＃
すっかり　日かげ　に　なって　しまひます。そ＃
こで、村々　の　人たち　が　さうだん　して、＃
「あの　くす　の　木　を　切りたふして　しま＃
はう。」と　いふ　こと　に　なりました。＃
＜Ｐ－００７＞
こんな　大きな　木　の　こと　です　から、＃
切る　の　も　大へん　でした。何十人、何百＃
人　の　きこり　が　集って、毎日　毎日　大＃
さわぎ　を　して、やっと　切りたふしました。＃
今度　は、切りたふした　木　を、どう　した＃
ら　よい　か　と　いふ　こと　に　なりまし＃
た。すると、ある　ちゑ　の　ある　おぢいさ＃
ん　が　いひました。＃
＜Ｐ－００８＞
「この　木　を　くりぬいて、舟　を　作ったら　＃
どう　だらう。」＃
「なるほど、よい　かんがへ　だ。」＃
と、みんな　が　いひました。＃
そこで、大ぜい　の　だいく　を　集めて、舟　＃
を　作り　に　かゝりました。さうして、長い　＃
間　かゝって、とう〳〵　一さう　の　舟　を　＃
作り上げました。＃
＜Ｐ－００９＞
いよ〳〵　海　に　うかべて　＃
みます　と、今　まで　見た　＃
こと　も、聞いた　こと　も　＃
ない、大きな　舟　でした。＃
さうして、大ぜい　の　せん＃
どう　が　のりこんで、「えい＃
や、えいや。」と　こぎました　＃
が、おどろいた　の　は、そ＃
＜Ｐ－０１０＞
の　舟　の　早い　こと　でした。せんどうた＃
ち　が、かい　を　そろへて　一かき　水　を　＃
かきます　と、舟　は　七つ　の　大波　を　＃
のり切って、まるで　鳥　の　とぶ　やう　に　＃
早く　走る　の　でした。＃
見て　ゐた　人たち　は、＃
「何　と　いふ　早い　舟　だらう。」＃
「ふしぎな　舟　だ。」＃
＜Ｐ－０１１＞
と　いひました。すると、あの　ちゑ　の　あ＃
る　おぢいさん　が、＃
「いや、ふしぎ　でも　何　でも　ない。あの　＃
ぐん〳〵　と　のびて　行った　くす　の　木　＃
だ。その　力　が　のりうつった　の　だらう。＃
鳥　の　やう　に　早い　から、早鳥　と　＃
いふ　名　を　つけよう。」＃
と　いひました。＃
＜Ｐ－０１２＞
その　のち、早鳥　は、たくさん　の　米　や　＃
麥　や　豆　や　くだもの　を　つんで、みや＃
こ　の　方　へ　たび〳〵　通ひました。＃
日かげ　に　なって　困って　ゐた　村々　も、＃
それから　だん〳〵　ゆたか　に　なって　行っ＃
た　と　いふ　こと　です。　　＃
　三　　海軍　の　にいさん　　＃
＜Ｐ－０１３＞
ぼく　が　べんきゃう　して　ゐる　と、くつ　＃
の　音　が　して、だれ　か　うち　へ　はいっ＃
て　來ました。出て　見る　と、海軍　の　に＃
いさん　でした。＃
にいさん　は、にこ〳〵　しながら　ざしき　＃
へ　上って、おとうさん　に　ごあいさつ　を　＃
しました。うら　の　畠　に　ゐた　おかあさ＃
ん　も、かけて　來て、あたま　から　手ぬぐ＃
＜Ｐ－０１４＞
ひ　を　取りながら、＃
「あゝ、よく　かへって　來た　ね。」＃
と、うれしさう　に　おっしゃいました。＃
にいさん　は、前　より　も　ずっと　色　が　＃
黒く　なって、強さう　に　見えました。＃
おかあさん　が、お茶　を　いれて、＃
「ほんたう　に　しばらく　だった　ね。まあ、＃
一つ　おあがり。」＃
＜Ｐ－０１５＞
と　おっしゃいました。にいさん　は、おいしさ＃
う　に　のみました。ぼく　は　うれしくて、＃
その　まはり　を　とび歩きました。＃
にいさん　は、＃
「勇、大きく　なった　ね。いゝ　子　に　なった。」＃
と　いひました。＃
「ぼく　も、大きく　なったら　海軍　だ　よ、＃
にいさん。」＃
＜Ｐ－０１６＞
と　いふ　と、＃
「さう　だ、海軍　が　いゝ。大ぢゃうぶ　な＃
れる　よ。」＃
と、にいさん　は、ぼく　の　あたま　を　な＃
でて　くれました。＃
ぼく　は、うれしくて　たまりません。にいさ＃
ん　の　ばうし　を　かぶる　と、おとうさん　＃
が、＃
＜Ｐ－０１７＞
「かはいらしい　海軍　だ　な。ばうし　の　＃
おばけ　の　や＃
う　だ。」＃
と　いって、おわ＃
らひ　に　なりま＃
した。ばうし　には、金　で　字　が　書いて　＃
ありました。＃
「大日本、軍、それから　何　と　讀む　の。」＃
＜Ｐ－０１８＞
と　聞きます　と、にいさん　は、＃
「だいにっぽん　ぐんかん　かが。」＃
と　をしへて　くれました。＃
おふろ　に　はいって　から、みんな　一しょ　＃
に　ごはん　を　いたゞきました。＃
にいさん　は、ごはん　を　たべながら　も、＃
しじゅう　にこ〳〵　して　ゐました。さうして、＃
軍かん　や　ひかうき　の、おもしろい　話　＃
＜Ｐ－０１９＞
を　いろ〳〵　と　して　くれました。にいさ＃
ん　の　のって　ゐる　加賀　＃
は、たくさん　の　ひかう＃
き　が　のせて　あって、＃
それ　が、ひろい　かんぱ＃
ん　の　上　から、じいう　＃
に　とんで　行く　の　だ　＃
さう　です。＃
＜Ｐ－０２０＞
「軍かん　と　いって　も、加賀　など　は、＃
動く　ひかうぢゃう　の　やうな　もの　です　＃
ね。」＃
と　いって、にいさん　は　わらひました。＃
おとうさん　は、「ほう、ほう。」と　いひながら、＃
かんしん　して　聞いて　いらっしゃいました。＃
ねる　時　には、ぼく　は　にいさん　と　な＃
らんで　ねました。　　＃
＜Ｐ－０２１＞
　四　　カケッコ　　＃
一年生　ノ　旗取　ガ　スンデ、イヨ〳〵　ボ＃
クタチ　二年生　ノ　カケッコ　ニ　ナリマシ＃
タ。ボク　ハ、ムネ　ガ　ドキ〳〵　シテ　來＃
マシタ。＃
ボクタチ　七人　ハ、出［シュツ］發［パツ］線［セン］　ニ　並ビマシタ。＃
「ヨウイ。」＃
＜Ｐ－０２２＞
ト　先生　ノ　コヱ。＃
「ドン。」＃
聞ク　ガ　早イ　カ、カケ出シマシタ。＃
ソノウチ　ニ、二人　ガ、ボク　ノ　前　ヘ　＃
ヌイテ　出マシタ。＃
「負ケル　モノ　カ。」＃
ボク　ハ、一生ケンメイ　ニ　走リマシタ。＃
「シッカリ。」＃
＜Ｐ－０２３＞
「早ク、早ク。」＃
オウヱン　ノ　コヱ　モ、ゴチャゴチャ　ニ　ナッ＃
テ　聞エマス。＃
モウ　何　モ　見エマセン。ボク　ハ、ムチュウ　＃
デ　走リマシタ。スルト、何　カ　ニ　ツマヅ＃
イテ、ヒドク　コロビマシタ。＃
「シマッタ。」＃
ト　思ヒナガラ、スグ　ハネオキマシタ。ガ、＃
＜Ｐ－０２４＞
モウ　ミンナ　カラ、スッカリ　オクレテ　シ＃
マヒマシタ。＃
「ヨサウ　カ。」＃
ト　思ヒマシタ。シカシ、オトウサン　ガ、＃
「負ケテ　モ　ヨイ　カラ、シマヒ　マデ　走＃
ル　モノ　ダ。」＃
ト　オッシャッタ　ノ　ヲ　思ヒ出シテ、マタ　＃
一生ケンメイ　ニ　走リマシタ。＃
＜Ｐ－０２５＞
「ワア。」＃
ト、手　ヲ　タヽイテ、笑ッテ　ヰル　モノ　モ　＃
アル　ヤウ　デシタ。＃
キマリ　ガ　ワルイ　ト　＃
思ヒナガラ、ボク　＃
ハ　決［ケッ］勝［ショウ］線［セン］　マ＃
デ　走リマシタ。＃
スルト、先生　ガ　＃
＜Ｐ－０２６＞
ニコ〳〵　シテ、＃
「太郎君、エライ　ゾ。コロンデ　モ、ヨク　＃
シマヒ　マデ　走ッタ。カンシン、カンシン。」＃
ト　イッテ、ホメテ　下サイマシタ。　　＃
　五　　かぐやひめ　　＃
竹取のおきな　と　いふ　おぢいさん　が　あ＃
りました。毎日　竹　を　切って　來て、ざる　＃
＜Ｐ－０２７＞
や　かご　を　こしらへて　ゐました。＃
ある日　の　こと、も＃
と　の　方　が　大そ＃
う　光って　ゐる　竹　＃
を、一本　見つけまし＃
た。それ　を　切って、＃
わって　見ます　と、中　＃
に　小さな　女の子　＃
＜Ｐ－０２８＞
が　ゐました。おぢいさん　は　よろこんで、＃
手のひら　へ　のせて　かへりました。さうし＃
て、おばあさん　と　二人　で　そだてました。＃
小さい　ので、かご　の　中　へ　入れて　お＃
きました。＃
この　子　を　見つけて　から、おぢいさん　＃
の　切る　竹　から　は、いつも　お金　が　＃
出て　來ました。それで、おぢいさん　は　だ＃
＜Ｐ－０２９＞
んだん　お金持　に　なりました。＃
この　子　は、ずん〳〵　大きく　なって、三＃
月　ほど　たつ　と、十五六　ぐらゐ　の　美＃
しい　娘　に　なりました。おぢいさん　は、＃
この　子　に　かぐやひめ　と　いふ　名　を＃
つけました。＃
そのうち　に、世間　の　人々　は、かぐやひ＃
め　の　こと　を　聞いて、「じぶん　が　むこ　＃
＜Ｐ－０３０＞
に　ならう。」「私　の　よめ　に　下さい。」と　＃
申しこみました　が、かぐやひめ　は　どうし＃
ても　しょうち　しません。おぢいさん　も、「じ＃
ぶん　の　ほんたう　の　子　で　ない　から、＃
私　の　思ふ　やう　には　なりません。」と　＃
いって　ゐました。のち　には、とのさま　から、＃
おく方　に　したい　と　の　おことば　も　＃
ありました　が、かぐやひめ　は　それ　も　＃
＜Ｐ－０３１＞
おことわり　いたしました。＃
かうして　何年　か　たちました。ある年　の　＃
春　の　ころ　から、かぐやひめ　は、月　の　＃
あかるい　晩　には、月　を　ながめて　何　＃
か　かんがへて　ゐる　やう　でした。八月　＃
の　十五夜　近く　なる　と、こゑ　を　立て＃
て　泣いて　ばかり　ゐました。おぢいさん　＃
や　おばあさん　が、なぜ　泣く　の　か　と　＃
＜Ｐ－０３２＞
聞きます　と、かぐやひめ　は、＃
「私　は、もと　月　の　都　の　もの　で　＃
ございます。長い　間　おせわ　に　なりま＃
した　が、この　十五夜　には、月　の　世＃
界　から　むかへ　に　まゐります　ので、＃
かへらなければ　なりません。みなさん　に　＃
お別れ　する　の　が　つらくて、泣いて　＃
ゐる　ので　ございます。」＃
＜Ｐ－０３３＞
と　いひました。おぢいさん　は　おどろいて、＃
「それ　は　大へん　だ。むかへ　に　來て　＃
も、わたす　もの　か。」＃
と　いひました。＃
おぢいさん　は、何　と　か　して、かぐやひ＃
め　を　ひき止めたい　と　思ひました。さう＃
して、この　こと　を　とのさま　に　申し上＃
げます　と、とのさま　は、＃
＜Ｐ－０３４＞
「それ　では、その　晩　には、兵たい　を　＃
たくさん　やって、月　の　都　の　使　が　＃
來たら、追ひかへして　しまはう。」＃
と　おっしゃいました。＃
いよ〳〵　十五夜　の　晩　に　なりました。＃
おぢいさん　の　家　の　まはり　は、兵たい　＃
が　いくへ　にも　取りかこみました。＃
夜中　ごろ　に　なる　と、急　に、お月さま　＃
＜Ｐ－０３５＞
が　十　も　出た　か　と　思ふ　やう　に、＃
あたり　が　あかるく　なりました。＃
「さあ、來た　ぞ。」＃
と、兵たいたち　は、弓　に　矢　を　つがへ＃
よう　と　しました　が、目　が　くらんで、＃
どう　する　こと　も　出來ません。＃
その　時、たくさん　の　天人　が、雲　に　＃
のって　下りて　來ました。かぐやひめ　も、＃
＜Ｐ－０３６＞
今　は　し方　が　なく、＃
泣いて　ゐる　おぢいさ＃
ん　と　おばあさん　に　＃
向かって、＃
「今　お別れ　申す　こ＃
と　は、まこと　に　＃
かなしう　ございます　＃
が、いたし方　が　あ＃
＜Ｐ－０３７＞
りません。月夜　の　晩　に＃
は、どうか、私　の　こと　＃
を　思ひ出して　下さい。私　＃
も、お二方　の　ごおん　は、＃
けっして　忘れません。」＃
と　いって、天人　の　ようい　＃
して　來た　車　に　のって、空　＃
へ　上って　行って　しまひました。　　＃
＜Ｐ－０３８＞
　六　　たぬき　の　腹つゞみ　　＃
「さあ、さあ、集れ、月　が　出た。　　＃
みんな　で、つゞみ　の　　＃
うちくら　だ。」　　＃
お山　の　上　では、　　＃
親だぬき、　　＃
ぽんぽこ、あひづ　の　　＃
＜Ｐ－０３９＞
腹つゞみ。　　＃
やぶ　の　かげ　から、　　＃
木かげ　から、　　＃
ぬっくり、ぬっくり、　　＃
子だぬき　が、　　＃
出て　來て　お山　へ　集って、　　＃
ずらりと　並んで　わ　に　なった。　　＃
＜Ｐ－０４０＞
空　には　圓い　お月さま、　　＃
ぽっかり　うかんだ　白い　雲。　　＃
月　に　うかれて、腹つゞみ、　　＃
ぽんぽこ、ぽんぽこ　うち出した。　　＃
　七　　月　と　雲　　＃
月夜　の　晩　でした。＃
＜Ｐ－０４１＞
ある所　で、子どもたち　が　五六人　集って、＃
かげふみ　を　して　あそんで　ゐました。＃
そのうち　に、月　に　雲　が　かゝりました。＃
月　は、雲　に　はいった　か　と　思ふ　と、＃
すぐ　出、出た　か　と　思ふ　と、すぐ　ま＃
た　はいります。かう　なって　は、かげふみ　＃
も　出來ません。子どもたち　は　あそぶ　こ＃
と　を　止めて、しばらく　月　を　見て　ゐ＃
＜Ｐ－０４２＞
ました。＃
すると、一人　の　子ども　が　いひました。＃
「あれ　は、お月樣　が　走って　ゐる　の　だ＃
らう　か、雲　が　走って　ゐる　の　だらう　＃
か。」＃
月　は、今　雲　から　出て、大急ぎ　で　は＃
なれて　行きます。さうして、次　の　雲　の　＃
方　へ、どん〳〵　走って　行きます。＃
＜Ｐ－０４３＞
「お月樣　が　走って　ゐる　の　だ　よ。」＃
と、一人　の　子ども　が　いひました。＃
しかし、じっと　月　を　見つめて　ゐます　と、＃
月　は　動かないで、雲　が　大急ぎ　で　と＃
んで　行く　やう　にも　見えます。それで、＃
「お月樣　では　ない。走って　ゐる　の　は　＃
雲　だ。」＃
と　いふ　子ども　も　ありました。＃
＜Ｐ－０４４＞
それから　しばらく　は、「月　が　走る。」「雲　＃
が　走る。」と、たがひ　に　いひはって　ゐま＃
した。＃
みんな　が　わい〳〵　いふ　の　を、始　か＃
ら　だまって　聞いて　ゐた　一人　の　子ども　＃
が　ありました。その　子ども　は、この　時、＃
みんな　から　はなれて、前　の　方　に　あ＃
る　木　の　そば　へ　行きました。さうして、＃
＜Ｐ－０４５＞
しばらく　枝ごし　に　月　を　見て　ゐまし＃
た　が、＃
「こゝ　へ　來たまへ。雲　が　走る　か、お＃
月樣　が　走る　か、よく　わかる　よ。」＃
と　いひました。＃
みんな、木　の　そば　へ　來ました。＃
「こゝ　に　立って、お月樣　を　枝　の　間　＃
から　見たまへ。」＃
＜Ｐ－０４６＞
と、その　子ども　が　いひました。＃
その　通り　に、みんな　が　して　みました。＃
すると、月　は　枝　の　間　に　じっと　し＃
て　ゐます　が、雲　は　さっさと　走って　行＃
きます。＃
「わかった、わかった。走って　ゐる　の　は　雲　＃
だ、雲　だ。」＃
と、みんな　が　いひました。　　＃
＜Ｐ－０４７＞
　八　　ヲヂサン　ノ　ウチ　　＃
川　一ツ　コエテ　向カフ　ノ　村　ニ、ヲヂ＃
サン　ノ　ウチ　ガ　アリマス。キノフ、私　＃
ハ、オカアサン　ノ　オ作リ　ニ　ナッタ　オ＃
ハギ　ヲ　持ッテ、オ使　ニ　行キマシタ。＃
ヲヂサン　ノ　ウチ　デハ、庭　一パイ　モミ　＃
ガ　ホシテ　アッテ、足　ノ　フミバ　モ　ナ＃
＜Ｐ－０４８＞
イ　クラヰ　デシタ。ウチ　ノ　人　ハ　ミン＃
ナ　ルス　デ、オバアサン　ダケ　ガ、日アタ＃
リ　ノ　ヨイ　エンガハ　デ、ツギ物　ヲ　シ＃
テ　イラッシャイマシタ。＃
オバアサン　ハ　耳　ガ　遠イ　ノデ、私　ガ　＃
大キナ　コヱ　デ、＃
「オバアサン、今日　ハ。」＃
ト　イフ　ト、フリカヘッテ、＃
＜Ｐ－０４９＞
「オウ、正チャン　カ。ヨク　來タ　ネ。」＃
ト　オッシャイマシタ。＃
私　ガ、オハギ　ノ　包　＃
ヲ　オ渡シ　スル　ト、＃
オバアサン　ハ、＃
「ソレ　ハ　アリガタ＃
ウ。」＃
ト　イッテ、オ受取リ　＃
＜Ｐ－０５０＞
ニ　ナリマシタ。サウシテ、ユデタ　栗　ヲ、＃
オボン　ニ　一パイ　持ッテ　來テ　下サイマ＃
シタ。＃
ニハトリ　ガ　來テ、ムシロ　ニ　ホシテ　ア＃
ル　モミ　ヲ、時々　カキチラシマス。オバア＃
サン　ガ、「ホウ、ホウ。」ト　イッテ　オ追ヒ　ニ　＃
ナリマス　ト、ニハトリ　ヨリ　先　ニ、スヾ＃
メ　ガ　逃ゲテ　行キマス。＃
＜Ｐ－０５１＞
「モウ　カヘリマス。」＃
ト　私　ガ　イヒマス　ト、オバアサン　ハ、＃
「ケフ　ハ、コンナ　ニ　モミ　ガ　ホシテ　＃
アル　カラ、ヲヂサン　モ、ヲバサン　モ　＃
早ク　カヘル　ヨ。モット　アソンデ　オイデ。」＃
ト　イッテ、オ止メ　ニ　ナリマシタ。シカシ、＃
私　ハ、オソク　ナル　ト　思ッテ、イタヾイ＃
タ　栗　ヲ　持ッテ　カヘリマシタ。　　＃
＜Ｐ－０５２＞
　九　　山がら　　＃
山　で　はた　おる　　＃
山がら　は、　　＃
けふ　も、朝　から、　　＃
とん〳〵　からり。　　＃
松　の　小枝　を　　＃
＜Ｐ－０５３＞
枝　から　枝　へ、　　＃
とんで　移って、　　＃
とん〳〵　からり。　　＃
朝　に　一反、　　＃
つゞいて　二反、　　＃
日　には　八反、　　＃
とん〳〵　からり。　　＃
＜Ｐ－０５４＞
　十　　山がら　の　思出　　＃
私　の　うち　に、山がら　が　一羽　かって　＃
ありました。大そう　よく　なれて、私　の　＃
手　から　ゑ　を　たべる　ほど　に　なって　＃
ゐました。＃
それ　が、かはいさう　に、ある晩、ねずみ　＃
に　足　の　指　を　くひ切られました。＃
＜Ｐ－０５５＞
どんな　にか　ないた　の　でせう　が、う＃
ち　の　もの　は、朝　まで　知らず　に　ゐ＃
ました。＃
きず　を　見て　やらう　と　思って、私　が　＃
かご　の　戸　を　あけます　と、山がら　は　＃
とび出して、竹がき　の　上　に　止って、そ＃
れから、うら　の　山　へ　とんで　行って　＃
しまひました。＃
＜Ｐ－０５６＞
これ　は、私　が　七つ　の　年　の　こと　＃
でした。今　でも、山がら　の　聲　を　聞＃
く　と、まだ　あれ　が　生きて　ゐる　だら＃
う　か、足　の　きず　は　どう　したらう　＃
か　と　思はない　こと　は　ありません。　　＃
　十一　　大江山　　＃
大江山　に、しゅてんどうじ　と　いふ　鬼　が　＃
＜Ｐ－０５７＞
ゐて、時々　都　に　出て　來て　は、物　を　＃
ぬすんだり、女　や　子ども　を　さらったり　＃
しました。＃
都　は　大さわぎ　です。＃
天子樣　は、大そう　ごしんぱい　に　なって、＃
頼［らい］光［くゎう］　と　いふ　えらい　大しゃう　に、しゅて＃
んどうじ　を　たいぢる　やう　に　おいひつ＃
け　に　なりました。そこで、頼光　は、五人　＃
＜Ｐ－０５８＞
の　強い　けらい　を　つれ、山［やま］伏［ぶし］　の　すが＃
た　を　して　出かけました。＃
大江山　に　來て　見る　と、鬼　の　住む　＃
所　だけ　あって、大木　が　こんもり　と　生＃
ひしげり、晝　でも　うすぐらくて、ほんたう　＃
に　ものすごい　山　でした。しかし、みんな　＃
強い　人たち　です　から、びく　とも　せず、＃
けはしい　山道　を　上ったり、深い　谷　を　＃
＜Ｐ－０５９＞
渡ったり　して、だん〳〵　おく　へ　進んで　＃
行きました。＃
しばらく　行く　と、大きな　岩　が　あって、＃
その　そば　に、一人　の　おぢいさん　が　＃
立って　ゐました。さうして、＃
「あなた　は、頼光樣　では　ありません　か。＃
私　は、けふ　あなた　が　こゝ　に　おい＃
で　に　なる　と　聞いて、お待ち　して　＃
＜Ｐ－０６０＞
ゐた　の　です。この　酒　は、鬼　が　の＃
めば　弱く　なり、人間　が　のめば　強く　＃
なる、ふしぎな　酒　です。これ　を　持って　＃
行って、鬼　を　たいぢて　下さい。」＃
と　いって、一つ　の　つぼ　を　渡しました。＃
頼光　は　喜んで、その　つぼ　を　受取りま＃
した。＃
もっと　進んで　行きます　と、今度　は、谷川　＃
＜Ｐ－０６１＞
で、一人　の　＃
若い　女　が、＃
しく〳〵　と　＃
泣きながら、＃
せんたく　を　＃
して　ゐまし＃
た。頼光　が　ふしぎ　に　思って、＃
「なぜ　泣いて　ゐます　か。」＃
＜Ｐ－０６２＞
と　尋ねます　と、女　は、＃
「私　は　都　の　もの　です　が、鬼　に　＃
さらはれて、こゝ　に　來ました。いつ　殺＃
される　か　わかりません。それ　が　かな＃
しくて、泣いて　ゐる　の　です。」＃
と　いひました。頼光　は、＃
「私　は、天子樣　の　おほせ　を　受けて、＃
その　鬼　を　たいぢ　に　來ました。鬼　＃
＜Ｐ－０６３＞
の　ゐる　所　は　どこ　です　か。あんな＃
い　して　下さい。」＃
と　いひます　と、女　は、大そう　喜んで、＃
「まあ、何　と　いふ　ありがたい　こと　で＃
せう。どうぞ、鬼　を　うち取って、私たち　＃
を　お助け　下さい。」＃
と　いって、先　に　立って　道あんない　を　＃
しました。＃
＜Ｐ－０６４＞
やがて、向かふ　に　大きな　鐵　の　門　が　＃
見えました。その　そば　に、鬼　の　番兵　＃
が、鐵　の　ぼう　を　持って　立って　ゐま＃
した。頼光　は、そこ　へ　行って、＃
「私たち　は　山伏　です　が、道　に　まよっ＃
て　困って　ゐます。どうぞ、一晩　おとめ　＃
下さい。」＃
と　いひました。＃
＜Ｐ－０６５＞
鬼　の　番兵　は、一度　おく　へ　はいりま＃
した　が、また　出て　來て、頼光たち　を、＃
しゅてんどうじ　の　ゐる　りっぱな　ごてん　＃
へ　つれて　行きました。＃
しゅてんどうじ　は、けらい　の　鬼ども　を　＃
大ぜい　集めて、酒もり　を　して　ゐました。＃
頼光たち　が　はいって　來る　の　を　見る　＃
と、大きな　目　を　むいて、ぎょろり　と　＃
＜Ｐ－０６６＞
にらみました　が、＃
「山伏たち、とめて　あげよう。ゆっくり　休＃
む　が　よい。」＃
と　いひました。頼光　は、＃
「ありがたう　ございます。私ども　は、毎日、＃
野　や　山　に　ばかり　ねて　ゐました　＃
が、今夜　は、おかげ　で　ゆっくり　休ま＃
れます。ちゃうど　お酒もり　の　さいちゅう　＃
＜Ｐ－０６７＞
の　やう　です　が、＃
私　も　よい　酒　＃
を　持って　ゐます。＃
一つ　めしあがって　＃
下さい。」＃
と　いって、おぢいさん　＃
から　もらった　酒　を　＃
取出しました。＃
＜Ｐ－０６８＞
しゅてんどうじ　は、一口　のんで　みる　と、＃
これ　まで　のんだ　こと　も　ない　やうな、＃
おいしい　酒　です　から、＃
「これ　は　うまい。これ　は　よい　酒　だ。」＃
と　いって、がぶ〳〵　のみました。外　の　鬼＃
ども　も、次々　と　たくさん　のみました。＃
そのうち　に、ふしぎな　酒　の　きゝめ　が　＃
あらはれて、しゅてんどうじ　は、だん〳〵　＃
＜Ｐ－０６９＞
元氣　が　なく　なり、しまひ　には　ぐったり　＃
と　ねて　しまひました。外　の　鬼ども　も、＃
あすこ　へ　二ひき、こゝ　へ　三びき　と、＃
ごろ〳〵　たふれて　しまひました。＃
この　やうす　を　見た　頼光たち　は、持っ＃
て　來た　よろひ　や　かぶと　を　取出して、＃
身じたく　を　しました。＃
頼光　は、しゅてんどうじ　を　呼びおこし、刀　＃
＜Ｐ－０７０＞
を　拔いて、「えい。」と　一聲［せい］、その　首　を　＃
切落しました。ところ　が、首　は　とび上って、＃
口　から　火　を　はきながら、頼光　の　あ＃
たま　に　かみつかう　と　しました。けれど＃
も、頼光　の　いきほひ　に　おそれて、その＃
まゝ　落ちて　しまひました。＃
この　さわぎ　に、外　の　鬼ども　が　目　を　＃
さまして、向かって　來ました　が、頼光たち　＃
＜Ｐ－０７１＞
六人　に、みんな　殺さ＃
れて　しまひました。＃
そこで、頼光　は、しゅ＃
てんどうじ　の　大きな　＃
首　を　けらい　に　か＃
つがせ、さらはれて　來＃
た　女　や　子どもたち　＃
を　つれて、めでたく　都　へ　かへりました。　　＃
＜Ｐ－０７２＞
　十二　　鬼ごっこ　　＃
じゃんけんぽん　よ、　　＃
あひこ　でしょ。　　＃
鬼　が　きまって、ばら〳〵　と　　＃
かけ出し、逃出し、逃げまはり、　　＃
左　へ、右　へ、逃げじゃうず。　　＃
＜Ｐ－０７３＞
うっかり　する　な、　　＃
ゆだん　を　する　な。　　＃
鬼　は　手早　だ、足早　だ。　　＃
すぐ　ねらはれて、つかまる　ぞ。　　＃
それ〳〵　逃げ　ろ、それ　逃げ　ろ。　　＃
鬼さん、ほんと　に　　＃
追っかけじゃうず。　　＃
＜Ｐ－０７４＞
ま一文字　に、追ひかけて、　　＃
急　に　横向、後向、　　＃
つかまへじゃうず、追ひじゃうず。　　＃
つかれた　もの　や　　＃
弱った　もの　は、　　＃
目　に　かけない　ぞ、追はない　ぞ。　　＃
元氣　の　よい　もの、早い　もの、　　＃
＜Ｐ－０７５＞
左　へ、右　へ、それ　逃げ　ろ。　　＃
　十三　　いうびん　　＃
今　まで　はね　を　ついて　ゐた　花子さん　＃
と　雪子さん　は、今度　は、いうびんごっこ　＃
を　する　こと　に　しました。＃
花子さん　は、弟　の　三ちゃん　を　呼んで　＃
來ました。三ちゃん　は　喜んで、赤い　紙　を　＃
＜Ｐ－０７６＞
小さく　切って、切手　を　＃
こしらへました。雪子さ＃
ん　は、はがき　と　ふ＃
うとう　を　こしらへま＃
した。花子さん　は、お＃
かあさん　から　大きな　＃
紙　の　箱　を　いたゞ＃
いて　來て、ポスト　を　＃
＜Ｐ－０７７＞
こしらへました。＃
それから、花子さん　と　雪子さん　は、えん＃
がは　で、兩方　に　分れて　すわりました。＃
三ちゃん　は、まん中　に　ポスト　を　おいて、＃
その　そば　に　すわりました。＃
花子さん　と　雪子さん　は、だまって　何　か　＃
書始めました。その　間　に、三ちゃん　は、か＃
ばん　を　取り　に　行きました。＃
＜Ｐ－０７８＞
三ちゃん　が　もと　の　所　へ　かへって　來＃
ます　と、ポスト　の　中　には、もう　二枚　＃
の　はがき　が　はいって　ゐました。三ちゃん　＃
は、それ　を　かばん　に　入れて、はいたつ　＃
に　出ました。＃
「いうびん。」＃
一枚　を　花子さん　に　渡しました。＃
「いうびん。」＃
＜Ｐ－０７９＞
一枚　を　雪子さん　に　渡しました。＃
花子さん　は、にこ〳〵　して　讀みました。＃
「新年　おめでたう　ございます。」＃
雪子さん　も、受取った　はがき　を　讀んで　＃
みます　と、やっぱり、＃
「新年　おめでたう　ございます。」＃
と　書いて　ありました。＃
「あら、おんなじ　です　ね。」＃
＜Ｐ－０８０＞
と　いって、二人　とも　笑ひました。＃
三ちゃん　が、大きな　聲　で、＃
「もう　ありません　か。あったら、早く　出＃
して　下さい。」＃
と　いひました。＃
花子さん　は、＃
「今度　は、私　が　先　に　書きます　から、＃
雪子さん、ごへんじ　を　下さい。」＃
＜Ｐ－０８１＞
と　いって、手紙　を　書きました。さうして、＃
三ちゃん　の　所　へ　持って　行って、＃
「三錢　の　切手　を　一枚　下さい。」＃
と　いひました。＃
三ちゃん　が　切手　を　渡します　と、花子＃
さん　は、それ　を　はって、ポスト　へ　入れ＃
ました。＃
三ちゃん　は、その　手紙　を　雪子さん　の　＃
＜Ｐ－０８２＞
所　へ　持って　行って、＃
「いうびん。」＃
と　いって、渡しま＃
した。＃
雪子さん　が　あけて　＃
見ます　と、＃
「あした　から、學校　＃
が　始ります　が、また　一しょ　に　行きま＃
＜Ｐ－０８３＞
せう。朝　さそって　下さい。」＃
と　書いて　ありました。＃
雪子さん　は、＃
「お手紙　ありがたう　ございます。きっと　お＃
さそひ　します　から、三ちゃん　と　一しょ　＃
に　待って　ゐて　下さい。」＃
と　書いて、切手　を　はって　ポスト　へ　入＃
れました。　　＃
＜Ｐ－０８４＞
　十四　　ニイサン　ノ　入營　　＃
ケフ　ハ、ニイサン　ガ　入營　スル　日　デ＃
ス。＃
ニイサン　ハ、青年クンレン所　ノ　服　ニ　＃
着カヘマシタ。ソバ　デ、オカアサン　ガ、何　＃
カ　忘レタ　物　ハ　ナイ　カ　ト、イロイ＃
ロ　セワ　ヲ　シテ　イラッシャイマス。ソコ＃
＜Ｐ－０８５＞
ヘ、オトウサン　ガ　ハイッテ　來テ、＃
「シタク　ハ　出來タ　カ。」＃
ト　オッシャル　ト、＃
「ハイ、スッカリ　出來マシタ。」＃
ト、ニイサン　ガ　答ヘマシタ。＃
オザシキ　ノ　方　デハ、シンルヰ　ヤ　近所　＃
ノ　人　ガ　集ッテ、ニギヤカ　ニ　話　ヲ　シ＃
テ　ヰマス。＃
＜Ｐ－０８６＞
八時　ガ　ナッタ　ノデ、ミンナ　ソロッテ　出＃
カケマシタ。氏神樣　ヘ　オマヰリ　ヲ　シテ、＃
ソレカラ　停［テイ］車［シャ］場［ヂャウ］　ヘ　行キマシタ。＃
停車場　デハ、村長サン、校長サン、ザイガウ＃
軍人、青年クンレン所　ノ　人タチ　ガ、大ゼ＃
イ　集ッテ　ヰマシタ。ニイサン　ヲ　見ル　ト、＃
「オメデタウ。」＃
「オメデタウ。」＃
＜Ｐ－０８７＞
ト　イヒマシタ。＃
ニイサン　ハ　ニコ〳〵　＃
シテ、ミンナ　ニ　オ＃
ジギ　ヲ　シマ＃
シタ。＃
間　モ　ナク、＃
汽車　ガ　來マシタ。＃
ニイサン　ハ、元氣＃
＜Ｐ－０８８＞
ナ　聲　デ、＃
「デハ、行ッテ　マヰリマス。」＃
ト　アイサツ　ヲ　シテ、汽車　ニ　乘リマシ＃
タ。＃
私　ガ、大キナ　聲　デ、＃
「ニイサン、ゴキゲン　ヨウ。」＃
ト　イフ　ト、オトウサン　モ　ツヾイテ、＃
「シッカリ　ヤッテ　來イ　ヨ。」＃
＜Ｐ－０８９＞
ト　オッシャイマシタ。＃
汽車　ハ、シヅカ　ニ　動キ出シマシタ。＃
「バンザイ。バンザイ。」＃
ミンナ　ハ、ムチュウ　ニ　ナッテ　サケビマシ＃
タ。＃
ニイサン　ハ、汽車　ノ　マド　カラ、カホ　＃
ヲ　出シテ、何ベン　モ　バウシ　ヲ　フリマ＃
シタ。　　＃
＜Ｐ－０９０＞
　十五　　すゞめ　　＃
木　の　枝　に　　＃
すゞめ　が　三羽。　　＃
雪　が　ちら〳〵　　＃
降って　ゐる。　　＃
ぴったり　と　　＃
＜Ｐ－０９１＞
からだ　を　つけ合って、　　＃
並んだ　すゞめ、　　＃
三羽　の　すゞめ。　　＃
お前　の　うち　は　　＃
どこ　に　ある。　　＃
早く　おかへり、　　＃
日　が　くれる。　　＃
＜Ｐ－０９２＞
　十六　　白兎　　＃
島　に　ゐた　白兎　が、向かふ　の　陸　へ　＃
行って　みたい　と　思ひました。＃
ある日、はまべ　へ　出て　見る　と、わにざ＃
め　が　ゐました　ので、＃
「君　の　仲間　と　ぼく　の　仲間　と、どっ＃
ち　が　多い　か、くらべて　みよう。」＃
＜Ｐ－０９３＞
と　いひました。わにざめ　は、＃
「それ　は　おもしろからう。」＃
と　いって、すぐ　に、仲間　を　大ぜい　連＃
れて　來ました。＃
白兎　は、それ　を　見て、＃
「なるほど、君　の　仲間　は　ずゐぶん　多＃
い　な。これ　では、ぼくら　の　方　が　＃
負ける　か　も　知れない。君ら　の　背中　＃
＜Ｐ－０９４＞
の　上　を　歩いて、＃
かぞへて　みる　から、＃
向かふ　の　陸　まで　＃
並んで　みたまへ。」＃
と　いひました。＃
わにざめ　は、白兎　の　＃
いふ　通り　に　並びま＃
した。白兎　は、「一つ、＃
＜Ｐ－０９５＞
二つ、三つ、四つ。」と　か＃
ぞへて　渡って　行きまし＃
た　が、もう　一足　で　＃
陸　へ　上らう　と　い＃
ふ　所　で、＃
「君ら　は、うまく　だ＃
まされた　な。ぼく　は、こゝ　へ　渡って　＃
來たかった　の　だ。あはゝゝ。」＃
＜Ｐ－０９６＞
と　いって　笑ひました。＃
わにざめ　は、それ　を　聞く　と　大そう　＃
おこりました。一番　しまひ　に　ゐた　わ＃
にざめ　が、白兎　を　つかまへて、からだ　＃
の　毛　を　みんな　むしり取って　しまひま＃
した。＃
白兎　は、痛くて　たまりません　から、はま＃
べ　に　立って　泣いて　ゐました。その　時、＃
＜Ｐ－０９７＞
大ぜい　の　神樣　が　お通り　に　なって、＃
「お前、なぜ　泣いて　ゐる　の　か。」＃
と　お尋ね　に　なりました。白兎　が、今　＃
まで　の　こと　を　申します　と、神樣　は、＃
「それなら、海　の　水　を　あびて、ねて　＃
ゐる　が　よい。」＃
と　おっしゃいました。＃
白兎　は、すぐ　海　の　水　を　あびました。＃
＜Ｐ－０９８＞
すると、痛み　が　一そう　ひどく　なって、＃
どう　にも　たまらなく　なりました。＃
そこ　へ、大國主のみこと　と　いふ　神樣　＃
が　おいで　に　なりました。この　方　は、＃
さきほど　お通り　に　なった　神樣方　の　弟＃
さん　です。兄樣方　の　重い　ふくろ　を　＃
かついで　いらっしゃった　ので、おそく　おな＃
り　に　なった　の　です。＃
＜Ｐ－０９９＞
この　大國主のみこと　も、＃
「お前、なぜ　泣いて　ゐる　の　か。」＃
と　お尋ね　に　なりま＃
した。白兎　は、泣きな＃
がら、また　今　まで　＃
の　こと　を　申しまし＃
た。大國主のみこと　は、＃
「かはいさう　に。早く　川　の　水　で　か＃
＜Ｐ－１００＞
らだ　を　洗って、がま　の　ほ　を　しいて、＃
その　上　に　ころがる　が　よい。」＃
と　おっしゃいました。＃
白兎　が　その　通り　に　します　と、から＃
だ　は、すぐ　もと　の　やう　に　なりまし＃
た。喜んで　大國主のみこと　に、＃
「おかげさま　で、すっかり　なほりました。あ＃
なた　は、おなさけ深い　お方　です　から、＃
＜Ｐ－１０１＞
後　には、きっと　えらい　お方　に　おなり　＃
でせう。」＃
と　申しました。＃
白兎　の　いった　通り、大國主のみこと　は、＃
その　後、えらい　お方　に　おなり　に　な＃
りました。　　＃
　十七　　豆まき　　＃
＜Ｐ－１０２＞
けふ　は　節分　で、豆まき　の　日　です。＃
「今年　から　お前　まけ。」と、おとうさん　が　＃
おっしゃった　ので、ぼく　は　うれしくて　た＃
まりません。＃
おかあさん　は、豆　を　たくさん　いって、ま＃
す　に　入れ、神だな　に　お供へ　に　なり＃
ました。ぼく　は、早く　晩　に　なれば　よ＃
い　と　思ひました。＃
＜Ｐ－１０３＞
だん〳〵　うすぐらく　なる　と、あちら　で＃
も、こちら　でも、豆まき　の　聲　が　聞え＃
ます。おとうさん　が、＃
「良雄、うち　でも　そろ〳〵　始める　か　＃
ね。」＃
と　おっしゃって、神だな　から　ます　を　下＃
して　下さいました。＃
ぼく　は、少し　はづかしかった　が、思ひ切っ＃
＜Ｐ－１０４＞
て、＃
「福　は　内、鬼　は　外。」＃
と　聲　を　はり上げて、豆　を　まきました。＃
方々　の　へや　を　まいて　歩く　と、妹　＃
や　弟　が、後　＃
から　ついて　＃
來て、「きゃっ、＃
きゃっ。」と、＃
＜Ｐ－１０５＞
大さわぎ　を　＃
して　豆　を　＃
拾ひました。＃
ぼく　も、おもし＃
ろく　なって、だん〳〵　＃
大きな　聲　を　出しながら　＃
豆　を　まきました。そのうち　に、うっかり　＃
して、「鬼　は　内、福　は　外。」と　いった　の＃
＜Ｐ－１０６＞
で、みんな　が　どっと　笑ひました。＃
しまひ　に、えんがは　に　出て、「鬼　は　外、＃
鬼　は　外。」と　いひながら、豆　を　庭　に　＃
向かって　ゐせいよく　まきます　と、おかあ＃
さん　が、雨戸　を　ぴしゃり　と　おしめ　に　＃
なりました。＃
それから、みんな　で、豆　を　年　の　かず　＃
だけ　たべました。おかあさん　は、＃
＜Ｐ－１０７＞
「これ　で、ほんたう　に　一つ　年　を　取っ＃
た　の　です　よ。これ　から　もっと　勉＃
強　しなければ　いけません。」＃
と　おっしゃいました。　　＃
　十八　　百［ゆ］合［り］若［わか］　　＃
昔、百合若　と　いふ、弓　の　じゃうずな　＃
大將　が　ありました。＃
＜Ｐ－１０８＞
ある年、外國　の　軍ぜい　が、たくさん　の　＃
舟　に　乘って、攻めよせて　來ました。天子樣　＃
は、百合若　を　お召し　に　なって、＃
「早く　行って、敵　を　追ひはらへ。」＃
と　おっしゃいました。＃
百合若　は、大きな　鐵　の　弓　と　鐵　の　＃
矢　を　持ち、大ぜい　の　けらい　を　連れ＃
て　出かけました。さうして、さかん　に　鐵　＃
＜Ｐ－１０９＞
の　矢　を　射かけました　ので、敵　の　舟　＃
は、次々　に　しづめられ、のこった　舟　は、＃
ちり〴〵　に　なって　逃出しました。そこで、＃
百合若　の　軍ぜい　は、舟　を　出して　追＃
ひかけ　追ひかけ、とう〳〵、敵　の　舟　を　＃
すっかり　追ひはらって　しまひました。＃
かうして、勝ち　に　勝った　百合若　の　軍＃
ぜい　は、もと　の　はまべ　へ　ひきかへす　＃
＜Ｐ－１１０＞
こと　に　なりました。ところが、かへる　と＃
ちゅう　に、きれいな　＃
島　が　ありました　の＃
で、百合若　は、けらい　＃
の　雲太郎　雨太郎　と　＃
いふ　きゃうだい　の　＃
もの　を　連れて、その　＃
島　へ　上って　みまし＃
＜Ｐ－１１１＞
た。そこ　には、美しい　草　が　一めん　に　＃
生え、かはいらしい　鳥　が　おもしろく　歌っ＃
て　ゐました。＃
「あゝ、よい　所　だ。しばらく　こゝ　で　＃
休む　こと　に　しよう。」＃
と　いって、百合若　は、ごろりと　草　の　上　＃
に　ねころびました。＃
長い　間　の　つかれ　が　出た　と　みえて、＃
＜Ｐ－１１２＞
百合若　は、いつ　の　間　にか、ぐっすり　ね＃
こんで　しまひました。さうして、三日　三晩　＃
たって　も、まだ　目　が　さめません　でし＃
た。＃
この　やうす　を　見て、雲太郎きゃうだい　は、＃
ふと　わるい　心　を　おこし、百合若　を　＃
島　に　おきざり　に　して、自分たち　が　＃
大將　に　ならう　と　かんがへました。二人　＃
＜Ｐ－１１３＞
は　舟　へ　かへって、＃
「大將　は、矢　の　きず　が　もと　で、と＃
うとう、この　島　で　おなくなり　に　なっ＃
た。」＃
と　いひふらしました。＃
雲太郎きゃうだい　は、百合若　の　軍ぜい　を　＃
ひきゐて　かへりました。さうして、天子樣　＃
に、＃
＜Ｐ－１１４＞
「百合若　は　うち死　を　いたしました　か＃
ら、私たち　きゃうだい　の　力　で、敵　を　＃
すっかり　追ひはらって　まゐりました。」＃
と　申し上げました。＃
きゃうだい　は、思ひ通り　大將　と　なり、こ＃
れ　まで　百合若　の　ゐた、りっぱな　城　＃
に　住んで、いばって　ゐました。＃
その　後、何年　か　たって　から　の　こと　＃
＜Ｐ－１１５＞
です。なんせん　して、鬼が島　へ　流れつい＃
た　れふし　が、鬼　を　一ぴき　連れて　か＃
へって　來た　と　いふ　うはさ　が　つたはり＃
ました。これ　を　聞いた　雲太郎きゃうだい　＃
は、＃
「それ　は　珍しい　もの　だ。すぐ　連れて　＃
來い。」＃
と、けらい　に　いひつけました。＃
＜Ｐ－１１６＞
連れられて　來た　の　を　見る　と、かみ　＃
も、ひげ　も　ぼう〳〵　と　のび、かほ　も、＃
手足　も　あか　に　うづまって、まるで、こけ　＃
が　生えた　やうな　男　でした。＃
「なるほど、鬼　の　やう　でも　あり、人　＃
の　やう　でも　ある。都　へ　連れて　行っ＃
たら、人　が　珍しがって　見る　だらう。」＃
と　いって、雲太郎きゃうだい　は、その　男　＃
＜Ｐ－１１７＞
に　「こけ丸」と　いふ　名　を　つけ、しばら＃
く　家　に　おく　こと　に　しました。＃
そのうち　に　年　が　かはって、お正月　に　＃
なりました。雲太郎　雨太郎　は、けらい　を　＃
集めて　弓　の　會　を　開きました。＃
雲太郎　が　弓　を　射よう　と　する　時、＃
「あはゝゝ、何　だ、あんな　弓　しか　引け＃
ない　の　か。」＃
＜Ｐ－１１８＞
と、大きな　聲　で　笑ふ　もの　が　ありま＃
した。見る　と、それ　は　こけ丸　でした。＃
雲太郎　は、おこって　いひました。＃
「何　だ、こけ丸。もう　一度　いって　み　ろ。」＃
こけ丸　は、平氣な　かほ　で、＃
「そんな　弓　は、赤んばう　でも　引けませ＃
う。はゝゝ。」＃
と、また　笑ひました。＃
＜Ｐ－１１９＞
「何　を　生いきな。それなら、これ　を　引＃
いて　み　ろ。」＃
と　いって、雲太郎　は、一番　強い　弓　を　＃
渡しました。＃
こけ丸　は、すぐ　それ　を　折って　しまひま＃
した。雲太郎　は　くやしがって、昔　百合若　＃
が　使った　鐵　の　弓矢　を　持出させました。＃
さうして、＃
＜Ｐ－１２０＞
「これ　を　引いて　み　ろ。百合若樣　の　＃
弓矢　だ。引けなかったら、命　が　ない　ぞ。」＃
と　いひました。＃
こけ丸　は、にっこり　笑って　その　弓　を　＃
取上げ、鐵　の　矢　を　つがへて、滿月　の　＃
やう　に　引きしぼりました。急　に、矢先　＃
を　きゃうだい　の　方　へ　向けて、＃
「見忘れた　か。われ　こそ、その　百合若　＃
＜Ｐ－１２１＞
だ。かくご　し　ろ。」＃
と　いひました。＃
二人　は、＃
おどろいて　＃
逃出しまし＃
た　が、すぐ　に　＃
射殺されて　しまひま＃
した。　　＃
＜Ｐ－１２２＞
　十九　　ひなまつり　　＃
まっかな　まうせん、ひ　の　まうせん、　　＃
金　の　びゃうぶ　に、だいり樣、　　＃
＜Ｐ－１２３＞
五人ばやし　や　官女たち。　　＃
かはいゝ　ぼんぼり、桃　の　花、　　＃
あられ　ひしもち　お白酒、　　＃
供へて　けふ　の　ひなまつり。　　＃
友だち　呼んで、にぎやか　に、　　＃
お話　したり、歌ったり。　　＃
＜Ｐ－１２４＞
おひな樣　も　うれしさう。　　＃
　二十　　北風　ト　南風　　＃
北風　ト　南風　ハ、大ソウ　仲　ガ　ワルイ　＃
ヤウ　デス。＃
冬　ノ　間　ハ、寒イ　北風　ガ　ビュウビュウ　＃
ト　吹キマハリマス。サウシテ、雪　ヤ　アラ＃
レ　ヲ　降ラセタリ、水　ヲ　コホラセタリ　＃
＜Ｐ－１２５＞
シマス。＃
シカシ、北風　ガ　少シ　＃
ユダン　ヲ　シテ　ヰル　＃
ト、暖イ　南風　ガ　ソット　＃
ヤッテ　來マス。サウシテ、＃
北風　ノ　作ッタ　雪　ノ　＃
山　ヤ　氷　ノ　池　ヲ、＃
少シ　デモ　トカサウ　ト　＃
＜Ｐ－１２６＞
シマス。スルト、北風　ハ　スグ　南風　ヲ　＃
追ヒハラヒマス。＃
コンナ　コト　ヲ　何ベン　モ　クリカヘシテ　＃
ヰル　ウチ　ニ、冬　ガ　終　ニ　近ヅイテ　＃
來マス。サウシテ、今　マデ　ハ、半分　眠ッ＃
テ　デモ　ヰル　ヤウ　ニ、弱イ　光　ヲ　出＃
シテ　ヰタ　オ日樣　ガ、ダン〳〵　暖イ　光　＃
ヲ　送ル　ヤウ　ニ　ナリマス。＃
＜Ｐ－１２７＞
カウ　ナッテ　來ル　ト、南風　ハ、モウ　前　ノ　＃
ヤウ　ニ　負ケテ　バカリ　ハ　ヰマセン。＃
「北風、オ前　ハ　モウ　北　ノ　國　ヘ　カ＃
ヘッテ　シマヘ。」＃
ト、南風　ガ　イヒマス。スルト、北風　ハ、＃
「ナアニ、マダ　オ前　ノ　出テ　來ル　時　＃
デハ　ナイ。ワタシ　ハ、モウ　一度　オ前　＃
ヲ　追ヒハラッテ、野　ヤ　山　ヲ　マッ白　＃
＜Ｐ－１２８＞
ニ　シテ　ヤル。」＃
ト　答ヘマス。サウシテ、＃
アリッタケ　ノ　力　ヲ　出＃
シテ、南風　ヲ　追立テマ＃
ス。野　ヤ　山　ガ、マタ　＃
雪　デ　マッ白　ニ　ナリ＃
マス。＃
シカシ、南風　ハ　スグ　＃
＜Ｐ－１２９＞
ニ　元氣　ヲ　モリカヘシマス。サウシテ、南　＃
ノ　國　カラ　大ゼイ　ノ　仲間　ヲ　連レテ　＃
來テ、北風　ヲ　ドシ〳〵　ト　追ヒマクリマ＃
ス。雪　デモ、霜　デモ、氷　デモ、カタハシ　＃
カラ　トカシテ、野　ヤ　山　ヲ　暖ク　シマ＃
ス。暖イ　雨　ヲ　何ベン　カ　降ラセマス。＃
スルト、草　ヤ　木　ガ　ダン〳〵　ト　芽　＃
ヲ　フキ、花　ノ　ツボミ　ガ　フクランデ　＃
＜Ｐ－１３０＞
來マス。＃
南風　ハ　イヒマス。＃
「北風　ガ、霜　ヤ　雪　デ、野山　ヲ　マッ＃
白　ニ　シタ　カハリ　ニ、ワタシ　ハ、赤＃
イ　花　ヤ　ミドリ　ノ　若草　デ、野山　＃
ヲ　カザッテ　見セヨウ。」　　＃
　二十一　　羽衣　　＃
＜Ｐ－１３１＞
白い　はまべ　の　　＃
松原　に、　　＃
波　が　寄せたり、　　＃
返したり。　　＃
かもめ　すい〳〵　　＃
とんで　行く、　　＃
空　に　かすんだ　　＃
＜Ｐ－１３２＞
富士　の　山。　　＃
一人　の　れふし　が、三［み］保［ほ］　の　松原　へ　＃
出て　來ました。＃
れふし「あゝ、よい　お天氣　だ。さうして、まあ、＃
何　と　いふ　よい　けしき　だらう。」＃
けしき　に　見とれながら　歩いて　ゐます　＃
と、どこ　から　か、よい　にほひ　が　して　＃
來ました。ふと　見る　と、向かふ　の　松　＃
＜Ｐ－１３３＞
の　枝　に、何　か　きれいな　物　が　かゝっ＃
て　ゐます。＃
れふし「おや、あれ　は　何　だらう　な。」＃
れふし　は、そば　へ　寄って、よく　見まし＃
た。＃
れふし「着物　だ。こんな　きれいな　着物　は、＃
まだ　見た　こと　が　ない。持って　かへっ＃
て、うち　の　たから物　に　しよう。」＃
＜Ｐ－１３４＞
れふし　は、その　着物　を　取って、持って　＃
行かう　と　しました。すると、その　松　の　＃
木　の　後　から、一人　の　女　が　出て　＃
來ました。＃
女「もし、それ　は　私　の　着物　で　ござ＃
います。どうして　お持ち　に　なる　の＃
で　ございます　か。」＃
れふし「いや、これ　は　わたし　が　拾った　の　＃
＜Ｐ－１３５＞
です。持って　かへって、うち　の　たから物　＃
に　しよう　と　思ひます。」＃
女「それ　は、天人　の　羽衣　で、あなた方　＃
には　ご用　の　ない　物　で　ございます。＃
どうぞ、お返し　下さいませ。」＃
れふし「天人　の　羽衣　なら、なほさら　お返し　＃
は　出來ません。日本　の　たから物　に　＃
します。」＃
＜Ｐ－１３６＞
天人「それ　が　ない　と、私　は　天　へ　か＃
へる　こと　が　出來ません。どうぞ、お返＃
し　下さいませ。」＃
れふし「いや、いけません。返されません。」＃
れふし　は、どうして　も　返しません。天＃
人　は、悲しさうな　かほ　を　して、じっと　＃
空　を　見上げました。＃
天人　の　しをれた　やうす　を　見て、れふ＃
＜Ｐ－１３７＞
し　も　きのどく　に　思ひました。＃
れふし「あんまり　おきのどく　です　から、羽衣　＃
を　お返し　いたしませう。」＃
天人「それ　は　ありがたう　ございます。では、＃
こちら　へ　いたゞきませう。」＃
れふし「お待ち　下さい。その　代り　に、天人　＃
の　まひ　を　まって　見せて　下さいません　＃
か。」＃
＜Ｐ－１３８＞
天人「おかげ　で　天　へ　かへられます。おれ＃
い　に　まひ　を　いたしませう。でも、そ＃
の　羽衣　が　ない　と、まふ　こと　が　＃
出來ません。」＃
れふし「と　いって、羽衣　を　お返し　したら、＃
あなた　は、まはず　に　かへって　おしまひ　＃
に　なる　でせう。」＃
天人「いゝえ、天人　は　けっして　うそ　を　申＃
＜Ｐ－１３９＞
しません。」＃
れふし「あゝ、はづかしい　こと　を　申しました。」＃
れふし　は　羽衣　を　返しました。天人　は、＃
それ　を　着て、しづか　に　まひ始めました。　　＃
天人「月　の　都　の　　＃
天人たち　が、　　＃
黒い　衣　の　　＃
そろひ　で　まふ　と、　　＃
＜Ｐ－１４０＞
月　は　まっ黒、　　＃
やみ　の　夜。　　＃
月　の　都　の　　　＃
天人たち　が、　　＃
白い　衣　の　　＃
そろひ　で　　＃
まふ　と、　　＃
＜Ｐ－１４１＞
月　は　十五夜、　　＃
まん圓い。」　　＃
天人　は、まひながら　＃
だん〳〵　天　へ　上って　＃
行きました。＃
右　に、左　に　　＃
ひら〳〵　と、　　＃
動く　たもと　の　　＃
＜Ｐ－１４２＞
美しさ。　　＃
白い　はまべ　の　　＃
松原　に、　　＃
波　が　寄せたり、　　＃
返したり。　　＃
いつ　の　間　に　やら　　＃
＜Ｐ－１４３＞
天人　は、　　＃
春　の　かすみ　に　　＃
包まれて。　　＃
かもめ　すい〳〵　　＃
とんで　行く、　　＃
空　に　ほんのり　　＃
富士　の　山。　　＃
＜Ｐ－１４４＞
終　　＃
