＜出典＞６４１　　　国定読本　６期４－１
＜Ｐ－００２＞
もくろく　　＃
一　　校門のかしの木………四　　＃
二　　手ということば………十一　　＃
三　　もんしろちょう………十六　　＃
（一）　　＃
（二）　　＃
（三）　　＃
（四）　　＃
（五）　　＃
四　　汽車の中………三十四　　＃
＜Ｐ－００３＞
（一）　　＃
（二）　　＃
五　　作文………四十七　　＃
（一）　　＃
（二）　　＃
（三）　　＃
六　　月明かり………六十九　　＃
七　　にげたらくだ………七十四　　＃
一の場面　　＃
二の場面　　＃
八　　うさぎ日記………八十六　　＃
＜Ｐ－００４＞
一　　校門のかしの木　　＃
夜明けの風が流れてくる。中庭のキャベツ＃
が、なたねが、やぎ小屋が、ぼうっとあらわ＃
れる。どこかで小鳥が鳴いた。チチ、チチ、＃
ピークイ、ピークイ、チチ、チチ。教室のま＃
どは、まだねむりがふかい。＃
校門のかしの木は、目をさまして、しずかにしんこきゅう＃
をした。＃
「さあ、きょう、いちばんはじめにくるのは、だれかな。」＃
かしの木は、子どもたちのことを、まず思いうかべる。＃
＜Ｐ－００５＞
「あの白いブラウスの女の子かな。かばんをカチャカチャ鳴＃
らして、走ってくる男の子かな。」＃
朝日の光がななめにさしてきた。校舍の半分が光った。校＃
庭のつゆもいっぺんに光った。白いちょうが、ういたりしず＃
んだりしながら、光の中をおよいでいたが、こんどは、思い＃
きり高くとんで、屋根をこえて、うすべに色の空にきえた。＃
「きたきた。やっぱりあの男の子だった。きょうは、ぼうし＃
をかぶっているな。赤い運動ぼうだ。」＃
かばんをカチャカチャ鳴らして、げたばこのかげにかくれ＃
た。つぎからつぎへと、子どもたちがやってくる。学校じゅ＃
うは、いちどに花がさいたようだ。＃
＜Ｐ－００６＞
あちこちのまどがあいて、教室も目がさめた。わらい声が＃
はじける。オルガンがひびく。＃
カラン、カラン、カラン。おけいこがはじまった。＃
「はい。」「はい。」「はい。」＃
「先生。」「先生。」＃
えんどうの花が、風もない＃
のにゆれている。＃
「もう帰る子がある。一年生＃
だ。手をつないで校門をで＃
＜Ｐ－００７＞
ていく子ども、かたを組ん＃
で話しながらでていく子ど＃
も、ならったばかりの唱歌＃
を、大きな声で歌っていく＃
子ども、なんども手をふり＃
ながら、先生にさようなら＃
をして走って帰る子ども。＃
一どでいいから、風になりたい。風になったら、学校の中＃
を、ちょっとひとまわりするのだ。ろうかをすうっと通っ＃
てみたり、かいだんをトントンあがってみたり、こうどう＃
をのぞいてみたり、みんなが勉強する教室にはいって、こ＃
＜Ｐ－００８＞
しかけてみたり――」＃
かしの木は、きょうもそんなことを考えた。＃
そうじがはじまった。渡りろうかをとおる足音がきこえる。＃
バケツの音もする。水の音もする。学校のにおいがしてくる。＃
しおがひくように、子どもたちが、さっと、学校からいな＃
くなってしまった。教室のまどは、どこもまぶたをとじる。＃
すずめが、ときどき、チュンチュンと鳴く。その声が校庭に＃
ひびきわたる。＃
やぎが、つまらなそうに、夕やけの空をながめている。＃
しゅくちょく室にひがともった。白いカーテンが黄色くみ＃
＜Ｐ－００９＞
える。そこからラジオがきこえてくる。＃
星のちらばった青い夜空は、子どものクレヨン画と同じだ。＃
「わたしをうえてくれた卒業生たちは、どこにどうしている＃
だろう。もう、四十五年にもなる。あの日からきょうまで、＃
わたしのみたこと、きいたことを話したら、いくつあるだ＃
ろう。アラビアンナイトのように、いろいろな話がある。＃
春には春の話、秋には秋のものがたり。なん百人の子ども＃
の顏、なん千人の子どもの心。毎年、新しく入学した子ど＃
もたちが、わたしのそばへやってきた。毎年、新しい卒業＃
生たちが、わたしのそばからさっていった。」＃
おぼろ月が空にかかっている。さくらの花が、白くうかん＃
＜Ｐ－０１０＞
でみえる。＃
「渡しもりは、渡し船に子どもが乘ると、こっ＃
ちの岸から向こうの岸へ、船をこいでいく。＃
渡し終ると、またひき返して、新しい子ど＃
もを乘せ、向こう岸へ運ぶ。先生のおしご＃
とは、渡しもりのようなものだ。」＃
しゅくちょく室のひがきえた。夜つゆがおりてきた。＃
かしの木は、あくびを一つして、しめっぽくなった葉をふ＃
るわせ、それから、ねむりにおちていった。　　＃
＜Ｐ－０１１＞
二　　手ということば　　＃
「手がよごれていますよ。」＃
「手がつけられません。」＃
「手がたりない。」＃
同じ「手」ということばにも、いろいろなつかい＃
かたがあります。＃
じょうずなできばえをみたとき、感心して、思わず手をた＃
たきます。＃
このときの「手」は、てのひらをさしています。「手をうつ」の「手」＃
も、「手をあわせる」の「手」も、これと同じつかいかたです。＃
＜Ｐ－０１２＞
ところが、「かごの手」とか、「なべの手」となると、人の手では＃
ありません。これは、持つところということになります。＃
また、「あさがおに手をやりましょう。」とい＃
うときの「手」は、またすこしちがいます。これ＃
は、あさがおのだしている手のことではあり＃
ません。あさがおのつるがまきつくように立＃
ててある、竹や木のことをいうのです。＃
「きゅうりの手」や「豆の手」なども、同じです。＃
「手ならいをはじめましょう。」＃
「だいぶ手があがった。」＃
このときの「手」は、文字を書くことをさしていますが、どう＃
＜Ｐ－０１３＞
して、「手」ということばが、文字を書くことになってきたので＃
しょう。＃
「手をつくす。」＃
「いますこし、手をいれてみよう。」＃
「新しく手をつけた。」＃
このようなときの「手」は、どんないみにつかわれているので＃
しょう。＃
それとよくにたつかいかたで、「まいの手」といったり、「この＃
手でやってみよう。」とかいったりします。＃
私どもの手が、さまざまなはたらきをするように、「手」とい＃
うことばも、さまざまなはたらきをしてくれます。＃
＜Ｐ－０１４＞
つぎの「手」は、どんなつかいかたでしょうか。＃
「ゆく手に、まつの木が立っています。」＃
「すばらしいものを手にいれたね。」＃
「そんなに、手をやかせるな。」＃
「ちょっと、手にあまるしごとだな。」＃
「手にとるようによくわかる。」＃
同じことばで、ちがったつかいかたがあるのは、「手」だけで＃
はありません。＃
「腹がいたみだした。」＃
「腹をたてるな。」＃
「腹に思っていることと、いうこととが、ちがう人がある。」＃
＜Ｐ－０１５＞
「腹をかかえてわらった。」＃
「腹のすわった人だな。」＃
これは、「腹」ということばを、いろいろにつかったばあいを、＃
しめしたものです。＃
「はなが高い。」「はなをならす。」＃
「口をだすな。」「口ごたえする。」＃
「はがゆい。」「はがたたない。」＃
私たちのからだの名まえに、このような、いろいろなつか＃
いかたがあるのは、おもしろいではありませんか。　　＃
＜Ｐ－０１６＞
三　　もんしろちょう　　＃
（一）　　＃
「ちょうちょ、ちょうちょ、なの葉にとまれ。」の音樂が、ひび＃
いてくる。＃
学校の運動場に、子どもたちが集まっている。＃
子どもたち「先生、早くでかけましょう。」＃
先生「じゃあ、でかけよう。はん長は、めいめいのはんのに＃
んずをかぞえたかね。」＃
はん長たち「はい。」「はい、しらべました。」＃
はん長一「先生、きょうは風がありませんから、ちょうちょが、＃
＜Ｐ－０１７＞
たくさんとんでいるでしょう。」＃
先生「よくおぼえていたね。風のない日は、ちょうちょがよ＃
くでるのだったね。さあ、出発しよう。」＃
「ちょうちょ、ちょうちょ、なの葉にとまれ。」の唱歌が、きこ＃
えてくる。　　＃
（二）　　＃
女の子一「このまえより、なの花がへっているわ。」＃
女の子二「そうね。」＃
女の子一「なぜかしら。」＃
女の子三「花がちって、実がつきはじめたからでしょう。」＃
＜Ｐ－０１８＞
女の子四「先生、この実はなにに＃
するんですか。」＃
先生「そんなに実をとっちゃ＃
いけない。よくみのっ＃
てから、油をとるんだ＃
からね。てんぷらは、＃
これであげるんだ。」＃
女の子一「あら、そうですか。」＃
男の子二「ああ、とんでる、とん＃
でる。きょうは、ずい＃
ぶんとんでるなあ。」＃
＜Ｐ－０１９＞
先生「あぶないよ。川に落ちないように。」＃
男の子三「このまえきたときは、風が強かったから、ちょうちょ＃
がでなかったんですね。」＃
女の子二「それに寒かったし。」＃
男の子一「先生、風の日は、ちょうちょは、どこにかくれている＃
んですか。」＃
先生「しげった草むらの中に、かくれているのさ。」＃
子どもたちは、小さな橋を渡る。＃
男の子四「先生、こっちの白い花のはたけは、なんのはたけです＃
か。」＃
先生「知っている人――」＃
＜Ｐ－０２０＞
子どもたち「はい。」「はい。」＃
先生「きしもとくん。」＃
きしもと「だいこんばたけです。」＃
先生「そうだ。よく知っているね。」＃
きしもと「私のうちでは、だいこんを、庭に二十本うえたんです。＃
そのうち、たねをとるために、一本だけのこしておき＃
ましたら、それが、いまちょうど、こんな白い花をつ＃
けています。」＃
先生「それで知っているんだね。」＃
女の子三「あっ、白いちょうちょがとんできた。」＃
男の子三「白いちょうちょが、白い花にとまった。」＃
＜Ｐ－０２１＞
男の子四「あっ、こっちにも。」＃
女の子四「あっちにも。」＃
先生「とまっているちょうちょが、どんなかっこうをして、＃
みつをすうか、よくごらん。ひとりびとり、ばらばら＃
にわかれて、そっとね。」＃
子どもたち「はい。」　　＃
（三）　　＃
きしもとくんの家。きしもとくんが、弟のはるおくんと、＃
ふたりで、本をよんでいる。日曜日のはれた朝。＃
はるお「にいちゃん。また、すずめがおりてきたよ。」＃
＜Ｐ－０２２＞
兄「しずかにして、みていてごらん。」＃
すずめは、ぴょんぴょんとんで、庭のはたけの中を歩く。＃
兄「すずめが、だいこんの葉をみているよ。」＃
ささやくように、＃
はるお「にいちゃん、すずめはなにしにくるの。」＃
すずめが、ぱっと、とんでにげる。＃
兄「はるお、あまり大きな声をだすから、にげちゃったよ。」＃
はるお「ねえ、にいちゃん。なにしにくるの。」＃
兄「あおむしをさがしにくるのさ。」＃
はるお「あおむしをとって、どうするの。」＃
兄「子すずめにやるのさ。」＃
＜Ｐ－０２３＞
はるお「子すずめ、あおむしをたべるの。」＃
兄「だいすきさ。」＃
そのとき、おかあさんがおいでになる。＃
母「なにしてるの。おさらいを早くすませてから、お遊び＃
なさい。」＃
兄「おかあさん、あおむしのことを、話していたんですよ。」＃
母「そう、それもお勉強ですね。あなたは、きょう、しい＃
くびんのなっぱを、とりかえましたか。」＃
兄「あ、わすれていた。もう、おさらいがすんだから、あ＃
おむしのせわをしよう。はるお、だいこんの葉を一ま＃
いとってきてね。ぼくは、びんの中をそうじして、砂＃
＜Ｐ－０２４＞
に水をやるから。」＃
はるおは、だいこんの葉をとってくる。兄は、しいくびん＃
の中の砂に水をやる。＃
はるお「はい、だいこんの葉――どうして、葉を砂の中に立て＃
るの。」＃
兄「かれないようにさ。」＃
はるお　感心したように、「ふうん。」＃
兄「さあ、あおむしくん、新しいごちそうだ。」＃
兄は、二センチほどに大きくなったあおむしを、新しい葉＃
にうつす。＃
兄「ねえ、おかあさん。先生も、あおむしをかっていらっ＃
＜Ｐ－０２５＞
しゃるって。」＃
母「あおむし、大きくなりましたね。たまごをとってしら＃
べてから、なん日ほどたっているかしら。」＃
兄「ちょっとまってください。日記帳をみますから。」＃
日記帳をみながら、＃
兄「たまごから小さい虫になるのに、七日かかっています。＃
それから十日すぎて、からだが黒っぽかったのが、青＃
くかわってきたんですよ。」＃
母「はっぱと同じ色になったのね。どうして、はっぱと同＃
じ色になるのか、わかりますか。」＃
兄「どうしてかしら。」＃
＜Ｐ－０２６＞
はるお「にいちゃん、わからないのかい。」＃
兄「なまいきいうな、はるお。」＃
母「これこれ、そんなこと。ねえ、はっぱと同じになるの＃
は、鳥などに、すぐみつからないためですよ。」＃
兄「あ、そうか。」　　＃
（四）　　＃
それから、いく日かたったある日の午後。＃
はるお「にいちゃん、にいちゃん。」＃
兄「どうしたのさ。」＃
はるお「あおむしが、へんな色にかわっている。」＃
＜Ｐ－０２７＞
兄「ほんとうだ。おかあさん。黄色になっちゃった。」＃
母「さなぎになったのですよ。先生は、あおむしがさなぎ＃
になるって、教えてくださらなかったの。」＃
兄「いいえ、どうなるか、みんな自分でしらべるようにと、＃
おっしゃっただけです。」＃
母「先生は、いいことをおっしゃいましたね。なんでも、＃
自分でみつけていきましょうね。」＃
はるお　さなぎをふしぎそうにみながら、「これ、死んでいるの。」＃
母「いいえ、生きていますよ。これから、どうかわるでしょ＃
うね。」＃
兄「観察日記に、さっそく、これを写生しておこう。」　　＃
＜Ｐ－０２８＞
（五）　　＃
きしもとくんが学校から帰ってくる。＃
兄「おかあさん、ただいま。はるおは。」＃
母「はるおは、さっきから、おもてで遊んでいますよ。」＃
兄「おかあさん。」＃
母「――」＃
兄「きょうね、國語の時間に、先生にほめられたの。」＃
母「どうして。」＃
兄「あおむしがさなぎになったところを書いたのが、よく＃
できたって。」＃
＜Ｐ－０２９＞
母「それはよかったね。どんなふうに書いたの。」＃
兄「よんでみましょうか。」＃
母「よんでちょうだい。」＃
兄「自轉車のチューブのようにふわふわした、黒っぽい、＃
かわいいあおむしは、だいこんのはっぱと同じ色にか＃
わっていた。それは、すずめたちにたべられないため＃
だと、おかあさんが教えてくださった。ぼくは、あお＃
むしは、かくれみのをきているようなものだと思った。＃
ぼくは、学校から帰ると、だいこんのはっぱを、とり＃
かえてやるのが樂しみだ。きのう、学校から帰ってみ＃
ると、あおむしは、もう黄色なさなぎにかわっていた。＃
＜Ｐ－０３０＞
弟が、ぼくよりさきに、それをみつけた。」＃
そこへ、はるおが帰ってくる。＃
はるお「にいちゃん、帰っていたの。まだかと思った。」＃
母「いま、にいさんに日記をよんでもらっていたところよ。＃
きょう、先生にほめられたんですって。」＃
はるお「いいな、にいちゃん。」＃
兄「さあ、はるお、いっしょに遊ぼう。」＃
立ちあがりながら、なにげなく、しいくびんをみる。＃
兄「おやっ、おかあさん、おかあさん。」＃
大きな声をたてる。＃
母「どうしたんです。そんな大きな声をだしたりして。」＃
＜Ｐ－０３１＞
はるお「にいちゃん、な＃
あに。」＃
兄「ちょうになった、＃
ちょうになった。」＃
はるお「ほんとうだね、＃
にいちゃん。」＃
母「まあ、まあ。」＃
しずかな音樂がはじまる。＃
母「白いえのぐにみどりをとかしたような、美しい羽です＃
こと。」＃
兄「あの羽をしぼったら、きれいなしるがでそうね。」＃
＜Ｐ－０３２＞
母「おかあさんも、こんなところをみるのは、はじめてで＃
すよ。もんしろちょうのおたんじょうね。」＃
兄「羽をふるわせている。」＃
母「空氣にふれて、すこしずつのびるのね。」＃
なごやかな音樂がつづく。はるお、おかしな声で、＃
はるお「おや、ひげをはやしてる。」＃
兄「ほんとう――ひげだね。」＃
はるお「あかんぼのくせに、ひげなんか。」＃
兄「ほんとうにきれいね。おかあさん、花よりきれいね。」＃
はるお「ふしぎだな。あんなあおむしが。」＃
兄「おかあさん、死ぬといけないから、ここからだして、＃
＜Ｐ－０３３＞
庭のだいこんの葉に、うつしてやりましょうね。」＃
母「それがいいわ。」＃
はるお「にいちゃん、早くいこう。」＃
兄「きっと、とびだすよ。さあ、はるお、おいで。」＃
兄弟ふたりが、いま生まれたばかりのちょうちょを、しい＃
くびんからとりだす。庭には、日光が降りそそいでいる。＃
母は、ふたりの兄弟をながめている。＃
明かるい音樂。　　＃
＜Ｐ－０３４＞
四　　汽車の中　　＃
（一）　　＃
汽車の中は、人でいっぱいでした。＃
「もうすこし、中へはいれませんか。」＃
「そんなにおしたって、だめですよ。」＃
むりにわりこもうとする男の人もあり、足をふまれて、お＃
こっている女の人もありました。＃
私と弟のさぶろうは、乘るには乘ったものの、動くことさ＃
えできません。＃
私は、さぶろうの手をしっかりにぎり、さぶろうは、私の＃
＜Ｐ－０３５＞
からだにすがりついていました。それでも、汽車がゆれるた＃
びに、前後からおされて、さぶろうは、だんだん頭を私によ＃
せ、おしまいには、私とさぶろうとは、まるで、一つからだ＃
になってしまうかと、思われるほどでした。＃
私は、ありったけの力をだして、さぶろうをかばうように＃
両手をつっぱりました。＃
家をでるとき、おかあさんに、＃
「だいじょうぶです。おばさんのうちへは、もう二どもいっ＃
たことがあるのですもの。それに、乘りかえもないし、二＃
時間ほどでつくのですから。」＃
とうけあって、さぶろうをつれてきたのでした。＃
＜Ｐ－０３６＞
「もうすこし、中へいれてくださいませんか。」＃
「だめだよ。とてもはいれないね。」＃
私は、ほんとうに困ってしまいました。＃
「さぶろうさん、もうすこし、がまんしていらっしゃい。」＃
私はそういって、どうぞぶじにつきますようにと、心の中＃
でいのっていました。＃
「ここに子どもがいる。かわいそうだ。」＃
頭の上で声がしました。すぐうしろのおばさんも、＃
「どうかして、中へいれてやれませんかしら。」＃
と、心配そうにいいました。＃
すると、なんだか、まわりがすこしゆるやかになり、から＃
＜Ｐ－０３７＞
だがらくになったような氣がしました。私は、さぶろうのか＃
たに手をかけて、＃
「さぶろうさん、だいじょうぶ。」＃
ときいてみました。人ごみのうすぐらい中で、さぶろうは、＃
元氣よくにこっと、私をみあげました。＃
だれかが、＃
「頭はとうきょう、足はおおさか。」＃
といったので、みんながわっとわらいました。＃
そのとき、ふと上を向くと、私のよこのわかい男の人が、＃
ただひとり、わらいもせずに、両方の手でまどわくをおして＃
います。私たちのために、せいいっぱいの力で、すきまをこ＃
＜Ｐ－０３８＞
しらえてくれていたのです。私は、思わず、＃
「どうもありがとうございます。」＃
と、頭をさげました。＃
「さあ、いまのうちに、さきの方へいらっしゃい。」＃
うしろのおばさんがいってくれましたので、私は、人と人＃
のあいだをかきわけていこうとし＃
ました。しかし、弟の手をひいて＃
いるので、ひとあしすすむにも、＃
よういではありません。＃
そのとき、そのわかい男の人が、＃
「さあ、リレーにしよう。」＃
＜Ｐ－０３９＞
といったかと思うと、いきなりさ＃
ぶろうをだきあげ、となりのおじ＃
さんの目のまえへ、つきだしまし＃
た。おじさんは、わらいながらさ＃
ぶろうを受けとって、つぎの人に＃
渡しました。それから、つぎから＃
つぎへ、「よいしょ。」「よしきた。」「そ＃
れっ。」と、送ってくれました。＃
はじめ、さぶろうは、足をちぢめて、心配そうに私の方を＃
みていましたが、三人め、四人めと、高いところをメデシン＃
ボールのように送られていくうちに、にこにこ顏になり、と＃
＜Ｐ－０４０＞
うとう、うれしそうに、声をたててわらいました。＃
乘客は、高いところを渡っていくさぶろうを、おもしろそ＃
うに、みおくっていました。＃
私は、いそいで、さぶろうのあとを追いかけました。＃
三郎は、だれかにゆずってもらった座席の上に立って、＃
「ねえさん、こっち。」＃
と、私を手まねきしています。＃
私は、さぶろうの方に近よりながら、車中の人たちに、心＃
の中でお礼をいいました。　　＃
（二）　　＃
＜Ｐ－０４１＞
私は、Ｄ・Ｄ・Ｔを、頭から、首すじから、せなかから、腹ま＃
でふりまかれて、ちょうど、かふんにまみれたみつばちのよ＃
うになって、汽車でねむっていた。＃
ふいに、はくしゅがおこった。目をさますと、向こうの席＃
にひとりの青年が立っていた。かれは、むねに、大きなぴか＃
ぴかしたアコーデオンをだいて、ワルツの曲をひきはじめた。＃
汽車は、かなり早く走っているので、青年のからだはゆれて＃
いたが、ひく手にくるいはなかった。かるやかなしらべは、＃
朝の光のように氣持よく、車中のすみからすみまで流れた。＃
青年は、つづいて日本の子もりうたをひきはじめた。ごく＃
ありふれた曲であったが、旅をしてきた私には、しみじみと＃
＜Ｐ－０４２＞
きかれた。＃
汽車はトンネルに＃
はいった。しかし、＃
青年は、ひく手をや＃
めないで、いっしん＃
にひきつづけていた。＃
トンネルをでたと＃
き、向こうの席で、＃
「みなさん。」＃
と、大きな声をだした人があった。みると、しらがの老人で＃
ある。＃
＜Ｐ－０４３＞
「みなさん、たいへんさしでがましいことですが、わたしに＃
ちょっと話をさせてください。」＃
車中の人たちは、みんなこの老人をみた。＃
「わたしは、終戰後、いつも心さびしい旅をしていました。＃
けれども、きょうは、樂しい旅行をしております。どこの＃
どなたかはぞんじませんが、樂しい音樂をきかせてくださ＃
る心持を、ほんとうにありがたく思います。はなはだです＃
ぎたことかもしれませんが、このかんしゃの氣持を、あら＃
わしたいとぞんじます。みなさん、いかがでしょう。」＃
はくしゅが四方からおこった。＃
そこで、老人は、自分のかぶっていたぼうしを、そばの人＃
＜Ｐ－０４４＞
の手に渡した。ぼうしは、つぎつぎと人々の手を渡り、お金＃
がその中にたまった。私のまえにもぼうしがきた。私も喜ん＃
で、いくらかのお金をそれにくわえた。＃
車中をひとまわりすると、ぼうしは、ふたたび、しらがの＃
老人のところにもどった。老人は、＃
「ごあいさつをします。」＃
といって、青年のまえにすすみでた。＃
「たいへん失礼だと思いますが、これは、車中の人たちのこ＃
ころざしであります。お受けとりください。」＃
青年はにっこりわらった。＃
「みなさん、ありがとうございます。」＃
＜Ｐ－０４５＞
ここで、ちょっとことばを切った。＃
「でも、わたしは、こんなことになろうとは、思っていませ＃
んでした。また、こんなつもりでひいたのでもありません。＃
ただ、たいくつまぎれにひいたのです。せっかくのおここ＃
ろざしですが、このお金はいただきかねます。」＃
そういってから、老人にぼうしを返した。それから、二三＃
どのおし問答が、ふたりのあいだにとりかわされた。＃
おしまいに、青年は、大きな声で、＃
「では、ありがたくいただきます。」＃
といって、おじぎをした。＃
「それでは、お礼にわたしのいちばんとくいな曲を、一曲ひ＃
＜Ｐ－０４６＞
きましょう。」＃
これをきいて、みんなは、またはくしゅをした。青年は、＃
アコーデオンを、両手でぐっとひろげたかと思うと、しずか＃
にひきはじめた。名高いオペラの序曲である。＃
私は、汽車のまどから、夕ぐれに近いそとをながめた。黄＃
みがかった麦ばたけ、縣道らしい白っぽい道、そこを自轉車＃
に乘って走る中学生、たがやしている父と子、きりの花――＃
曲は終った。ちょうど、汽車もとまった。青年は、すわっ＃
て、アコーデオンを黒ぬりのケースにおさめた。＃
駅は、東北本線の「はないずみ」であった。駅の名も美しくよ＃
まれた。　　＃
＜Ｐ－０４７＞
五　　作文　　＃
（一）　　＃
思っていることを、はっきり書きあらわそ＃
うとすると、文章が、だんだんくわしくなっ＃
ていきます。＃
どこまで書きたしても、それでいいという＃
ところまでは、なかなか、いきつくものではありません。＃
文章は、心の鏡のようなものです。心がはっきりとしてい＃
ますと、文章も、だんだんはっきりします。心がくもってい＃
ると、いくらなおしても、文章のくもりはとれません。＃
＜Ｐ－０４８＞
つぎに、「ドッジボール大会」という文章が、二へんあります。＃
はじめに書いたのと、二回めに書いたのとを、くらべてごら＃
んなさい。二回めのは、書きたしてあるだけ、よむ人に、はっ＃
きりと、そのようすがわかります。　　＃
ドッジボール大会　　＃
六日の日、郡ぜんたいのドッジボール大会＃
があった。＃
ぼくも、せんしゅになって、いっしょうけ＃
んめいにやった。＃
はじめに、ひがし村の学校とやった。ぼくのほうは、セ＃
＜Ｐ－０４９＞
ンターが外野へでてしまったので、あいてのセンターが、＃
「勝つ、勝つ。」＃
とさわいだ。＃
それで、内野の人はいっしんになったので、かえって、＃
ぼくたちのほうが勝ってしまった。＃
第二回めには、にし村の学校としあいをした。これも勝っ＃
た。＃
さいごに、町の学校とやることになった。あぶなかった＃
が、わずかのちがいで勝った。＃
ぼくは、うれしさでいっぱいになった。　　＃
＜Ｐ－０５０＞
ドッジボール大会　　＃
いよいよ、ドッジボール大会がはじまった。＃
どの学校のせんしゅも、みんな、運動場に整＃
列して、式をあげた。＃
はじめに、ぼくの学校とひがし村の学校と＃
が、しあいをすることになった。ぼくたちは、コートへで＃
ていった。＃
たかやま先生が、＃
「しっかりやれ。」＃
と、元氣づけてくださった。＃
「ピー。」と、用意のふえが鳴った。＃
＜Ｐ－０５１＞
しんばんの先生が、＃
「じゃんけんをして、いいほうのボールをつかいなさい。」＃
といわれた。＃
ぼくらのほうのボールをつかうことになった。ふえがま＃
た「ピー。」と鳴って、しあいがはじまった。ぼくらのほうが、＃
どんどんあてられて、センターまで、外野にでてしまった。＃
ぼくもあてられた。＃
ひがし村の学校のセンターが、喜んで、＃
「勝つ、勝つ。」＃
とさけんだ。ぼくは氣が氣ではない。みかたのおうえんだ＃
んが、「フレー、フレー。」と、大声をたてる。のこったもの＃
＜Ｐ－０５２＞
がふんとうした。やがて、「ピー。」と、ふえがひびいた。＃
思いがけなく、ぼくたちの勝となった。＃
「場所こうたい。」＃
しんばんの先生のあいずで、ぼくらは場所をこうたいし＃
た。すぐまた、しあいがはじまった。むちゅうでやってい＃
ると、「ピー。」と鳴った。どちらが勝ったかと思って、心配＃
していると、十一たい十で、ぼくらのほうが勝った。＃
うれしいような、すまないような氣持がした。＃
第二回めは、にし村の学校とやることになった。このと＃
きは、ぼくらのほうのボールが、よくあいてにあたって、＃
ちょっとのあいだに、勝つことができた。＃
＜Ｐ－０５３＞
こんどは、さいごの決勝戰だ。あいては、町の、いちば＃
ん強い学校だ。＃
たかやま先生が、＃
「さあ、こんどがだいじだ。みんな元氣でやるんだ。」＃
と、はげましてくださった。＃
なんだか、向こうのせんしゅは、大きくて強そうだ。＃
「ピー。」はじまった。＃
「しっかりやれ。」＃
おうえんの声が耳にひびいてくる。＃
センターが、外野のセンターにれんらくをとって、どん＃
どん、あてにあてた。あいてのセンターは、ぼくをねらっ＃
＜Ｐ－０５４＞
た。ボールがビュッととんできた。ぼくは、しっかり受け＃
とめて、すぐセンターに渡した。ボールは、すばやくあち＃
こちにとんだ。そのたびに、「ワアッ。」という声がおこった。＃
ふいに、ボールが、ぼくのところにとんできた。ぼくは＃
よこだきに受けとめた。あぶなくころびそうになった。＃
「ピー。」はくしゅがおこった。ぼくたちの勝である。＃
みんな、また運動場に集まって、終りの式をした。ぼく＃
は、うれしくて、胸がどきどきしていた。式をすませても＃
どってくると、たかやま先生も組の友だちも、みんな、に＃
こにこしていた。　　＃
＜Ｐ－０５５＞
（二）　　＃
しかし、文章は、くわしくしさえすれば、＃
はっきり写しだすことができるとはかぎりま＃
せん。そのはんたいに、ふでをいれるほど、＃
かえって、文章がみじかくなっていくことが＃
あります。＃
心にはっきりとえがかれた一つのかたちは、まじりけのな＃
い宝石のようなものでありますから、よけいなことばは、ち＃
りほどもあってはなりません。＃
五年生が、運動場で、たいそうをしています。＃
＜Ｐ－０５６＞
一年生の唱歌がきこえてきます。＃
つばきの花がまっかにさいています。＃
根もとに、ぽたぽた落ちています。＃
海がみえます。＃
家と家とのあいだに、ほそ長く光っています。＃
明かるい月夜です。＃
そこらで、虫が鳴いています。＃
＜Ｐ－０５７＞
つむじ風が、わたしのまえを走っていく。＃
紙が、くるくるまいをしてとんでいる。＃
ろうかを曲がったら、＃
ふっと、風がふいてきた。＃
おかあさんの鏡、＃
庭のはっぱがうつっている。＃
ほたるを三びき、つかまえました。＃
＜Ｐ－０５８＞
雨がはれて、にじが大きくでました。＃
たんぼの上で、つばめがちゅう返りをした。＃
あさがおの花が、ラジオの音樂をきいています。＃
ほそい雲が、ますますほそくなる。＃
おかあさん、いま、柱時計がとまりました。＃
黄色いやまぶきの花に、黄色いちょうがとまっています。＃
＜Ｐ－０５９＞
こんなのは、みじかくなった文ですが、まだ、みがきあげ＃
られたことばということはできません。つぎのはどうでしょ＃
う。＃
なにかの花びらが、＃
くもの巣にかかってゆれている。＃
土の上、一センチほどのところで。＃
ボタンと音がして、＃
まりが、そとからとびこんできた。＃
＜Ｐ－０６０＞
よっちゃんたちの話し声がする。＃
考え考え歩きまわるような、＃
大きなあり。＃
スリッパのへりをひとまわりして、＃
帰っていった。＃
よく落ちるかきの実。＃
いまに、一つもなくなるだろう。＃
またしても、ポトンと音がする。＃
＜Ｐ－０６１＞
さきだけみえることし竹が、＃
ざわざわと、動いている。＃
うす黒い雲は、どこかへいってしまったのに。＃
まよったせみが、かきの木につきあたって、＃
バタバタやって、にげていった。＃
ひとところで、からすが鳴くと、＃
あっちでもこっちでも鳴く。＃
こんなに、からすがいるのかしら。＃
＜Ｐ－０６２＞
すみをすっている。めじろの声がきこえている。＃
雨が降る。風がふく。さくらの木が、ぬれてゆれている。＃
四年生の樂しさよ。さくらの花をしらべてみたり――＃
どの花も、みんな空を向いている。日がてっている。＃
なの花ちらほらさきはじめ、うすぐもり。＃
＜Ｐ－０６３＞
小さな虫がかたまって、顏のところでとんでいるくれが＃
た。＃
ばくちく花火が、パンパン、もうくらくなっている。＃
豆のつるがまきついて、まきつくものがなくなった豆の＃
つる。＃
＜Ｐ－０６４＞
夏の風がふきこんで、新聞など動かして、ふきぬける。＃
しずかに波がよせている。みんな、おべんとうをたべて＃
いる。＃
ふえの音、虫の声、三日月さん。＃
毎日書いてきたあさがお日記。はつ花のさいたこと、け＃
さ書く。＃
＜Ｐ－０６５＞
いつのまにか、葉ばかりのさくらになって、毎日はれ。＃
波の音がきこえている。子どもの声がきこえている。＃
あっちでもこっちでも、だっこく機。麦のとりいれ、日＃
がてりつける。＃
どんどん、どんどん、うえていく。みんなそろって、う＃
えていく。＃
もやのかかったおきの島、ポンポン船がでかけていく。＃
＜Ｐ－０６６＞
雨あがりの麦のほ、子どもと子どもとかけていく。＃
もみじがまっかで、山のいもをほっている人が二三人。＃
ふろからみてる十三夜さん。雲一つうかんでいる。＃
青々とはれて、すすきすこしゆれている。＃
うら山に、みかんを持って遊びにきている。よい天氣。＃
＜Ｐ－０６７＞
うめがさく。方々のうちで、ふとんほしてある。＃
炭を切る音も小鳥の声も、夕がたになっている。　　＃
（三）　　＃
人の顏をちょうこくするのに、＃
二つのやりかたがあります。＃
一つは、はじめ骨組みをこしら＃
えておいて、それにねんどでだん＃
だん肉づけをし、しだいに、その＃
人の顏ににせていくやりかたです。＃
＜Ｐ－０６８＞
もう一つは、だいりせきや木材をけずっていって、だんだ＃
ん、その人の顏ににせていくやりかたであります。＃
まえのやりかたは、ちょうど、文章をくわしく書きたすの＃
ににています。あとのやりかたは、文章をきりつめていくの＃
と同じです。＃
やりかたはいろいろですが、ねらいどころは一つです。心＃
に思ったことを、はっきりと写しだすということにほかなり＃
ません。　　＃
＜Ｐ－０６９＞
六　　月明かり　　＃
たっぷりと、＃
春は、＃
小さな川にまで、＃
あふれている、＃
あふれている。＃
＜Ｐ－０７０＞
くれがたの庭そうじ、＃
それがすむのをまっていたのか、＃
すぐうしろに、＃
月は、音もなく、のっそりとでていた。＃
もやが深いから、＃
遠いような、＃
近いような、＃
月明かりだ。＃
なんの木の花だろう。＃
＜Ｐ－０７１＞
にわか雨は、＃
ぐっしょりとぬらした。＃
うまもうまかたも、同じように。＃
ぬまの上を、にわか雨が通る。＃
そのずっと高いところでは、＃
ひばりが一つ、さえずっている。＃
＜Ｐ－０７２＞
うまよ、＃
そんな大きななりをして、＃
子どものように、＃
からだまであらってもらっているのか。＃
あ、ほたるだ。＃
だあれもいない。＃
うまが、＃
＜Ｐ－０７３＞
水のにおいを＃
かいでいる。＃
ぼさぼさのいけがきの上である。＃
ぼたんでもさいているのかと思ったら、＃
まあ、子どもが＃
わらっていたんだよ。＃
みんな、＃
＜Ｐ－０７４＞
集まれ、＃
集まれ。＃
そうして、ぐるりとわをかけ。＃
いま、まっぷたつになるすいかだ。　　＃
七　　にげたらくだ　　＃
一の場面　　＃
人　　甲と乙、ほかに、ひとりの旅人。＃
ところ　　さばくの中。＃
甲乙ふたりが、あちこちをみまわしながら、なにか、もの＃
をさがして歩いてくる。＃
＜Ｐ－０７５＞
甲「どこへいったのだろうね。」＃
乙「ちょっとのまに、いなくなってしまった。さて、どこ＃
へいったものかしら。」＃
ふたりそろって、遠くをみまわす。＃
甲「砂のほかに、なにもみえない。」＃
乙「木一本もみえない。」＃
そこへ、ひとりの旅人がやってくる。＃
旅人「もし、もし。」＃
甲乙が、いっしょにふり返って、＃
甲乙「はいはい。なんですか。」＃
旅人「あなたがたは、なにかさがしておいでのようだが――」＃
＜Ｐ－０７６＞
甲「そうです。」＃
乙「さきほどから、さがしつづけているのですが。」＃
旅人「もしや、あなたがたは、らくだをにがして、それをさ＃
がしていらっしゃるのではありませんか。」＃
ふたりは、びっくりした顏で、＃
甲乙「そうです。そうです。」＃
旅人は、おちついたことばつきで、＃
旅人「そのらくだは、かた目ではありませんか。」＃
ふたりは、なおびっくりして、＃
甲「まったくそのとおりです。」＃
乙「かた目なんですよ。」＃
＜Ｐ－０７７＞
旅人は、思いだすようなふうをして、＃
旅人「そうして、左の足が一本短くて――それから――」＃
といってから、ちょっと考える。＃
このようすを、甲乙ふたりがみてとって、なにか、こそこ＃
そささやきあう。＃
旅人「そうそう、そのらくだは、まえ歯が二三本ぬけてはい＃
ませんか。」＃
ふたりは、いよいよびっくりして、＃
乙「それにちがいありません。」＃
甲「どこでみましたか。」＃
旅人は、それには答えないで、また思いだしながら、＃
＜Ｐ－０７８＞
旅人「それから、つけた荷がありましたね。」＃
甲乙「ありました。」＃
旅人「その荷は麦でしょう。」＃
甲「たしかに、たしかにそうです。」＃
乙「どこにいるか、早く教えてください。」＃
旅人「いや、わたしは、そのらくだをみたのではありません。」＃
甲「え、でも、そんなにくわしくごぞんじではありませんか。」＃
乙「それとも、だれかにおききになったのですか。」＃
旅人「いいえ、みたのでも、きいたのでもありません。」＃
ふたりは、また顏をみあわせていたが、＃
甲「どうもおかしい。あなたは、そのらくだを、どこかへ＃
＜Ｐ－０７９＞
つれていったのにそういない。」＃
旅人はおどろく。＃
乙「あやしい。さあ、けいさつしょへ、いっしょにいって＃
もらおう。」＃
旅人「そんな。」＃
甲乙「いや、あちらで、あかしをたててもらおう。」＃
ふたりは、旅人の両手をとる。むりにつれていく。　　＃
二の場面　　＃
人　　旅人。甲乙。裁判官。＃
ところ　　法廷。＃
＜Ｐ－０８０＞
旅人と甲乙が、ならんでいる。裁判官がはいってくる。＃
裁判官「いったい、どういうことなのか、くわしく話しなさい。」＃
甲「私どもは、麦をつけたらくだをつれて、さばくを通っ＃
ていましたが、とちゅうでひと休みしているうちに、＃
つい、ねむってしまいました。」＃
裁判官「それで、どうした。」＃
乙「目がさめてみると、らくだがいません。おどろいて、＃
方々をさがして歩きましたが、みあたりません。その＃
とき、この人にであったのです。」＃
裁判官「それから。」＃
甲「すると、向こうから、『らくだをにがしたのではないか。』＃
＜Ｐ－０８１＞
と、たずねるのでございます。」＃
乙「それに、もっとあやしいことは、この人は、私どもの＃
らくだのことについて、それはよく知っております。」＃
裁判官「どんなことを、知っているのかね。」＃
乙「だいいち、らくだがかた目であることを知っていまし＃
た。そのとおり、私どものらくだは、かた目でござい＃
ます。」＃
甲「らくだがびっこであることも知っていました。しかも、＃
左の足の短いことを、ちゃんと知っているのです。」＃
裁判官「ほかにまだ、知っていたかね。」＃
乙「はい、知っていました。らくだのまえ歯が、二三本ぬ＃
＜Ｐ－０８２＞
けていることまで。」＃
甲「そのうえ、つけていた荷物の品まで、知っているじゃ＃
ありませんか。」＃
甲乙「らくだをぬすんだのは、この男にちがいありません。＃
どうぞ、おさばきをお願いします。」＃
裁判官「ふたりのいうことは、よくわかった。」＃
旅人をみて、＃
裁判官「なにか、そちらにも、いいぶんがあるかね。もしある＃
なら、ここで、はっきりいうがいい。」＃
旅人「はい、申しあげます。私がさばくを旅していますと、＃
砂の上にらくだの足あとがつづいていました。それな＃
＜Ｐ－０８３＞
のに人の足あとがみえません。それで、このらくだは＃
どこかからにげてきたのではないかと、思ったのです。」＃
裁判官「なるほど。それから、そのらくだがかた目だというこ＃
とは、どうしてわかったのかね。」＃
旅人「それは、こうです。道のかたがわの草ばかりたべてあっ＃
たからです。」＃
裁判官「なるほど。して、びっこということは。」＃
旅人「それは、かた方の足あとが、一つおきにあさくなって＃
いましたので。」＃
裁判官「では、まえ歯のぬけているということは、なぜわかっ＃
たのか。」＃
＜Ｐ－０８４＞
旅人「草をくいとったあとをみますと、かみきれないで、の＃
こっている葉がありました。それで、歯が二三本ぬけ＃
ているにちがいないと、考えました。」＃
裁判官「きいてみれば、いちいち、もっともなことばかり。」＃
甲「もしもし、それなら、荷物をつけていることが、どう＃
してわかったのでしょう。」＃
乙「そうです。それが麦だということが、なぜわかったの＃
でしょう。裁判官どの、それを、しらべていただきと＃
うございます。」＃
裁判官「それについて、なにか。」＃
旅人「それはほかでもありません。道に、麦がこぼれていた＃
＜Ｐ－０８５＞
からです。」＃
裁判官「よしよし、よくわかった。らくだは、あなたがぬすん＃
だのではない。もう帰ってもよろしい。」＃
旅人は、うれしそうに立ちあがる。裁判官は、ふたりのも＃
のに向かって、＃
裁判官「あなたがたふたりが、あの旅人をうたがったのも、む＃
りはない。けれども、いまの答で、知っていたわけが＃
はっきりしたでしょう。もう、うたがいははれたこと＃
と思う。早くいってらくだをさがしなさい。あまり遠＃
くへいかないうちに。」＃
甲乙ふたり、いそいでたちさる。　　＃
＜Ｐ－０８６＞
八　　うさぎ日記　　＃
４月２８日　　（土）　　晴　　１９度　　＃
私たちは、うさぎをかうことになりました。先生が、黒い＃
うさぎと、白いうさぎと、茶色のうさぎを、かごにいれて持っ＃
ていらっしゃいました。私たちで、めかたを計りました。＃
黒うさぎ　３９０ｇ．　白うさぎ　４００ｇ．　茶うさぎ　１ｋｇ．　　＃
４月２９日　　（日）　　晴　　２０度　　＃
草をやったら、３びきとも、せっせとたべました。＃
＜Ｐ－０８７＞
うさぎはどんな草を、いちばん喜んでたべるか、しらべて＃
みることにしました。きょうは、れんげそうとなたねの葉を＃
やりました。　　＃
４月３０日　　（月）　　晴　　１９度　　＃
うさぎは、すこしもじっとしていません。＃
いつも、どこかを動かしています。　　＃
５月１日　　（火）　　くもり　　１９度　　＃
うさぎは、にんじんを、とても喜んでた＃
べました。　　＃
＜Ｐ－０８８＞
５月５日　　（土）　　雨　　１５度　　＃
にんじんとじゃがいもをやったら、黒と白が、けんかをし＃
てたべました。　　＃
５月６日　　（日）　　雨のち晴　　１５度　　＃
はこべとおおばこをやったら、にんじんをやったときのよ＃
うに、喜んでたべました。　　＃
５月２０日　　（日）　　くもり　　１８度　　＃
うさぎは、新しい草をいれてやると、そればかりたべて、＃
まえにたべのこした古い草は、ふみつけるだけで、ちっとも＃
＜Ｐ－０８９＞
たべません。　　＃
５月２２日　　（火）　　くもり　　１６度　　＃
うさぎは、みんなで、１３びきにな＃
りました。白うさぎが９ひきと、黒＃
うさぎを１ぴきもらいました。＃
５月２８日　　（月）　　晴　　２３度　　＃
よく晴れた日には、とても元氣があります。うさぎでも、＃
くもった日や雨降りの日は、きらいなのでしょう。　　＃
茶うさぎ　１ぴき　＃
白うさぎ　１０ぴき　＃
黒うさぎ　２ひき　　＃
＜Ｐ－０９０＞
５月２９日　　（火）　　くもり　　２４度　　＃
よくみていたら、ねこが顏をあらうよう＃
に、うさぎも、まえ足で、耳や顏をなでて＃
いました。　　＃
５月３１日　　（木）　　晴　　２８度　　＃
うさぎがうしろ足で立＃
ちました。が、すぐ、まえ足をおろしてし＃
まいました。　　＃
６月２５日　　（月）　　晴　　２７度　　＃
うさぎのふんを、水の中へいれてみたら＃
＜Ｐ－０９１＞
うきました。うさぎのふんはまんまるです。　　＃
６月２８日　　（木）　　雨　　２８度　　＃
このごろは天氣がわるいので、うさぎは、元氣がありませ＃
ん。なるべく、こくるいをやるようにして、ぬれた草はやら＃
ないように注意しています。　　＃
７月９日　　（月）　　晴　　２６度　　＃
私が麦をやったら、白いうさぎは、早く＃
たべたいのか、黒いうさぎの上に乘って、＃
たべました。　　＃
＜Ｐ－０９２＞
７月２０日　　（金）　　雨のちくもり　　２２度　　＃
うさぎ小屋のそうじをしました。小屋からだすとき、みん＃
な喜んですぐでましたが、１ぴきの白いうさぎと、茶色のう＃
さぎは、おくへはいってでてこないので、小屋へ頭をいれて、＃
だきあげて、そとへだしました。だすときに、わらを足でけっ＃
たりして、あばれました。　　＃
７月２４日　　（火）　　くもり　　１９度　　＃
うさぎの毛の長さを計ってみたら、白＃
は２ｃｍ、黒も２ｃｍ、茶は１・５ｃｍでした。＃
そうじをしようと思って、首のところ＃
＜Ｐ－０９３＞
を持って、かごの中へいれたら、キューと、高く鳴きました。　　＃
８月２日　　（木）　　くもりのち晴　　２９度　　＃
朝、いってみたら、右から四ばんめのへやに、子うさぎが＃
４ひき生まれていました。　　＃
８月４日　　（土）　　くもり　　２５度　　＃
茶色のうさぎがはいっているへやに、えさがなかったので、＃
かこいの鉄ぼうを、かじっていました。＃
子うさぎの生まれた、右から四ばんめのへやに、黒い小さ＃
な虫が、たくさんいました。　　＃
＜Ｐ－０９４＞
９月３日　　（月）　　くもり　　２５度　　＃
けさ、白うさぎは耳にけがをしました。ほかのうさぎがか＃
んだのです。しばらく動かないで、いたそうにしていました。　　＃
９月６日　　（木）　　くもりのち晴　　２９度　　＃
お晝に、うさぎのところへいってみたら、＃
暑いのでねむっていました。あと足を長く＃
のばして、まえ足を胸の下にいれていまし＃
た。　　＃
１０月２３日　　（火）　　雨　　２０度　　＃
＜Ｐ－０９５＞
うさぎのせなかをさかさになでると、毛がふわふわととび＃
ます。寒くなったので、むしろで戸をこしらえてやりました。　　＃
１１月１１日　　（日）　　晴　　１９度　　＃
けさ、いってみたら、左がわの＃
へやに、毛がたくさんぬけていま＃
した。よくみると、おくの方に、＃
わらが巣のようにふくらんでいて、＃
その中に、わたのようなふわふわした毛が、いっぱいはいっ＃
ていました。その毛にくるまって、うさぎの子が７ひきいま＃
した。１ぴきは白で、あとのは黒っぽい色をしていました。　　＃
＜Ｐ－０９６＞
１１月１３日　　（火）　　晴　　１２度　　＃
７ひきの生まれたばかりの子うさぎは、わらの中の毛の中＃
で、元氣に動いています。１ぴきのこらず、じょうぶにそだ＃
てたいと思います。　　＃
１１月２２日　　（木）　　くもり　　１７度　　＃
７ひきの子うさぎのうち、５ひきはねずみ色、１ぴきは白、＃
もう１ぴきは黒でした。ねずみ色の４ひきは、生まれてから＃
１２日めのきょう、みんな、目があき、からだには、すっかり＃
毛がはえました。　　＃
＜Ｐ－０９７＞
１１月２５日　　（日）　　晴のちくもり　　１７度　　＃
白の子うさぎは、親について、はじめて、巣からはいだし＃
てきました。草のそばにきて、口をくっつけましたが、草は＃
たべませんでした。　　＃
１１月２６日　　（月）　　晴　　１９度　　＃
ねずみ色の子うさぎが、きょうは、巣からでて歩いていま＃
した。そうして、にんじんのやわらかそうな葉を、たべてい＃
ました。黒の子うさぎが、ちちをのもうとして、親うさぎの＃
ちちにすがりつきますと、親うさぎは、足でけって、のませ＃
ませんでした。うさぎは、人がみていると、ちちをのませた＃
＜Ｐ－０９８＞
くないのでしょうか。　　＃
１１月２９日　　（木）　　雨　　１３度　　＃
朝早くいってみたら、子うさぎは巣の中でねていて、親う＃
さぎだけが、草をたべていました。お晝ごろみたら、子うさ＃
ぎは、７ひきとも、巣からでて歩いていました。　　＃
１２月１日　　（土）　　晴　　１３度　　＃
子うさぎが生まれてから、きょうで２０日めです。子うさ＃
ぎと母うさぎのめかたを計ってみました。母うさぎは４ｋｇ、＃
子うさぎは、おもいので３２０ｇ、かるいので２６０ｇでした。　　＃
＜Ｐ－０９９＞
１２月２日　　（日）　　晴　　１５度　　＃
子うさぎの毛の長さを計りました。耳の長さも計りました。＃
耳の長さは、白と黒は５ｃｍ、ねずみ色は６ｃｍでした。　　＃
１２月４日　　（火）　　晴　　１４度　　＃
けさみたら、母うさぎと７ひきの子うさ＃
ぎは、頭をそろえて、なかよくにんじんを＃
たべていました。よいぐあいに、みんな元＃
氣よくそだっているので、安心しました。　　＃
