＜出典＞６５１　　　国定読本　６期５－１
＜Ｐ－００２＞
もくろく　　＃
一　　美しいもの………四　　＃
二　　ことばの愛………七　　＃
少年・少女　　＃
自分の國のことば　　＃
三　　日の光………十八　　＃
四　　あなたの思っていることは………二十七　　＃
（一）　　＃
（二）　　＃
（三）　　＃
＜Ｐ－００３＞
五　　発明二つ………三十二　　＃
自動織機　　＃
眞珠　　＃
六　　私の妹………四十七　　＃
妹のことば　　＃
新しい世界　　＃
妹の作文　　＃
七　　ぶす………六十二　　＃
能と狂言について　　＃
狂言「ぶす」　　＃
＜Ｐ－００４＞
一　　美しいもの　　＃
青空の美しさ、＃
朝明けの空、夕やけの空の美しさ、＃
月の夜、星の夜の美しさ。＃
いまも、美しいものはどこにでもあ＃
る。＃
高い木が大きく枝をはって、＃
わかめをだしかけたこずえのさきが、＃
かすんだ空の中にとけこんでいる。＃
じつに美しい。＃
＜Ｐ－００５＞
小鳥が鳴いている。＃
風が、かすかに耳もとをすぎる。＃
耳をすますと、なにか、かすかな音＃
樂がきこえてくるようだ。＃
どこからきこえるともないが、どこ＃
からかきこえてくる。＃
美しいものは、いまも、どこにでも＃
ある。＃
ただ、その美しいものを、すなおに＃
感じとる心を、われわれは失ってい＃
る。＃
毎日の生活のらんざつとあわただし＃
＜Ｐ－００６＞
さの中に、それを失っている。＃
しかし、われわれは、いつでも、どこにでも、その美しいも＃
のを、すなおに感じとる心を、もちつづけたいものである。＃
心がけひとつである。＃
心がけひとつで、われわれは、どんなにでも毎日の生活を、＃
ゆたかに、樂しくすることができる。　　＃
＜Ｐ－００７＞
二　　ことばの愛　　＃
少年・少女　　＃
おとうさんが、フランスのいなかへいったときは、子どもが＃
大ぜい、めずらしそうについてきて困りました。そういういな＃
かへは、めったに日本人もいかないのです。日本人をみたこと＃
がない子どもたちは、おとうさんが通るたびに、目をまるくし＃
ました。おとうさんの歩いていくそばを、足ばやにかけぬけて＃
いって、てんでに、おとうさんの顏をのぞきこむようにしまし＃
た。＃
こんなにうるさくついてこられたときには、おとうさんも困＃
りましたので、子どもをさけて通ったこともありました。＃
＜Ｐ－００８＞
しかし、おとうさんは、子どもと遊ぶことがすきですから、＃
道で子どもたちが、なわとびをして遊んでいたりしますと、そ＃
のなかまいりをして、なわをま＃
わしてやったこともありました。＃
二月半ばかり、いなかでくら＃
すうちに、おとうさんには、子＃
どものお友だちができました。＃
そういう子どもの中には、道＃
でおとうさんを呼びとめて、＃
「日本人、くりをおあがり。」＃
といいながら、おとうさんにわ＃
けてくれる少女もありました。＃
＜Ｐ－００９＞
あのとげとげしたいががわれて、じゅくしたくりの実の落ちる＃
ころでしたから。＃
おとうさんは、知らない＃
外國人どうしでも、こんな＃
に親しみをもつことができ＃
るものかと思いました。そ＃
の少女のわけてくれたくり＃
は、むじゃきな心からでた、＃
子どもらしい愛情のしるし＃
でした。＃
ちょうど、プラタナスという木の葉が黄色くなるころで、い＃
なかの子どもにとっては、もっとも樂しい季節でした。どこへ＃
＜Ｐ－０１０＞
いっても、遊びたわむれている子どもにあいました。＃
そのいなかの町には、ポンナフという石の橋があって、イエ＃
ンヌという川が、その下を流れていました。＃
岸にある丘の上には、センテチェンヌというお寺の高いとう＃
もみえました。＃
そのあたりは、フランスの國道にそった景色のよいところで＃
すから、橋のたもとの休み茶屋へは、おとうさんもよくいって＃
こしかけました。その橋のたもとにあるプラタナスのなみ木の＃
下で、おとうさんは、三人のかわいらしい少女にもあいました。＃
みあげるように高いプラタナスの枝からは、黄色い葉が、毎＃
日のように落ちました。三人の少女は、その葉をひろい集めて、＃
橋のたもとの石がきのところへきては、遊んでいました。おと＃
＜Ｐ－０１１＞
うさんが、休み茶屋のまえにこしかけ＃
て、コーヒーをわかしてもらっていま＃
すと、きまって、その少女たちも遊び＃
にきています。いずれも、八つばかり＃
の子どもたちでした。＃
ある日のこと、おとうさんが、子ど＃
ものすきそうなおかしを、一ふくろやっ＃
たのがはじまりで、その少女たちは、＃
おとうさんのそばへくるようになりま＃
した。ひろい集めた落ち葉を持ってき＃
て、おとうさんにくれるようになりました。＃
プラタナスの葉の大きいのは、やつでほどもありました。＃
＜Ｐ－０１２＞
「旅の記念として、本のあいだへでもはさんでおきたいのです。＃
なるべく、小さな葉をくれませんか。」＃
と、おとうさんが頼みましたら、少女たちは、手をとりあって＃
とんでいって、小さなのをえらんで、ひろってきてくれました。＃
こうして、ずんずんおとうさんのそばへきて、さまざまなこ＃
とを話しかけたり、わらったりしました。けれども、お友だち＃
にさそわれても、どうしてもおとうさんのそばへこない女の子＃
もありました。＃
「おお、こわい。」＃
と、ひとりの少女が、おとうさんをみてそういいました。＃
「おいで、わたしといっしょにお話をしておくれ。ちょうどあ＃
なたたちと同じ年ぐらいな子どもを、わたしは、自分の國に＃
＜Ｐ－０１３＞
のこしておいてきました。わたしは、そんなにこわいもので＃
はありませんよ。」＃
おとうさんがいいました。＃
それから、三人の少女に、歌を歌ってほしいと頼みました。＃
方言でできた小歌のあることを、おとうさんは、きいて知って＃
いましたから。＃
少女たちは、おとうさんのこしかけているそばで、コーヒー＃
茶わんのおいてあるテーブルをかこんで、いなかの歌を歌って＃
きかせてくれました。＃
なんとかわいらしい子どもたちではありませんか。あんない＃
なかはつまらないと、わるくいう旅人もありますが、おとうさ＃
んがそのいなか町がすきになったのも、一つは、そういうかわ＃
＜Ｐ－０１４＞
いらしい子どもがいて、なかよしになってくれたからです。＃
ビエンヌという川の岸には、手ぬぐいのようなものをかぶっ＃
た女の人たちが、ならんでせんたくをしていました。フランス＃
のいなかによくみかける、赤いかわら屋根の家が、川の水にう＃
つっていました。その川の岸で、おとうさんは、ひとりの少年＃
にもあいました。＃
たぶん、その少年は、小学校のいちばん上の学年か、または、＃
そのいなか町にある商業学校の下の学年ぐらいでしたでしょう。＃
おとうさんのそばへきて、あいさつをしてから、＃
「日本とフランスとは、どちらがきれいですか。」＃
とたずねました。＃
＜Ｐ－０１５＞
この少年の問には、ちょっとおとうさんも困りました。フラ＃
ンスだって、きれいなところもあり、＃
きたないところもあり、日本も、やは＃
りそのとおりですから。おとうさんが＃
しょうじきにその答をしましたら、少＃
年は、さらにこんなことをいいました。＃
「日本の海はどんな色ですか。」＃
「それはすきとおった青い色ですよ。」＃
と、おとうさんが、力をいれて答えま＃
した。＃
この返事に、少年も満足したらしく、＃
「ああ、すきとおった青い色ですか。」＃
＜Ｐ－０１６＞
と、日本の海の美しさを、思いうかべるようにいいました。フ＃
ランスのいなかの子どもから、自分の國のことをきかれたとき＃
は、おとうさんもうれしく思いました。かしこそうな目つきの＃
少年でした。　　＃
自分の國のことば　　＃
「おとうさん。」＃
と、太［た］郎［ろう］がそばへきて、外國ではどんなことばを話すかとたず＃
ねるものですから、「そりゃあ、フランスではフランスのことば、＃
イギリスではイギリスのことばを話すよ。」と、おとうさんがいっ＃
てきかせました。＃
「子どもでも。」＃
＜Ｐ－０１７＞
と、また太郎がたずねましたので、おとうさんは答えました。＃
「太郎よ、フランスでは、さかな屋さんでも、やお屋さんでも、＃
みんなフランス語です。えんぴつ一本買いにいくにも、日本＃
のことばでは通じません。『こんにちは。』なんていったって、＃
だれもわかるものがありません。＃
そういう遠い國へいくと、自分の國のことばがこいしくなり＃
ます。こうしておまえたちに話すようなことばが、思うぞん＃
ぶんつかってみたくなります。わたしは、外國でくらしてみ＃
て、つくづくと、自分の國のことばのありがたみを知りまし＃
た。おまえたちは、おさな心にも、ことばを愛することを知っ＃
て、勉強したら、どんなにしあわせでしょう。」　　＃
＜Ｐ－０１８＞
三　　日の光　　＃
１　黒い雲が流れてくる。はげしいに＃
わか雨。暗い木立。＃
２　いけのおもてにはじける雨あし。＃
竹の葉さきからしたたるしずく。＃
その下で、きょとんとしている＃
あまがえる。＃
３　わら屋根ののきから、たきのよ＃
うに落ちる雨水。＃
その下で、雨やどりをしている＃
＜Ｐ－０１９＞
にわとりのむれ。＃
４　小学校のかわら屋根から雨がしたたる。だんだんまどおに＃
なる。「ことばの愛」を読んでいる声が、きこえてくる。＃
５　ひとりの子どもが、立って本を読んでいる。友だちの顏、＃
顏、顏。先生の横顏。＃
６　また、「ことばの愛」のつぎの一節を読んでいる声がきこえる。＃
もうあ学校の教室である。＃
ひとりの生徒が、席にすわったまま、点字を読んでいる。＃
ほかの生徒の指さきが、すばやく点字の上をすべっていく。＃
７　オルガンがひびいてくる。＃
窓をあける女の先生。＃
「あ、きれいなにじ。」＃
＜Ｐ－０２０＞
８　村の林の上に、大きな半円形のにじがかかっ＃
ている。＃
「にじの歌」を歌う子どもの声。＃
９　暗室。＃
「さあ、その白いかべに、プリズムでわけ＃
た光を写してみますよ。」＃
という先生の声とともに、七色の光が写し＃
だされる。＃
「ただ白っぽくみえる太陽の光線ですが、＃
わけてみると、こんなにさまざまな色に＃
なります。」＃
１０　せんたく物のほし場。＃
＜Ｐ－０２１＞
まえかけや、しきふや、ハンケチなどが、風にゆれている。＃
その下を、あひるがならんで通っていく。＃
そのあとから、小さな子どもが、よちよちと歩いてくる。＃
母親が、両手をのばしてついてくる。＃
１１　病院の庭さき。＃
看護婦がもうふをほしている。＃
男の子がベッドにすわっている。＃
「おかあさん、雨がはれてきれいね。」＃
窓に花のはちをおきながら、＃
「ごらん、にじがでているよ。」＃
窓をのぞく子どものはればれした顏。＃
「早く、あの野原で、遊びたいな。」＃
＜Ｐ－０２２＞
「もうじきですよ。」＃
「お友だち、どうしているかな。」＃
１２　ひとりの友だちは、水えのぐで写生を＃
している。＃
光る白い雲、遠い山のみね、村の道、＃
やえざくらの花。＃
１３　ひとりの友だちは、その兄といっしょ＃
に種まきをしている。＃
きれいにたがやされた畑。＃
田をならしている農夫。＃
１４　ひとりの友だちは、妹をつれて、つつ＃
みの上でつみ草をしている。＃
＜Ｐ－０２３＞
「春の小川」の歌がひびいてくる。＃
小川の水、きらきら光る。＃
１５　いちめんのなの花。＃
ひとりの女の子が、「なのはな、なのはな、まつのき。」と、＃
「こくご一」の文を大きな声で歌う。＃
自轉車に乘った中学生が、ふたりづれでなの花畑を横ぎる。＃
１６　ひとりの友だちは、母といっしょに汽車に乘っている。＃
窓からみえる村の家、まつなみ木、竹やぶ。＃
新しい家のたった町、ふみきりばんのおじいさん。＃
トンネル。＃
１７　ひらけて、海。長い海岸線、うちよせる波、おきの漁船、＃
島。＃
＜Ｐ－０２４＞
１８　炭坑の風景。＃
エレベーターをあやつる大きな車輪が、まわっている。＃
トロッコをおして、炭坑にはいっていく工員。＃
ヘッドライトにたよって現場に近づく。＃
地下水の流れ。その流れのかすかな音。＃
石炭の坑道。工員たちは、さくがん機やつるはしを持って、＃
石炭をほっている。＃
１９　あせまみれになった工員の顏、胸、うで。＃
たくましい音樂。＃
くずれくだける石炭、シャベルですくう＃
石炭。＃
２０　みるまに、トロッコにつまれる石炭の山。＃
＜Ｐ－０２５＞
おしだされてくるトロッコ。＃
ごうごうたるトロッコのひびき。＃
２１　ひとりの工員がしごとをすませて、坑内＃
から地上にでてくる。＃
まぶしい日光。＃
２２　坂道を、ゆっくりとした足どりで、家に＃
帰ってくる。道ばたにさくたんぽぽ、と＃
びかうちょうちょ。＃
立ちどまって、両手をひろげて深呼吸。＃
２３　「おとうさん。」と呼ぶ声。＃
その声をきいて、にっこりとわらう顏。＃
「おうい。」＃
＜Ｐ－０２６＞
また、「おとうさん。」とさけぶ。＃
「おうい。」＃
工員も走りだす。＃
２４　男の子が、むちゅうになってかけてくる。＃
工員は男の子をだきあげる。＃
ふたりのうれしそうな顏。＃
日の光をいっぱいに受けた、はればれとした父と子。　　＃
＜Ｐ－０２７＞
四　　あなたの思っていることは　　＃
（一）　　＃
ぼくは、いままでに学んだ「自然の観察」を、ずっとつづけてい＃
きたいと思います。＃
わざわざ遠くにでかけなくても、ふだん自分の身のまわりに＃
あるものを、よくしらべてみる心がまえを、つくりたいと思い＃
ます。庭の木に小鳥がくれば、その鳴き声や、とまりかたや、＃
動きかたや、羽の色や、形などを、こまかにしらべたいのです。＃
トマトが畑に植えてあれば、そののびかたや、花のさきかた＃
や、実のなりかたなどを、たんねんにみようと思います。＃
また、くもがのきに巣をかけることがあれば、巣のはりかた＃
＜Ｐ－０２８＞
などを、しらべておきたい＃
と思います。＃
こんな動植物だけではな＃
く、雪のようすや、星の世＃
界なども、しらべていきた＃
いと思います。＃
観察すればするほど、自＃
然のおもしろさもわかり、＃
そのふしぎなことにうたれ、＃
美しさにおどろくにちがいありません。　　＃
（二）　　＃
＜Ｐ－０２９＞
私は、同じものをみるにしても、どうしてそのものがこうなっ＃
たかということを、考えてしらべたいと思っています。＃
たとえば、毛糸のあみ物があれば、そのあみかたはどんなあ＃
みかたか、なぜ、このようなあみかたをしなければならなかっ＃
たのか、よく考えてみたいと思います。＃
また、一つの和音を耳に＃
したときは、組みあわされ＃
た一音一音のことも、心に＃
うかべてみたいのです。＃
もようをみたときには、＃
そのもようが、どんな單位＃
からなりたっているか、そ＃
＜Ｐ－０３０＞
れをさがしてみようと思います。＃
もし、弟や妹がけんかでもはじめたら、どうしてそんなこと＃
になったか、そのわけをよく考えていってみようと思います。＃
このように、なんでも、そのもとのことをしらべていくよう＃
な心がけを、もちたいと思います。　　＃
（三）　　＃
ぼくは、みんなといっしょにはたらきたいと思います。＃
家では、弟たちのめんどうをみてやり、兄や姉の手助けとな＃
りたいと思います。父や母のために、いつもすなおな子どもに＃
なりたいのです。＃
そうして、うちじゅうの人たちに、めいわくをかけないよう＃
＜Ｐ－０３１＞
にしたいと考えます。＃
ぼくがいるために、うちの中が明かるくなるように、できな＃
いものでしょうか。ぼくがいるので、みんな樂しい氣持になる＃
ようにできないものでしょうか。＃
学校では、組の友だちとなかよくして、助けあっていきたい＃
と思います。かげで人のわる口をいわないようにしたいし、自＃
分のもっているいいところを、えんりょしないであらわし、友＃
だちのいいところを、すなおに学んでいきたいと思います。＃
自分をえらそうにみせかけたり、人をだましたりしないで、＃
ありのままのすがたで、つきあっていきたいのです。＃
ぼくは、学校の生徒のひとりとして、りっぱにそのつとめを＃
はたし、自分ひとりぐらいどうでもいいというような、無責任＃
＜Ｐ－０３２＞
な、ひきょうな考えをもちたくはありません。＃
ぼくは、この学校では、かけがえのないひとりであることを、＃
ほこるようになりたいものです。＃
いつも、全体の中の部分、部分があっての全体、というつな＃
がりをわすれないで、あいての人をうやまうとともに、自分の＃
つとめをはたすだけの勇氣を、もちたいと考えます。　　＃
五　　発明二つ　　＃
自動織機　　＃
「はたばかりいじっていて、おかしなやつだ。男のくせに。」＃
豊［とよ］田［だ］佐［さ］吉［きち］は、村の人々から、こういってあざけられた。佐吉＃
＜Ｐ－０３３＞
は、父の大工のしごとを助けてはたらいていたが、ひまさえあ＃
れば、織機のことをしらべつづけていたのである。＃
村じゅうの者から氣ちがいあつかいにされるのをみて、父は、＃
「おまえは大工のせがれだ。ほかのことを考えないで、みっち＃
りしごとをやってくれ。」＃
とさとしたが、佐吉のもえるような研究熱は、どうすることも＃
できなかった。それで、父は、佐吉の心をいれかえさせるため＃
に、佐吉をよその大工の家にあずけてしまった。＃
このあいだに立って、佐吉をはげましたり、なぐさめたりし＃
たのは、母であった。＃
佐吉の考えはこうである。人間の衣食住というものは、みん＃
なたいせつなものであるから、ぬのを織るしごとも、けっして＃
＜Ｐ－０３４＞
ゆるがせにしてはおかれない。いまのようなぬのの織りかたを＃
していたのでは、やがて、困るときがくるにちがいない。その＃
ために、いまのうちに、早く織機を進歩させておかなければな＃
らない、というのである。＃
佐吉が、はじめに目をつけたのは、ぬのを織るとき、たて糸＃
のあいだをぬっていく横糸であった。横糸はおさによって、右＃
から左、左から右へといききするのであるが、これを人の手に＃
よらず、機械の力で動かすようにしたかった。機械で動かせば、＃
もっと早く織ることができるし、ひとりでに、ぬのがずんずん＃
織られていくからである。＃
佐吉の考えは、しだいに高まっていったが、小学校をでただ＃
けのかれには、手のとどきそうもない空想になりがちであった。＃
＜Ｐ－０３５＞
たまたま、そのころ、東［とう］京［きよう］にはくらん会が開かれた。佐吉は、＃
上京して機械館へ毎日かよった。銀色に光った、たくさんの機＃
械は、生きもののように動いていた。かれは、そのりっぱな機＃
械をみて、感心するとともに、なんともいえないかた身のせま＃
い思いがした。機械は、どれひとつとして、日本製のものは、＃
なかったからである。＃
「こんなことでいいのか。日本のゆくすえをどうするのか。」＃
佐吉は、もう、じっとしていられなくなり、設計図をひいて＃
は組みたて、組みたてては動かしてみた。だが、思うように動＃
くものは、なかなか生まれなかった。＃
佐吉は、一けんの小屋に閉じこもって、いっしんに考えぬき、＃
これならという一台の機械を作りあげた。これも、まんまと失＃
＜Ｐ－０３６＞
敗であった。世間からはますますわらわれて、だれひとりあい＃
てにしてくれなくなり、まずしさはいよいよせまってくる。＃
かれは、勇氣をふるいおこして、夜も晝もなく考えとおし、＃
いままでの失敗のもとをとりのぞいて、新しい設計図をこしら＃
えあげた。そこでやっと、思いどおりの機械ができあがった。＃
ためしてみると、はたしてよく動いた。＃
村の人たちは、ぬのをみごとに織っていく、ふしぎな機械に＃
目をみはりながら、＃
「よくやった。」＃
「えらいものだ。」＃
といってほめたたえた。試運轉の日、その織機をあやつって、＃
りっぱにぬのを織ってみせたのは、佐吉の母であった。それは、＃
＜Ｐ－０３７＞
明［めい］治［じ］二十三年、佐吉が二十四才のときのことである。＃
あくる年から、豊田式人力織機は、國内につかわれるように＃
なったが、かれは、これに満足せず、すぐ、動力機械を作るこ＃
とにとりかかった。そこでさらに、七年間のくふうがつづけら＃
れ、みごとに、自動織機ができあがった。これが、日本におけ＃
る自動織機のはじめである。＃
日本の新しい出発にあたっても、この自動織機が、どれほど＃
大きな役わりをはたすことであろう。　　＃
眞珠　　＃
「美しい眞珠、世界じゅうの人から愛される眞珠、これを、人＃
＜Ｐ－０３８＞
工で作りだすことはできないものだろうか。」＃
一つぶの天然眞珠をてのひらにのせて、大きなゆめをえがい＃
ていた、ひとりのわか者があった。＃
眞珠は、海のそこからまれにひろいあげられる、ふしぎな宝＃
石とされてきたが、しらべてみると、けっして、ふしぎでもな＃
んでもないものであった。＃
眞珠母貝の中に、砂のような小さなものがいりこみ、それに、＃
貝のだす眞珠質がまきつき、年とともに大きくなって、天然眞＃
珠となることがわかったからである。＃
「このわけをあてはめれば、自分のゆめも、実現できないこと＃
はあるまい。」＃
それから、わか者は、眞珠貝の研究に全力をつくした。＃
＜Ｐ－０３９＞
このわか者こそ、のちに眞珠王として世界に知られた御［み］木［き］本［もと］＃
幸［こう］吉［きち］であった。＃
「もし、母貝の中に、核をさしいれること＃
ができたら、眞珠が発生するにちがいな＃
い。」幸吉は、あわつぶほどの核をこしら＃
えて、それを、母貝の体内にさしいれてみ＃
た。うまく貝の中に核がのこり、眞珠質が＃
まきつけば、成功するわけであったが、理＃
論と実際とは、そうやすやすと、ひとつに＃
なるものではなかった。＃
だいいち、母貝は、その核をそとにはきだして、受けつけな＃
かった。また、核をさしいれたために死ぬものもあった。たと＃
＜Ｐ－０４０＞
え、はきだしもせず、死にもしないものでも、あとで開いてみ＃
ると、もとのままになっていた。＃
同じことをなんどもくり返してみたところで、かわりのある＃
はずはない。しかも、核をさしいれてから、眞珠になるまでに＃
は、少くとも四年はかかる。それが、くる年もくる年も、うま＃
くいかなかった。＃
村や町の者は、幸吉のむだぼねをあざけり、そのゆめのよう＃
な考えをわらった。＃
まわりの者から、どんなにあざけられ、からかわれても、そ＃
の助力者となってくれたのは、つまのうめであった。うめは、＃
「きっと成功します。世界のために、きっと、あなたの願いが＃
かないます。」＃
＜Ｐ－０４１＞
こういって、失望にしずむ幸吉を、なんどもはげました。＃
ある年のこと、赤しおが、おびただしく発生した。これは、＃
ある小さな生物が、海水いちめんにふえて、海水が茶色にかわ＃
るほどになるのである。この赤しおのために、母貝はみな死ん＃
でしまった。これは、まったく考えてもみなかったことである。＃
かれは、新しく母貝を求めてきて、やりなおしにかかった。＃
町の人のかげ口は、いっそうはげしくなり、かれを氣ちがい＃
とよび、やましとさえののしるようになった。＃
うめは、いつもこのわる口のたてとなって、幸吉をかばい、＃
苦しみにたえて、なん年かをすごした。あるとき、うめが、母＃
貝の中をしらべているうちに、一つの半円形の眞珠を発見した。＃
これは、まえにさしいれておいた核によって発生した半円眞＃
＜Ｐ－０４２＞
珠であることが、わかった。＃
「半円が眞円になれば成功するのだ。半分までこぎつけた。あ＃
と半分だ。」＃
幸吉とうめは、たがいにはげましあった。それから、眞珠貝＃
養殖の科学的研究がつづけられた。眞珠貝にちょうどよい海水＃
の温度や、海の深さのこともわかり、しおの流れの早さや、え＃
さのよいわるいなども、はっきりしてきた。＃
半円眞珠が思いどおりに取れるようになったので、ひとまず＃
これを加工して、かざり物として、ともかく、世にだすように＃
なった。＃
この光明を喜んだのもつかのま、幸吉の心からの助力者であっ＃
たうめが、この世をさってしまった。＃
＜Ｐ－０４３＞
そのうえ、ふたたび、赤しおがよせてきた。そのため、母貝＃
は、ほとんど死んでしまった。その数は、じつに八十五万にも＃
およんだ。＃
しかし、幸吉は、くじけはしなかった。研究のため、死貝を＃
一つ一つ、ていねいにしらべていった。すると、かれはきゅう＃
にとびあがった。＃
「あった。あった。」＃
ゆめにもわすれられない眞円眞珠が、光っているではないか。＃
幸吉は、それこそ氣ちがいのようになって、死貝をどんどんみ＃
ていった。すると、五つぶの眞円眞珠が現われた。八十五万か＃
ら五つぶの眞珠が取れたわけである。＃
「うめ、おまえも喜んでくれ。やっと眞円眞珠ができたよ。」＃
＜Ｐ－０４４＞
かれは、五つぶの眞珠をいまはなきうめのれいにささげて、＃
その成功をしらせた。＃
そのころ、幸吉は、すでにしらがの老人になっていた。＃
よる年なみにも負けず、研究を重ねたすえ、ついに核をさし＃
いれるときに、ほかの母貝のがいとうまくを切り取ってきて、＃
一種の手術をほどこすことを発見した。＃
「これで成功しなければ。」＃
幸吉は、自信をもって母貝を海中にはなった。さいわいに、＃
赤しおもよせてこなかった。海水の温度に大きなかわりかたも＃
なく、四年めになった。幸吉は、望みをかけた第一の母貝を開＃
いてみた。はたして、眞円眞珠がやどっていた。第二、第三と＃
母貝を開いていくと、どれにも眞珠が、きよらかにかがやいて＃
＜Ｐ－０４５＞
いるではないか。大きなゆめは実現された。＃
今日、眞珠の産地は、ペ＃
ルシア湾、セイロン島をは＃
じめとして、オーストラリ＃
アや南洋の島々であるが、＃
日本産のものは、ことに名＃
高い。名高くなったかげに＃
は、幸吉一生の苦心がひそ＃
んでいる。かつて、パリーの眞珠商たちが、幸吉の手になる養＃
殖眞珠は、まがいものであるといった。しかし、世界の学者の＃
研究によって、天然眞珠とまったく同じであることが、明らか＃
にされた。＃
＜Ｐ－０４６＞
そののち、幸吉は、日ごろそんけいしていたエジソンのもと＃
をたずねて、養殖眞珠のつくりかたを、こまごまと話した。エ＃
ジソンはたいへん喜んで、＃
こういった。＃
「わたしが、研究所でどう＃
してもできなかったこと＃
が、二つあります。一つ＃
は、ダイヤモンドであり、＃
いま一つは、眞珠でした。＃
あなたが自然をあいてとして、眞珠を世界の人々にあたえた＃
ことに、心から敬意をささげます。＃
養殖眞珠発明の、かがやかしい、あなたの光明を太陽とする＃
＜Ｐ－０４７＞
ならば、作製に失敗したわたしは、星にもあたらないでしょ＃
う。」　　＃
六　　私の妹　　＃
妹のことば　　＃
私は、きのう、三つになる――まんでいうと二年三ヶ月にな＃
る妹をつれて、さんぽにでました。＃
家から十二三分ばかり歩いたところに、廣い草原があるので、＃
そこへつれていこうと思ったのです。＃
ところが、私たちの足では十二三分のところですが、妹には＃
＜Ｐ－０４８＞
そうはいきませんでした。四十分もかかったのではないかと思＃
いました。これは、足がおそいというためばかりでなく、道ば＃
たにあるものを、なんでもみつけて、それに話しかけたり、そ＃
こで遊んだりしたからでした。＃
私は、べつにいそぐこともありませんでしたので、妹の氣の＃
すむようにして、つれてい＃
きました。＃
ためしに、私は、妹のいっ＃
ていることばを、紙きれに＃
書きとめてみたのです。＃
クロイ　ワンワン――キ＃
タナイ　ワンワンチャン＃
＜Ｐ－０４９＞
――アンヨ　ナメテルワ――クッチケルヨ――フッテ――ハ＃
イ――イラナイノ――オハナシシテ――ワンワン――ミテル＃
ワ　ウシロ――ワンワンチャン――モット――イコウ――ア＃
カチャン　ネテルワ――ゴメンクダサイッテ――ハイッテク＃
ノヨ――ワンワンチャン　ネテルワ――ワンワンチャン　タ＃
ッチ　シタ――オスワリ　シタ――スイトウ　モッテ――オ＃
モタイカラ　モッテ　イッテ　アゲルノヨ――ワンワン　タ＃
ッタ――ハナガ　サイテル――キントットガ――ア　ドコヘ＃
イッタノ――イコウ――アッポ　タイテル　＃
よその人には、なんのことか、おそらくわからないでしょう＃
が、そのときのいきさつを知っている私には、このことばの意＃
味がよくわかります。＃
＜Ｐ－０５０＞
家からでてしばらくいくと、道のまん中に、黒いいぬが一ぴ＃
きすわっていました。「クロイ　ワンワン」は、そのときさけんだ＃
ことばです。その黒いいぬに近よってみると、ひふ病にかかっ＃
ていて、顏のあたりの毛が、ぬけていました。「キタナイ　ワン＃
ワンチャン」といったのは、そのためです。＃
黒いいぬは、まえ足をあげたかと思うと、その足をなめたの＃
で、妹はびっくりして、「アンヨ　ナメテルワ」といって、私に知＃
らせたのです。いぬは、うしろ足をもちあげて、せなかをかく＃
ようなかっこうをしました。「クッチケルヨ」は、足をせなかに「くっ＃
つけるよ。」というのです。そのとき、いぬは、くしゃみのよう＃
なことをして、「フッ」と息をはきました。妹は、わらいながら、＃
「フッテ」と、ひとりごとをいいました。＃
＜Ｐ－０５１＞
母がこしらえてくださったパ＃
ンを、ふくろからとりだして、＃
いぬにやりながら、「ハイ」「ハイ」＃
と、なんどもくり返しました。＃
いぬは、まばたきをしたきりで、＃
そのパンをたべようとしません。＃
「イラナイノ」といって、いぬにた＃
ずねているのです。やはり、い＃
ぬは、ふり向かないので、たべ＃
るように、「オハナシシテ」という＃
心らしいのです。とうとう、く＃
るっと、うしろを向いてしまっ＃
＜Ｐ－０５２＞
たわけです。＃
「ワンワンチャン」と、こちらを向かせようとしたり、「モット」こ＃
こで遊んでいたいと、私にねだったり、そのくせ、でかけよう＃
といいだしたりしていましたが、やっと歩きはじめました。＃
五六歩いったかと思うと、よそのおばさんが、あかちゃんを＃
おんぶして、そばを通りました。みると、なるほど、「アカチャ＃
ン　ネテルワ」でした。＃
妹は、また、ちょこちょこ歩きだしましたが、よその家の門＃
の中へ、はいっていこうとします。そのとき、私をふり向いて、＃
「ゴメンクダサイッテ　ハイッテクノヨ」と、おとなびたことをい＃
いました。＃
門からもどってきて、道にでたとき、あとをふり向きました。＃
＜Ｐ－０５３＞
すると、さっきの黒いいぬが、ごろんと、地べたに横になって＃
ねそべっていました。「ワンワンチャン　ネテルワ」といっている＃
と、いぬがもっくりおきました。「ワンワンチャン　タッチシタ」＃
といって喜びました。「オスワリシタ」と、いちいち、いぬの動作＃
をことばにして喜びました。＃
そのとき、いままでかたにかけていたすいとうをはずして、＃
手に持つといいます。かたにかけると重いから手に持つのだと、＃
ませたことをいって、歩きだしました。まだ、いぬが氣にかか＃
るのか、ふり向くと、いぬは、立ちあがって、のそりのそりと、＃
どこかへいくところでした。＃
あきらめて歩きかけると、水おけがありました。そこに、す＃
いれんの花が三つほど、きれいにさいていました。妹は、そこ＃
＜Ｐ－０５４＞
へいって、水おけのふちにつかまって、水の中をのぞきました。＃
きんぎょが一ぴき、すいすいとういてきたかと思うと、また、＃
すぐ水そこへもぐりました。「ハナガ　サイテル」「キントットガ」＃
「ア　ドコヘ　イッタノ」は、そのこと＃
をいいあらわしています。自分で、＃
「イコウ」ときめてあるきかけると、道＃
のわきで、たき火をしていました。＃
そのけむりやほのおがおもしろいら＃
しく、妹は、ここでまた、いろいろ＃
なものをながめるのです。＃
わずかのことばですが、この中に＃
は、妹のすがたが、ありありとうか＃
＜Ｐ－０５５＞
んでいます。七五三の記念写眞も、思いでにはなるでしょうが、＃
ことばの記ろくは、妹の心の写眞になるのではないかと、ふと、＃
こんなことを考えました。　　＃
新しい世界　　＃
このごろ、私は、作文がすらすらと書けなくなりました。＃
むりに書くと、自分がほんとうに思ったり、感じたり、考え＃
たりしていることとは、ちがったものになります。＃
どうして、こんなふうにゆきづまってきたのでしょう。思う＃
ことがどんどんと書けていたまえのころが、うらやましくさえ＃
なりました。＃
あるとき、なにげなく妹の作文をみました。なんと、わけも＃
＜Ｐ－０５６＞
なく、すらすらと書いていることでしょう。すこしのこだわり＃
もなく、ぐんぐんと書きつけているその力に、おどろきました。＃
かいこが、皮をぬいで新しく成長していくように、私も、こ＃
こで、いままでの作文のからをぬぎさって、新しい世界にふみ＃
だしていこうと思います。　　＃
妹の作文　　＃
ふくろう　　＃
私は、遊び時間にふくろうをみにいきました。そうしたら、＃
二年生の男の子が、ふくろうのからだを手でいじりました。ふ＃
くろうは、目をくりくりさせて、とまり木の下におりていって＃
＜Ｐ－０５７＞
しまいました。＃
男の子は、「おこった、おこった。」といって喜びました。　　＃
コスモスの花　　＃
コスモスがさきました。＃
きれいにさきました。＃
白と、もも色と、こいもも色のが＃
さきました。＃
いまはきれいだけれど、コスモス＃
は、おじいさんになるとかわいそう＃
ね。　　＃
＜Ｐ－０５８＞
いちょうの葉　　＃
算数の時間に、先生が、はしごでい＃
ちょうの木にのぼって、いちょうの葉＃
をたくさん落してくださいました。み＃
んな負けずにひろいました。＃
うちに帰って、十まいずつたばにし＃
て、赤いひもでいわえて数えました。＃
そうしたら、たばが十あって、五まい＃
あまりました。＃
おとなりのよし子ちゃんと、なお子＃
ちゃんに、三たばずつあげました。私＃
は、のこったのをおし葉にしました。　　＃
＜Ｐ－０５９＞
お月見　　＃
私が、「おかあさん、ただいま。」といって、学校から帰ると、＃
おかあさんが、＃
「ごはんをたべてから、すすきを取っておいで。」＃
とおっしゃった。ごは＃
んをたべてから、山の＃
方へいって、たくさん＃
取ってきた。＃
えんがわにつくえを＃
だして、その上にすす＃
きをかざった。＃
＜Ｐ－０６０＞
月がでてきた。まんまるくてきれいだ。おかあさんに、＃
「そとへでて、あかちゃんにも、みせてあげて。」＃
といったら、おかあさんが、あかちゃんをだっこして、おもて＃
の通りへでていらっしゃった。そうして、＃
「のんのさん、のんのさん。」＃
とおっしゃった。私も、＃
「ほら、のんのさん、のんのさん。」＃
といって、月の方へ手をやったら、あかちゃんは、＃
「あ、あ、あ。」＃
といった。　　＃
たけのこ　　＃
＜Ｐ－０６１＞
うちのお庭に、たけのこが一本はえてきました。＃
私は、たけのこのそばにいって、せいくらべをしたら、はな＃
のところまでありました。あしたもあさっても、せいくらべを＃
しますよ。＃
もう、たけのこは、＃
私のせいをすぎて、お＃
にいさんのせいより高＃
くなりました。もう、＃
先生のせいくらい高く＃
なりました。＃
たけのこは、人間よりぐんぐん早く大きくなります。たけの＃
＜Ｐ－０６２＞
こは、どうして、あんなに早くのびるのでしょう。＃
きのう、風がふいて、ガサガサ音がしたから、なんだろうと＃
思って、二階の窓からそとをみたら、大きな竹がにょっきりで＃
ていたので、びっくりしました。＃
もう、親竹と同じくらいに高くなって、風にゆれていました。　　＃
七　　ぶす　　＃
能と狂言について　　＃
みなさんは、能というものをみたことがありますか。能を知＃
らない人でも、おじいさんやおとうさんがおうたいになるうた＃
＜Ｐ－０６３＞
いを、きいたことがあるでしょう。能は、そのうたいにつれて、＃
役者が美しい舞を舞ったり、さまざまなしぐさをしたりするも＃
のですが、かぶきや、ほかのしばいとも、いろいろちがうとこ＃
ろがあります。いちばんちがうところは、ふつうのしばいでは、＃
役者がおじいさんになったり、むすめになったり、わかい男に＃
なったりするときには、おしろいやべにでけしょうをして、そ＃
の役らしく顏をこしらえあげるのですが、能のほうでは、めん＃
をつけます。＃
おじいさんのめん、おばあさんのめん、わかい男のめん、わ＃
かい女のめんと、それぞれの人物によって、それぞれのめんが＃
あります。そのために、能は、めんの藝術ともいわれ、ヨーロッ＃
パの大むかしにさかえた、ギリシアの、同じめんの藝術とくら＃
＜Ｐ－０６４＞
べて、研究されています。＃
日本の絵画や、庭園や、建築にも、外國とはおもむきのちがっ＃
たおもしろいものが、たくさんありますが、能は、その中でも、＃
もっとも日本らしい、すぐれたところのあるものとなっていま＃
す。みなさんも、大きくなったら、自分たちの國が持っている＃
このよい藝術を味わうことを、喜ぶだろうと思います。＃
能といっしょに、狂言というものが演じられます。狂言はめ＃
んをつけません。そうして、能が、美しさを現わそうとするの＃
とちがって、狂言は、ひにくや、あてこすりや、すっぱぬきや、＃
ひやかしなどで、できているといってもよく、それをみている＃
と、世の中のうらおもてが、よくわかります。ことばも、能は、＃
ゆう美ですが、狂言はそうではありません。＃
＜Ｐ－０６５＞
つぎの「ぶす」は、狂言の中の有名なものです。＃
狂言には、よく、太郎かじゃと次［じ］郎［ろう］かじゃが、現われます。＃
かれらは、だんなのねこかぶりをあばいたり、いたずらをした＃
り、また、とんでもないへまをやったり、だまされたりなど、＃
よわい人間のしそうなことを、なんでもやります。めうえのい＃
ばったものに対してもおそれず、そうかといって、なにをして＃
もにくまれない、おもしろい人物になっています。　　＃
狂言「ぶす」　　＃
ある村に、けちんぼのだんながありました。おかみさんをも＃
らえば、くらしにもお金がかかり、着物をきせたり、おこづか＃
いをやったりしなければならないので、ずっと、ひとりでくら＃
＜Ｐ－０６６＞
していました。＃
あるとき、このだんなは、用事で、となり村までいかなけれ＃
ばなりませんでした。でかけるとき、太郎かじゃ、次郎かじゃ＃
というふたりの下男に、「よくるすをするのだぞ。」といいつけ、＃
それから、きびしい声でいいました。＃
「おくのへやのおしいれには、『ぶす』といって、おそろしいどく＃
がはいっている。そちらからふいてくる風にあたっても、た＃
ちまち死ぬといわれるくらいだ。ふたりとも用心して、そば＃
へもよらぬことだ。わかったか。」＃
「はい、はい。わかりました。」＃
太郎かじゃと次郎かじゃは、声をそろえて返事をしました。＃
そんなおそろしいどくで、死ぬようなことになってはつまら＃
＜Ｐ－０６７＞
ないから、太郎かじゃと次郎かじゃは、はじめは、そのへやの＃
方へは、顏も向けないようにしていました。でも、こわいもの＃
はかえってみたくなります。それに、だんなは、ちょいちょい＃
あのへやにはいるが、べつに、からだにさわりもしないのだか＃
ら、自分たちも、そっといってみようということになりました。＃
「でも、風がどっきを運んできてはたいへんだから、次郎かじゃ、＃
おまえは、せんすであおいで、風を向こうへやってくれ。」＃
「よしきた。」＃
次郎かじゃは、こしからぬきとったせんすを、さらりと開き＃
ました。＃
「さあ、あおげ、あおげ。」＃
「あおぐ、あおぐ。」＃
＜Ｐ－０６８＞
ふたりは、それをあいずのようにして、ぬき足さし足で、そっ＃
とおくのへやに近づき、さきに立った太郎かじゃが、思いきっ＃
て、からかみをひきあけました。＃
「もっと強く、あおげ、あおげ。」＃
「あおぐ、あおぐ。」＃
「もっと強く、あおげ、あおげ。」＃
「あおぐ、あおぐ。」＃
次郎かじゃのほうが、太郎かじゃよりも、ずっとおくびょう＃
者でした。それで、いよいよ、おしいれをあけるときになると、＃
「だいじょうぶかい、あぶなくはないかい。」＃
と、ふるえ声でいいながら、いつでもにげだせるかっこうで、＃
こしをうしろにひき、せんすの手だけをまえにつきだして、あ＃
＜Ｐ－０６９＞
おぎつづけていました。＃
そのうちに、太郎かじゃは、おしいれのたなのすみに、だい＃
じそうにしまってあった、一つのまるいつぼをみつけ、へやの＃
まん中にかかえてきました。＃
「なにかはいっているとみえて、重たい。」＃
「それこそ、どくの『ぶす』だよ。」＃
「それなら、もう、ふたりとも、どっきにあたって死んでいる＃
はずじゃないか。それが、死なないのだから、『ぶす』ではない。」＃
「ふたを取ってみようか。」＃
「とんでもない。さあ、もとの場所において、あっちへいこう。＃
ぐずぐずしているうちに、どっきにあたるにちがいない。」＃
「さあ、あおげ、あおげ。」＃
＜Ｐ－０７０＞
「あおぐ、あおぐ。」＃
思いきって、ふたをあけてみました。べつにどっきもたたず、＃
かえって、うまそうなあまいにおいがして、黒っぽいものがは＃
いっていました。＃
「こんなどくってありはしない。ひとつ、たべてみようじゃな＃
いか。」＃
「それだけはよしてくれ。なみたいていのどくではないから、＃
かえって、うまそうにみえるのだよ。」＃
「かまわない、おれはたべてやる。」＃
ひきとめるひまもなく、太郎かじゃは、すばやく指をつっこ＃
んで、すぐそれを、口に持っていきました。＃
「なあんだ、さとうだ。」＃
＜Ｐ－０７１＞
「へえ。」＃
おくびょう者が、きゅうにいきおいづき、せんすをほうりだ＃
して、自分も指をつっこみました。＃
「ほんに、これは上等の黒ざとうだ。」＃
ふたりは、かわりばんこに指をつっこみました。そうして、＃
うまい、うまいとなめているうちに、つぼが、からっぽになっ＃
てしまいました。＃
「これは困った。だんなが帰ったら、どんな目にあわされるか＃
わからない。」＃
おくびょう者の次郎かじゃは、心配になりました。太郎かじゃ＃
のほうは、氣が強いばかりでなく、わるぢえがあったから、お＃
ちつきはらい、＃
＜Ｐ－０７２＞
「おれに、うまいくふうがある。」＃
といいながら立ちあがり、いきなり、とこのまのりっぱなかけ＃
ものをひきさきました。＃
「このうえそんならんぼうをしては、いっそうしかられるじゃ＃
ないか。」＃
「まあ、まかせておけ。それから、おまえは、だんながだいじ＃
にしているあの湯飲み茶わんを、庭石にたたきつけろ。」＃
こう、さしずをされて、しかたなく、ずっしりと重い、大き＃
な湯飲み茶わんを、ふみ石の上で、ガチャンとくだいてしまい＃
ました。＃
そこへ、だんなが帰ってきました。すると、太郎かじゃは、＃
きゅうに両手で顏をおおい、おいおい大声をあげてなきだしま＃
＜Ｐ－０７３＞
した。次郎かじゃも、そのまねをして、おいおいなきだしました。＃
「いったい、ふたりともどうしたのだ。」＃
だんなは、あっけにとられてたずねました。太郎かじゃは、＃
なおも、おいおいなきながらいいました。＃
「じつは、だんなさまのおるすのあいだ、私どもは、すもうを＃
とって遊んでいました。私が負けて、ドサリととこのまにた＃
おれたはずみに、あのたいせつなかけものを、あのとおりひ＃
きさいてしまいました。次郎かじゃは力があまり、茶だなの＃
湯飲みをはねとばして、こなみじんにいたしました。あまり＃
の申しわけなさに、ふたりとも、命をすてておわびをしよう＃
と考え、それには、大どくとうかがいました、おそろしい『ぶ＃
す』をたべて死ぬのが、いちばん早道と思ったのです。が……。」＃
＜Ｐ－０７４＞
と、そこまで話したとき、いままでおいおいないていたくせに、＃
きゅうに、にっこりわらい顏になって、次郎かじゃといっしょ＃
に歌いだしました。＃
「ひとくちくえども死にもせず、＃
ふたくちくえども死にもせず、＃
みくち、よくち、＃
ぶすはくえども、＃
死なれもせず。」＃
太郎かじゃと次郎かじゃは、こんな歌を歌いながらにげだし＃
ました。だんなは、おこって、＃
「にがすものか、にがすものか。」＃
と追いかけました。　　＃
