「不動産屋」≪調査者のメモ≫ インフォーマントは実際にアパートを探している。しかし話を作った部分もかなりある様子。 会話としては、全く不自然さを感じない。日本人がアパートに案内すると言いだすぐらい自然。   途中でやりとりがおかしくなる所があるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。  1.テレビの音(オリンピック中継)が大きかったのでお互いに相手の言っていることが聞こえなかった。   2.日本人が耳が遠い。(日本人は年配の女性)  3.日本人が相手にかまわず自分の話をしてしまうタイプである。(インフォーマントの話より)  4.インフォーマントの日本語がわかりにくい。(これは一番可能性が低い) なお、この日本人は相手の話の途中に割り込んでくる癖があることが観察された。 1984.8.8 J はい F あ すいません (J:はい) いいですか[機能:Gambit] ≪インフォーマントのコメント≫ 人が話をしている部屋へ入るときに使う。または、グループの中に入るときに使う。(会話を始めるため) “Excuse, me.  Can I ask some questions?” or “Is it O.K. to come in?” しかし、「いいですか」の English equivalent はない。 この言い方をすると、たいてい「はい、どうぞ」と言われるので、よく使う。  (J:はい) えー まあ[機能:Hesitation]  アパートのことについて[機能:Gambit] ≪調査者のコメント≫ 話をきり出すときの Gambit か。文を途中で止めている。  (J:はい) 伺いたいんですが (J:はい) えー[機能:Hesitation]  このへんに ま このへんじゃなくても近いところに[機能:訂正] ≪インフォーマントのコメント≫ 「このへんに」と言ったあと、ここは新宿(駅のそば)ということを思いだして、「このへん」ではおかしいと思い、言い直した。 日本語では「近いところ」という表現で「20~30分」ぐらいかかる所もさして言うので、その方が自然だと思った。  あの[機能:Hesitation]  アパート 探したいんです アパート[機能:繰り返し/訂正] ≪調査者のコメント≫ 話題を出している。「アパート」を繰り返したのは、相手が聞こえないというそぶりを見せたか、またはインフォーマントがそう判断したからであろう。 テレビの音が非常に大きい。 J アパート↑ (F:ええ) ふーん どの位の F えー そうですね[機能:あいづち/Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 考えているのか?  できれば[機能:Gambit]  二間≪インフォーマントのコメント≫ 「二間」という言葉は知っていた。まあ あのー[機能:Hesitation]  お風呂付き[機能:中止] ≪インフォーマントのコメント≫ 文が途中である。(すぐ、相手が割り込んできたからか?)   J お風呂付き (F:はい) 家賃 どの位でいいの↑ F なんですか[機能:聞き直し] ≪インフォーマントのコメント≫ テレビの近くに立っていたので、相手の言ったことが聞こえなかった。 このあと、相手の近くに移動した。 ↑ J 家賃 どの位でいいの↑ (F:ッー) 家賃  F そういうものだったら この 《聴取不能》 どのぐらいあるんですか[機能:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ “How much would it be around this neighbor?” その近所によって、アパートの値段等が変わるから聞いた。 ↑ J うーん 高いですよ F そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 相手に話を続けてもらうためか? 化石 J うん 10万以上しますよ F あー それは すぐそばのところですか[機能:Topic change] ≪調査者のコメント≫ たぶんインフォーマントが知りたいのは値段より環境のことであろう。しかし、相手が値段のことを言ったので話を変えたと思われる。 communication に gap があるのではないか。 ↑ あるいは ちょっと 離れてる[機能:中止] ≪調査者のコメント≫ 前の文より続く。前の文の意味を相手にはっきりさせるために言ったようだ。 文が途中で終わっているのは相手に割り込まれたためかもしれない。 J いやー 歩いたら20分以上かかる F どの位ですか[機能:聞き直し] ≪インフォーマントのコメント≫ テレビの音がうるさくて相手の言ったことが聞きとれなかった。 J 歩いて10 《間》 15 6分かかる F ここから[機能:回避:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ どこから歩いて15、6分ぐらいなのか知りたかったから聞いた。 ↑ J 歩いて10分くらい ふーん F 駅から[機能:軌道修正] ≪インフォーマントのコメント≫ この日本人の店からなのか、新宿駅からなのかを知りたかった。 ↑ J 駅からね F 新宿駅からですか[機能:聞き直し] ≪インフォーマントのコメント≫ 何度も聞いているのは、相手が答えないから。 「駅」が代々木なのか新宿なのか確かめたかった。 ↑ (J:ふーん) or[機能:外国語] ≪インフォーマントのコメント≫ 「代々木駅」を言う前に、相手に割り込まれた。 J おたくは なあに あのー 学生↑ それとも 働いている↑ F いえ あの[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 「いえ」は “I'm not student.” の意。 ≪調査者のコメント≫ 相手が急に話題を変えたので、多少焦った模様。 新宿で働いているのは本当。ただし、そこだけではない。  働いています J 働いているの↑ F ええ J お勤め先どこ↑ F え 新宿です J 新宿 F はい J 昼↑ F え もちろん[機能:あいづち/中止] ≪インフォーマントのコメント≫ 日本では昼間の仕事が full-time を意味し、夜の仕事が part-time を意味するのかどうかよくわからなかったが、“Ofcourse, day time” の答えが naturalだと思ってこう言った。相手がどうして「昼と夜」という聞き方をしたのかよくわからなかった。 ≪調査者のコメント≫ この発言前後の相手の発言が間をおかずに出されたため、文にならなかったらしい。 J 夜↑ F え 昼です J 昼 あ そう うーん 高いですね F 10万[機能:推測] ≪調査者のコメント≫ 「高い」という相手の言葉を受けて、推測して出したのではないか。 ↑ J じゅう 《聴取不能》 万 F 14 5万ですか[機能:聞き直し:推測] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手が「じゅう~万」と言ったので、「14、5万」と言って聞いた。 ↑ J さっき お部屋が2つに (F:ええ) あれって言ったでしょ↑ F はは J 高いとこでいいの↑ F えー そうですね まあ うん[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 本当に部屋を探しているところだったので、躊躇してしまった。 ただし、探しているのはもっと安いところ。 J 台所は狭くてもいいの↑ F [機能:聞き直し/回避] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手が早口だったので言ったことが聞きとれなかった。 一言で「聞きとれなかったのでもう一度言ってくれ」という意味を表している。 ↑ J 台所は狭くてもいいの↑ F 狭いというと どの位[機能:軌道修正/中止] 台所がどの位狭いのか聞きたかった。「どの位」の後に「狭い」と言おうとしたが、相手にさえぎられた。 インフォーマントが考えている狭さは、一畳か半畳というあたり。 J 住むのは だあれ↑ F 私です J 一人 F はい J 一人だったら 台所狭くたっていいじゃない F だから[機能:Gambit/軌道修正] ≪調査者のコメント≫ 相手がまったく質問に答えないので、例を出したらしい。 軌道修正だが、自分の知りたい情報を得るためのGambitか。 インフォーマントは「2畳」でも狭いと考えている。ただし、それでも大丈夫な大きさ。 ちなみに現在のインフォーマントの台所は2畳より広い。 日本人の割り込み。  えーと[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 例を出すのに考えている。  たとえば[機能:Gambit/軌道修正] ≪調査者のコメント≫ 相手がまったく質問に答えないので、例を出したらしい。 軌道修正だが、自分の知りたい情報を得るためのGambitか。 インフォーマントは「2畳」でも狭いと考えている。ただし、それでも大丈夫な大きさ。 ちなみに現在のインフォーマントの台所は2畳より広い。 日本人の割り込み。  えーと[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 例を出すのに考えている。  2畳ぐらい[機能:Gambit/軌道修正] ≪調査者のコメント≫ 相手がまったく質問に答えないので、例を出したらしい。 軌道修正だが、自分の知りたい情報を得るためのGambitか。 インフォーマントは「2畳」でも狭いと考えている。ただし、それでも大丈夫な大きさ。 ちなみに現在のインフォーマントの台所は2畳より広い。 日本人の割り込み。 J うーん うん うん F あー[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 「2畳」というのに肯定の答えが返ってきたので、それでいい広さなのかどうか考えている。  それで 大丈夫と思います[機能:予測] ≪インフォーマントのコメント≫ 考えた結果、「2畳でもいい」ということになったから。   J あのね 6畳 4畳にね えーと あの 安いのあるよ これ 木造だよ ただし  F あ どの位古いですか[機能:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ 「木造」という言葉を聞くと「古い」という感じがするから聞いた。 もう一つ、「汚い」というイメージもあるとの事。だから確かめたかった。 ↑ J 木造 F ええ[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手の言う「木造」というのはわかったという事を示すためだったか。  どの位 古いですか[機能:聞き直し] ≪インフォーマントのコメント≫ どのくらい古いのか確認したかったので、二度聞いた。しかし、相手はついに答えなかった。 ↑ J 安いよ これは 6畳と4畳半 2部屋に台所がね 2畳ぐらいで 場所とりやすいけれども F はい で いくらですか[機能:Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ 値段のことを聞きたかったから。ただし、相手は答えていない。 これは、相手が自分の話(だけ)を続ける癖があるためかもしれない。 ↑ J 代々木 F いくらですか[機能:聞き直し] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手が質問に答えなかったのでもう一度聞いた。 ↑ J え↑ 6万5千円 F 6万5千円[機能:あいづち/オウム返し] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手の言った金額をくり返している。確認のためかもしれない。 J 管理費がついて 2千円 F あー[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 値段について考えているらしい。  安いですね[機能:予測] ≪インフォーマントのコメント≫ 値段についての意見を述べている。 J んー 6万7千円 F あのー[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 話題を変えるための Hesitation(?)。何かを言う前によく使う。 「これから何か言う」ということを表す。他の人たちが話をやめて聞いてくれるようにするためのもの。  どんな建物ですか[機能:Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ 値段から建物に話題を変えた。“How large?”のつもり。 ↑ J 代々木 代々木 木造 木造  F ええ 何階[機能:スイッチ/回避] ≪インフォーマントのコメント≫ 何階建かということ。 《調査者のコメント》 文の途中でやめている。 ↑ J ん↑ 2階 F 2階[機能:オウム返し/あいづち] ≪調査者のコメント≫ 相手の言うことを繰り返している。わかったという表現か? それは[機能:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ 2階建の何階に部屋があるかという質問。 「部屋は何階ですか」と聞くべきだったか。  あのー[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 話題を変えるための Hesitation か?それとも言い方を考えたのか。  何階ですか[機能:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ 2階建の何階に部屋があるかという質問。 「部屋は何階ですか」と聞くべきだったか。 ↑ J 2階 F あーはは[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ わかったことを示すあいづち。「あー」も「はは」も化石化している。  化石 J 木造の2階 F 南向きですか[機能:Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ 日当たりに話題を変えている。このことがたいてい、「いい部屋」を示すから。 ↑ J うーん ちょっとそれはわかんないけど (F:はは) 鉄筋でなきゃだめ↑ どうする↑ 鉄筋↑ F 鉄筋ー[機能:あいづち/オウム返し] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手の言うことを繰り返している。「てっきんー」とのびているのは、考えているからであろう。  じゃあ あの[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 考えながら話しているから Hesitation した(?)。「じゃあ」は無意識に使っている。   建物は[機能:推測] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手が「鉄筋でなくてもいいか」と聞いたので、「古くなければ鉄筋である必要はない」と答えた。  あの[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 考えながら話しているから Hesitation した(?)。「じゃあ」は無意識に使っている。  そんなに ふ古くなければ いいじゃないですか[機能:推測] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手が「鉄筋でなくてもいいか」と聞いたので、「古くなければ鉄筋である必要はない」と答えた。 ↑ J 木造でも いいの↑ F 木造でも いいですけど[機能:オウム返し/中止] ≪インフォーマントのコメント≫ 前の答えと同じ内容。相手の「鉄筋でなくてもいいか」という質問に「古くなければ鉄筋である必要はない」と答えている。 相手がこのアパートについてあまり詳しくないことに気づいていた。たとえば、建物の古さとか日あたりなどについて相手が知らなかったから。 文が途中で切れているのは、相手が割り込んできたため。 J 仕事は なあに↑ (F:えー)[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 急に相手の質問が変わったために、おどろいた。  名刺か何かある↑ F 名刺 ないんです[機能:オウム返し/あいづち] ≪調査者のコメント≫ 相手に聞かれて、即答している。 ≪インフォーマントのコメント≫ 【職業名】としての名刺は持っていたが、名刺など自分の身元を明らかにするものを出すつもりはなかった。   J 何の仕事↑ F えー まあ 一応[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 急に仕事を聞かれたのであわてた。 何と言おうか考えながら答えた。 「一応」というのは、“What shoud I say?” のつもり。  英語の まあ 英語の先生ですね[機能:訂正] ≪インフォーマントのコメント≫ ときどき part-time で英語の先生をしていたことがあるので、嘘ではない。 だが、本当のことを言うんだったら(【職業名】なので)嘘になるかもしれない。 相手が自分の身元を知りたがっていることに気づいていた。 J 英語の先生 F ええ J 日本の人↑ F いえ アメリカ人です  J アメリカ F ええ J アメリカって言ったって あ 国籍が F そうです[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ たぶん相手の言っている事に対して「その通りです」の意味で使っている。 J で 英語の先生をしてるわけ↑ F そうです[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ たぶん相手の言っている事に対して「その通りです」の意味で使っている。 J ふーん 日本人みたいだけどね F 《笑》 日本人 じゃないです J うん↑ F アメリカの国籍[機能:訂正] ≪調査者のコメント≫ 一度「アメリカの国籍」と言ってから、「向こうで生まれた」と訂正している。 相手に通じないと思ったからか?  まあ[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 言い直すために Hesitation が入ったか?言い直しを考えたか?  向こうで生まれたんです[機能:訂正] ≪調査者のコメント≫ 一度「アメリカの国籍」と言ってから、「向こうで生まれた」と訂正している。 相手に通じないと思ったからか?   J あ そう 日本のひと 日本のお父さん お母さんなの↑ F いえ 両親は あの[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 注意をひくためか? 相手が言った「日本人」ということを否定するためか?  中国人です  J あー そっか ま ちょっと 見ないと わかんないけどね F はい ま それは[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手が急にアパートのことに話題をかえ、アパートにつれて行くという風になったのであせった。  今 別に何かあるかどうか それが聞きたいですが[機能:Topic change/中止] ≪インフォーマントのコメント≫ 前の文に続いて「自分はただ、どんな所が available なのか知りたいだけだ」と言った。アパートにつれて行かれては困ると思ったから、つけ加えたのかもしfれない。 文が途中までなのは、相手の割り込みによる。 J うん でも 近いですよ これは おたく 勤めるとこどこなの↑ 新宿のどのへん↑ F え 東口です J 東口の↑ (F:はい) あ そう (F:ええ) じゃあ 歩いてそんなに遠くないからねえ F 歩いたら≪インフォーマントのコメント≫ 何を言おうとしたのか忘れた。 ≪調査者のコメント≫ 「歩いたら遠くない」とでも言おうとしたのか?  あの[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 新宿東口の仕事場からのことを相手が言っていると思ったので、「代々木から」ということを言うための Hesitation。 注意をひくためもあるか? 代々木[機能:スイッチ/回避] ≪調査者のコメント≫ 前の文と同様。 「代々木からも遠くないのかどうか」を聞きたかったはず。 J 歩けますよ うん 代々木だから こっからだって歩けるから  F 代々木駅と近いですか[機能:聞き直し] ≪調査者」のコメント≫ 「代々木駅と近い」ということの確認の意。 ↑ J うーんと駅 《間》 こっから ほら歩けば代々木で 《聴取不能》 あのビルが代々木 F ほんとうですか[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ ただ会話を進めるため。 相手の言う内容が全部わからなくても、それが statement だと思ったら、よく使う。 また、相手の内容がそれほど重要ではないと判断したときにも、話を続けるために使う。 ↑ J あれ 代々木まで5分だよ ここから  F あ 5分ぐらいですか[機能:オウム返し] ≪調査者のコメント≫ 確認の意もあるのではないか?  「ぐらい」ということばをつけ加えているのは、とても自然。 J うーん 歩けばね 5分 《間》 7 8分かかるかなあ F ははぁ そして[機能:Gambit] ≪インフォーマントのコメント≫ 同じことを続けて話すとき、話をもっと進めたいときに使う。 「じゃあ」との違いはほとんどないと思う。 ここでは、話を続けるために使った。  えー あと まあ あの[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 話を変えようとしたが、言葉が出てこなかった。  部屋は↑[機能:Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ もう一度部屋のことを聞いたのは、いろいろ違うことを話していて、相手が言ったことを忘れたから。 J だから 6畳に4畳半に台所が2畳で お風呂がついている お風呂とトイレが (F:はははあ) だから もう これ ちょっと これ安いから ちょっと わかんない きいてみる  F はい はい 《Jが電話をかける≪調査者のコメント≫ 電話でアパートの大家(?)と話を始める。 》 J まあ 歩けるっていうのは いいよね F そうですね ええ[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか?  そういう所が一番いいと思います[機能:推測] ≪インフォーマントのコメント≫ 相づちの延長か?「近いところ」がいい部屋の条件の一つだから。   J 《電話で》≪調査者のコメント≫ この間インフォーマントは相手のデスクの前に立って相手の会話を聞いていた。  《聴取不能》 あのね おたく昨日ほら もって きた 6畳と4畳半にお風呂場がついてるの あれ 木造の2階だよね うーん それ どの位かかんの ↑ 《間》 うん 《間》 あ 代々木の駅からの↑ これ 男の人一人でもいいの↑ 男の人一人でもいいの↑ あの 英語の先生だって うん いいの↑ あっ  そう 見られる↑ あいてる↑ あっそう ちょっと 待ってね 《Fに》 見られる だいじょうぶって    F あ えーっと[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手がアパートにつれて行くつもりになっており、電話での話がそのようになっていったので、この前の相手の長い話の間で何と言おうか考えていた。が、急に相手に話しかけられて、躊躇した。  午後だったら また あの できると思いますけど[機能:Gambit/中止] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手の長い話の間に考えた答え。 「できる」というのは「見ることができる」という事。 文が途中なのは、相手が話し始めたから。 J 《電話で》 あ うんじゃね 午後見にくるって言うから うん はい すいません 《電話を切る》 《Fに》 じゃね (F:ええ) あの こういう安いの ほら すぐ決まっちゃうからねえ F そうですか[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ たぶん話を続けるようにするため。 ≪調査者のコメント≫ 化石 J うん あの 歩いて行けるから (F:あ) 東口まで (F:はは) 歩いたって10 《間》 15分ぐらいで 行けっから  F そうですか[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ たぶん話を続けるため。 ≪調査者のコメント≫ 化石 J はい うちの名刺ね F はい どうも[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 名刺を渡されたお礼。途中までなのは、相手の割り込みによる。 J 何時ごろ来る↑ F えー[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ かなり長い Hesitation。「答え」について考えていたらしい。  昼ですから たぶん 1時頃[機能:予測/中止] ≪インフォーマントのコメント≫ 考えた後出てきた「答え」。文が途中までなのは相手の割り込みによる。 J 1時頃 はい 電話番号 あ 何かある↑ F 今 ないんですが[機能:回避] ≪インフォーマントのコメント≫ これは嘘。電話番号を言ってはまずいと思ったから、ぼかして逃げた。 なお、電話番号だけでなく、名刺や住所もあいまいにしたのは、すべて、その方がいいと判断したから。 これらはすべて、日本に初めて来た時、ほんとうにあった話。つまり、電話も名刺もなかったことがあった。 文が途中なのは、相手の割り込みによる。 J 何もない (F:ええ) 名刺も F ないんです[機能:あいづち/推測] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手の「名刺も」と言う言葉を受けて、それに続けた形。 名刺がないことを強調したかったか? J どこに住んでるの↑ F ええ 一応 あの まあ[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 住んでいる所まで聞かれると思わなかったから焦ったのではないか? または、答えを考えていたのか? 「一応」と言ったのは、これで二回目だが、どちらも、現状とは少し違うつくり話(でも以前そうだったこともある)をする時に使っている。  友だちの友だちの所です[機能:推測/外国語(の翻訳)] ≪インフォーマントのコメント≫ これは英語でよく言う表現。“I'm staying at a friend of a friend's house.” 新しい所に行ったときに使う。 「しばらくの間友だちの所にいる」という事を言いたかった。   J そう F はい J じゃあ 1時頃き いらして (F:はいはい) 1時か2時頃ね (F:はい) したら いますから ここで私  F ははあ それは[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 話を続けるため。  あのー[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 話を変えたかったのか?注意をひくためか?次に言うことを考えていたか?  礼金と敷金は どの位ですか[機能:Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ 「礼金」や「敷金」のことは、経験からよく知っていたので聞いた。 ↑ J 2つ 2つ F 2つ 2つ[機能:オウム返し/あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 「礼金」と「敷金」のこと。よく知っているので、ただ繰り返して言っただけ。 J うん 書いてあげましょうか↑ F はい はい あ これ この裏で[機能:訂正/回避] ≪調査者のコメント≫ 前に相手にもらった名刺をさし出した。「これ」を「この裏」に言い直している。 その方がわかりやすいと思ったからか。 文が途中までなのは、相手がすぐ返事をしたためか、または、インフォーマントがこれで十分だと判断したためかもしれない。 J あ そう 《書きながら》 6畳ね うーんと 4畳半 うんと DKの じょう 《聴取不能》 から 《聴取不能》 が 《聴取不能》 雑費が2千円 2千円ね それから敷が 敷金2か月 礼金2か月 《Fに》 ていうことはね   F はい えー 2千円[機能:聞き直し/回避] ≪インフォーマントのコメント≫ このあとに「というのは何ですか」が続くが割り込まれた。確認のために聞いた。 ≪調査者のコメント≫ 「2千円」で upward intonation になっているのは、ここで文を切ろうとしたなごりか? ↑ J 2千円 2千円 F というのは 何ですか[機能:聞き直し] ≪インフォーマントのコメント≫ これはこの直前の発話の「二千円」から続いている。 そこに相手がわりこんだ。 相手の言ったことはわかったが、確認するために聞いた。 相手の書いたメモが上下逆に書かれていて、わかりにくかったから。 ↑ J 雑費 雑費 F あ 雑費ですか[機能:あいづち/オウム返し] ≪インフォーマントのコメント≫ 確認のため。 J お掃除とか 廊下なんか ほら 掃除したりなんかしたりするでしょう (F:あー) と 6万7千 ということになるわけね F そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話をつづけるためか? 「わかった」ということか?  化石  それが 毎月ですか[機能:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ 「雑費は毎月払うのか」という事を確認したかった。 相手はこの質問に答えていない。 「雑費」という言葉を確かめたかった。 ↑ J そうするとね 礼 敷金が2つでしょ 敷金ていうのは出るとき返すのね (F:はい) あと 礼金ていうのはあの 返さない これ 大家さんがとるの ね (F:はい) それから 前家賃って それで家賃の6か月かかるわよ よ 6万5千円の 6か月かかるよ (F:ははは) んー 6か月 えっと ごろく 3 え 3がろくろく 36 39万かかるよ F はは そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話をつづけさせるためか?  化石 J 40万ぐらいかかるよ (F:はは) ね  F はい J そのぐらい よ 予算ある↑ F ええ あの それは まあ[機能:Hesitation] ≪インフォーマントのコメント≫ ほんとうは予算がそれほどないので躊躇したのでないか。 「大丈夫です」と言ったのは嘘で、本当は大丈夫ではない。  大丈夫です  J 大丈夫 40万かかるよ  F あの[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 話を変えるため、または、注意をひくためか。  この地域は たとえば あの まあ 商店街が 近いですか[機能:Gambit/Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ 話題を変えた。もっと前に聞いておくべきだったかもしれない。 商店街はアパートを決める時の大切な条件の一つである。商店街に近いかどうかという事が大切。 ≪調査者のコメント≫ 「たとえば」という言葉を使って話題を変えている。 ↑ J うん 近い 近い F 近い[機能: オウム返し/あいづち] ≪調査者のコメント≫ 相手の言ったことを繰り返して確認しているか? J すぐ あの 商店街ですから F そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか? 化石  ええ あの まあ[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 注意をひくため、話を変えるためのHesitation か?  環境はわりといいですか[機能:Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ 「環境」は、広告でよく使われている言葉なので知っていた。 「環境よし」「環境よい」「環境最高」など。 ↑ J わるくー わるくないの 代々木だから  F は そうですね[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 相手に話を続けさせるためか?   J 代々木はそんな環境が悪いとこないから 新宿と違うから  F そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか? 化石  どういうところと どういう点が いいですか[機能:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ い“What kind of place is Yoyogi?”と言う意味。 この前の相手の発話よりももっと詳しい説明がほしかったから。 ↑ J うんと 駅の裏だって と そんなに うるさくない  F 学生[機能:Topic change/回避] ≪インフォーマントのコメント≫ 代々木にたくさんの学生が住んでいることは知っている。学生が住んでいると、他とは違った「学生の地域」になりやすい。 だから、代々木が「学生の地域」かどうか知りたかった。 文が途中なのは相手が話し始めたから。「学生がたくさんいますか」と聞きたかった。 ≪調査者のコメント≫ インフォーマントはよく文を途中で切る。 たぶん、文が途中でも相手にわかるということを思うからかもしれない。 または、話すとき、単語や主語はすぐ頭に浮かぶが、そのあとの文をつくるのにときどき時間がかかってしまう。 そういう時、まわりの人が話したがっていたらインフォーマントは話をつづける(文を完成する)のをやめてまわりの人に話す順番をゆずることがある。 インフォーマントはたいてい無意識でやっているらしい。 J うん 学生街だけど あの 駅のこっちの方は 学生 学校とか そういうのがいっぱいあるの (F:あー) そんなにうるさくない F あー[機能:Hesitation] ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか、話をかえるためか?  そして[機能:Gambit] ≪調査者のコメント≫ 話が続いていることを表すのか?  食堂も たくさん ありますか[機能:Topic change] ≪インフォーマントのコメント≫ 話を変えた。「食堂」は私にとって大切なものだった。(以前は) 現在はそれほどでもない。 ↑ J うん いっぱいある いっぱいある 安いの あそこは  F 安いの[機能: オウム返し/聞き直し] ≪調査者のコメント≫ 相手の言葉を繰り返して確認したのか? ↑ J うーん↓ 代々木は安いの  F そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか?  化石 J 学生街だから F あー[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話を聞いていることを表すか、または、何かを言おうとしたが、相手が話をつづけてしまったのか? J 学校がいっぱいあるでしょ ほら 予備校とか そういうのが F え そう そうですね[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手が文を途中でやめて、こちらに話す順番を回したために多少焦って吃音になったのかもしれない。 有名な予備校があるのは知っていた。  有名な予備校がある  J そうそう いっぱいあるから 代々木は食べ物はすごく安い  F そうですか はーん[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 「は~ん」というのは何かを考えていて出た言葉か、または、ただ、納得してでた言葉。または、ことばの勢いか。 ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか? 化石 J このへんよりも安い F でも まあ こういう所なら[機能:Gambit] ≪調査者のコメント≫ 話をかえるときのGambitか? 「安い」ということから、食物の話を家賃の話に変えた。  これも安いですね 6万5千円は[機能:Topic change] ≪調査者のコメント≫ 食物から家賃へ話を変えた。文が倒置している。 しかし、話の流れとしては自然。   J うーん だから安い 家賃が  F 安いですね えー こういう所では[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手の話に同意を示す。 ≪調査者のコメント≫ 文が倒置しているが自然である。 この前のインフォーマントの発話と同じ内容の文である。   J マンションじゃないから マンションは高いよ 鉄筋は高いよ  F そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか? 化石 J 木造だから安いの F はーあ[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話手の言うことを肯定しているか?  でも かならず木造は だめじゃないんでしょ[機能:Topic Change/Gambit] ≪調査者のコメント≫ 一度相手の言うことを認め、次に軽く話を変えていく。 ≪インフォーマントのコメント≫ 木造を鉄筋のことについて質問したかった。 J そんなことないですよ F えー J まあ あの 見るぐらい 見てみなさいっての F そうですね まあ 見ないとわからないですね[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手の言うことを認める。また、強めている。   J 見なきゃわかんない 見て気に入らなきゃ また別のとこ探してあげる  F はいはい[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話をすすめるためか、軽い言い方。 J お部屋 2つなきゃ だめなの↑ F え 一応[機能:Gambit?] ≪調査者のコメント≫ 話の意味を軽くするためにこのことばを使ったのか? 作り話か?  二間は欲しいですね J 2つは 《聴取不能》 F はい J あんま ここ 安いのって ないからね F はあー (J:うん) そうですね はい[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 次に言うことを考えていたのか、この前の相手の発話で考えさせられたのか。  だ もちろん だめの だめだったら 一間でもいいんですけれども[機能:訂正] ≪インフォーマントのコメント≫ 「もちろん」を入れるために「だ」で切れてしまった。 ≪調査者のコメント≫ 「だめの」は、「だめの場合は」のつもりか?  それは 大きさによって[機能:中止] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手に割り込まれて文が途中で切れてしまった。 相手の話を聞こうとした。 J 《聴取不能》 なんでしょ F 大きさによって違いますね[機能:訂正] ≪インフォーマントのコメント≫ 相手によって途中で切れた文を完成させた。 J このへんだったら 鉄筋 マンションだったらね もう14 5万とられちゃう F あ そうですか[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 話を続けるためか。 化石 J 二間だとね F それは高いですね[機能:あいづち/予測] ≪調査者のコメント≫ 自分の意見を言っているが、話の流れからみると、あいづちと同じ役割を果たしている。 J まあ 1時か2時頃まででいいから 来て見て 見てきなさい F はい わかりました[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 相手を安心させるため、はっきり答えたのか?それとも、話をつづけるためか?   J 見ないことにはわからないでしょ F はい そうですね はい[機能:あいづち] ≪調査者のコメント≫ 相手に話を続けさせるためか? J 日本語 うまいね あんたねぇ  F いえ[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 「日本語うまいね」と言われたことの否定的答え。  《笑》 今 勉強中です  J  《笑》 《聴取不能》 F いーえ[機能:あいづち] ≪インフォーマントのコメント≫ 前の否定的答えを強めるために言った。  《笑》 その点ではちょっと心配しています[機能:スイッチ] ≪インフォーマントのコメント≫ 自分の言語能力について心配している点があるのでつけ加えた。  (J:うん) はい あ じゃ (J:はい) どうも[機能:Gambit] ≪調査者のコメント≫ 会話を終わらせるためのGambit。 ≪インフォーマントのコメント≫ いつもこのパターンではないが、店などでドアを開けて出ていくときによく「失礼します」と言う。 特に一人の人が相手をしてくれた時に。 店がこんでいていろんな人(店員も含めて)がいるときには、何も言わないか、「どうも」というだけで出てくる。 店員等の相手をした人の年令によってかわることはない。 英語では次のようになる。 “All right. I'll think. I understand.  Thank you.  I'll think about it.  I'll contact you later.” “Thanks for your trouble.”  “Thanks for your information and I'll see you at 2:00 or 1:00.”  (J:はい) また来ますから じゃ 失礼します[機能:Gambit] ≪調査者のコメント≫ 会話を終わらせるためのGambit。 ≪インフォーマントのコメント≫ いつもこのパターンではないが、店などでドアを開けて出ていくときによく「失礼します」と言う。 特に一人の人が相手をしてくれた時に。 店がこんでいていろんな人(店員も含めて)がいるときには、何も言わないか、「どうも」というだけで出てくる。 店員等の相手をした人の年令によってかわることはない。 英語では次のようになる。 “All right. I'll think. I understand.  Thank you.  I'll think about it.  I'll contact you later.” “Thanks for your trouble.”  “Thanks for your information and I'll see you at 2:00 or 1:00.”