注目された辞書

 総合雑誌では『論座』1月号が「辞書が消える日」という特集を組むなど,書籍体の辞書が苦境にあるとしばしば報じられます。

 その中で,「[日本語としての漢字]を知るための辞典」をうたい,日本独自の異体字や熟字訓を多く挙げ,漢籍でなく日本の近現代文学作品での用例を示すなどの特色を持つ『新潮日本語漢字辞典』は9月21日付読売夕刊で取り上げられましたが,発売されると予想以上の売り上げとなりました。(2008年1月12日付毎日)。この辞書をほぼ独力で編集したという同社の編集者小駒勝美氏は新聞にも登場しました(11月24日付読売「顔」欄,2008年1月9日付朝日「ひと」欄)。また『擬音語・擬態語4500 日本語オノマトペ辞典』は漢語由来の擬音語・擬態語も多く収め,近現代の実例も多数挙げており,各紙の書評欄(11月18日付朝日「読書」面,11月25日付毎日「今週の本棚」面,12月9日付読売「本よみうり堂」面)のほか,多くの一般向けメディアでも取り上げられました。

 このように紙の辞書も企画次第では依然として支持を得られることも確かです。さらに学校教育では紙の辞書を重視し,児童・生徒に引き方を細かく指導したり,授業でのさまざまな活用を試みたりという動きが広がっています。その火付け役となった京都の立命館小学校での実践内容が新聞で繰り返し取り上げられています(7月12日付朝日「文化」面,11月29日付読売「くらし 学び」面,12月1日付朝日夕刊「花まる先生公開授業」欄)。

 これらのような紙の辞書の再評価・復権の動きも見られる一方で,9月には,漢字を手書きで書けないときに10代後半から30代までは紙の辞書より携帯電話の漢字変換で調べることが多い,という調査結果も発表され(「平成18年度国語に関する世論調査」),中長期的には厳しい見通しです。

 9月29日付朝日の別刷り「土曜be」の「Readers be between」欄では,中高年は紙の辞書に強い愛着を持ちながらも,「年齢のため小さい字が読めなくなった」という若者とは別の理由で,電子辞書を持つ人が増えている,と報じています。また7月には,『日本国語大辞典』(小学館)の「50万項目・100万用例・5000図版」をウェブ上で検索できる会員制サービス『日国オンライン』がスタートしました。


関連文献情報

注目された辞書

文献番号
書名 (著者) 発行年月 ページ 発行所(発売所) 判型 本体価格
2007530
日本語オノマトペ辞典 擬音語・擬態語4500 (小野正弘/編) 2007-10 765p 小学館 A5 6000円
2007536
新潮日本語漢字辞典 (新潮社/編) 2007-9 3068p 新潮社 A5 9500円



国立国語研究所 日本語ブックレット2007