辞書とウェブの連動
携帯・検索に便利な電子辞書の普及により,書籍体―すなわち紙の辞書は窮地に立たされている,と言われ始めて久しくなった感があります。ウェブ上でも各種辞書が無料で引けるようになったことがそれに拍車をかけています。新聞では
- 電子辞書時代「紙」の憂鬱 特定ブランド偏重/搭載料は数百円 多様性薄れ,改訂困難に?(7月24日付読売文化面「潮流」欄)
- 辞書ネット化 書籍版ピンチ 電子辞書は寡占化進む 採算に悩む出版社(12月9日付朝日夕刊「土曜フォーカス」欄)
のような記事が見られました。後者では,書籍体の辞書は1998年と比べ2006年は販売数が4割以上減少しているとしています(ただ,小学生向けの辞書に関しては,私立小学校の教頭を務める深谷圭助氏が『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』で提唱した「辞書引き学習法」が注目されたことで,それ以降売上げが大きく伸びている,と新聞(2007年7月12日付朝日「文化」欄)が報じました)。
その一方で,出版各社でウェブと書籍体の辞書を連動させる動きも進んでいます(岩波書店では,すでに2001年4月に,単語や一字漢字による検索機能を備えた『広辞苑』のiモード配信を開始しています)。
三省堂は,10月に刊行した『大辞林』第3版の購入者に,11月からウェブ上で同書の検索サービス(さまざまな検索システムに加え,書籍体のほうには載っていない項目や用例も見ることができます)の提供を開始しました。このニュースは新聞各紙も注目しています。
- 11年ぶり改訂『大辞林』第3版 「増補ネット版」連動 IT関連語など7000以上の新項目(10月18日付読売夕刊「本よみうり堂 トレンド館」欄)
- 『大辞林』「21世紀型」リニューアル ネット連動 成否は?(10月24日付毎日夕刊「2006 チャンネルYou 知りたい」欄)
- 大辞林 11年ぶりの改訂 購入者向けに特典 ネット上にサイト(10月26日付朝日「文化」欄)
また2007年7月からは,小学館が,デジタル化された『日本国語大辞典』第2版の内容をウェブ上で検索できる有料サービスを開始しています。
辞書以外についても,検索語句を含む図書の本文をパソコン上で「立ち読み」できる,インターネット書店アマゾンの「なか見!検索」が2005年11月に開始されました。さらに2007年7月には同種のサービス「Google ブック検索」も開始されました。後者は新刊書に加え,図書館の蔵書なども対象となる点が大きな違いで,開始直後に慶応義塾大学図書館が協力を表明しました。
これら2007年の動きについては『日本語ブックレット2007』で更に詳しくお伝えしたいと思います。
関連文献情報
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