辞書への一般参加
辞書というのは日本語研究の専門家とベテランの編集者が力をあわせて作りあげるもの,というイメージがありますが,一般から広く情報を集めて辞書の作成・改訂を行う動きが見られており,新聞でも取り上げられました(2月5日付朝日「ニュースに迫る」欄)。
小学館の『日本国語大辞典』は現在我が国で最大規模の国語辞典として知られていますが,第2版の刊行(2001~2003年)後,新たに載せるべき項目や,既存の項目に追加すべき意味,より早い実例(この辞典に挙げられている最も早い実例が,「その言葉が日本語の歴史においていつごろから使われ始めたのか」を知る目安とされる場合が多く,より早い実例が挙げられるということは大きな意味を持っています)などの情報をウェブサイト上で一般から募集しており,その結果を随時公開しています。その成果を盛り込んだ『日本国語大辞典 精選版』全3巻も刊行され,新聞に書評が掲載されました(5月21日付毎日)。
また『明鏡国語辞典』の版元である大修館書店は,2005年10月から2006年3月にかけ,国語辞典に載せたい言葉や意味・例文を募集するキャンペーンをホームページなどで大々的に行いました。このキャンペーンについては,同書店発行のPR誌『国語教室』11月号「特集:国語辞典を作る楽しさ」でくわしく取り上げられています。特色があるのは個人で応募する「一般部門」と学校単位で応募する「学校部門」を設けたことです(後者については,中学・高校を中心に国語の授業に取り入れられたケースもありました)。12月にはその結果集まった11万あまりの作品(このうち「学校部門」が約9万件)のうち約1300件を収めた『みんなで国語辞典! これも,日本語』が刊行されました。2007年にはこのキャンペーンの第2回も行われています。
なお『みんなで国語辞典!』の「若者のことば」には,中高年にはなじみのない新しい言葉に混じって,「ぱーぺき」(「完全」の意。「パーフェクト」と「完璧」から)「ホワイトキック」(「白ける」の意。「ホワイト(白)」と「キック(蹴る)」から)といった,1970年代に「若者語」と呼ばれて一時流行し,すぐに使われなくなった語が見られます。実は細々と使われ続けていたのか,それとも前の流行を知らない世代が偶然同じ発想で再度同じ語を作り出したのか,どちらでしょうか。
ともあれ,このような一般参加による辞書の作成・改訂という動きは,今後さらに広がっていくことになりそうです。
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