『広辞苑』第6版
『広辞苑』第6版の刊行が10月23日に発表されると,新設項目などの話題が新聞各紙の記事のみならず,一面のコラム(10月25日付毎日「余録」,同日付読売「編集手帳」,同月27日付朝日「天声人語」)などでも取り上げられました。版元の岩波書店のPR誌『図書』は12月号でさっそく「『広辞苑』第六版」という特集を組んでいます。
『広辞苑』は1955(昭和30)年に初版が刊行されて以来改訂を繰り返し(その間の裏話については『国語辞書誰も知らない出生の秘密』に興味深い記述があります),国語辞典の代表の地位に長く君臨しています。ある語句の意味を話題にする際は「『広辞苑』によると~」とするのが常套句になってさえいます。それゆえ今回の改訂のニュースは一般週刊誌やスポーツ紙,テレビのワイドショーといったメディアをもにぎわせました。やはり注目度は別格という感があります。
その一方で,この辞典を批判するような文言が,本の題名にしばしば使われてきました。
- (1)金武伸弥『『広辞苑』は信頼できるか 国語辞典100項目チェックランキング』(講談社・2000年)
- (2)谷沢永一;渡部昇一『広辞苑の嘘』(光文社・2001年)
- (3)高島俊男『お言葉ですが…4 広辞苑の神話』(文芸春秋・2003年)
- (4)川本信幹『日本語通の日本語知らず 広辞苑よ,おまえもか』(主婦の友インフォス情報社・2006年)
(2)は全編にわたって,様々な観点から『広辞苑』を厳しく批判しています。しかし(1)は『広辞苑』を含む21種の辞書について掲載項目や意味記述について比較して論じたもので,巻末では著者が各辞書に点数をつけていますが,『広辞苑』は第4位で,題名が与える印象ほど評価は低くありません。また(3)(4)では,『広辞苑』について批判しているのはそれぞれのうち一部分のページにすぎません。にもかかわらずこのような形で書名に挙がってしまうのは,国語辞典の代表格であるがゆえの一種の有名税というべきでしょう。
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