ACTFL-OPIテストとは

 ACTFL-OPIは,全米外国語教育協会が開発した汎言語的に用いることができる会話能力テストです。近年,日本においてもそのテスター数が増えつつあり,数々の日本語教育の現場において,その学習効果の評価に利用されてきています。こうした中,様々な背景を持つ日本語を母語としない人々が多く存在する地域の日本語教室において,その活用の意義は大きいと思われます。地域生活において,会話は重要なものであり,多様な学習者の会話能力を的確に把握することは,多様な学習者に対して柔軟に対応することを期待される地域の現場=学習支援プログラムの充実に向けても,欠かせない基盤となりえます。

 これまでの非母語話者の言語運用能力に焦点を当てた研究では,運用能力の正確な把握のために,彼らの言語生活や環境を考慮することが重要であることが指摘されています。松尾(2000)は,インタビュー調査により,特定の地域における日本語の会話能力とその規定要因(世代差・生年・小学校入学後の両親と使用言語など)との関係性を調査しています。その中で,会話能力を規定する説明変数の検出のためには,より広い調査が必要であると述べています。

 OPIテストに関係する先行研究もいくつかあります。鎌田(2005)は,OPIの概要を述べた後で,日本語学習者が日本語を媒介とした言語活動を行っている実際の接触場面を,研究することの必要性を提唱しています。学習者の主体的な学習プロセスの実態,およびその実態をとりまく言語生活・言語環境の把握の必要性を論じています。

 また,OPIをより応用的に活用している研究も存在します。堀井(1998)は,OPIテストを行った後で,被験者に判定結果を伝えるのみならず,できる限り学習の参考になるようなコメントをフィードバックした,という実践報告を行っています。テープやVTRを用いたテスターによるフィードバックの課題を探っています。渡辺(2005)は,運用能力という概念を含めた,OPIテストそのものの妥当性とその過去20年にわたる議論を紹介しています。それと同時に,OPIを使った先行研究を紹介しながら,第2言語習得から言語行動の解明にOPIが応用の可能性を持っているということを示唆しています。助川・吹原(2008)は,在日インドネシア人就労者の日本語習得とその促進要因を探るために,OPIを活用して100人の茨城県大洗町に在住するインドネシア人就労者の口頭能力を測定,分析しています。その結果として,大多数(6割以上)が初級の中レベルにとどまっていることを指摘するとともに,その要因について追究しています。この研究は,縦断調査として行われており,今後の成果・報告が期待されます。