早期英語教育について

 小学校での英語必修化の本格的な検討が2004年から始まり,2005年から引き続き,2006年も早期英語教育について話題となっています。
 「<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育」(正論412,2006年7月)や「特集;揺れる小学校英語教育」(中央公論 121-10,2006年10月)など,特集も組まれ,各誌で活発な議論がなされています。

 課題は多いが,日本の英語公教育改善への大きな一歩を,まずは見守ろう(「<Ushio News Index>高まる賛否両論!「小学校英語必修化」あなたはどっち?」前原政之 潮 568 2006年6月)とする肯定的な意見が見られる一方,初等教育段階では十分な英語教師の確保が困難である以上,正しい日本語で行われる他教科の授業が減り,お世辞にも正しいとはいえない英語で行われる「英会話ごっこ」が増えるということで,これは児童の母語習得においても,英語習得においてもマイナスである(「小学校に英語はいらない!」斎藤兆史 論座 130 2006年3月)という反対意見も見られます。

 国語学者である大野晋氏から,中途半端に英語をかじることで,子供達の自国語に対する意識が低下することを危惧する,次代に伝えたいのは正確な日本語を使う国民的態度である(「特集;次代に伝えたい日本語 なぜ今,英語よりも日本語なのか」大野晋 中央公論 121-6 2006年6月)という意見が出されていますが,英語教育を研究する鳥飼玖美子氏からも,授業時間は限られているのだから,小学校で「英語ごっこ」を一時間やるくらいなら,まずは母語教育を充実させるべきだ(「<対談> 何で小学校で英語やるの 異議あり英語教育」鳥飼玖美子;ピーターセン,マーク 文芸春秋 84-11 2006年8月)という意見が出されているのが興味深いところです。

 外国語教育自体に賛成する意見も見られますが,総合雑誌では,手放しの早期英語教育賛成論より,効果を疑問視する声や,質の良い教材や教師の確保の困難さを危惧する声,英語は中学校からが妥当である,英語教育より国語教育が重要である,英語習得にも日本語の力が必要である,という意見が多く,小学校での英語必修化の議論によって,国語教育や日本語の大切さが見直される結果になっています。

他の資料では

関連文献情報

早期英語教育について

文献番号
記事標題 (著者) 誌名 巻号 発行年月 ページ 発行所
2006028
<対談> 何で小学校で英語やるの 異議あり英語教育 (鳥飼玖美子;ピーターセン,マーク) 文芸春秋 84-11 2006-8 pp.200-208 文芸春秋
2006030
ずいひつ波音 英語って何なの? (西垣通) 潮 571 2006-9 pp.52-53 潮出版社
2006482
小学校に英語はいらない! (斎藤兆史) 論座 130 2006-3 pp.154-161 朝日新聞社
2006483
<Ushio News Index> 親子で海外留学!新しい英語教育が注目の的。 (小此木律子) 潮 566 2006-4 pp.64-65 潮出版社
2006485
特集;日本はどっちだ 小学生に英語教育は必要か (中西輝政) 文芸春秋 84-7 2006-5 pp.161-164 文芸春秋
2006487
<Ushio News Index> 高まる賛否両論!「小学校英語必修化」あなたはどっち? (前原政之) 潮 568 2006-6 pp.62-63 潮出版社
2006489
誰が責任をとるのか?「英語教育」の惨状 (樽谷賢二) 新潮45 25-6 2006-6 pp.224-228 新潮社
2006490
時評2006 思想なき英語教育熱の危うさ (藤原智美) 中央公論 121-6 2006-6 pp.30-31 中央公論新社
2006491
特集;次代に伝えたい日本語 なぜ今,英語よりも日本語なのか (大野晋) 中央公論 121-6 2006-6 pp.56-57 中央公論新社
2006492
誤解だらけの英語教育 (篠沢秀夫) 正論 412 2006-7 pp.252-259 産経新聞社
2006493
<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育 外国人力士の日本語 (田代忠彦) 正論 412 2006-7 p.370 産経新聞社
2006494
<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育 小学校はカルチャーセンターにあらず (丘哲也) 正論 412 2006-7 pp.371-372 産経新聞社
2006495
<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育 個人・企業・国の将来を左右する英語力 (古田紀年) 正論 412 2006-7 p.372 産経新聞社
2006496
<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育 教育の究極の目的を考えて (鈴木規章) 正論 412 2006-7 pp.372-373 産経新聞社
2006497
<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育 英語教育は中学からが妥当 (峰芳子) 正論 412 2006-7 pp.373-374 産経新聞社
2006498
<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育 英語にも日本語力が必要 (中本義信) 正論 412 2006-7 p.374 産経新聞社
2006499
<言ったもん勝ち>英語教育vs国語教育 言葉の壁を取り除け (加藤啓) 正論 412 2006-7 p.375 産経新聞社
2006500
連載;虹の彼方に 小学校から英語教育? (池沢夏樹) 現代 40-9 2006-9 p.27 講談社
2006501
<三人の卓子 読者と筆者と編集者> 英語は中学校からが妥当 (峰ヨシ子) 文芸春秋 84-12 2006-9 pp.492-493 文芸春秋
2006502
特集;揺れる小学校英語教育 <ルポ> 現場はこんなに進んでいる 地方実験校の取り組み (杉山春) 中央公論 121-10 2006-10 pp.199-210 中央公論新社
2006503
特集;揺れる小学校英語教育 子どもの可能性を広げる多言語学習 「害酷語教育」という思い込み (金森強) 中央公論 121-10 2006-10 pp.211-218 中央公論新社
2006504
特集;揺れる小学校英語教育 今こそ挫折の歴史に学べ 日本人は明治時代から始めていた (斎藤兆史) 中央公論 121-10 2006-10 pp.219-227 中央公論新社
2006505
特集;「教育再生」やるなら,この手しかない ザけんなヨ!「文科省&日教組」の言いなりにやったからこうなった! 英語以外は切り捨ての「外国語教育」は× (薬師院仁志) 諸君! 38-12 2006-12 pp.148-149 文芸春秋
2006599
<Book Plaza 本の広場> 鳥飼玖美子著『危うし!小学校英語』 諸君! 38-8 2006-8 pp.256-257 文芸春秋



国立国語研究所 日本語ブックレット2006