インターネットと言葉

 インターネットが登場した当初は情報を提供する側とされる側との間に明確な境界線が引かれていましたが,現在では,コンテンツ(情報内容)の制作などに利用者が積極的に関わることによってサービスを成立させる,というあり方へと変化しています。新しいWebのあり方は,「Web2.0」とも呼ばれ,このことばもよく目にするようになりました。
 2006年は「ブログ」に加え,「mixi」をはじめとするSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が流行し,多くの人が情報の発信者となることが可能となりました。また,検索システムの発達や,電子図書館の構想など,インターネットは文章を読むという面でも言語生活に影響を与えているといえるでしょう。

 しかし一方で,インターネットの問題点を指摘する記事も見られます。
 柳田邦男氏は,ネット社会における情報の発信には,匿名化が可能であり,匿名化社会は,無責任の横行を認める社会でもある(「連載;日本人の教養(28) ITバブルと脳内汚染」柳田邦男 新潮45 25-3 2006年3月)とネットの匿名性の問題を提示し,赤瀬川原平氏は,パソコンによる情報伝達は,離れた場所への情報のコピーであり,著作権問題というのは,じつはパソコンの能力とは反りの合わないもので,法的にはいけないといわれながら,陰では著作物のコピーが当たり前におこなわれている(「連載;もったいない・・・(11) パクリの時代」赤瀬川原平 ちくま418 2006年1月)と著作権の問題を提示しています。

 個人情報が流出していることに関する危険性や,インターネットの匿名性の生む暴走の恐れ,「コピー&ペースト」のような安易な情報収集のし方などについて批判する意見が多く,今後,インターネット上の情報管理やモラル,秩序の維持をどう行っていくかなども注目されています。


関連文献情報

インターネットと言葉

文献番号
記事標題 (著者) 誌名 巻号 発行年月 ページ 発行所
2006176
特集;現代人必携 推薦図書リスト付き 日本の常識44 ブログ (山本一郎) 文芸春秋 84-4 2006-3 pp.301-303 文芸春秋
2006235
連載;日本人の教養(26) 個人情報保護でこの世は暗黒へ (柳田邦男) 新潮45 25-1 2006-1 pp.114-122 新潮社
2006236
Foreign Affairs インターネットの管理を誰に委ねるのか 自由放任か規制か (クキエル,ケネス・ニール) 論座 128 2006-1 pp.273-281 朝日新聞社
2006237
連載;都築響一の夜露死苦現代詩(13) アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック あるいは箱の中の見えない詩人たち (都築響一) 新潮 103-1 2006-1 pp.400-404 新潮社
2006238
連載;もったいない…(11) パクリの時代 (赤瀬川原平) ちくま 418 2006-1 pp.34-37 筑摩書房
2006240
連載;未来の窓(107) 「エディタリアンの会」の発足 (西谷能英) 未来 473 2006-2 pp.42-43 未来社
2006241
連載;日本人の教養(28) ITバブルと脳内汚染 (柳田邦男) 新潮45 25-3 2006-3 pp.250-258 新潮社
2006242
連載;ロスト・オン・ザ・ネット(65) 調べることは調べられること (青山南) すばる 28-3 2006-3 pp.320-323 集英社
2006244
潮流06 『ウェブ進化論』に疑問が二つ (東浩紀) 論座 132 2006-5 pp.26-27 朝日新聞社
2006245
特集;インターネットの新局面 ネットワーク化が生む「危機」と「創発」 (茂木健一郎) 論座 132 2006-5 pp.113-119 朝日新聞社
2006246
特集;インターネットの新局面 世界は検索し尽くされるのか (森健) 論座 132 2006-5 pp.120-127 朝日新聞社
2006247
<徹底討論> ウェブ進化と人間の変容 (梅田望夫;平野啓一郎) 新潮 103-6 2006-6 pp.154-168 新潮社
2006248
コミュニケーション形態の変化と世論の重層性を考える (池田謙一) UP 35-6 2006-6 pp.19-23 東京大学出版会
2006249
連載;麹町電網測候所 諸君! 38-7 2006-7 pp.332-337 文芸春秋
2006250
連載;コラム10の眼 経済 インターネットの中の隠者 (竹内靖雄) 新潮45 25-7 2006-7 pp.198-199 新潮社
2006251
ITだけに頼るな (桜井正光) 文芸春秋 84-9 2006-7 pp.90-91 文芸春秋
2006252
<徹底討論> ウェブ進化と人間の変容(2) (梅田望夫;平野啓一郎) 新潮 103-7 2006-7 pp.200-213 新潮社
2006254
連載;ブログ・ハンティング Web2.0 (吉田操) 中央公論 121-8 2006-8 pp.308-309 中央公論新社
2006255
グーグルを倒すのは'75世代だ (梅田望夫@森健/聞き手) 文芸春秋 84-11 2006-8 pp.296-304 文芸春秋
2006257
連載;ロスト・オン・ザ・ネット(69) 国境なき言葉たち (青山南) すばる 28-8 2006-8 pp.320-323 集英社
2006258
<学術出版> グーグルブックサーチ UP 35-8 2006-8 p.61 東京大学出版会
2006259
「古代チベット語文献オンライン」プロジェクト (今枝由郎) 図書 688 2006-8 pp.22-27 岩波書店
2006262
連載;ロスト・オン・ザ・ネット(70) 全世界図書館への接近 (青山南) すばる 28-9 2006-9 pp.448-451 集英社
2006263
<Ushio News Index> Web2.0でネットはどう進化する。 (小沢一樹) 潮 572 2006-10 pp.60-61 潮出版社
2006264
<ボイス往来> インターネットは負の存在か (木村晴美) Voice 346 2006-10 p.258 PHP研究所
2006266
連載;日本人の教養(36) 名を隠す日本人 お前は何者か? (柳田邦男) 新潮45 25-11 2006-11 pp.246-254 新潮社
2006267
連載;ブログ時評 on SEKAI ネット言論はいま 「オーマイニュース 日本版」が直面する危機 (団藤保晴) 世界 758 2006-11 pp.162-163 岩波書店
2006269
ミクシィ 時価総額二千億円の罠 (佐々木俊尚) 文芸春秋 84-16 2006-11 pp.278-285 文芸春秋
2006272
インターネット制覇をもくろむ中国の野望 誰も書かないレッドチャイナの禁忌 (佐々木俊尚) 諸君! 38-12 2006-12 pp.182-189 文芸春秋
2006274
<対談> 現代科学を“身体性”と“クオリア”で乗り越える グーグルVS.古武術&最新脳科学 (甲野善紀;茂木健一郎) 中央公論 121-12 2006-12 pp.202-212 中央公論新社
2006277
連載;ロスト・オン・ザ・ネット(72・最終回) ネットからは逃げられないが (青山南) すばる 28-12 2006-12 pp.318-321 集英社
2006454
連載;韓流 出版事情(7) “デジログ”時代には情報の“味”が大切だ (韓淇皓) 論座 131 2006-4 pp.234-239 朝日新聞社
2006549
<読まずにすませるベストセラー> 佐々木俊尚著『グーグルGoogle』 中小企業経営者向けのネット新時代の案内書 (紀田伊輔) 新潮45 25-8 2006-8 pp.160-161 新潮社
2006556
<Monthly Book Review> 梅田望夫著『ウェブ進化論』 IT革命の第二幕を伝える「架け橋」 (吉崎達彦) 中央公論 121-5 2006-5 pp.281-282 中央公論新社
2006557
<読書空間 Book Review> 梅田望夫著『ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』 (山本一郎) 論座 132 2006-5 p.307 朝日新聞社
2006558
『ウェブ進化論』のさきにあるもの 梅田望夫著『ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』 (東浩紀) ちくま 423 2006-6 pp.4-5 筑摩書房
2006559
<読書空間 Book Review> 佐々木俊尚著『グーグル Google―既存のビジネスを破壊する』 (森健) 論座 134 2006-7 p.323 朝日新聞社
2006561
<読書空間 Book Review> 森健著『グーグル・アマゾン化する社会』 (西垣通) 論座 139 2006-12 p.316 朝日新聞社



国立国語研究所 日本語ブックレット2006