2005年の総合雑誌・文芸雑誌・PR誌では,たくさんの日本語に関する特集が組まれました。また,記事総数も506編を数えます。
これらの記事で,どのようなことが話題になっているのか,分野ごとに見ていきます。
[コミュニケーション]では,「あいさつ」や「敬語・マニュアル敬語」といった「言葉遣い」についての記事が見られます。これに関連して,モラルの低下や対人関係の変化などを話題としているものも見られます。こうした記事は,2004年にも見られました。
また,携帯電話やパソコンを使ったコミュニケーションのマイナス面(例えば,学力の低下を加速させるなど)が話題となっている点も,2004年と同様です。
2005年の[コミュニケーション]では,新たに,携帯電話やパソコンを使ったコミュニケーションがもたらす世論形成の場の変化が話題となっています。新聞や雑誌等の既存のメディアからインターネット等へ論壇が変化しつつある,というものです。
[語彙]では,2004年と同様,流行語や新語の意味・語源に関する記事が多数掲載されています。2005年は,失われつつある言葉を取り上げた特集「消える日本語」が組まれました。なお,2005年の[語彙]分野では,市町村合併によって注目されるようになった「地名」に関する話題も,わずかですが見られます。
[日本語一般]では,日本語の乱れや日本語の美しさや大切さについて述べている記事が多数あります。このことには,特集「言葉の力 活かそう日本語の底力」(文芸春秋83-4,2005年3月)が組まれたことが関係しています。
[国語教育]での話題は,国語力の低下・向上だけにとどまらず,学力全体の低下・向上にまで及んでいる点が注目されます。(国語科も含めた)学力低下の要因は「ゆとり教育」にある,ということは,2004年の総合雑誌にも指摘されていました。2005年の総合雑誌では,ゆとり教育のほかにも,いわゆる脳(力)の低下にもその要因が見出されています。
ところで,国語教育で話題となる事柄として「読書」があります。総合雑誌では,子供たちの読書離れがしばしば取り上げられるのですが,2005年は,「本当に子供の読書離れは進行しているのか」ということが話題となっています。
2004年の総合雑誌での[言葉と機械]に関する話題の中心は,パソコンやメールなど情報メディアそのものについてでしたが,2005年には周辺的な話題となっています。2005年の[言葉と機械]に関する話題の中心は,「ブログ」へと移行しています。
なお,これらの情報メディアはコミュニケーション手段としても利用されるので[コミュニケーション]とも関連します。その内容は,主に,対人関係の変化・自己表現力や脳(力)の低下といった情報メディアがもたらすマイナス面です。
[言語一般]では,いわゆる脳(力)と,小学校での早期英語教育が中心的な話題となっています。
脳(力)の話題は大きく分けて2つあります,ひとつはその活性化,もうひとつは(国語教育も含めた)教育全体との関係です。
早期英語教育については,その賛否が話題となっています。総合雑誌では,英語教育よりも国語能力の向上が重要だ,という見解が多くを占めています。
[文章・文体]は,例年,記事数の少ない分野ですが,2005年は特集「言葉の力」や「漢文力,大復活への道」などが組まれたことが影響してか,比較的多くの記事が見られました。話題としては,手紙・詩・俳句・連歌・文語文・漢文の訓読などが取り上げられています。また,短詩の話題は,定型(五七五や五七五七七)が日本語のリズムと関係するので,[音声]とも関連します。
このほか[文字][文法][方言][日本語教育][辞書をめぐって]に関する記事も,わずかですが,見られました。