日本語ブックレット2005

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短詩−短歌や俳句−への関心

 自由に自己表現ができる環境(例えばインターネットなど)が整いつつあるなかで,五・七・五の型にあてはめる・季語を詠み込むなどの一定の規則に従うという方法で自己表現をする,ということも盛んに行われています。

 総合雑誌では,毎年,俳句や短歌に関する記事が見られます。
 2002年には,「詩歌を大事にしたい・俳句は日本語の砦」(文芸春秋80-12,9月号),2004年には特集「季語再考 短詩形文学の試み」(すばる26-10 2004年10月)などがありました。2005年は,詩歌の定型に関する特集が組まれています。

 こういった特集や記事がみられる背景として3つのことが考えられます。

 一つは,近年のいわゆる日本語ブームにおいて,伝統的な日本語や日本語の美しさをより強く意識するようになっている,ということです。
 日本人が古くから親しんできた文芸である詩歌が,伝統的な日本語という観点から再認識されているのではないでしょうか。

 二つめには,1980年代後半以降,短歌の口語化や俳句の非定型化が意識されるようになっている,ということが挙げられます。短歌は『サラダ記念日』の出版以降,現代詩という傾向を強めたとされます。短歌は,現代にあわせた季節感覚を盛り込んだ,つまり旧来の季語にとらわれない新しい俳句が展開されつつあるといわれています。

 三つめには,国外での「HAIKU」の流行が考えられます。外国語で作られる非定型の俳句(新しい俳句の形)に対する日本の伝統的な短詩として,詩歌の定型はあらためて注目されているようです。

 国際俳句交流協会:http://www.haiku-hia.com/

関連文献
短詩−短歌や俳句−への関心

文献番号 記事標題 (著者) 誌名 巻号 発行年 発行月 ページ

94 連載;西洋音楽から見たニッポン(3) 俳句は四・四・四(3)  (石井宏) Voice 330 2005-6 pp.218-221
95 連載;西洋音楽から見たニッポン(4) 俳句は四・四・四(4) (石井宏) Voice 331 2005-7 pp.200-207
96 連載;西洋音楽から見たニッポン(5) 俳句は四・四・四(5) (石井宏) Voice 332 2005-8 pp.198-205
209 連載;『歌』の精神史(3) 浪花節と演歌 (山折哲雄) 中央公論 120-7 2005-7 pp.256-257
218 特集;言葉の力 活かそう日本語の底力 言葉の力 言葉の使い方 連歌 合作のたのしみ (下房俊一) 文芸春秋〈特別版/臨時増刊号〉 83-4 2005-3 pp.210-211
224 特集;短詩形文学の試み 定型とは何か 古典詩歌から展望して (鈴木健一) すばる 27-10 2005-10 pp.143-152
225 特集;短詩形文学の試み 定型とは何か 意味は形式の会談を駆け上がり普遍の空へ (東郷雄二) すばる 27-10 2005-10 pp.153-155
226 特集;短詩形文学の試み 定型とは何か 詩の定型を考える (仁平勝) すばる 27-10 2005-10 pp.156-165
227 特集;短詩形文学の試み 定型とは何か 個我からの開放 (清水哲男) すばる 27-10 2005-10 pp.164-171
228 特集;短詩形文学の試み 定型とは何か ふたつ器にひとつ心を (石寒太) すばる 27-10 2005-10 pp.172-179
229 特集;短詩形文学の試み 定型とは何か <対談> 「定型」からあふれ出るもの (道浦母都子;水原紫苑) すばる 27-10 2005-10 pp.180-190
239 俳句になぜ季語を詠み込むか 雪月花,友愛のこころ (小沢実) 図書 673 2005-5 pp.12-15
240 特集;言葉は生き物 十七音のこころのかたち (黒田杏子) 本の窓 28-5 2005-6 pp.16-19

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