新聞は広く一般に読まれている媒体であり,そこには,事実の伝達,解説,投書など多様な記事が掲載されていて,その時々の社会の状況や動きの一端が反映されています。
国立国語研究所で作成している「ことばに関する新聞記事見出しデータベース」を基に,2005年の日本語をめぐる状況を,目立った動きや変化があった話題を中心に,見ていくことにします。
なお,ここで紹介した新聞記事は,それぞれの話題に関する記事を網羅しているわけではなく,主なものだけをあげています。各話題についての各新聞社の報道全体を過不足なく反映するものではないことに御留意ください。
夏から秋にかけて,若い人,特に東京及びその近辺の女子高生の間で方言が人気だと伝える記事が目立ちました。携帯メールや会話に各地の方言を取り入れ,方言を「グループ内での仲間語」として「遊び感覚」で使っている点が特徴とされています。また,読売新聞の企画連載「新日本語の現場」では11月から方言がテーマに取り上げられました。
2001年以降,いわゆる「日本語本」がベストセラーとなり,新聞紙上にも「日本語ブーム」という言葉がしばしば登場しましたが,2005年秋には,テレビ番組の改編に際し,言葉に関するクイズ番組が民放各局で一斉に始まりました。
2004年に続き2005年も,「平成の大合併」に伴う新しい自治体名に関する記事が多く見られました。
外来語をめぐっては,国立国語研究所「外来語」委員会が2002年の設置以来,言い換え提案を行ってきましたが,2005年はその第4回提案がありました。また,言い換え提案を全国の自治体がどう受け止めているか調べた結果も発表されました。
学力調査や漢字能力調査など様々な調査結果が発表されましたが,全体の傾向としては,漢字の読み書き能力や読解力の低下が指摘されました。また,1月には,中山文部科学大臣(当時)から,総合学習見直し,「ゆとり」教育転換についての発言があり,賛否両論が沸き起こりました。
読書推進運動は活発に行われ,2005年で活動開始から10年を迎えた「朝の読書」運動は,小学校の8割,中学の7割が実施しているなど,全国的な広がりを見せています。また,大学では大学生協企画の読書運動「読書マラソン」が人気を呼びました。さらに,超党派の活字文化議員連盟の提案により,「文字・活字文化振興法」が成立,7月29日に公布・施行され,10月27日が「文字・活字文化の日」に制定されました。
小学校からの英語教育については,中央教育審議会が必修化についての検討を行いましたが,新聞紙上でも,構造改革特区の認定を受けた小中(高)一貫の英語教育の実践校の紹介記事や,保護者・教員・英語教育関係者等からの様々な意見が掲載されました。
日本語教育をめぐる状況はといえば,日本語能力試験の受験者が30万人を超え,また,日系企業の進出が増える中国では「日本語ブーム」が起きていると伝える記事がありました。一方,日本国内では,日本語の指導が必要な外国人児童生徒が過去最多の1万9678人となりましたが,教育環境は十分なものとは言えず,学校や自治体のいっそうの支援が求められています。
2005年の世相を表す言葉を見てみると,「流行語大賞」には「小泉劇場」と「想定内(外)」が,そして「今年の漢字」には「愛」が選ばれました。また,2005年に生まれた子どもの名前は,男子は「翔」「大翔」,女子は「陽菜」がトップでした。