2004年に続いて目立ったテーマ
〇地名に関する本
地名に関する本の多さは「平成の大合併」による自治体名の変動が影響していることは『日本語ブックレット2004』で述べましたが,2005年もその状況が続いています。古くからの地名が消える一方で,「さくら市」「にかほ市」といったひらがなの市名や「奥州市」「瀬戸内市」といったスケールの大きな市名が誕生したり,「伊豆市」・「伊豆の国市」(静岡県)や「甲斐市」・「甲州市」(山梨県)といったよく似た市名の組み合わせが同県内に生まれたりすることに対する批判の声は小さくなく,
総合雑誌や
新聞にも見られます。
こういう状況をふまえた『市町村合併で「地名」を殺すな』『生まれる地名,消える地名 「平成の大合併」で日本地図に大異変!』といった本が出ています。前者の「まえがき」には
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- 「平成の大合併」によって誕生している新しい自治体名は,まさに現代日本の「知的レベル」をそのまま反映している。このままでは,日本は子供だましのテーマパークのような国になってしまう。
後者の「あとがき」には
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- 刻々と進行していく好ましくない事態を目の当たりにして,もはやこれ以上地名への「破壊活動」を座視することができなくなった,というのが本書執筆の動機である。
とあり,いずれも現状への強い憂慮と憤りを示しています。今尾氏はPR誌(『本の窓』12月号「特集;平成の地図遊び」)や新聞(7月16日付読売「顔」欄)でもその一端を語り,『市町村〜』は総合雑誌の書評(『Voice』9月号,『諸君!』同),新聞の書評(7月10日付読売「読書」面)やコラム(6月22日付読売「編集手帳」欄)でも取り上げられました。
なお両書と同趣旨の書の先達ともいうべき
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- 『こんな市名はもういらない! 歴史的・伝統的地名保存マニュアル 』(東京堂書店,2003)
の著者である楠原佑介氏も,3月17日付読売「顔」欄に登場し,首都圏の駅名について批判的に論じた著書の『この駅名に問題あり』は新聞の書評(5月22日付読売「読書」面「本よみうり堂 記者が選ぶ」欄)で取り上げられました。
〇数え方の本
数え方に関する本は,2004年の
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- 飯田朝子著・町田健監修『数え方の辞典』(小学館)
が火付け役となり,その後次々と刊行されています。飯田氏自身も『数え方でみがく日本語』『数え方もひとしお』など相次いで著作を発表し,総合雑誌にも執筆しました(『文芸春秋』12月号「特集;消える日本語」など)。『数え方で〜』の中で飯田氏は,何でも「一個」「一つ」で数えようとするのは,せっかくいろいろなグラスがあるのに湯のみでジュースや牛乳を飲むようなもので,とてももったいないことだ,と主張しています。やはりこちらでも,現状への憂慮が執筆の動機となっているようです。
2004年に続いて目立ったテーマ
文献番号 |
書名 (著者) 発行年月 ページ 発行所(発売所) 判型 本体価格 |
108 |
この駅名に問題あり (楠原佑介/著) 2005-5 254p 草思社 B6 1500円 |
109 |
市町村合併で「地名」を殺すな (片岡正人/著)2005-6 286p 洋泉社 A5 1800円 |
110 |
生まれる地名,消える地名 「平成の大合併」で日本地図に大異変! (今尾恵介/著) 2005-6 286p 実業之日本社 B6 1400円 |
114 |
<コスモ文庫>ものの数え方の本 絵で見てわかる (一校舎国語研究会/編) 2005-1 255p 永岡書店 A6 486円 |
116 |
<Kawade夢文庫>モノの数え方がズバリ!わかる本 (博学こだわり倶楽部/編)2005-4 220p 河出書房新社 A6 514円 |
118 |
モノの数え方ハンドブック (リベラル社/編)2005-7 175p リベラル社(星雲社)B40 950円 |
119 |
<ちくまプリマー新書018>数え方でみがく日本語 (飯田朝子/著) 2005-8 159p筑摩書房 B40 720円 |
124 |
数え方もひとしお (飯田朝子/著) 2005-11 158p 小学館 B6 1000円 |
526 |
<ワニ文庫>そこんとこ何というか辞典 物の数え方・物の名前 (日本の常識研究会/編) 2005-5 262p ベストセラーズ A6 638円 |
528 |
絵で見る「もの」の数え方 (町田健/監修) 2005-5 287p 主婦の友社 B6 1300円 |