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第1部 本編 > 「日本語本」の動向 > 概観

「日本語本」概観

 「日本語本」については,2002年に,斎藤孝氏が火付け役となった「日本語本ブーム」が出版界の大きな話題となりました。翌2003年にはそれも一段落した感がありましたが,2004年は後半になって,翌年にかけて社会一般で大きな反響を呼ぶようなベストセラーが登場しました。

話題となった本
 まず,2004年に,社会一般で話題となった「日本語本」を挙げてみましょう。
前半には,約4600の名詞の数え方を示した飯田朝子著・町田健監修『数え方の辞典』(小学館,4月)がこの種の辞典としては異例の売り上げを記録しました。このテーマの辞典でこれだけの規模・詳細さは前例がなく,著者とともに多くのメディアに取り上げられました。
 その後7月刊の樋口裕一『頭がいい人,悪い人の話し方』(PHP新書)が,2004年の年間ベストセラー総合部門第16位(トーハン調べ。以下も同じ),そして2005年の同部門では第1位と大いに売れました。この本には誰もがつい興味を惹かれるような特色があります。
 12月に刊行された,北原保雄編『問題な日本語 どこがおかしい?何がおかしい?』(大修館書店)も2005年総合部門第9位(2005年11月刊の続編との合計で)のベストセラーになりました。この本にも先行の類書にはない特色がありました。ただ年末の刊行のため,新聞や総合雑誌での本格的な反響は2005年に入ってからになります。

目立ったテーマ
 テーマ別に見てみると,まず地名に関する本が中央・地方いずれの出版社からも多く刊行されています。これには「平成の大合併」が関係していると思われます。
 現代の言語学の祖とも言われるフェルディナン・ド・ソシュールに関するものなど,言語学の入門書が相次いだのも注目されます。
 さらに2003年の後半から目立っていた,「つい最近まで使われていたのに,今では『死語』となってしまった(又は,なりつつある)言葉」を扱った一般向けの「死語」辞典の刊行が2004年も続きました。
 また漢字の読み書き能力の増進をうたった本も多く刊行されています。これには日本語の書記環境の変化が影響しているようです。

目を引いた著者
 著者別に見ると斎藤孝氏が引き続き精力的に著作を発表しています。さらにここ数年漢字・中国語に関する一般向け著作を次々に刊行している阿辻哲次氏,そして柴田武・武光誠両氏も,それぞれ一般向け著作を相次いで発表しています。
 また一般にも広く知られている国語学者の金田一春彦氏の著作を集めた『金田一春彦著作集』(玉川大学出版部)が奇数月に計6巻刊行されました。

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©2006 The National Institute for Japanese Language
国立国語研究所 日本語ブックレット2004