地名をめぐっては,例えば城下町に多く見られる「鉄砲町」「鍛冶町」のような歴史を反映した由緒のある町名が,行政側の手で「中央○丁目」「東町」といった機能的な反面味わいの乏しいものに改変されることへの,反発や批判の声が以前からあります。金沢市では,一度消えた旧町名を復活させようという条例が制定されました。
それに加え,ここ数年は,「平成の大合併」の名のもとに,自治体名のレベルで激しい改変が起きています。なじみのある町や村がいつの間にか消えていたり,知らないうちに自分の郷里に聞きなれない名前の市ができていて驚いたり,という経験をした人も多いはずです。中にはひらがなやカタカナを含んでいるとか,スケールが大きすぎるなど,全国的に物議をかもすような名前もあります(「南セントレア市」をめぐる騒動は記憶に新しいところです)。地名に関する本が多く出ている背景には,そのような現状の中で,地名に対する関心が高まっている,ということがあります。