私たちにとって「日本語」は身近な話題です。
数年前,いわゆる「日本語ブーム」が起こりましたが,それをきっかけに,人々はよりいっそう日本語に関心を持つようになっているのではないでしょうか。『問題な日本語 どこがおかしい?何がおかしい?』(北原保雄,大修館書店)や『頭がいい人,悪い人の話し方』(樋口裕一,PHP新書)といった,日本語に関する本がたくさん売れていることなどからも,そのことがうかがえます。
さて,総合雑誌・文芸雑誌・PR誌にも,日本語に関する記事が掲載されることがあります。そこで,30の雑誌を対象に調べてみたところ,2004年には,393編の記事がありました。
それでは,これらの記事ではどのようなことが話題となっているのでしょうか。分野ごとに見ていくことにします。
雑誌では,〈コミュニケーション〉に関する記事が特に豊富に見られます。
〈コミュニケーション〉では,医療現場における医師と患者とのコミュニケーション,ビジネスマンの人前でのプレゼンテーション,冠婚葬祭における言葉の礼儀などといった,言葉の使い方,話し方が話題となっています。また,文章を書くための技術的なことを記している連載も見られました。
〈言葉と機械〉には,携帯電話やパソコンでのメールやインターネット等の進歩や変化等,情報メディアそのものを扱った記事が見られますが,これらの情報メディアは,コミュニケーションの手段として利用されるため,その話題は,〈コミュニケーション〉とも深く関連しています。
雑誌では,〈語彙〉も話題として頻繁に取り上げられます。そして,その特徴としては,流行語・新語・カタカナ語の言葉の意味や,語彙の歴史に関する内容であること,1ページ程の連載記事であること,この2点が挙げられます。2004年は,国内外で親しまれている俳句に関連して,「季語」についての特集が組まれました。
〈国語教育〉では,「読書推進」と「ゆとり教育との関連」の2つが話題となっています。
また,雑誌では,脳の活性化や衰えの防止など,いわゆる「脳力」が話題となっています。そして,この話題は,これまでは〈国語教育〉における話題の一つだった「読書」や「音読」とも関連しています。
〈文章・文体〉では,『新潮』や『文学界』等の文芸雑誌で,小説の構成や様式,作家の文体などが話題となっています。
〈言語一般〉についての記事も豊富に見られます。その多くは,翻訳にまつわるものですが,2004年の特徴として,英語の学習に関する特集があったことが挙げられます。
この他ほか〈方言〉〈辞書をめぐって〉〈文字〉〈マスコミュニケーション〉に関する話題もありました。また,〈文法〉についての記事はごくわずかしかなく,〈音声〉に関するものはまったくありませんでした。〈音声〉や〈文法〉については,一般に馴染みの薄い分野なので,学術専門書ではない総合雑誌では話題に上りにくいのではないでしょうか。