戸籍法及び同法施行規則によれば,子どもの名前に用いることのできる漢字は「常用平易」でなければならないとされ,常用漢字表に掲げる漢字1,945字,人名用漢字別表に掲げる漢字285字(2003年時点)に制限されています。1990年には118字を追加する改正が行われましたが,人名用漢字の拡大についての要望は少なくありません。また,2003年には,人名用漢字に含まれない漢字の使用を認める最高裁判所の初判断が示されました。
このような状況で,法務大臣の諮問を受けた法制審議会人名用漢字部会は,578字を追加するという見直し案を発表し,広く国民から意見を求めました。しかし,この案は,漢字の出現頻度数や,追加の要望の有無・程度などを考慮し,「当該漢字が専ら「常用平易」と認められるか否かの観点から選定を行った」もので,「漢字の意味については一切考慮しなかった」とされていたため,「名前にふさわしくない」漢字が含まれていると,批判や苦情が多く寄せられました。
その結果,「糞」「屍」「呪」などの「不評」漢字は削除され,答申では最終的に計488字が新たに使用可能になりました。また,それまで「当分の間用いることができる」として使用を認めてきた常用漢字の旧字体などの異体字205字が,許容字体から人名用漢字に格上げされました。これにより,先行して人名用漢字に追加された「曽」(2004年2月),「獅」(6月),「瀧,駕,毘」(7月)の5字とあわせ,人名用漢字は計983字となりました。